30話 犯人の待つ屋敷で危機を迎えれば
ケータたちは過去最大のピンチに陥ります。
時は少し戻る。
ケータたちが、まだ屋敷で2人の手練れに手を焼いていた頃、焚き火の周りにいたゴロツキ達はマルキャルトに蹴散らされていた。
しかし、ケータ達を迎え討つために用意された屋敷であるうたた寝の迷宮の周りには、まだカリオンが雇った連中が数人残っていた。
焚き火の周りにいたのはカリオンが直接誘った連中であったが、屋敷の周りに残っているのはジョアンが人伝てに集めた元冒険者だった。
かつては真面目に冒険者ギルドで仕事をこなしていたが、割に合わないと感じて辞めたもの。
依頼主と揉めたり、報酬をちょろまかしたりしてギルドから追放された者たちだ。
こういった逸れ者に仕事を依頼する闇の斡旋組織がある。
俗に言う闇ギルドである。
ジョアンはそういう闇ギルドを使って元冒険者を雇って、屋敷の周りに配置していた。
この連中の士気は低い。元々闇ギルドに上前を 撥ねられて報酬はそれほど多くない。
しかも、報酬は後払いである。
それに、碌でもない理由で冒険者を辞める理由の一つが『楽がしたい』なのである。
わざわざ火中のクリを拾うようなことはしない。
この騒ぎが終われば、仕事内容とは関係なく小金が手に入るのだから。
しかし。
その雇われ元冒険者たちは屋敷から聞こえる轟音に怯えていた。
「聞いてねぇよ。何が起こってるんだよ! あれ、中にいるやつ全部死んでんじゃないのか?」
「冗談じゃねーよ! ジョアンの旦那が死んじまったら報酬はパーじゃねーか!」
「んじゃー、聞くけどよぉ。お前、あのヤバイ屋敷の中に突っ込んでいけんのかよ!」
「……できるわけねーだろ」
その中に ”裏刺し” がフラフラと歩いてきた。
手練れの3人には、屋敷の中でケータ達を迎え撃つように言われていたのだが、”裏刺し” は無視して出てきたようだ。
「何だ? お前。汚ねーかっこしやがって! 寄るんじゃねーよ」
「お前、馬鹿!」
陰の世界では有名な ”裏刺し” も容姿まではそれほど知れ渡ってはいない。
小汚いカッコをした小男が、有名な殺し屋だとは気がつかれないのも道理だ。
だが、”裏刺し” は周りを気にしない。
自分にとってくだらないことは無視する。
気に入らないヤツは『刺す』。
刺し殺す。
そして、とことん惚れ込んで気に入ったヤツも『刺す』のだ。
”裏刺し” を邪険にあしらった男に、別の男が小さく耳打ちする。
「お前、殺されてーのか。こいつが ”裏刺し”だよ」
「ヒィィィィ! す、すいません! しらっ、知らなかったんです! ころっ、殺さないで……」
そこに”裏刺し”は近づく。
「そう邪険にすんなよぉぉ。お前のこと、『気に入っちまいそう』なんだからヨォ」
「た、た、助けて……」
そのまま失禁して崩れ落ちる男。大の男が漏らしたまま恐怖のあまり痙攣している。
”裏刺し” の姿を知らなくても、 気に入られた後の末路は知っているのだ。
「おもしれーヤツだなあ、じゃーなぁ」
男は助かったらしい。
”裏刺し” はそのまま進み、一度だけ振り返った。
周りの闇冒険者は、皆すくみ上がる。
「”斬鬼” も”凶魔” も逝っちまったらしいぜ。傑作だよなあ……ひひひひひ」
今度こそ、”裏刺し” は立ち去ってしまった。
◇
“斬鬼”、“凶魔” の2人を倒したケータ達は、鏡だらけの部屋にたどり着いた。
そこは、まるで遊園地の迷路のミラールームそのもので、ボーっと歩けば通れると思ったところに鏡があって頭をぶっつけたり、合わせ鏡で方向感覚が狂ったりする。
もちろん、罠もあり床が抜けたり、ギロチンの歯が上から落ちてきたり、矢が飛んできたり、鏡に毒が塗ってあったりしたが、リレイアの貼った未来の物理防御がある以上、子供騙しにも成らなかった。
魔法の罠もあったがそちらはクリスクロスが対応した。
流石に床が抜けてケータが落ちたりすると面倒なのでそれに対するケアは、リレイアが行っていた。
ギロチンも同じく。ケータが上を気にすると視界が狭くなるので、それもリレイアが対応する。
毒に関しては、魔法を調べるときにクリスクロスが一緒に見抜いて中和処理をする。
おかけで、ケータは左右をキョロキョロと見回しながら、飛んでくる矢であるとか斬りかかってくる敵がいないかを気にするだけで済んでいた。
さほど大きな部屋ではなかったが罠を解除し気を使いながら進んだせいで、その部屋を抜けるのにタップリ10分もかかってしまった。
果たして、次の部屋もミラールームであった。
「流石に面倒だなあ」
思わず、ケータは口に出してそう言った。
──そうですわね。時間がかかるのも何ですから、この部屋は一気に解除してしまいましょう。
リレイアは魔素を利用したナノマシンを散布して、部屋の罠を一挙に解除しようと思った。
ガシャン、ガラガラガラ、ガシャン
何と、部屋中の鏡が全部割れてしまった。
「脆すぎる。これでは散乱したガラスで返って危険だ」
ケータはそう言ったが。
──失敗しましたわ。こちらが焦れて一斉解除するのを見越した罠ですの。
リレイアも後悔している。
──なんだよ。別に構わねーじゃねーか。鏡が割れたって問題ないだろ? こんなの別に怪我するわけじゃねーし……なんだ?
クリスクロスがそう言っている間に人形が数体、わらわらと現れた。
ケータ達は身構えたが、その人形が持っているのは箒と塵取りだった。
「オ・カ・タ・ヅ・ケ イ・タ・シ・マ・ス ………ケケケケケ」
ギクシャクしながら散らばったガラスを片付けていく。
最後にこちらに向かってニコリと笑うと去っていった。
その笑った顔に、表情を感じないのが不気味だった。
──気持ち悪い連中だな。
クリスクロスは怪訝な顔で見るが、単に薄気味悪いと思っているだけだ。
それに引き換え、ケータには何かが引っかかるようだ。
そのうちの2体に何故か目が行ってしまう。
──ケータ。どうしました。
──いや、なんでもない。ただ、なんとなく気になっただけだ。
ケータはそう答えた。
結局、その部屋では何も起こらず、次の部屋に進む。
──なんだよ! こんな部屋いくつ用意するつもりなんだよ!
──何かおかしいです! 狙いがわかりません。取り合えず、警戒を弱めずに……
──何を警戒するんだよ。それがわかんないんじゃ、やりようがねーよ。
クリスクロスとリレイアが揉めるのを、まあまあ、とケータは宥めていると。
──いいです。私がやりますわ。
リレイアは一つずつ丹念に罠を解除していった。
その部屋も何も起こらず、ケータ達は3つ目の鏡の部屋を抜けた。
そこは広い部屋だ。
天井は少し高い。4m弱。
しかし、横幅と奥行きは30m以上ありそうだが全貌は掴めない。
真ん中は広い空間で、それを取り囲むようにまたしても天井まで届く鏡が無数に存在しているので、全てを見渡せないのだ。
入ったところから真ん中に至るまでは、鏡は左右にあるだけで、移動を邪魔するものはない。
真ん中から奥に行くには、やはり鏡が存在しているのでこれも見通せない。
そして行手には、先ほどのような人形が20体ほどいた。
──気を付けてください。
そう警告するもののリレイアでさえも、何が危険かはわかっていない。
だが、何かを感じる……いや、『これは何かを感じさせられてる』のか。
──この部屋の中央の広間の先のガラスの間に二階に登る階段がありますの。二階には人の反応がありますので、犯人かもしれません。
──そりゃあ、返って面倒だな。全部ぶっ壊して、ブッ殺しちゃダメなのか?
──ダメです! 捕まえないと令嬢誘拐の犯人かどうかわかりません。
このガラスと鏡だらけの部屋、壊せば破片で歩くのもままならない。
こうなるとこの部屋で大規模大出力の攻撃はできない。
まずはこの部屋で一番怪しいもの。
人形。
人形はホムンクルス製のものと鉄製の骨格にスライム素材を貼り合わせたものの両方が存在している。
動作原理で一番多いのは魔法で動いているものだが、電気仕掛けやロボット制御のものまである。
そして、鏡やガラスにも簡単な罠が仕掛けられている。
この世界に21世紀の半導体まで持ち込まれているとは思わなかったのだが。
流石に56世期の科学技術に比べると児戯に等しい。
そのため、ケータにとって何が危険なのかがリレイアとクリスクロスにはわからなかった。
二人には、あまりに見え見えの罠であり、初歩的すぎて引っかかる道理がなかったからである。
不意に人形のうち、数体が攻撃をしてきた。
対処には余裕があり、周囲を気にしながら排除し、進んでいく。
ただ、少しケータがおかしい。
難なく排除する人形となぜか躊躇してから倒す人形があるようだ。
それに、リレイアのように空間把握ができるならともかく、ケータには部屋が広すぎて左右の鏡の影から攻撃してくると目で追う分だけ、若干対応が遅れる。
──空間の配置の掌握はできてますわ。ケータはとりあえず正面を!
しかし、そうは言っても左右がどうしても気になる。
それに、何か入り口で最初に見てから、次々に出てくる人形の顔立ちが変化しているのが、だんだん気になっていた。
ケータが横断歩道で車道を気にするように左を見てから、右を見た途端!
「ひとみ!」
思わず右の人形に駆け寄るケータ。
彼の目には、その先にいる人形が遠い昔、高校で唯一思いを告げた上川ひとみに見えた。
それこそがカリオンが仕掛けた最大の罠。
ジョアンがボタンを押したときに発動した罠の正体だった。
ケータは人形を見せられていたのだ。
観察するために。
ケータが何に反応するか、を。
冷静になればさほど人形は上川ひとみには似ていなかったのだろう。
だが、仕草や特徴を捉えていた人形は、他の不敵に笑う人形と異なり怯えていた。
それゆえ、ケータは冷静さを欠き、飛び出してしまった。
──いけません!! ケータ!! それはただの人形です!!
リレイアの対応も遅れた。
リレイアの防御は、向かってくる危険に対処するものだった。
それが裏目に出る。
ケータが自分で罠に飛び込んでは、自動的な防御が働かない。
──仕方ありません。
膨大な魔力を持った鏃がケータに刺さる瞬間、リレイアは最後の手段をとった。
ワァァァァン。
空間が戦慄くような音が広がり、広い空間には光が満ちる。
ケータに刺さりかけていた鏃は消えた。
周りの全ての魔法の罠は魔素を全て抜かれてしまい発動することはなかった。
物理的な罠は目に見えない未来技術の網の目にがんじがらめになっていて、これも動かない。
人形たちも全て動きを止めている。
リレイアが行ったのは、このアルファニア世界の全魔法およびコモン世界である地球の科学技術を使ったほとんどの仕掛けの無効化だ。
これが『見えているものだけを信用して失敗することの対策を。できないのなら、見えているものに騙された場合の対策を』と言っていた貴族の忠告に対するリレイアの答えだった。
全ての攻撃を無効化する。
しかし、それはケータ達にも作用しており、こちらからの攻撃もできなくなっていた。
21世紀の電気や56世紀の異在力を使ったものは一定時間使えない。
使えるのは剣やせいぜい弓。仕掛けを使ったものは既にトラバサミ程度の物も動作しない。
まわりには静寂が訪れていた。
急速に戻る周囲の状況。
だが、魔素は少なく、罠も小規模なものしか動かないだろう。
だが、それはまた一瞬にして破られる。
ガッシャャャャン
窓を破って男が、走り込んできた。
先ほどまではヘラヘラした男の動きは別人のように水際立っている。
「クリスクロス、防いで!」
余裕のないリレイアは、姿を現し叫ぶ。
敵は急に現れた相手に少しだけ気を取られる。
それに呼応して、クリスクロスもケータの盾になるように姿を現すが、所詮10cmの妖精の姿。
無視するつもりのようだ。
そうはさせじとクリスクロスは魔法を矢継ぎ早に唱える。
リレイアの全無効化は時間と共に少しずつ解消されているが、相変わらず大規模なもの、高度な魔法は使えない。
コモンの未来技術が特にダメだ。
頼みの綱はクリスクロスだ。
小規模と言えどその能力の高さゆえの魔法の速射だが、いくつかは無効化され、いくつかは弾かれ、いくつかは避けられ、この男には効かなかった。
「クッソ、当たらねぇのか……」
そう呻いたクリスクロスは焦っていた。
それほど強そうにも速そうにも見えないのに攻撃が当たらない。
リレイアが使った最後の力で魔法能力が戻っていないだけでなく相手の力が押し測れないのだ。
”裏刺し” の恐ろしさ。
この男の怖さは、敵が一番弱みを見せている時を冷静に見極める力と剣も魔法もさほどのレベルではないはずなのに、その一瞬に恐るべき力を発揮する。
特に、リレイアにはクリスクロスが放った魔法が鏡のそばを通過するときに無効化された理由がわからない。
この幾重にも重なって仕掛けられた罠のうち、これだけはカリオンが仕掛けたものではなかった。
ケータがこの屋敷に来る少し前に、“裏刺し” は屋敷内で迎え撃ように言われていたのだが、それを無視をして外へ出ていた。
だが外へ出る直前に、この部屋の鏡の一部には魔法の方向を曲げる細工をしていたのだ。
この細工は鏡を魔道具化しているのだが、使用される魔素が少なくて見つけにくく、攻撃魔法にも防御魔法にも当たらないためケータ達の誰にも脅威として映らなかったのである。
”裏刺し” はケータに猛然と迫り、人形に気を取られていたケータはそれに気づきふり返える。
だが、いつの間にか ”裏刺し” は、ケータの背中側に移動していた。
予備動作なしで短刀を繰り出すが、もしものために張っておいた魔法が無効化された時のための力場が幸いして一度だけその刃を弾く。
これは、ロブナントの忠告を聞いてリレイアが服に仕込んでおいたものだ。
もし、全力で踏み込まれたらケータにその刃が刺さっていただろう。
すでに最低限の刃を弾く力場ももうない。
絶対のピンチに思われたが、クリスクロスの魔法とリレイアの力場が、稼いだ時間は無駄ではなかった。
ガシャャャャン!
さらにもう一人、誰かが窓ガラスを破って飛び込んでくる。
そして、”裏刺し”の一撃をケータに刺さる直前で弾いた。
「マルキャルト!!」
「よく戻ってきてくれました!!」
僕とリレイアは思わずそう叫んだが、マルキャルトは唖然としている。
それはそうだろう。
リレイアもクリスクロスも姿を見たことをなかったのだから。
その隙を窺う ”裏刺し” だったが。
「行かせませんわ!」
リレイアは立ち直ったようだ。
僕も ”裏刺し” に正対することができたので、かなりの防御が可能だ。
全員に最低限の力が戻ってきていて、 ”裏刺し” には付け入ることはもうできそうもなかった。
「どうも、旗色が悪くなっちまったようだな。だが、楽しめる仕事はもう一つあるんでな」
そう言うと広い部屋の奥へ飛び込む。
ガッシャャャャン
鏡を叩き割ると階段が現れ、それを駆け登っていった。
少しの間があり、争う音が聞こえた。
「テメェ、裏切りやがったのかぁぁ!」
「これも仕事でなあ!」
グアァァァァァ
叫び声と三度目の大きくガラスが割れる音が聞こえると、今度こそ本当に静かになった。
「助かったあぁぁぁぁ生きた心地がしなかったぁぁぁぁ……」
「危なかったですわ。ケータを失うかと……」
「すまねぇ、おいらもだ……」
三者三様で一息ついたが、それを見ているマルキャルトは呆然としている。
ケータが2人の妖精と一緒におり、目の色も髪の色も違っているのだから。
「あのっ、あのあのっ……その妖精は? それにケータ殿、髪と目が!」
ああ、そうだった、という風にケータはマルキャルトの方に向き直った。
ケータはリレイアの無効化で元の黒目黒髪の姿に戻ってしまっていた。
そのことに気づいたケータが慌てて紹介する。
「髪と目については、後で説明する……それと、えーと、これはリレイアとクリスクロス。……僕を助けてくれてるんだ」
「はぁ、あの……マルキャルト・フォン・ルーエン……です」
お互いに間の抜けた、今更ながらの自己紹介だ。
ケータは、秘密にしていたリレイアとクリスクロスのことがバレてしまったので、どう言い繕うか考えていたが……
「ケータ、とりあえず後にしましょう。二階が気になります。マルキャルト様もご同行をお願いできますか?」
「リレイア、大丈夫なのか? その力と言うか……」
ケータは56世期の技術のことは口にできないので、言い淀んだが。
「はい。大丈夫ですわ。完全ではありませんが、力も戻っています。危機は去ったようです」
これにも、どう大丈夫か聞きたいところだが、今ツッコむのはまずい。
まあ、リレイアが大丈夫と言うなら、そうなのだろう。
ケータとリレイアに間にはそれくらいの信頼関係があるのだ。
それから、ケータ達はマルキャルトを伴って、二階への階段を上がった。
状況は予想した通り……
一人の見覚えのある男の惨殺死体、それは先ほど戦った男ではない。
「酷いな。だいぶ『SAN値』が削られそうだ」
「なんですか? 『さんち』って?」
「いや、なんでもない。酷い殺されようだなって……」
「ああ、確かに……そうですけど……」
ケータは誤魔化した。
異世界の住人であるマルキャルトに『SAN値』がわかったらビックリである。
「おい、よく見るとこいつ、屋敷の用心棒じゃねーか」
「確かにそうですね。ん?……死体の下に紙が挟まっているようですが……待って下さい。ああ、大丈夫のようですわ。死体をずらして紙を拾っても問題ありません」
クリスクロスが死体がクローネ子爵の用心棒であることに気づき、リレイアが罠がないか確認した。
ケータとマルキャルトが死体をひとまず横にずらすと、下には血で書いたような字が殴り書きしてあった。
“おめでとさん。
こいつは確かに、誘拐の主犯でジョアン・ザーグ、っつー小悪党だ。
多少腕は立ったが、まあ、このザマだ。
とにかく、犯人は揚げたんだ。お手柄じゃねーか。
こいつも少しはやるかと思ったが、大したこたーなかったな。
それに比べて、あんたらとは、かなり『楽しめた』ぜ。
また、どっかで楽しくやろーぜ。
殺し合いってヤツをよ。“
それを読んだマルキャルトは窓の外を見て行った。
「追いますか?」
「いや、やめましょう」
リレイアが答える。
僕もクリスクロスも同意見だ。
少し立て直さないとどうしようもない。
この死体も放っては置けないし。
クリスクロスが残された紙を見て言う。
「でもよ、悪趣味だよな」
「何がです?」
リレイアは『何を聞いてるの?』という感じで答えた。
だが、僕はクリスクロスの言うことがわかった。
その手紙の文字の色のことだ。
「これ、血で書いたのか?」
「いいえ、そうみせているだけでこれインクですよ」
リレイアは首を振ってそう答える。
それに、クリスクロスは吐き捨てるように言う。
「だから悪趣味だって言ってんだよ!」
マルキャルトが周りの惨状とその様子を見て誰に答えるともなく呟いた。
「確かにそうですね……」
カリオンには辿り着けず、”裏刺し”には逃げられ、主犯ジョアン・ザーグは消されてしまいました。
それでも事件は一応の決着を見ました。
ケータたちはギルドから報酬をもらうだけではないようです。
次回は、『31話 王宮で事件を報告すれば』 7/22投稿予定です。




