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62話 魔素の確認にあちこちを転移して回れば

 アニエスに確認を依頼されてケータたちはローアニエストの町を飛んで回ります。

 その理由は魔素の確認のはずなのですが……

 リレイアは魔法陣を発動し、ローアニエストの魔素を通常の状態に戻すことに成功した。

 だが、それが本当に行われたかどうかを確認する(すべ)がなかった。


「いかが致しましょう。アニエス様。この者たちの行ったことが正しく行われたことを確認しない限り、解放するわけには行きませんが……」

「いえ、ブロージオ。こちらがお願いしたことですもの。その通り実行していただいたにも関わらず、確認できないのはこちらの落ち度。お引き止めはできません」

「しかし……」


 リレイアとクリスクロスは静観している。

 ケータとマルキャルトは、色々と考えてはいるが何も答えを出せないようだ。

 王女アニエスはこのままでいいと言い、宰相ブロージオはこのままでは解放できないと言う。


 残る一人はローアニエスト筆頭宮廷魔道士ダルトワ……


「私がケータ殿に同行いたしましょう。その間に確認する方法を考えます。確認次第、アニエス様に報告のため戻って参ります」

「「「「えっ?」」」」


 ケータたちは思わず言ってしまった。

 はっきり言って邪魔である。

 この魔道士が付いてきた場合、リレイアとクリスクロスを他人に知らせないことを守ってもらわなければならないし、宿において結界や認識障害をかけて個室に近づけなくしたり、亜空間拡張によって狭い個室でも快適に過ごせることを我慢しなければならなくなるからだ。


 それに、ローアニエストでは確かに筆頭宮廷魔道士なのだろうが、リレイアやクリスクロスほど優秀であるとは思えない。

 この国の魔素が元に戻ったかどうかを確認する方法を思いつくまでいつまでかかるか見当もつかないのだ。

 つまりその方法が見つかるまで、ずーっとついてくると言うことで……


「いいわ、ダルトワ。そんなことしなくても。3箇所だけ調べていただけるかしら。まず、港町メール=アーリア。次に公都ローアルテ。最後にカルパソでどうかしら。それぞれの町の周辺で魔素の量と割合が十分に戻っていれば、ローアニエストの魔素問題は解決したものとします」

「「…………御意」」


 宰相ブロージオも筆頭宮廷魔道士ダルトワも、言いたいことがあったが飲み込んだようだ。


「では、早速行きましょう。ダルトワ、お願い」

「はい。みなさん、少し下がってください」


 そういうとダルトワは杖を構え呪文を唱え出した。

 目の前に直径約3mの魔法陣が出現した。

 多重円でできているが、一番外の2つだけ赤く縁取られており、中の円と文字や図形は白である。


「白の魔法陣の範囲に入ってください。赤のラインより外側に手なんか出しているちぎれてしまいますよ」


 ケータはとりあえず言う通りにしたが、何が始まるのかがわかっていない。


——リレイア。この魔法陣は何なんだ?

——転移魔法陣です。私も驚きましたわ。

——まじか!? あれ神様から教えてもらったからケータが使えるだけで、普通は無理だよな。


 ケータはリレイアに念話で尋ねた。

 一応、成り行きから予測はしていたものの、それでもまさかの転移魔法陣だった。


——ケータ殿。わからなかったと言うことは、神様から教えて頂いた魔法陣とは違うのですね。

——ああ、違う。

——ケータの転移魔法は魔法陣を必要としませんもの。


 マルキャルトの質問にケータとリレイアが答えを返す。

 もちろん、会話をしている間に全員が魔法陣の中に入って待機だ。

 ケータたちはお互いに顔を見合わせたが、ダルトワは準備ができたものと思ったらしい。

 本当は念話の内容が一段落しただけだったのだが……


「では、行きます。メール=アーリアへ」


 魔法陣の赤のラインが筒状に上に伸びていき、ケータたちは赤い壁に前を遮られた。


 シューーーー、シシシュ


 最初は空気が抜けるような音がして、途中から妙にくぐもった音に変わる。

 壁の色の彩度が低くなり、やがて黒壁になった。

 それが徐々に薄らいでいき、完全に消えた時、そこは潮の香りがする港町であった。


 海が見える。

 停泊している船があり、行き来している人々と船荷を下ろしている人々。

 港から街に伸びるレンガ道。


「成功です。ここは確かにメール=アーリアです」

「せっかく町の中に入ったのにすいませんが、魔素の測定のため一旦、門の外に出ましょう」


 宰相がメール=アーリアであることを保証し、アニエスが魔素調査を先に済まそうと言った。

 そこに軽装ではあるが、鎧をつけた兵士が2人走ってきた。


「こ、これは! アニエス姫。宰相ブロージオ様。おおおお、ダルトワ様まで! して、この者たちは?」

「これはクルゼ王国から来てくれた者たちです。粗相のないように」

「「ははっ」」


 兵士たちはとりあえず、王女の言葉に返事はしたものの、冒険者のケータとクルゼ王国の鎧をきたマルキャルトをどう扱ったら良いのかわからず、右往左往している。

 とりあえず、王女との距離が近いのでもう少し下がらせたいのだが、肝心の王女が熱心に話をしているから仕方がないのだ。

 それを見て、アニエスは言った。


「それでは、そこの2名。町の外に出る。このケータたちがいれば安心ではあるのだが、其方達の立場もあるだろう。ついてまいれ」

「「ははっ、では先導します」」


 こうなったらケータも楽ちんである。

 普通はこういう港町に他所の国の人間が入るときはそれなりのチェックが必要なので、調べられたり待たされたりすることが多いのだ。

 今回は王女様直々の付き添いであり、当然そんなことはできないからである。


 転移した先は、町の港とは反対側にあり、山側の門から外に出るまで歩いて5分と掛からなかった。

 門をすぎ、街道に沿って林の直前のところでダルトワが行った。


「この辺で調べてみます」

「頼むぞ、ダルトワ」


 ダルトワはローブの内側から小さな箱を取り出した。

 サイコロのような直方体で、石が上面と側面についているが、側面のものは飾りであろう。


 杖を軽く一振りすると上についている石の色が変わり始めた。

 最初は茶色であったが、赤が混じり、青が混じり、黄色が混じり、緑が混じった。無色の場所も白い場所もある。

 最後は少しだけ茶色が強かったが、大体どの色も均等になっている。


「どの属性もまだ少し弱いですが、まずまず均等に分配されています。少し土属性が強いと言うのは意図してですか?」

「はい。現在の森や林の植生からすると土属性を少し多いままに保たないと枯れてしまうものがありますので」


 ケータはあらかじめリレイアから聞いていたことなので、ダルトワの質問にもスラスラと答えられた。

 そこに宰相のブロージオが門の方から走ってきた。

 全員できたつもりであったが、宰相だけはメール=アーリアの町で何かしらの手続きをしていたらしい。


「ダルトワ。ここでの魔素の調査はどうでしたか?」

「全体に少し低めなのは仕方がありません。少し土属性が強いのも意味のあることなので、魔素の状態としてはまずまずです」

「それはよかった。姫様」

「ああ、次は公都ローアルテだな。駆け足ですまんが、ダルトワ。魔力的に猶予はあるか?」

「大丈夫です」

「では、魔法陣を頼む」


 ケータたちは何か違和感を感じていた。

 単に魔素の確認を早くしたいと言うより、別の理由で急かされているような気がしたのだ。


——リレイア。なんでこんなに急いでるんだろう。

——うーん。感ですけど多分困ったことにはなりませんわ。アニエスについて行っていいと思いますの。

——へへ。おいらもそう思うぜ。

——リレイア殿、クリスクロス殿。そうなんですか?


 リレイアとクリスクロスは何かわかっている様子。

 ケータとマルキャルトは何もわからなかったが、問題ないならいいやと思考放棄してしまった。

 

 ダルトワはまた呪文を唱え、魔法陣を起動する。

 ケータたちも2度目であるので何も考えずに魔法陣に乗った。


 転移呪文でローアルテに飛ぶ。

 ……だが、これから後のことを考えると少し気構えが必要だったかも知れない。

 アニエスがケータたちを見て、一瞬意味ありげに微笑んでいた。



 魔法陣の赤のラインが今度は青に変わり、筒状に上に伸びていき、ケータたちは青い壁に前を遮られた。

 その時点でリレイアとクリスクロスは目配せして、姿を隠した。


 シューーーー、シシシュ


 青い壁は薄くなっていき、着いた先は屋外ではない。

 非常に華々しい大きな広間だった。 

 赤い絨毯があり兵士が両脇に並び瀟洒な椅子がある。


 そこにゆっくりと歩き、優雅に座るアニエス。


「ケータ、マルキャルト。ようこそ、ローアニエスト城の王宮へ。貴方達にはお礼をしなくてはならないわ」


 王座に座るアニエス、兵士が並ぶ王宮。

 ここは玉座の間だ。

 やっとそのことに気づいたケータとマルキャルトは、慌てて跪坐く。


「ケータ殿、マルキャルト殿。表を上げてください。ここは王宮ではありますが、其方たちを膝まづかせる訳には参りません」


 宰相ブロージオはそう言って、お付きの者に指示を出す。

 ケータとマルキャルトは周りとアニエスに気を取られていて、いつの間にかアニエスの横に控えていることにも気づかなかった。


 所在なさげに立ち、アニエスの言葉を待った。

 だが、アニエスは何も言わず左手で合図を送った。


 兵士たちは一斉に敬礼し侍女と僧侶が現れ、お付きの者がワゴンを押してきた。


「クルゼ王国、冒険者ケータ・リーフォン殿。騎士マルキャルト・フォン・ルーエン殿。お二人の尽力でこの国は救われた。我が国のローアニエスト大褒章を授与する。お受け取り下さい」


——リレイア。どうすりゃいいんだ。

——お礼です。頂けばいいんですよ。仕方ないですわね、シャンとして下さい。


 ケータは念話でリレイアに相談したのだが、別にどうすればいいのかわからなかったわけではない。

 ただ、あまりに唐突だったので気が動転して話しかけずにはいられなかったのだ。


 ケータはぎこちなく一礼をして褒章を受け取った。

 マルキャルトは流石に騎士らしく立派な礼をして褒章を受け取る。


——凄い高級そうなんだけど軽いな。何でできてるんだ?

——知らねーのかよ。そいつぁあ、ミスリルだぜ。ちゃんと守護の呪文がかかってる。

——そんなもの貰っていいのかな?

——いいと思いますわ。


 ケータはリレイアに言われてそのまま貰うことにした。

 けれど、クリスクロスの説明でビビってしまったので、ローアニエストの周りの人たちには丸わかりだった。


 その後も一時金やら、名誉爵位やらをくれると言うのを必死で固辞し、玉座の間を出た時にはすっかり夜になってしまった。

 ケータとマルキャルトは王宮の客間に賓客として泊まることになった。


 新鮮な魚を中心とした豪華な食事が出た。

 そして、ケータとマルキャルトは食後のコーヒーをラウンジでいただいていた。

 部屋にメイドは待機しているが、遠いから話を聞かれることはない……はずであるが、意図を悟らせない特殊な防音の結界だけは掛けていた。

 ケータとマルキャルトは基本声を出しているが、リレイアやクリスクロスに話すときは念話という変則的な会話である。


「とてもおいしい食事でしたね。随分魚の料理が多いようでしたが」

「僕は緊張し過ぎて、あまり味がわからなかったよ」


——あの宰相の奴が港町で魚を王宮に運ぶ算段をしてたぜ。

——なるほど、それでですか……クリスクロス殿。では、この王宮に来ることをわかっていたのですか?

——まーな。


「それなら、教えてくれれば良かったのに」


——ケータ。クリスクロスと話すときは念話でお願いしますわ。まあ、一応特殊な防音かけておりますので、周りにはボソボソとしか聞こえませんから大丈夫ですけど。

——それなら、全部念話にすればよかったのに。


「ケータ殿。それだと、私と無言でコーヒーだけ飲んでいるように見えるので不自然です」


——マルキャルト。そんなこと声に出して言っていいのか。

——ケータ。マルキャルトがケータに言う分には大丈夫ですの。ボソボソ言っているようにしか聞こえませんもの。

——ひぇぇ、ややこしいなあ。


 結局、ケータがこんがらかるのでここでの会話はこれで終わりになった。

 特に打ち合わが必要なこともないので、その日は用意された豪華な客間に別れて就寝となった。


 ◇


 翌日、ラウンジで朝食を食べた後、そのまま中庭に行くように言われた。

 もちろん、ボーっと立って待つと言うわけではなく、ガゼボにテーブルと椅子が用意されており給仕に入れてもらったコーヒーを飲みながら優雅に待つことになっていたのである。


「うーん、落ち着かないなあ」

「私は好きですよ。まあ、私の功績ではないですがそれだけのことはしたんですから」


 マルキャルトは度胸があってこう言うことにも動じないという点も確かにあるのだがそれ以前に騎士である。

 貴族としての振る舞いはある程度慣れているのだ。


 そうこうしているうちに、アニエス達がやってきた。

 またしても王女アニエスと宰相ブロージオ、宮廷魔導師ダルトワの3名だけでお付きの者などはいない。

 フットワークが軽いお姫様である。


「そろそろ良いか? では、カルパソに向かうとしよう」


 ダルトワは呪文を唱え、魔法陣を起動する。

 ケータたちは魔法陣に乗った。

 リレイアとクリスクロスは姿を消したままなので、アニエスはケータに確認を取る。

 ケータがOKだしたので、ダルトワは転移呪文を起動しカルパソに飛んだ。


 魔法陣の赤のラインが今度は白に変わり、筒状に上に伸びていき、ケータたちは白い壁に前を遮られた。


「ん? ここはカルパソのはずだが、特に特徴のない町だな。どうやって確認するか」

「姫様。それなら街のものに聞くのが一番かと」


 アニエスの問いにブロージオが答えて、役場のある方で走っていった。

 ほどなく、数人を従えて帰ってきたが血相を変えている。


 恐らく、田舎町に行きなる宰相が現れて姫様のために案内をして欲しいと言われて、焦ってやってきたのだろう。

 アニエスの前にひざまづいて言った。


「アッ、アニエス様。この田舎町カルパソにようこそおいで下さいました。町長のリーパーニュです」

「楽にしてよい。ここはカルパソで間違いないか」

「はい。間違いございません」

「して、トルテの町はここから近いのか?」

「それが……まだ調査のものを出しておりませんで」


 まだ昼前である。

 根源魔法陣がなくなったことを知らない以上、どこにあるとは言えないのは無理もない。


「かまわぬ。昨日はどこにあった?」

「はい。町の西の出口からまっすぐ行って約4㎞のところです。ですが……」

「良い。これからは町の位置が変わることはない。ローアニエストは変わったのだ」


 申し訳なさそうに答える町長に宰相ブロージオは誇らしげに言った。


「本当ですか? それは素晴らしいことです。この町は発展します。ええ、必ず」

「そうか。良かったな。トルテとカルパソ。この二つの町が寄り添って繁栄すればローアニエストとしても嬉しい限りだ」

「はい」


 礼をすると町長たちは役場に戻って行った。


「では参りますか。西の出口から街道沿いに進み、森の直前で確認します」

「「「「了解」」」」


 カルパソを後にして進んできた一同。


「この辺かな」

「では」


 前と同じようにダルトワが魔素の状態を測る小箱を取り出し、杖を振った。

 上面についた石の色が変わり、少しだけ茶色が強く、その他の色が少し弱かった。


「問題ありません。他の場所と同様です」

「そうか。それは良かった…………ケータ、マルキャルト、そして姿は見せていないがいるのだろう? リレイア、クリスクロス、感謝する」


 アニエスが頭を下げた。

 そしてブロージオとダルトワも。


「いえ、僕たちの方こそお世話になりました。これで目的のトルタの町に辿り着くことができます。パメロ・キュレータの生演奏を聴くのが楽しみです」

「あの……パメロ・キュレータは……」

「やめなさい。ブロージオ」


 ケータの別れの挨拶にブロージオが言いかけ、それをアニエスが止めた。

 そして。


「ケータ。今、パメロ・キュレータは彼自身の闇の中にいます。このままでは彼のドルターラを聞くことができないでしょう。でも私達は貴方達を信じています。きっと、昔のように彼が彼自身を取り戻すことができると」

「それはどういう……」

「さあ、それは……行けばわかります。あなたたちを私は信頼しています」


 なぜか不安なことを言うアニエス達。

 最後にもう一度礼を言うと公都ローアルテに転移魔法で帰っていった。


 ケータ達はそれを深く頭を下げて見送った。

 途中から気づいていたのだ。

 この3カ所の転移による魔素の確認は形だけのものであると。

 アニエス達がしたかったのは、国を救った礼としてのもてなしであったのだ、と。


 そして、最後のこのカルパソこそ、トルタに隣接する町なのだ。


 ケータ達は話し合った挙句、そのままカルパソに戻り宿を取った。

 行こうと思えば行けない距離ではないのだろうが、アニエスがパメロ・キュレータについて語った不穏な一言が足を止めさせたのだ。


 ここまで来れば急ぐこともない。

 これまでとは違い、昨日の位置情報が明日も通用する。

 西の出口から4km弱であり、歩いて1時間もすれば着く距離なのであるから。


 宿の部屋でいつものように遮音と認識阻害をかけた後、リレイアとクリスクロスが姿を現す。


「ケータはどうしてもパメロ・キュレータの演奏を聴きたいですか? 他にも素晴らしい演奏者はいるようですわ」

「そりゃあ、素晴らしい演奏なら大歓迎だけど『スラマーセルの瞳』で見たあの音と演奏の切れ味は他とは違うと思うんだよ」


 ケータはなんでリレイアがそんなことを言うのかわからなかった。

 ここまできたらパメロ・キュレータが見たいに決まっている。

 何が待っていようとも乗り越えて生の演奏を見たいのだ。


「でも、ケータ殿。他のドルターラ演奏者を見たことがないのに、どうしてパメロ・キュレータが特別にうまいとわかるんですか?」

「そーいや、そーだな」


 マルキャルトとクリスクロスは、当然の質問をした。


「うーん、どうやって説明したらいいかなあ」

「そうですわね。それはケータが説明するのは難しいかも知れません。私はあの演奏がケータのいたコモンの世界で……まあ、それも地球という星限定ですが、とても優れているとわかります」

「どこがどんな風にだよ」

「それは……」


 クリスクロスの質問にリレイアは口籠ったが、ケータと顔を見合わせた。

 ケータが話を引き継ぐ。


「ああ、それは音楽的に優れているとかそう言うのもあるんだけど、比較対象があるのさ。あのドルターラは僕がいた地球の楽器と所々似ているんだ。だから、その似ている楽器を演奏した人と比べるとうまいかどうかがわかるんだ」

「はあ、そういうものなのですか」


 マルキャルトは今ひとつ合点がいっていない様子だ。


「でも議論は無駄かもね。生演奏は肌で感じないとわかんないもんだよ」

「なるほど。剣の道みたいなものですね。実際に刃を交えてみないと敵の本当の強さが分かりませんから」

「そ、そうかもしれないね……」


 その例えはどうかなー、と思いながらもケータは答えた。


 ◇


「ところで、パメロ・キュレータについてなのですが、先ほどからこの町の中にナノマシンを撒いて一通りの情報を集めたのですが、あまり語られていませんわ。人数で言うと『パメロ・キュレータ』の名を口にしたのが3人だけで、内容が皆同じですの」

「内容、って?」

「『パメロ・キュレータが演奏を続けていたら』と異口同音に……」

「やっぱり演奏してないのかなあ。引退したとか」


 残念そうにケータが言うと。


「引退という感じではない気がしますわ」

「おいらはわかんねーけど、諦めちまった、ってーことか?」

「ええ、そんな感じがします」

「わかりました。とりあえず、明日にしませんか」


 最後にマルキャルトがそう言った。

 それがあれこれ考えがちな気持ちを一旦リセットさせてくれようで、ケータにはありがたかった。

 アニエスに見送られ、ケータたちはようやく目的の地トルタに到着します。

 ですが、そう簡単にドルターラの名人には会えないようで。


 次回、『63話 音楽の町トルタにたどり着いたならば 』 11/11 投稿予定です。

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