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70話 大陸西部モグルーク王国に向かうならば

 モグルークへ向かうケータ達。

 だが、その前の晩にリレイアは空を見上げる。

「月が綺麗ですね」


 また、だ。

 リレイアがサルーテを見上げて、そう言うのはこれで2回目。

 しかもそれまでの会話や話題とは関係なく。


 他の者たちは『なんだ?』という風に見ているが、神グラムゼアだけが複雑な表情をしている。


「今は月の話など関係ないだろう? まずは大陸西部に向かうことを話し合うべきじゃないのか?」

「こうやって月を見て思いを馳せることもありますの。こう言った時間も必要ですわ」

「時間の無駄だろう。信仰の対象としている者もいるが、リレイアはそういうことを信じていないだろう? 見ているだけで手の届かない空の星の一つにすぎない」

「そうでしょうか? グラムゼア様。あの月まで私たちは昇ることはできませんが、力の一部を届けることはできると思いますの」

「そうかも知れないが……まずは西の国の話が肝心だ。サリナから聞きたいことがあるんだろう?」


 変だ。


 急に月の話をし始めたリレイアも。

 その話を執拗に逸らそうとしている神グラムゼアも。


「まあ、いいですわ。サリナさん。ザーフェスト・オーについて教えて頂けませんか?」


 その様子を見てリレイアはあっさり折れて、ザーフェスト・オーの話に戻した。


「それじゃあ、サリナ。ザーフェスト・オーについて教えて下さい」

「……わかりました。英雄オーについてお話しします」


 それからサリナはケータ達にザーフェスト・オーについて話し始めた。

 『硬人族の国ランシェル』について話し始め、その『ランシェル神主国の英雄』と言われる戦士ザーフェスト・オーについて詳しく語っていった。


 オーはタリオトルテとの紛争で全て勝利してきた伝説の男であり、彼は個人としても強いが統率力が凄く、彼の元で戦った者達は必ずいつも以上の力を発揮した。

 特に犠牲者を出さないという点が脅威的で、タリオトルテが数万の戦死者を出したのに対し、ランシェルでは怪我人が数人のみという考えられない戦闘もあったと言う。

 だが、そんな頼りになる男が今、不在であるらしい。


「そのザーフェスト・オーがいないと言うのは?」

「ある日、英雄オーは『全ての元凶は大陸西北部の魔界にある』と言い出して、後のことを部下に任せ魔界へと旅立ったそうです。ランシェルだけでなく周辺の国々でもそのことで混乱していて、オー亡き世界はどうなるのか、と」


 パメロが顔を(しか)めてサリナに問う。


「そのザーフェスト・オーは何のために魔界に行ったんですか? 自殺するためではないのでしょう? 帰ってくるのでは?」

「英雄オーが何のために行ったのかはわかりません。しかし、帰ってくることはないでしょう。大陸西北部の魔界は死の世界です。いくら超人的な彼の力があったとしても生きて帰れるとは思いません」


 その話を聞いていたリレイアは。


「その英雄オーが何か気にしていたことはありませんか?」

「そういえば……旅立つ前にしきりに空を見上げていたとか……あっ、もしかして月! リレイア! 何か知ってるんですか!?」


 するとグラムゼアは一瞬、眉を寄せたがまた無表情に戻った。

 リレイアはそれに気づかないフリをして話を続ける。


「知っているわけではありませんの。ただ、ちょっと仮説を立てている事案があって、彼の行動がそれに該当するような気がするのですわ」

「?」

「ケータ。これ以上はこの地で情報を集めているだけでは、何も解決できませんわ。大陸西部に向かいませんか? サリナ、あなたは戻ることになりますけれど……」


 サリナは顔を伏せる。

 山で行き倒れ、援軍を連れて帰ることもできず、戻っても希望がない。


「そうだな。まずはタリオトルテに対抗する手段を考えよう。いきなり全力ではこないだろうから策はあるよ」


 ケータはサリナにそう言ってから、今度はマルキャルトを見る。


「あっ、ああ。北の陣の方法を使うんですね。それなら戦力差をかなり縮められます!」


 しかし、サリナは首を振る。


「モグルーク王国にはタリオトルテと戦うだけの力はありません。対抗できるのはランシェル神主国だけです」

「援軍を送ることはできないんですか?」

「彼らと肩を並べて戦うのは無理です。普通の軍と硬人族の戦いはあまりにも異質で」

「もし、タリオトルテ軍がモグルークに攻め込んできた時に、ランシェルは助けてくれるんですか?」

「それは……期待できません。ですが、これまではまずランシェルとのみ戦争をしていたのです」

「でも、モグルークにも兵を上げる兆候があったから、サリナさんは大陸東部まで来たのでしょう?」

「はい……」


 下を向くサリナにリレイアは。


「それを解決するために私たちは向かっているのですわ。おそらく何とかできるのではないか、と」

「そう……ですね。わかりました」

「では、まずタリオトルテの武装について聞きたいのですが」

「はい。タリオトルテ軍の戦力はある意味オーソドックスですが、全てのものが揃っています。騎馬隊、弓部隊、魔法隊、大砲や攻城兵器といった大型武器。それを大量に投入することができます。基本は物量攻めになります。武器自体もモグルーク正規軍より優れていて、規模も戦力も武装もとても敵いません」


 悲観的な話の内容ではあったが、その説明にケータはホッとする。

 その理由は、あまり技術力は高くないこと。

 魔法は使っても魔獣を使って攻めるようなことはないこと。

 

 悪辣なやり方をしなくても力押しで勝ってきた国なので、付け入る隙はあると踏んだのだ。

 やりようはある。


「リレイア。技術としてはそれほど高度と言うわけじゃなさそうだな」

「はい。ですが、新金属がありますの」

「あー、そうだった……それがあるのか」


 するとサリナが。


「新金属……ですか?」

「はい。魔法に対する耐性が強く、またその金属に魔力を注ぐことにより物理特性も高くなるというものですの」

「それは、大陸東部の小国で作られているという羅鉄鋼のことなのでしょうか?」


 そう言われてマルキャルトがムッとする。

 サリナは羅鉄鋼のことを知っているが、その生産国であるクルゼ王国を小国と認識していたからだ。

 そこにクリスクロスが火に油を注ぐ。


「言われてんぞ。マルキャルト」

「我が国は小国ではありません!」

「もっ、申し訳ありません!!」

「あっ、いえ……取り乱しました……」


 平身低頭するサリナ。

 マルキャルトも言いすぎたと思い、気まずそうにしている。


 するとケータが取りなす。


「いや、大丈夫です。確かにクルゼ王国は大国ではありませんし、ね」

「いえ、本当に無神経なことを言いました」

「お気になさらず。それよりもタリオトルテの金属のことですけど、確かに羅鉄鋼に似ていますが、それまでの鉄鋼より強力ではあるものの羅鉄鋼よりはかなり劣るようです。なので、大丈夫ですよ」


 しかし、リレイアが話を戻す。


「いえ、ランシェルにとっては脅威ですわ。気になって過去の記録を見たところ、硬人族も羅鉄鋼の武器には手を焼いたという文献がありましたの。劣るとはいえ、大量に持ち込まれればパワーバランスは崩れかねませんの」

「ええっ! そんなことになったら! ランシェルが負けるようなことがあれば、モグルークなどひとたまりもありません。羅鉄鋼はそれに勝るそうですが、モグルーク軍にはほとんど羅鉄鋼が入ってきていません」


 サリナは不安そうにしているが、ケータはあっさりと言った。


「ええ、ですから持ってきました」

「持ってきたってどこに? それに軍全体の底上げをするためだとすると相当な数が必要です」


 確かにサリナの言う通り、徒歩で進んでいるケータ達が持っている羅鉄鋼の量はたかが知れるだろう。


 だが。


「リレイア。ザギメデでどれくらい預かって来たんだっけ?」

「えーと、剣なら2万本。盾なら8,000枚分ぐらいの鋼がありますわ。ただ、そんなもったいない使い方しませんもの。今使っている武具の補強材として使うだけでかなりの効果がありますの」


 サリナは信じられないという顔でケータ達を見た。

 だが、それまでのことを思い出した。


 この人たちは、険しい山を平気で登ってきたのだ。

 それに信じられないことに神様まで同行している。

 一見、手ぶらではあるが、大量の資材を思いもよらぬ方法で運んでいると言うことがあるかも知れない。


 やがて決心したように。


「わかりました。私と一緒にモグルークに来て下さい。タリオトルテを止める方法を教えて下さい」


 それからケータ達はダーバンシャイ山脈を越え、サリナのいた小国モグルーク王国に向かった。

 その行程は約2週間。サリナが行きに要した時間の半分であった。


「凄い装備ですね。あの山道を踏破するのがこんなに楽になるとは思いませんでした。初めてのはずなのにルート選択も的確で。それに強い! 途中で出た魔物や大型獣をほとんどひと突きで仕留めていますし、解体も早い」

「ああ、それは冒険者として経験を少々積みましたので」


 びっくりしているサリナにケータはそう答えたが、もちろん単なる冒険者にこんなことはできない。

 リレイアはナノマシンとボットをフル活用して山の地形を絶えず調査していたし、天候に関してはちょっとズルだが神グラムゼアの力まで借りた。

 サリナに貸し出した靴の滑り留め補助具や薄くて暖かい行動用アウターは、この世界のものではなく日本の未来技術が詰まっていた。


 そして、モグルークの王都に近づいた時にリレイアとクリスクロス、そして神グラムゼアは姿を消した。


「サリナ。リレイアとクリスクロスのことは内密にお願いしたい」

「わかりました。グラムゼア様のこともですね。しかし……いえ、なんでもありません」


 サリナは聞きたいことがたくさんあった。

 3人の冒険者だけでタリオトルテを退けられるつもりでいるらしいが、具体的な話は聞いていない。

 これから、モグルーク王都に戻るわけだが、彼らのことをどう説明したらいいのか困っていた。


 だが、やがて王城が近づにつれて街が極度の緊張に包まれていることをひしひしと感じ、とにかく国に戻り話を進めようと腹を決めた。


 城塞都市モグルークに到着した。

 城壁の上には見張りが数多くおり、城門の兵士は人の出入りを厳しくチェックしていた。

 その一人がこちらに近づいてくる。


「サリナ殿。戻られたのですか。それで援軍は?」

「それが、残念ながら……」

「そうですか……それでそちらは?」

「私が行き倒れた時に助けて頂いたのです。手練れの冒険者の方々です。タリオトルテに対抗するための有力な手段をお持ちです」

「本当ですか! 王宮に使いを出します!」


 それから、すぐに王宮から兵士が数人現れケータ達は貴賓室で待たされることになった。

 使いがきて向かった先の部屋にはモグルーク王がいたが、その場所は謁見の間ではなく、軍務管理室であった。

 作戦参謀室兼会議室のような感じになっており、多くの者が出入りしている。


「おお、戻ったか! サリナ。してその者たちは?」

「ホン・ワリャンの山中で遭難しているところを助けて頂いたのです」

「ああ……そうなのか……苦労をかけたな」


 モグルーク王は、援軍を連れ帰ることができなかったことを察して気を落としているようだった。

 しかし、気を取り直して言葉を紡ぐ。


「私はこの小さな国を治めているシャルース・モグルークだ。サリナを助けて頂き礼を言う。はるばるこられたのに、このような場所に来て頂いてすまぬ。ケータ殿……だったか。紹介してもらえるか」


 門番からケータの名前だけは伝わっているようだ。


「僕はケータ・リーフォンです。こちらがマルキャルト・ルーエン、クルゼ王国の騎士です。そしてパメロ・キュレータ。ドルターラの演奏者ですが、魔法師でもあります」

「随分変わった取り合わせだが……」

「はい。縁あってこの3人で冒険者パーティを組んでいます」


 そこに、一人の男が飛び込んできた。


「伝令、伝令。前線の斥候部隊からタリオトルテ軍蜂起。モグルークに向かって進軍中とのこと」

「なんだと! 数は?」

「およそ2,000」

「微妙な数だな。編成は? 歩兵が多く騎兵はわずかです。一部馬車が見受けられるということです」

「それは補給物資としての編成か?」

「いえ、装飾が施されているため貴族のものか、と」


 どうもタリオトルテの一部の貴族が独自に兵を挙げたらしい。

 だが、それだけではわからない。

 2,000という戦力は決して多いとは言えないが、モグルーク軍は総勢でも 8,000余り。

 進軍に合わせて陣容を揃えることはできるが、敵の強さがわからない以上編成が難しい。


——ケータ。私たちでどうにかしましょうか?


 そこでリレイアが念話で話してきた。


——いきなり首を突っ込むのか? そうする理由は?

——三つあります。まず、戦力把握ですの。タリオトルテ軍の力。それと新金属を使ってくるならその力の把握。


 その念話はクリスクロスも聞いている。


——もう一つは、このモグルークが弱いからだろ? このままじゃあ、勝つかも知れねーけど被害もデカいんじゃねーか?

——その通りですわ。この後に大きな戦いが避けられない以上、ここでモグルーク軍を消耗させるわけには行きませんの。

——やっぱりな。でも、あと一つはなんだ?


 それに答えたのは、神グラムゼア。


——クリスクロス。それは多分信頼だよ。このモグルークの人たちに信用してもらおうと考えているのさ。

——ああ、そうか。


 すると今度はリレイアに向かって話す。


——リレイア。信頼を得るためなら、上層部には知らせてもいいんじゃないか? 我々のことを。

——グラムゼア様。よろしいのですか? 神と妖精について知る人が増えることになりますが。

——ああ、構わない。じゃあ、ケータ。モグルーク王とサリナに話を持ちかけてくれ。

——わかりました。でも、その前に今、攻めてきているタリオトルテ軍をどうにかしないといけないんじゃあ……


 するとまたしてもこの部屋に伝令が飛び込んでくる。


「伝令、伝令。南の河川で鉄砲水が発生!」

「被害状況は!」

「今のところ人的被害はありません。近隣の村はすでにタリオトルテ軍に備えて避難していたものと思われます。民家の倒壊が数件程度です。それとタリオトルテ軍の一部が巻き込まれたようで、騎馬隊以外の進軍が遅れています」


——リレイア。何かした?

——ええ、近隣に川があったので敵軍が近づいた時に少し干渉しました。でも大きな損害を与えたわけじゃありませんわ。一応重武装を含む部隊を中心に遅滞させていて先行する騎馬隊との分離を図っただけですの。


 マルキャルトは念話には念話で秘密裡に答えよう思っていたが、これを好機と見てモグルークの参謀に聞こえるように声に出して言った。


「ケータ。打って出ませんか?」

「うーん」


 ケータはどうしたものか、と考えている。

 タリオトルテ軍にどうやって対抗するか? というのが問題だ。


 だがリレイアは。


——ケータ。マルキャルトの案に乗りましょう。200名ほど騎兵を借りて下さいませ。羅鉄鋼の鍔と盾の補強具を渡しますの。

——なるほど、敵の気勢を削ぐのと新金属と羅鉄鋼の力比べだな。

——はい。


「そうだな。モグルーク王。騎兵を200お借りできませんか? 考えがあります」

「たった200で何ができる?」


 参謀の一人が噛み付いてきた。


「控えよ! ゼルアーノ」

「しかし、陛下。たった200で何ができますか? 貴重な騎兵を失うわけには行きません!」


 王は参謀ゼルアーノを叱りつけようとしたが思い直し、ケータの方を向く。


「わかった……ケータ殿。何をしようとしているか教えてもらえるか?」

「剣と盾の強化をします。弓兵が遅れている今なら敵を一度は引かせることができます」

「しかし……」


 王は迷っている。

 宰相は反対、この部屋の作戦参謀たちは賛成反対が半々、前線の兵士たちは援軍が欲しいようだ。

 そこにサリナが言った。


「モグルーク王。ケータ達に懸けてみませんか? いずれにしてもここまで攻めいらせることはできませんし、かといって即座に動ける兵200というのは妥当なところです」

「サリナ。其方が言うなら……わかった。やってみよう。参謀、騎兵の用意を。200名でいい。それと何か集める兵について注文はあるか?」


 話を振られたサリナはケータを見る。

 ケータは集める兵士に注文を付けた。


「できれば魔法の使えるものを。ファイアー、ウォーターなど初級魔法が使える程度で構いません。剣と盾に魔力を込めるだけですから」

「それならほぼ全員が使える。使えないのは3名だけだ」

「わかりました。全員の剣の鍔をこの羅鉄鋼の物に替えて下さい。それと盾の持ち手と本体の間にこの補助具を取り付けて下さい。魔法の使えない3名分については小さな魔石を付けておきます」

「羅鉄鋼ですと……そんな貴重なものを……」

「はい。本当は全ての武器に追加したいのですが、今は間に合いませんので」

「いや、大変な強化だ。剣と盾だけでもありがたい」


 それからケータは羅鉄鋼の鍔を付けた剣の使用法を簡単に説明した。

 剣に魔力を流すこと。

 流す量は少しで良いが、戦闘が終わるまで継続すること。

 盾については何もしなくて良い。相手が打ち込んだ時に勝手に弾いてくれる。


 これについて検討が行われ、剣には敵が50m以内に近づいた場合に魔力を流し始めることにした。


 ◇


 モグルーク軍が出撃した。

 先頭はケータ、マルキャルトと魔力の強い何人かのモグルーク兵が勤めた。


 騎馬が走り、敵に迫る。

 タリオトルテ軍が気づいた。

 先頭の何人かが剣を撃ち合わせる。

 

「奴らの剣は、今までの物とは違うぞ……うぬぬ」

「ふん、腰抜けのモグルークなど……ガァァア」


 予想と異なるモグルークの武装に面食らうタリオトルテの兵士。

 少ないながらも重武装部隊もいたのだが、リレイアの川に対する干渉でほとんどものの役には立たない。


「くそっ、鉄砲水で体勢が崩れていなければ……うわぁぁぁ」


 不意をつかれたもの。

 モグルーク軍を侮ったもの。

 いずれもバターのように易々と切割かれていく。


 もし重武装部隊がいたならば、ひとたまりもなかっただろう。

 だが、羅鉄鋼の力を得たモグルーク軍は身軽な上に剣の切れ味が違う。


「こいつら、強いぞ」

「撤退だ! 撤退!!」


 先頭の10数騎が討ち取られたところでタリオトルテ軍は総崩れになった。

 モグルーク兵には深追いをしないように指示したが、ケータとマルキャルトの二名だけは追撃を開始した。


「ケータ殿。あれでは?」

「ああ、あれがタリオトルテの新金属だな。ひと当てして強度を調べよう」


 ケータは隊長格タリオトルテ兵に斬りかかった。

 その兵士の持つ刀身の色が少し深い。


 キン


 普通の数打ちの刀であれば折られていたはずだが、その刀は跳ね返した。

 なるほど新金属は従来の剣よりは硬度があるようだ。

 だが、羅鉄鋼には劣り、刀身にダメージが残っているらしい。


 そこに今度はマルキャルトが斬り込む。


 ズザァァァァ


 兵士は剣ごとの真っ二つに斬り裂かれた。


「やはり、羅鉄鋼より遥かに脆いですね」

「ああ、これが確認できれば長居は無用だ」


 ケータとマルキャルトは引き上げ、モグルーク兵とともに王都に戻った。

 それに合わせてタリオトルテ軍も撤退した。


 損害は、人的には1割にも満たなかったが、モグルーク軍の攻撃も守りも予想以上であったこと。

 特に頼みの新金属の剣が通用しなかったこと。

 そして、リレイアの川への干渉によって被害を受けたのが補給物資であったことで、継戦能力に不安があったことから、意外にあっさりと引き上げたのだった。

 いきなりタリオトルテとの戦闘に巻き込まれたもののそれを退けました。

 でも、これは単なる前哨戦、やがて本格的に攻めてくる敵に対しケータたちは……


 次回、『71話 モグルーク王国を救うならば』 12/9 投稿予定です。

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