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74話 死の国に向かえば

 ランシェル神主国には入ったもののザーフェスト・オーは不在。

 欲しい情報も手に入れられず……

 ケータ達はランシェル神主国でザーフェスト・オーについて聞き込みをするつもりだったが、領事館で追い返されてしまった。

 仕方なくこの国を出ることにしたが、アークス・レイドウェイに英雄オーは北にいると知らされ、これから追いかけることに。


 ところが、その話を聞いていた門番がケータ達に止めた。

 北の魔界は人間が生きて帰れない、思いとどまるようにと言う。


 だが、リレイアはそれに対抗する手段を持ち合わせている。


——ケータ。自信満々に大丈夫だと、門番に言ってもらえますか?

——なんでそんなことする?

——ちょっと試したいことがあるのですわ。

——ん?……まあ、いいや。分かった。


 ケータは門番に。


「魔素なんか怖くないですよ。どれだけ濃いか知りませんが、それで困ったことはありませんから」


 すると、門番は顔をこわばらせて答える。


「そんじょそこらの魔の森とは違うんだぞ! 普通の人間はおろか、我々硬人族でさえ5分で意識不明になるほどの魔境なんだからな」


 それを聞いていたリレイアはケータに。


——ケータ。うまいこと話に乗ってくれましたわ。それなら試してみてくれ、と言ってくださいませ。硬人族は濃い魔素を吹き付ける技を持っていますから。

——わかった。


「そう言われても魔境に行く必要があるんですよ。ですから、んー……試してみませんか? 魔素などいくら濃くても大丈夫だとわかれば良いんでしょ?」

「何だと! どうやら少し痛い目に遭わないとわからないようだな」


 ちょっと怒っているようだ。


 ケータはやれやれと思いながらも話に乗ることにした。

 硬人族の門番に魔素に耐えられるからやってみろということにした。


「大丈夫ですよ。この杖は凄いんで。硬人族は魔素を吹き付けることができるんでしょ? 耐えられるか試してみればいい」


 そう言われて門番はムッとする。

 親切で言っているのに、怖いもの知らずが生意気なことを言ってきているのだから当然だ。

 だが、ここで力任せに魔素を放って殺してしまっては問題だ。

 一方、硬人族の魔素放出能力について知っているクリスクロスがリレイアに尋ねる。


——リレイア。その杖は大丈夫なんだろうな?

——ええ。そんじょそこらの魔素の濃さなら全部吸い尽くせますよ。これ一本でロブナント領の魔の森の魔素が全部吸えますから。

——ほんとかよ! あの棒切れはそこまでスゲーもんなんだな。 そんなら大丈夫か。ケータ。硬人族は魔法は使えねぇが魔素をそのまま吹き付けることができる。いい機会だから嗾けて、杖で魔素を防ぐ実験とやらをしてみろよ!


 門番はケータに魔素を吹き付けて試すことにしたようだ。

 だが、門番はすぐに魔素を吹き付けるようなことはせず、同僚を呼んだ。


「おーい。誰か来てくれやー」

「なんだ。トラブルか?」

「いや、こいつらが魔界に行くっていうんで止めたんだが、持ってる棒切れがあるから大丈夫だとか言ってるんだよ」

「困った連中だな。それでどうするんだ?」

「仕方ないからちょっと魔素吹かして頭冷やしてもらおうと思ってよ」

「人間はひ弱だぞ。すぐ死んじまうんじゃねーか」

「ああ、だからちょっとだけしかやらねぇ。けれど、もしもに備えて治療魔法と魔素を吸い出す準備してくんねぇか?」

「ったく、めんどくせーな……わあったよ」


 どうやら、門番が懲らしめるために極弱い魔素をケータに吹き付けるらしい。

 同僚を呼んだのは、ケータが倒れた時のために治療と魔素を吸い出す準備をするためだ。


「そんじゃあ、いくぜ」


 門番は魔素を吹き付けた。

 その魔素は確かにかなり濃い状態で、ロブナント領の魔の森の最深部の5倍ほどであった。

 確かにこの濃さの魔素を普通の冒険者が浴びたら昏倒してしまうだろう。


 しかし、リレイアに鍛えられたケータなら杖なしでも何とか耐えられる。

 ただし、それでも持って2、3分である。

 それ以上は体調が相当悪化して立っていられなくなるだろう。

 しかも後遺症で3日は動けなくなるに違いない。


 だが、ケータが手にしているのは『ルオークの杖』である。

 吹き付けられた魔素は全て吸い取られ、人体には何の影響もない。


「なんともないですよ。試すんならこんなもんじゃないでしょ? 魔素降る死の国(テル・デ・モールト)はこの程度ですか?」

「バカ言ってんじゃねーよ。だが、これくらいは耐えられるか。そんじゃあ、ちょっと強くするぜ」


 さらに数倍強い魔素を吹き付けてきた。


「これでどうだ」

「変わりませんねぇ。体調も悪く成りませんし」

「マジかよ。仕方ねーな。ちょっと本気出すぜ」


 それを見ている同僚の顔色が心配そうだ。

 すでに普通の人間なら即死レベルの魔素を吹き付けているのだ。

 

 だが、その門番はいくら強い魔素を吹き付けてもケータの顔色は変わらない。


「くそっ! 確かにその杖はすげーよ。だけどよ。それでもあの魔界には到底叶わねぇだろうよ」

「ええ、それ試したいですね。どうにか成りませんか?」


 涼しい顔のケータに門番は意地になってきた。


「わかった………おーい。手の空いてる奴5人ぐらい呼んでこい」

「待てよ。これ以上やったらいくらなんでもまずいだろ」

「しょーがねーじゃねーか。このまま魔界に行かせるわけにもいかねーだろ」

「そうだけどよ………わかった。呼んでくるけどどうなっても知らねーぜ」


 同僚は門番だけではなく非番の兵士も数人連れてきた。

 状況を説明すると半信半疑ながら協力してくれるという。


「そんじゃあ、いくぞ」


 総勢8名の硬人族から魔素が吹き付けられた。

 最初の一人が全力で放った魔素の3倍程度の濃度だ。

 しかし、全力ではない。

 呼ばれた兵士たちは、話半分に聞いていて信用していなかったのだ。


「それほど強くなってませんよ? これが魔界の魔素濃度なんですか?」


 そのケータの発言に色を失う兵士たち。

 今、吹き付けている魔素は硬人族でさえ、無事には済まない濃度なのだ。

 だが、ケータの様子から全く平気なことがわかった。


「おい。お前ら。こりゃあ、本気でやるしかねーぞ」

「ほんとかよ。大丈夫なのか? この人数で全力出すと一時的とは言え魔界の魔素濃度を超えるぞ?」


 その様子を見て流石にケータも不安になってきた。


——リレイア。魔界を越えるらしいけど杖はまだ持つのか? 随分、魔素溜まってるんじゃないか?

——大丈夫ですわ。魔界で数日過ごすつもりですの。こんなもんで魔素がいっぱいになって取り込まれないようでは、生きて帰れませんもの。

——はえー。凄いもんだな。わかった。このまま実験しよう。


「お願いします。全員全力で。これで魔界に行った時大丈夫か判断できますし」

「なめんなよ。死んでも知らねーからな。お前ら、やるぞ」

「おーー!」


 硬人族8人は全力でケータに魔素を吹きつけた。

 時間にして5分。

 全員が全力で魔素の放出をおこなった結果、最後の2分は魔界の魔素濃度の1.5倍までになっていた。


「うううう、魔素切れだあ。もう動けねえ」

「あー、大したもんだなあ。その棒っ切れがそんなに凄い魔道具だとは思わなかったぜ」


 硬人族の兵士達はへたりこんでいた。

 ケータは礼を言い、パメロを呼んだ。


「パメロ。門番と兵士さん達にお礼としてアレを上げたいんだがいいかなあ」

「ああ、構わないよ。この国でもドルターラを聞いてもらいたいからね」


 そう言ってパメロは、兵士と門番に一つずつ魔石を渡していった。


「なんだい? この魔石は。それにあんたはさっきパメロとか呼ばれていたけど」

「はい。それは『スラマーセルの瞳』にセットする魔石です。不肖私の演奏ですけど」

「演奏? パメロ、って…………あんた、パメロ・キュレータなのか?」

「ええ」


 パメロはニッコリ笑うと兵士達は目を大きく見開いて。


「おおおおおお、すげぇぇぇぇ。パメロの演奏魔石を本人から貰っちまったよぉぉぉ」


 ヘトヘトに疲れているはずの兵士が信じられないぐらい盛り上がる。

 マルキャルトがそれを見ていてしみじみという。


「パメロ殿、本当にどこにいっても有名人ですねー」

「ほんとだな。門番と兵士の皆さん。ご協力ありがとうございました」


 ケータは門番に(けしか)けるような態度を謝り、魔素の実験ができたことに礼を述べた。


「いや、良いってことよ! 俺たちもお前らをなめてたぜ。けど、その杖は本当にスゲーな。じゃあ、気をつけて行くんだぞ。魔界は何があるかわかんねぇからな」


 そう言って見送られてランシェル神主国をケータ達は後にした。


 ◇


 その日の夜、北に向かったケータ達は川のほとりを野営地にして食事をとり、一休みしていた。

 周りに人がいないのは確認済みでリレイアもクリスクロスも姿を現している。


 ケータはテントの用意。

 マルキャルトは川で魚を取り、パメロは火を焚いて食事の用意をしていた。


 そんな中、リレイアは空中に50インチ程度の大型ディスプレイを出して、この付近からずっと北の方までの地形を映し出していた。

 データはすべてナノマシンにより収集したもので、近隣諸国が持っている自国の地図より正確である。

 しかし、その地図もずっと北のあるところを境に全く状況が掴めなくなっている。


「おいらが見てきてやろーか?」

「クリスクロス。流石にあなたといえども無事にはすみませんわ。今いるパーティであそこに安全に入れるのは、グラムゼア様だけでしょう」


 流石に神様ともなると魔素がいくら濃くても、それで入れない場所などはない。

 だが。


「いや。私でも影響は受けるよ。神の力さえ制限されるのが魔素降る死の国(テル・デ・モールト)という場所なのさ」

「なるほど」


 リレイアはそれを聞いてしばらく考え込んでいたが、やがて筒状の不思議な装備と計測器をつけた大きめのボットを北に向けて放った。


「リレイア。何してるんだ?」

「ああ、ケータ。魔素降る死の国(テル・デ・モールト)の調査ですの。ザーフェスト・オーの痕跡はいくつかナノマシンで見つけはしたのですが、一足遅かったようですわ。


 その意味は明白だ。

 サリナがリレイアに詰め寄る。


「英雄オーは、すでに魔素降る死の国(テル・デ・モールト)に入ったと言うことですか?」

「おそらく」

「そんな…………」


 天を仰ぐサリナにリレイアは。


「ええ、ですからちょっと急がないといけませんね」


 それを聞いて、サリナは何とも言えない顔をしている。


「…………間に合うんですか?」

「ええ、彼の力は必要ですから間に合わせますわ」


 サリナの顔はそれを聞いても変わらない。

 いくら硬人族であっても魔素降る死の国(テル・デ・モールト)に入って無事に済むとは思っていない。

 遺体を回収するつもりなのだろうか? とさえ考えている。


「おそらく猶予は3日ぐらいですの」

「リレイアは彼が生きていると思っているんですね?」

「ええ、あの門のところで試した感じからすると硬人族は平均して魔界でも6時間ぐらいは生きていられるようですわ。彼らの中で優秀と言える戦士達なら、まる一日と言ったところでしょうか。でも英雄オーには何か秘密がありそうですの。何の装備もなく彼の地に赴くと言うのは自殺に近い行為ですわ」


 ケータはそれを黙って聞いていたが。


「リレイア。英雄オーがその装備のおかげで3日間は魔界に入られるとして、彼がそこにいく理由は?」

「さあ? はっきりとはわかりませんの。ある程度予想ならありますけど」

「わかった。後で教えてくれるんだろ?」

「ええ、そうなると思いますわ」


 ケータは敢えてそれが何かを問いたださなかった。

 リレイアがそれを話す気がないとわかったからだ。

 それは、話さない方が良いという判断でもある。


 マルキャルトとパメロはその話を聞いても口を挟もうとはしなかった。

 そんな様子を見てサリナは心中もやもやした気持ちはあったが、その日は何も言わなかった。


 ただ、リレイアが一人で結界を張って何やら作業をしていた。

 急ピッチで何かの用意をしているようであったが、誰も近づきはしなかった。

 クリスクロスだけは、やたらビビっていたようであるが。


 ◇


 皆が寝静まった頃、リレイアは空を見上げていた。


 この惑星ランゾルテの二つの月、フレーメとサルーテ。

 フレーメは青く、サルーテは緑色をしている。

 見かけの大きさはフレーメの方が大きいが、実際のところはわからない。

 月は地球と同じく自転の関係で、東から登り西へ沈む。


 不思議なのは、いつでもフレーメのすぐ西側にサルーテがいることだ。

 月同士の食を起こすこともない。

 普通に考えるなら、フレーメとサルーテの公転周期が同じであるとが考えられるが、何か違った力が働いているようにも思う。


 リレイアはいくつかの事に既に気づいていた。

 その力が制限され、ナノマシンとボットだけでは月まで届くロケットを作ることはできなかったが、やろうと思えばいくらでも手段があった。

 ただ、それを行うことはアルーダが許さない気がしていたので、行動を起こすことはしなかっただけだ。

 たどり着くべき結論を先延ばしにしていたのかもしれない。


 しかし、ケータ達といくつかの国を渡り歩き、その間にリレイアが持つ56世期の科学力とその分析力があれば、その結論を導き出すのは難しくなかった。


 それを確認するため、リレイアは『ルオークの杖』を月に向かって振った。

 『ルオークの杖』は魔素を吸い込むだけでなく、その魔素を排出することもできる。

 リレイアは魔素を強固な弾丸として、最大速度で空に向かって打ち出したのだ。


 やく、1時間後にリレイアは空にあるサルーテが揺らぐのを感知する。

 そして、その結論を呟いた。



 “実はサルーテという衛星は存在しない”



 この事実が確定した時、リレイアはケータに話すべきか迷っていた。

 だが、このことは量り知れない何かの始まりまたは終わりを引き起こすのではないか、という疑念があった。

 誰かが『そんなことは常識だよ』と言ってくれたらどんなに楽か。


 リレイアはしばし悩んだ挙句、まずはクリスクロスに聞いてみることにした。

 クリスクロスなら、リレイアが知ったことでまずいことになるのなら隠しておいてくれるだろうし、ケータに言うべきであるかどうかもわかるかも知れないと思った。


 その時、白い霧が立ち込め始めた。

 それが何を示すかは何度も経験しているのでわかる。

 神アルーダが現れるのだ。


 辺りが神の結界に包まれる。

 そして、浮かぶシルエットは二つ。


 アルーダとグラムゼアだ。


「リレイア。その話はちょっと待ってもらえないか」


 最初に口を開いたのはグラムゼア、アルーダは黙ったままだ。


「それはどういうことなのでしょうか?」

「ああ、サルーテの正体のことを気づいているのはリレイアだけだ。クリスクロスでさえ、多少の疑問を持っているもののまさか星そのものが存在しないことには気づいていない。まあ、あそこに何もないわけではないが」


 中空に浮かぶ月サルーテ。

 その正体は。


「隠蔽の虚像……ですわね? 正確には神の供給する魔素の制御を見せないための光のギミック」

「わかっていたか」


 そこまで言うとグラムゼアはアルーダの方を向き溜息を付く。


 このアルファニアで唯一魔法文明を持って生まれた星ランゾルテ。

 それは嘘だったのだ。

 魔素を星の周りに供給し続けていたのは神。


 しかし、放っておくと魔素は拡散して地表に降らず、宇宙に散ってしまう。

 また、魔素だまりが出来たりすると地上に落ちた時、大災害が起きたりしてしまう。

 それを制御するための何かを隠し続けているのがフレーメという虚像の月なのだ。


 アルーダは一度首を左右に振ると意を結したように言った。


「リレイア。この件につては他言無用としてもらえないか?」

「あっ、はい…………でも」

「でも?」

「いつまででしょうか?」

「「!!」」


 アルーダとグラムゼアは息を飲む。


「いつまでも隠し続けることはできないと思いますの。クリスクロスでさえ、何かあると気づいていますわ」

「そう……だな……これ以上、長く隠し事はできないようだ。フレーメはこのランゾルテという惑星の最大の秘密にして鍵だ。()いてはこのアルファニア世界を揺るがす最大の特異点とも言える」


 そこでリレイアは微笑む。


「フレーメは『神の作りし美しい幻』ですわね。それをケータ達が知った時、どうされますか?」

「それについては今は何も答えられんが……」


 アルーダは言い淀む。

 そこにグラムゼアが口を挟む。


「アルーダ様。もう、いいんじゃないですか?……リレイア、その答えまで辿り着いた以上、この世界の最大の魔法についての問題を君たちに解決してもらうことになると思う。そして、それが終わったら君たちはコモンに帰ってもらうことになる」

「それはコモンの主神ルルカ様も既に承知なさっていることなのでしょうか?」

「それは…………」


 今度は2人の神の両方が口ごもる。


「今、はっきりとしたことは言えないが、ケータには幸せな暮らしが続けられることを保証しよう」


 そして、しばらく何かを考えていたアルーダは、リレイアの問いには答えず、絞り出すようにそう言った。


「それは何の留保もなく、ですか?」

「手厳しいな……だが、約束しよう」

「わかりました」


 リレイアは納得して、その夜は終わる。翌日から大陸の西北部に向かう。


 ◇


 次の日の朝。


「おはようございます。これから魔素降る死の国(テル・デ・モールト)に向かいますわ」

「リレイア。準備はあるんだな」


 ケータはあの門番や兵士と実験した時に予想していたので驚かない。

 だが、サリナは。


「大丈夫なの? あの何とかという杖は一本しかないんでしょ? 私はまだあの杖だけで魔界の魔素が防ぎ切れると言うのがまだ信じられないんだけど」

「いえ、それは大丈夫ですわ。いくつか制限がありますけど」


 その話を聞いて、全員が腹を決めたようだ。

 この状況でこれだけの準備をしたのなら、もう行かないという選択肢は確かにない。

 それを見てとったリレイアは話を続ける。


「現状をお話ししますわ。まず、ランシェルを出た時に大陸西北部にナノマシンを飛ばしましたが、魔界に入った途端ほとんどが活動を停止してしまいましたの。ボットを使っても同じですわ。わずかに帰還したナノマシンを調べるとやはり魔素が濃すぎる領域では、正常に作動ができず有意のデータは得られませんでしたの」

「それじゃあ、どこに向かえばいいのかわからないんじゃないですか?」


 サリナがそう言い、マルキャルトがうなづく。


「ええ、それでこんなものを開発しましたの」


 リレイアは小型の『ルオークの杖』を搭載したボットを見せた。


「これで、魔界内である程度データが得られましたの。ザーフェスト・オー本人は見つけられなかったのですが、おそらくオーが居たであろう痕跡を見つけましたの」


 ボットが調査したデータの中に硬人属の足跡や刃物で殺された魔獣の死骸、焚き火の跡などが見つかったらしい。

 それが英雄オー以外の硬人属である可能性はないだろう。

 

「それで、私たちはどうやって魔界に入るんだい?」


 パメロが聞いた。

 それにリレイアが答える。


「昨日、『ルオークの杖』をコピーしましたの。ただし、コピーした杖はなぜかオリジナルより性能が落ちるようですの。実用に耐えるコピー版『ルオークの杖』は大体20数本。魔素が空っぽの状態の『ルオークの杖』を持った人間が大陸北西領域に入ると約10日で魔素の吸収ができなくなりますわ。そうなれば、生きては帰れません」


 すると、今度はケータが。


「それで、どれくらい魔界に留まるつもりなんだ」

「進めるのは徒歩で5日間の場所までですわ。6日目からは一目散で南下して大陸西北部に戻らなければなりませんの」

「20数本ならもう少し余裕がありそうだけど」

「魔獣と戦う時とオーの追跡用ボットにいくつか消費しますし、おそらくオーを発見した時に彼に渡さないと彼自身が持たない可能性がありますの」

「なるほど、それじゃあぐずぐずしてられないな。早速行こうか」


 全員に『ルオークの杖』を渡して、初期状態で魔素が空であることを確認した。

 そして、確かに魔素を吸い取る効果があることを確認してから、ケータ達は魔界と言われる領域、魔素降る死の国(テル・デ・モールト)に進んでいった。

 リレイアが『ルオークの杖』のコピーに成功しました。

 完全に同じと言うわけではないようですが……ともかく、これで魔界に入ることができます。


 次回、『75話 死の国で英雄を探せば』 12/23 投稿予定です。

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