73話 ランシェル神主国に着けば
タリオトルテ軍を打ち破り、とりあえずモグルークが安泰となったので、ケータ達は硬人族の国ランシェルに向かいます。
「よくやってくれた。其方達のお陰でほとんど何の被害もなく、タリオトルテの大軍を退けることができた」
「お役に立てて良かったです」
「今回の其方たちに礼がしたいのだが、何か望みのものはあるか?」
モグルークの宰相はケータ達を労った。
当然、褒賞を与えるべきなのだが、何を出せばいいかがわからない。
これが自国の兵士であるなら爵位であるとか領地などを与えることで報いるのだが、他国の人間に与えるとなると
難しい。
傭兵であればドライに金品で報いるのが普通だし、性格などに問題ないならば本人の希望で仕官するという手もあるだろう。
だが、冒険者であることを考えるといろいろと難しい。
特に今回は一兵士の勲功というわけではなく、全軍の指揮と運用に関する最大の功労者だ。
金で済ませるとしても一体どれほどの金額が妥当なのか見当もつかない。
国王や財務担当などとも相談し、できるだけの金子を用意したもののケータ達はそれを受け取ろうとはしなかった。
「しかし、このまま何も報いることができないと言うのも……」
宰相はそれならばと冒険者ギルドなどにもかけ合った。
冒険者の貢献ポイントを上げて報いようとしたのだ。
だが、それはギルド側から拒否されてしまう。
元よりケータ達がそれを望んでいないこともあるが、基本的に冒険者ギルドは超国家的な組織である。
従って、戦争の功績により冒険者としての地位を上げたりすることは御法度なのだ。
国からの傭兵の仕事をギルドから斡旋することはあるが、それは単なる仲介だけで戦績は冒険者としてのポイントにはならない。
また、最終的に名誉爵位を渡そうという話もあったが、マルキャルトはクルゼ王国の騎士であるから論外であるし、ケータはクルゼ王国でも陞爵を辞している。
自国でも固辞している爵位を他国で貰ったとなれば、いらぬ国際問題が発生してしまう。
本当はモグルーク王も同席するはずであったが、今回の戦闘では王自ら一大隊を指揮しており、心労から休養していた。
だが、宰相は国王から言付けを受けていて、何も報いることができないのでは困る。
それでは済まぬということなので、一つお願いをすることにした。
まず、モグルークとランシェルに友好条約と通商条約を結んでもらった。
このことに関してもタリオトルテは抗議してきたが、両国はそれを無視した。
流石に相互防衛条約を結ぶことはしなかった。
全面戦争となればモグルークに勝機はなかったからである。
そして、ランシェルと話をつけてもらった。
他国との干渉を嫌うランシェル神主国に入る許可が必要だったからである。
「ケータ殿。ランシェルに渡りをつける程度では、国を救っていただいたお礼には成りません。もう少し、ご希望されるものはありませんか?」
「いえ、本当にこれだけ良くしていただければ、僕らは十分ですので」
モグルーク王、宰相、その他王宮の外相内相など国の関係者がこぞって恩賞をケータ達に仕切りに与えようとしていた。
——リレイア、どうしようか。このモグルークが安全になったのなら、できるだけ早いうちにランシェルに行ってザーフェスト・オーについて聞いて回りたいんだけど。
——まあ、仕方がないですわ。人々は恐れていますの。再びタリオトルテが攻めてくるんじゃないか、と。私たちをこの国に留めておきたいのですわ。
その話を聞いてケータはなるほど、と思った。
かなり一方的な勝利を収めたのでタリオトルテもすぐには手を出せないと頭ではわかっているものの、大国タリオトルテに対する潜在的な脅威は、この国の人達の心の奥底にこびりついている。
それに把握している情報の量と質にも大きな差があるのだ。
ケータ達は、リレイアが継続して調べているのでタリオトルテの内情を掴んでいる。
今、タリオトルテは軍事力からしても、国内の機運からしてもモグルークとの戦争を継続する状態にはない。
逆に、モグルークに対する敗戦から嫌戦の空気がタリオトルテにあり、ランシェルとの戦闘でさえ散発的になっていた。
それを国民は知らないし、告知したとしても言葉通りに信用したりはできないのだろう。
第一、その情報をモグルークの人達に教えるわけにはいかない。
公表すればタリオトルテが内情を掴まれてることを知って新たな火種となるかも知れないし、『どうしてそんな情報を掴んでいるのだ?』と国内から突き上げられる危険もあるからである。
そこに念話でグラムゼアが話しかけてきた。
——ケータ、リレイア。少し急いだ方がいいと思う。もう一度、限られた人だけで貴賓室を借りられないか聞いてもらえるかい?
——グラムゼア様。そうですね。サリナを通じて宰相とモグルーク王に話を通してもらいます。
ケータは早速、サリナにその話をする。
「サリナ。僕たちはランシェルに急いだ方が良いようだ。また、貴賓室にこの国で最重要な数人だけを読んで話をする機会を作ってもらえないかな」
「はい。いいですけど……」
「ん?」
「実は私も連れて行って欲しいんです。ケータさん達がランシェルに行く時に」
——ケータ。サリナなら連れて行っても構いません。その後も同行してもらった方が好都合ですから。
——OK
「わかった。サリナ。君もランシェルに同行してくれ」
「ありがとうございます。宰相に言って貴賓室に最小限の人数で会議ができるようにお願いしてきます」
話は宰相に伝わり、貴賓室に一同が集まった。
モグルーク側はサリナ、宰相、モグルーク王と近衛が二名、それに今回はどうしてもというので参謀の中から一人だけ代表者が加わっている。
リレイア達を知るものはなるべく少なくしたいので、この二人の近衛は前回と同じ者に来てもらった。
ケータ達はケータ、マルキャルト、パメロ。
まず、ケータが参謀に声をかける。
「モグルーク王に人数の制限をかけてもらった理由を今、お見せしますが、このことは口外することがないようにお願いします」
「それでは他の者達に説明できないではないか!」
ケータはそれには答えない。
するとモグルーク王が。
「控えよ。国難を救ってくれたケータ殿に従え」
「しかし……」
参謀はすがるように宰相を見る。
だが宰相はゆっくり首を横に振る。
「……わかりました」
その一言にケータをうなづいた。
ケータは部屋に盗聴防止、魔法探査阻害などの魔法を展開した。
部屋に三つのもやが現れ、だんだん人型に形作っていく。
やがて二人の妖精リレイア、クリスクロスと一人の神グラムゼアも姿を現した。
「これは……」
ケータは現れた3人の正体を明かすと参謀は改めてこの部屋で見たことを明かさないと約束した。
そして会議は進み、ケータ達は今後の予定を打ち明けた。
この国を去り、ランシェルに行く。
案の定、モグルーク側からは引き止めがあった。
特に参謀は強く国内に留まって欲しいと懇願した。
ケータ達には、それがタリオトルテに対しての防波堤になってもらうためだとわかったので少なからず不快に思っていたが、顔には出さなかった。
そうとわかれば、この国が安全であることを保証してやればいい。
リレイアは参謀に対する答えを用意していた。
「今後しばらくタリオトルテから攻めて来ることはありませんわ」
「なんでそんなことがわかる」
参謀はその言葉が国を出るための嘘だろうと思っているのが、ありありとわかる。
その態度に宰相は眉を顰めるが、リレイアは気にしてもいないように話を続ける。
「実はタリオトルテの内情を探っておりましたの。今、あの国はランシェルに負け、そしてモグルークに大敗しましたわ。しかもあの戦闘で戦死した軍の総大将はタリオトルテ北部の伯爵でした。かなりのワンマンで、跡目争いが激しく今はモグルークの国境に近くで兵をあげようという貴族はおりませんの」
「本当か!?」
「ええ、これをご覧ください」
リレイアはレポート書類を出現させて、全員に配った。
内容はモグルーク城の戦いの後のタリオトルテの内情だ。
「今、どこからこれを出した? …………ん? んん! これは!!」
参謀がそのレポートを見て唸ったのも宜なるかな。
モグルーク軍とてその後のタリオトルテの内情については探り続けている。
だが、このレポートは軍が苦労して得た情報よりもはるかに詳しく、またどうしても知り得なかったタリオトルテの内情について記載されていた。
「…………我が軍とて調査には力が入れている。この書類の数字が正しいことはわかる。しかも、それ以上にこんな詳細に……」
モグルーク王が参謀に告げた。
「これでケータ達がこの国を離れる口実として安全を謳っているわけではないとわかったであろう」
「はい。ですが、どうやって説明したものか……」
下を向く参謀にケータが声をかける。
「このレポートを見せてもダメでしょうか?」
「いいのか? この部屋で見聞きしたものは一切他言無用なのではないのか?」
「いいよな? リレイア」
「はい。構いませんわ。情報の出どころは宰相様が密かに調査されていた部隊によるもので、私たちがそれに協力したとでも言っていただければかなり誤魔化せるか、と」
参謀はうなづいた。
他の参謀は、ケータ達が大変有能だとは思っていても、3人きりの冒険者だと知っている。
少人数の冒険者だけではこれだけの調査内容を揃えられると考える方が不自然なので、宰相が秘密裡に調査させている部隊がいたと言う方が納得させやすい。
しかも、国のトップが陰で行わせていたということであれば、その情報の出所を知りたいと思うものを封殺することができる。
参謀を納得させることができれば、反対するものはいない。
会議はその後順調に進み、ケータ達がこの国を出るのは二日後と決まった。
◇
翌日の朝、ケータ達がラウンジにいるときにサリナが訪ねてきた。
「おはよう、サリナ。いいところにきた。できればランシェルについて教えて欲しいんだけど」
「おはよう、ケータ。OKよ。ランシェルについて知っている限りについては説明するわ。でも、できればみんなに聞いてもらった方が良いかも」
「わかった」
それからケータは、マルキャルトとパメロも呼んで朝食を食べながら話すことにした。
配膳が済んで机に朝食が揃い、給餌が戻っていったのを確認してからサリナの話は始まった。
リレイアが結界で内容を漏らさないようにしているのはいつものことである。
内容は念話で話すこともサリナに伝えてある。
——ランシェルという国を知る前にまず硬人族という種族を知らないと始まりません。
——サリナ。それについて僕らも先に知りたいと思ってたんだ。身体的特徴もあるんだろう?
するとサリナはああ、そうか、という風に。
——そういえば、ケータ達は硬人族に会ったことないんですよね。
——ああ。
——ちょっと待っていて下さい。
サリナは部屋を出て行き、ペンと大きな紙を持って帰ってきた。
リレイアが苦笑しながら周りに見えないように視覚阻害を追加する。
大きな紙にやたらに肩がいかつい男の絵を描いていく。
色も塗っていくが人の肌とは思えない青と灰色の間の色だ。
——大体、こんな容貌なので見た目はちょっと怖いですが、性格的には柔和です。
——この絵からするとすごい大男のように見えますね。
マルキャルトがそういうと一同がうん、とうなづく。
——いえ、平均して少し大きいですがそれほどでもありません。何より丈夫ですけど。
それはそうだろう。
100倍以上のタリオトルテ軍と戦って蹴散らすのだ。
——性格的には? さっき柔和だとは聞いたけど。
——女性は本当に優しいし話していても普通です。男性も乱暴な人はほとんどいないけど、口が重い人が多いです。
ケータはうまく話が聞き出せるかが気になる、と言うと。
——それは本当に場合によるとしか言えません。とにかく意志が強いので。悪く言えば頑なです。特にタリオトルテに対しては老若男女を問わず「絶対に許さない」という態度を貫いており、逆にこの意志の強さが硬人族の本性ですね。
——なるほど。大体わかった。あとは、その英雄の話が聞きたいのだが。
——それなんですが……それどころじゃなく……
その話になると何か苛立っているように見える。
リレイアはサリナに声を掛けた。
——サリナ。もしかして、そのことについて早く行くべきだと思っていませんか? ザーフェスト・オーに会うことを最優先するべきと。
——できれば……でも、それは難しいと思います……
実はサリナはホン・ワリャンに向かう前に、ランシェルに書簡を送りザーフェスト・オーに面会を申し込んだことがあったのだが断られた。
その後、自分でランシェル神主国へ出向き、直談判に及ぼうともしたものの門前払いを食らいそのまま帰ってきたのだ。
だが、そのことを知ってか知らずかリレイアは言う。
——でも行くしかないでしょう?
サリナは、仕方なくうなづいた。
ケータ達はその日は早く休み、翌日この国を立つことにした。
◇
モグルークの城を後にして、西に向かう。
一度、ランシェルに立ち寄ることにしたのだ。
最終的に目指すのは、大陸の西北部の魔素の濃いエリアかも知れないが、そこは人間はおろか硬人族でも生きては帰れないところ。
サリナも、もし英雄オーでさえ、彼の地に行ったのであれば、もう生きてはいないと思っている。
モグルークとランシェルの間には中立の国が一つあるが、ケータ達は迂回して北から回り込む。
中立と言えば聞こえがいいが、実質タリオトルテの犬である。
ランシェル神主国に到着した。
今回、門前払いを食らったサリナ単独の訪問とは異なるところが紹介状の持参である。
ランシェル国王シャルースの紹介状があれば、あまり他国の者が入るのを良しとしないこの国も入国を阻むことはない。
あっさり入国が許され、ケータ達はランシェルの門をくぐったが門の兵士がついてきた。
自由行動は許されないらしい。
街並みは他の国とそれほど変わらない。
平均身長が高いためか、その作りが若干大きめであるくらいか。
町に溢れる人はいずれも肌が青く、肩が独特の厳つい感じでちょっと怖い。
基本的に外国とあまり関わりを持たないこの国では、店などに立ち寄ることもなく兵士の先導により小さな領事館に案内される。
領事館では来賓室に通された。
硬人族が一人入ってきてケータ達に自己紹介をした。
対外的な対応をする専門の役人なのだそうだ。
町であった人に比べれば、見た目は柔らかい感じだ。
「ようこそ、いらっしゃいました。ですが、この国はあまり他国の方々からすると面白味がないかも知れません。それに、憎っくきタリオトルテとの戦乱は収まることはないですしな。して、こちらにきた御用向きはなんでしょうか?」
丁寧ではあるが、あまり友好的ではない挨拶を返される。
だが、ケータはサリナからこの国の人々の基本的性格を知っている。
それに、ホン・ワリャンで本当に敵対したり疑ったりしている人がどういう行動を取るかはわかっているのだ。
まずは、入国を受け入れてくれたことに礼を言い和やかに話が進むかに見えた。
だが、ザーフェスト・オーの消息を尋ねた途端、態度を硬化させる。
「その者について他国の方にお話することはありません。他に用事がないのでしたら、この地を離れた方が良いと思いますよ」
それにはサリナが食い下がる。
「しかし、英雄ザーフェスト・オーはどの国のどんな人種に対しても公平な人だと聞いています。その彼の消息が知りたいのです。先だって我が国モグルークにもタリオトルテが戦争を仕掛けてきました。今、この状況でお互いに手を取るべきではないでしょうか? そのためには彼の力が必要です」
「あなたは?」
「私はモグルーク王国から来たサリナ・グリーンウェルです」
「ああ、あなたが。モグルークからの親書であなたをこの国の賓客として迎えるべき方であることはわかっていますが、この件に関してはお話しできませんし、わかっていることも少ないのです」
するとパメロが前に出る。
「それでは、一つだけ教えて頂けませんか?」
「あなたは?」
「パメロ・キュレータ。ドルターラ弾きです。訳あってケータ達と一緒に旅をしています」
「これは高名なパメロ様でしたか。あなたの弾くドルターラは我が国でも聴きたいと思っている者も多いでしょう。ですが、今は戦乱の最中。また平和な時代が訪れましたら、ぜひお招きしたいですが今はなんとも……それで、聞きたいこととは?」
「ザーフェスト・オーは現在この国におりますでしょうか」
「…………仕方ない。それだけはお答えしましょう。今、彼はこの国におりません」
「いつこの国を出たのか、どこに向かったのかは分かりますか?」
「国を出たのは数日前です。どこに向かったかは分かりかねます」
「ありがとうございます」
ケータ達は礼を言い領事館を辞した。
するとリレイアが話かけてきた。
——ケータ。このまま国を出ましょう。真っ直ぐ城門の方向に向かって下さい。ただし、ゆっくりと。
ケータは、ん? と思ったが、とりあえず言う通りにした。
すると、城門の前に硬人族の中でも一際デカい男が、これまた巨大な斧を背負って立っている。
「よう。あんた方。オーの奴を探してるんだろ?」
「あなたは?」
「俺のことはどうだっていい……が、あんたはちょっと面白そうだ。周りに何か不思議な空気が漂っているしな」
リレイアやクリスクロスのことを気付いたのだろうか?
マルキャルトは油断ならない相手だと思い身構える。
「あー、悪リィ悪い。俺の名前はアークス・レイドウェイ。ザーフェスト・オーが出かけちまってから、タリオトルテの連中をぶち倒す先頭にいる者だ。嬢ちゃんはなかなかやるみたいだな」
「私はマルキャルト・ルーエン。クルゼ王国の騎士です。それで、私たちに何か話があるのですか?」
「ああ、あんたらオーのヤツを探してるんだろう? だったら一目散に北に向かうんだな。奴はそこにいる。但し、魔素降る死の国に入る前に捕まえるこった。そうしないとお前らも奴も死ぬ。確実にな」
「それはどういう……」
そこまでマルキャルトが言ったところで、リレイアが念話で割り込んできた。
——マルキャルト。それだけで十分です。礼を言ってこのままランシェルを出ましょう。
すると、それに呼応するようにアークスが。
「そうそう。そのちっちゃい嬢ちゃんの言う通り」
「見えるのですか?」
「あっ、バカ! マルキャルト!」
「……すいません」
ケータが身構える。
姿を消しているリレイアのことを認識できる人間がいるなど只事ではない。
だが、ケータ達の緊張とは裏腹にアークスは動じた様子はない。
「あー、別に何かするつもりも誰かにあんた達のことを言うつもりもない。それにそのちっちゃい嬢ちゃん達のことがちゃんと見えてるわけじゃねーんだ。ただ、スゲー力を持ったこわ〜い嬢ちゃんだってことはわかる。それだけだ」
「はあ」
ケータ達は体から力を抜いた。
この硬人族には朧げながらリレイアとクリスクロスの存在がわかるらしい。
視覚に頼ることなく、大きな力を持つものを認識できる力だそうだ。
隠れているはずの二人を見られて動揺していることをおくびにも出さず、パメロが礼を言う。
「貴重なお話をありがとうございます。すぐに英雄オーの後を追います」
するとアークスが急に真面目な顔になった。
「俺にはわかる。あんた達には大きな加護がついているらしい。頼む。多分、奴を連れ戻することができるのはあんた達しかいない。オーの奴を助けてやってくれ」
「わかりました」
ケータ達はアークスと別れ、ランシェル神主国の城門についた。
後はこの国から北に向かいザーフェスト・オーを追うだけだと思ったのだが、意外にも門番が声をかけてきた。
「あんたら、ザーフェスト・オーを追うつもりか?」
「ええ」
「やめとけ、死にに行くようなもんだぞ」
親切で言ってくれているらしい。
ぶっきらぼうだが、お節介だが見てられない、というような気持ちがこもっているように感じる。
するとリレイアが。
——ケータ。これはちょっと話が聞けるかも知れません。ちょっとした実験もしたいので。
——実験?
——ええ。門番の彼に魔素降る死の国は怖くないと言ってみてください。
ケータはリレイアの言う通りにした。
「大丈夫ですよ。魔素降る死の国は怖くないですから」
すると門番は気色ばんで言う。
「バカなことを言うな! あの魔界はまさに死地なんだ。我々硬人族でさえ一日と生きて居られない。普通の人間ならばものの5分も持たないだろう。魔獣も強いが、それよりずっと大きな問題は尋常じゃない魔素の濃さなんだ。とにかく入るだけで死に至る国。それが魔素降る死の国だ」
——ケータ。チャンスですの。外套の内ポケットから杖を出すポーズをとって下さいませ。それに合わせて私が『ルオークの杖』を渡します。これは、魔界でも人を守れるほどの魔素吸収力があります。
——わかった。
ケータは外套からリレイアが渡してくれた『ルオークの杖』を出しながら言った。
「大丈夫ですよ。この杖がありますから」
「バカを言うな! そんな棒切れがなんの役に立つ」
「これ、いくらでも魔素が吸えますから。何なら僕に向かって魔素を吹き付けてみますか?」
城門の門番はむざむざ死にに行く者達を止めたい。
この言うことを聞かない脆弱な人間に魔界の怖さを教えこむつもりだ。
「わかった。魔素の恐ろしさを味わわせてやる。なーに、殺しはしないさ。傷も綺麗に治してやる。これに懲りたら死の国に近づいたりせずとっとと自分に国に帰るんだな」
魔界、死の国などと呼ばれる大陸西北部に向かおうとするケータ達。
むざむざ死にに行くようなものだ、と門番に止められました。
しかし、その門番を煽るリレイア。
次回、『74話 死の国に向かえば』 12/20 投稿予定です。




