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43話 森の秘密を隠蔽すれば

 ケータ達が実験に使っている魔の森は既に安全になっていますが、人を近づけないようになっています。

 しかし、冒険者がやってくるとなるとバレてしまう訳で、それをなんとかしないといけません。

 ロブナント領の小さな村に危機が迫っている。

 だが、まだその事をこの農村ではケータ以外、誰も気付いていない。


 討伐隊が来ることで町や村の損害が出ることに気づいているギルド職員や冒険者もいるかも知れない。

 だが、大半は『被害が出ても領主様が何とかしてくれる』とでも思っているんだろう。


 確かにロブナント子爵は無頓着に見えているが、意外に世話焼き体質である。

 民を蔑ろにはしない。

 だが、首都から大量の冒険者が来るような事態になれば、田舎の小貴族では対処できなくなる。

 となれば、普段からお世話になっていることだし、今度はこちらから少し恩返しをしよう、とケータは思うのだった。


 まず、王都への討伐隊についての報告とシュー・ジェラルドの人物照会。

 あのブルム伯爵にお願いすれば、適切な対応と必要な情報が返ってくるだろう。

 シュー・ジェラルドがやっていることを国や領が把握しているか、そしてシュー・ジェラルドとはどんな人物なのか。

 単に冒険者ギルドに頼んだり調べてもらったりするより、かなり突っ込んだ答えが返ってくると思われる。


 紹介状なんかなくたってロブナント子爵とは旧知の間柄であるし、王国の機関に貢献したのもケータなのだ。

 だから、ただの平民であるはずのケータも王室には顔が効く。

 もちろんその事を笠に着て力を行使したり、横暴を働いたりはしない。

 ただ、権力を振りかざし民衆が泣くのであればそういう上からの力を使ってでも止める。


 さて、(くだん)のシュー・ジェラルドはどうだろう。


 王宮のブロム伯爵の名前で一報が返ってきた。

 やはり、シュー・ジェラルドは出世欲が強く、強引であるらしい。

 事件の解決のために民衆の犠牲を強いた過去の事例もあるという。

 冒険者ギルドはそれに対しペナルティを課そうとしたが、その事件を解決したことで利益を得たラビアシアの商人が後見人として立ち、ジェラルドの功績を吹聴して有耶無耶(うやむや)にしたそうだ。


 もし大討伐隊がこの農村に来たら、間違いなく町も村も荒らされる。

 元々、大人数の部隊が来れば、宿も食材もこの付近の町や村では支えられないのだ。


 そんなことはお構いなく、討伐隊は無茶をするだろう。

 なぜなら、正規兵がそんな揃えられるはずがない。

 必ず冒険者が含まれる。

 シュー・ジェラルドに雇われるような金だけで動く冒険者が。


 しかもこんな田舎までくる連中は食い詰め者か、一旗あげたいという連中で他人の言うことなど気にしない。

 おそらく金も持っていないので、食物は接収され農民たちは人夫として無償で働かされることになる。

 婦女暴行や盗賊まがいの行為も必ず起こる。

 殺人だって起こるかも知れない。

 そして、償いもなく、全ては『この子爵領を救うための小さな犠牲』として済まされてしまうだろう。


 そういう(やから)を何人までなら抑えられるか?

 高レベルの冒険者がいないという前提だとしても、せいぜい10人程度までではないか。

 もし、それ以上になった場合は……ケータとリレイアが力を行使して無理やり抑えることになるだろう。

 冒険者としては破格の力を見せることになるので、ケータとリレイアに出自(しゅつじ)についてある程度はバレてしまうことになる。

 それに戦いになれば無事には済むとは思えない。

 どうしたって遺恨は残る。


 そうならないためにはどうしたら良いか。

 この村の農民たちを一時的に避難させるか?

 いや、それもダメだ。

 大討伐隊となれば150人以上。

 パリエラとこの付近の村だけを救っても、周辺の村や街道沿いの領地はやはり被害を受ける。

 悪評判が立てばこの子爵領の経済を支えている特産物である羅鉄鋼の生産に影響が出てしまう。

 わずか150人の横暴が、万を超える領民たちの生活をメチャメチャにしてしまう。


 だが、たかが150人だ。

 そんな人数で荒らされてしまうほど、なんでこの土地はそんなに脆弱なのか?


 それは、子爵領が産業の中心である羅鉄鋼の出荷を目的として作られた新興の領地だからである。

 他領との交通の便が悪く自給自足が原則であり、伝統に支えられてもいないこの土地では備蓄について未整備だ。


 豊作続きの近年に領民は危機感を持っていない。

 いざ攻められた時に逃げ込む町は小さい。

 この状態で農作物の不作による飢饉などが発生すると容易く経済が瓦解するのだ。


 以前は飢饉(ききん)もあったと聞くが、それはここが貴族領となる前のこと。

 貴族の領地になったことで安心して気が緩んでいるところがある。

 確かに盗賊や犯罪者は減って社会的には安定しているものの、本当の意味で経済自立しているわけではないのだ。


 飢饉が起こった場合、他領からも離れており物流の問題があるこの領地に援助物資が届くのは、相当時間がかかることとなろう。

 恐らくは悲惨なことがたくさん起きる。

 そして、元の暮らしに戻るまで悲しい爪痕が残るばかりで、立ち直りにかかる時間は他の貴族領より数倍長くかかるだろう。

 そうなれば、先祖代々住んでいる人がいないこの土地をあっさり捨てて他所の領に移動する人々は少なくないはずだ。

 離れる人々が多くなれば、領の力は大きく衰退する。


 ケータには次々に不幸なビジョンが浮かぶ。

 しかし、そんなことを言って塞ぎ込んでいる場合じゃないと首を振り、まずは打てる手を考え始めた。


 ケータは(ほうき)を片手に自分の家を飛び出し、農民が見えなくなるタイミングで飛び乗った。

 魔法使いらしく箒に乗ってはいるが、実は56世期の技術で風をつんざき空を舞う。

 一気に加速し轟音を撒き散らした途端。


——音! 音を消さなくちゃダメです!

——しまったーーーーーー!。そうだったーーー!。


 この音は魔法じゃ絶対でない音だしスピードも魔法飛翔とは段違いなのだ。

 見つかったらまずい。

 ヤッベェー、とケータは思った。


 消音化。認識阻害。光学迷彩っー、と立て続けに魔法を展開する。


——被認識探索、該当なし。ふぅ、なんとか大丈夫みたいです。気をつけてくれないと困りますわ。

——あー、ごめんごめん。


 リレイアが行った被認識検索とは、誰かが感知したかどうかがわかるという未来の技術だ。

 この付近10km四方の人間の意識にケータ自身またはケータが立てた音が認識されているか否かが検索・検知できる。

 それ以上遠くでこの飛翔技術を認識できるほどの実力ならば、こちらの隠蔽技術も破られてしまう。

 だから、確認するのはせいぜい10km四方で十分なのである。それ以上は無駄だ。

 リレイアの検索結果は該当者ゼロ。

 大丈夫だったようだ。


——おう、ありがとさん。……て言うか、その前にどうしてこの移動手段が箒なんだ? 魔法を併用してても、基本的にこれ56世期の技術だろ?

—— あらっ? ケータこの間『魔法使いが空を飛ぶなら箒だ!』って言ってたじゃないですか?

——いや、あーー、まあ、言ったかな。


 確かにケータはそう言ったのだが、そのまま受け取られるとは思っていなかったのだ。

 それは、たまたまと言うか、ステロタイプにノリでそんな発言してみただけ、と言うか。

 

 そのままリレイアに採用されて『空中高速移動は箒に乗った魔法使いスタイルで』がデフォルトになってしまった。

 冷静に考えると、どうせ箒で飛んでいる姿など見られちゃ困るのだから見た目にこだわっても意味がないと思う。


 それに客観的に飛んでる姿を思い浮かべ、なんか恥ずかしくなってくるケータ。

 ……考えないことにして先を急いだ。


 ツーーーー。


 甲高い爆音からほぼ無音に移行。

 わずかに前方30mまでは小さい音が聞こえているが、これは鳥が気づかずにぶつかるのを避けるためである。

 ケータは認識されにくい魔法と未来科学のハイブリッドの呪文に変更、箒に乗って爆速で森の奥へすっ飛んでいく。

 約20kmの距離を1分35秒で、森の研究小屋に降り立った。


 元々ケータは21世紀の人間であるし、この世界では魔法使いだ。

 だが、もう一つ56世紀で過ごしたというオーバーテクノロジーを使っている。

 

 魔法には気を使うし、21世紀の技術はある程度バレても構わない。

 だが、未来の科学については、時々すっぽ抜けてしまい、お約束を時々忘れる。


 最初のデカイ音が勘づかれてなくてよかった。

 知られたらケータはほんとに困っていただろう。


 でもって、ほってはおけないことに対するケータなりの対策。

 ケータは小屋に付くなり、一通の手紙を書き、空中にふわりと浮かべた。

 手紙は一瞬、魔法陣と不釣り合いなブロックノイズに包まれ消え失せた。

 この手紙は地球の未来技術を使っているが、受取手には魔法の手紙として送られてくる。


 魔法陣とブロックノイズ?

 そのミスマッチな技術については、リレイアが考えたものだ。


 このアルファニア世界に来た時に、嘘の魔法をポルテーロさんに見せた。

 その時に魔法の効果としてブロックノイズを見せたがあれは一種のお遊びだった。

 今回の技術もそれと似たものには違いないが、こちらはもし見つかったりした時のことを考えている。

 この一連の技術を僕は、魔素に働きかけるためのデジタル技術「魔電子科学(マージデジック)」と仮に呼んでいる。

 なんか厨二っぽい名前なので、後で名前を変えるかもしれないが今はこんな技術名称としている。


 21世紀の日本で住んでいたケータは、3,500年後の未来である56世紀に飛ばされそこで7年の歳月を過ごしたのち、この異世界へと来ることになった。

 ケータはこの世界の神から魔法を授かったが、リレイアには与えられなかった。

 ただ、魔法の根源たる魔素にアクセスするヒントをもらったリレイアは未来の技術と魔法の融合に着手した。

 そして、魔法に作用させる方法を見つけた。

 さらに魔法の一部を21世紀のデジタル技術、或いは56世紀の異在力と言われる力を魔法の中に織り込み、科学技術を秘匿して使用すること、さらに魔法を進化させることを目的にデジタル化魔法の体系をひとまず完成させた。


 リレイアが使う技術はなるべく「魔電子科学(マージデジック)」に置き換えるらしい。

 理由は、未来技術は魔法で隠蔽しながら使えばほとんどバレる心配がないこと。

 技術や力の大半を未来技術に依存しているため、魔法に作用する部分が少ない。

 つまり使う魔素を少なくできるため、相手に見つかる危険性が極端に低くなるためだ。


 ただ、箒で飛んでる時に後にブロックノイズをたなびかせているのは、リレイアの趣味だ。

 どうも最近、リレイアは21世紀のレトロデジタル技術に凝っている。

 ただし、このノイズは単なる遊びというわけでもなく一種の目眩(めくらま)しのためだ。

 まずは科学技術を使っていることを悟らせないこと。

 もし見つかったとしても、21世紀の技術に見せかけること。

 間違っても56世紀の技術であることは隠し通すこと。

 すなわち、バレた時のカモフラージュとして偽技術の断片を見せる工夫ということらしい。

 どうせ基本的には見せられないものだし認識されないことを前提に出すノイズに、こんなに手間をかけていてご苦労なことだ。


 部屋にあるのは、いわゆる異世界な魔法陣と僕の生まれた21世紀の日本から3,500年も未来の制御機械という見た目も動作もミスマッチな不思議なハイブリッド魔法装置一式であった。

 見た目は経年化と被ダメージ処理、つまりは『汚し』のテクニックが使われている。

 要するにプラモデルなんかの模型で敵にやられた感じにしたり、古びた感じにするアレである。


 これはやり方をリレイアから教わったクリスクロスが面白がって凝りまくった結果、どこから見ても太古の魔法装置にしか見えない、という渾身の出来になっている。


 この装置でやることは二つ。


 まずは小屋の中で瘴気の吸収。

 次に、公害の低減化薬品の生成。


 この森の秘密の一つは、この装置がこの小屋に存在すること。

 この装置のことは、まだ誰にも知られるわけにはいかない。

 いずれロブナント子爵には話すつもりではいるが。


 そして、もう一つのこの森の秘密。

 魔獣がはびこる近隣の農民にとっては危険な森だったはずが、今は実は安全なのだ。


 ケータがこの子爵領に来た当時は、金のため魔の森だけで育つ貴重な薬草を取りに森の奥に入り込んでは魔獣に襲われたり、濃い瘴気に体を侵され命を落とす者が耐えなかった。

 また、魔の森の魔素量が増大するとモンスター・パレードが発生する可能性があり、ここ数十年のうちに農村地帯が大被害を受ける可能性があったのだ。


 実際、王都では森に蓄積された魔素によるモンスター・パレードを経験した。

 対策が間に合って、災害は防がれたがあれは危なかった。


 その時の教訓を生かし、ケータはこの子爵領にきた時に、まず危険な魔獣を淘汰し新たに産まれる魔物も制御下に置いた。

 魔属性に侵された土地は無害化した今は、村人や農夫が被害に遭うことは実質なくなっている。


 森の入り口付近では、薬草を取ることが出来るが少しでも奥に入るとすかさず魔獣に襲われる。

 しかし襲われてもすんでのところで助かる。

 そうすれば、大概は懲りて2度と森の奥にはやってこない。

 少なくても、その辺の村人や農民ならば。


 そのように作り替えた理由は、もちろんモンスター・パレードを防ぐためであったが、それ以上にこの森をケータの個人的実験農場にするためでなのあった。

 森の入り口の瘴気は薄く、途中から妙に濃い状態にワザと制御しており人が入り込むのを防いでいる。


 それでも入ってくるものには、魔獣の幻影を見せる。

 申し訳ないが、しつこいと大怪我をさせてしまうこともある。

 ただし、死ぬことはないようにコントロールはしており、命カラガラ帰ってくるという丁になっているのだ。


 妙に濃い瘴気も一時的に体は効かなくなるものの継続的な影響を及ぼさない組成に瘴気自体を変質させている。

 もし、倒れても小屋に常駐させている魔物に見えるボットに回収させて、正気の薄い入り口近くに運ばせていて、気がつき次第自分で帰れるようにしてある。


 そして、森の入り口付近の薄い瘴気の部分には、低レベルの魔草が育つようにしており貧しい農民の病気を治す魔法薬をワザと取れるようにしてある。

 とにかく、この平和だが脆弱な子爵領の弱い立場である農民を健康面をサポートするための苦肉の策というわけだ。

 何とかケアしたいので、ちょっと面倒な対策を取っているのだ。


 しかし、冒険者の討伐隊に来られるのは困る。

 冒険者なら瘴気に対する防御手段が取れるので森の奥に入り込まれる可能性がある。

 幻影だけでは誤魔化せないので、大規模な討伐隊に小屋が見つかっては困る。


 もちろん力づくで討伐隊を打ち破るのは論外だ。

 そんなことをしたら王都から王軍が来るかも知れないし、子爵領からの全住民撤退命令が出るかもしれない。


 そんなことにならないように、ケータは対策を打つ。


——瘴気の無害化にどれくらいかかる?

——うーん、完全に無害化となると3ヶ月以上はかかりますね。


 それだとシュー・ジェラルドが来るまでに間に合わない。


—— じゃあ、森の入り口付近5km四方だけはほぼ無害にして。奥は継続的な障害が残らないレベルにするには?

—— それなら、10日ちょっとぐらいでできますわ。


 即答である。

 リレイアはケータが聞いてくると予想して最初から検討済みだった。

 見た目やこの世界においての立ち位置は妖精だが、実際には未来技術の詰まったAIサーバプログラムである。

 大変だ大変だと言っておきながら、準備をしていることがある。

 流石だし助かってはいるのだが、そういう三味線を弾いてくるのは憎らしい。


——おいら、人工的? なこの森は嫌いだけど、元に戻すのはよくないと思う。これ以上いじらない方がいいと思うな。


 ケータもそこには同意する。

 森の奥は瘴気に包まれているものの完全管理の濃い魔素があるエリアだ。

 その周りには瘴気に見えるが実は無害な魔素が薄いエリアがある。

 元通りの森に戻すと、森全体に魔獣が多数生まれる。

 そうなれば、近隣の村はまた危険に晒されることになる。


 作業を開始。

 まずは瘴気の無害化に10日ちょっとだが、念のため装置を15日間動作させ続けた。

 これで、森全体の瘴気はかなり薄くなった。

 同時に森の奥の濃い瘴気の元でしか育たない特殊な魔草と魔生物を刈り取っていった。

 研究のためにわざと残していたのに残念である。

 魔の森の特に瘴気が濃い部分は、いろんな魔素研究の重要資源としての植物プラントだったのだ。

 とほほほ、これ育てんのに半年以上かかったのに。


 その後に討伐隊を誤魔化すために、少しずつ魔素を含む瘴気を戻す。

 強い魔獣が数匹存在できる程度まで回復させた。

 小屋の装置は管理擬似異空間に転移させ、単なる山の避難小屋に見えるように改装した。

 これもかなり古ぼけて見えて、リレイアやクリスクロスの懐古趣味もバカにならないと思えてくる。


——見た目は誤魔化せても、各耐性コーティングは綺麗には外せません。一気にコーティングを溶かしたりすると構造が保てず小屋が潰れてしまいますの。

——あー、まあコーティングについては残しても大丈夫じゃないか? 一応叩いても魔法攻撃されても、壊れるし燃えるだろ?


 研究のための小屋が壊されるのは惜しいが、とりあえず燃やされても仕方がない。



——いえ、大出力の魔法では吹っ飛びますが、容易に燃えないし中級程度の魔法では壊れません。ただの小屋に見せかけるには丈夫すぎますの。わかる人にはバレますわ。

——うーん、仕方ないよ。そこまでは手が回らない。

——わかりましたわ。今はこのままで。状況次第で敵が魔法で攻撃した時は派手に壊れたようにカモフラージュします。


 なるほど、リレイアは壊れ方でケータ達の工作がバレることまでケアしてくれるようだ。

 やはり頼りになる。


 その後、この子爵領のもう一つの問題についても手を打つことにする。

 羅鉄鋼で有名なザキメデの町はこの世界の住民にはまだ認識されていない問題。

 公害に直面しているのだ。

 今のまま、羅鉄鋼の製鉄工場の排煙、排液が垂れ流されていると5年で健康被害が発生し始め、15年放置すれば浄化が厳しくなる。

 取り返しが付かなくなる前に対処しなくてはならない。


 これに対して、普段なら魔の森の小屋でメンテナンス用の薬を作成し、散布することで環境を保っていたのだが、小屋を閉鎖すれば継続的な公害防止機能の継続が難しくなる。


 討伐隊が去った後に小屋の機能を再開するつもりでいたが、滞在中が問題だ。

 その期間内は、公害を広げないために一時的に強い薬を使う必要があった。

 ケータは気が進まないが、現状ではベストな方法なのだろう。

 仕方なしに連日連夜寝静まったザキメデ町の上空から魔法薬と未来技術のナノマシンのハイブリッド剤を散布した。

 これで冒険者騒ぎがひと月以内に収まれば、公害の影響も広がらないで済むだろう。

 これを撒くとナノマシンの力で公害を無効化することができる。

 しかも、魔素を動力としているのでナノマシンは川下に流されず滞留することができるので、一度撒けば効果が持続するのだ。


 ただ、このハイブリッド剤を使うと全ての生態系が活性化してしまうという欠点があった。

 公害の影響で魚が死んでしまわないための処置なのだが、残念ながら魚の種類を選択すると言うことができない。

 通常なら外来種など、広まって欲しくない魚などは選択的に活性化を抑えていたのだが、この薬ではそれらも繁殖してしまうので、従来種の魚が危機に陥るなどの副作用があるのだ。


 このほかにも何やかんやと細かい裏の仕事と表の農夫たちとの仕事ですっかり寝不足になったが、あの知らせから2ヶ月と10日後、王都から討伐隊が来るとの知らせが来るまでに全ての準備が間に合ったのである。


 なんとか、討伐隊が来るまでに準備を終えたようです。


 次回は、『44話 討伐隊の横暴を危惧すれば』 9/6投稿予定です。


[お詫び]

 毎週火曜・金曜更新のはずが、勘違いしまして前回の42話を月曜に更新してしまいました。

 今後は、今まで通り火曜・金曜に更新に戻します。

 申し訳ありませんでした。

 以上、今後ともよろしくお願いします。

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