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18話 旅人と出会(でくわ)してみれば

18話です。


魔物の退治に失敗したところで旅人に出会します。

 転生してから2週間が経過した。


 最初の1週間でリレイアの魔法や魔素の研究が終わり、同時に僕のアルファニア世界の勉強も一段落。


 2週目からは、森に入って野生動物と魔獣の狩り。

 つまり、各属性の中級魔法の習熟と戦闘・サバイバルの実戦訓練である。

 安全のためにサポートとしてリレイアかクリスクロスが必ず付き、いざと言う時のために56世期の武器も持たされていた。


 成果としては、まず2日目に無詠唱で魔法を連射できるようになり、56世期の武器は携帯しなくなった。


 ただリレイアは納得はできていないようで。


「何かあったらどうするんですか! 念のため、携帯武器も持って行って下さい」


 しきりに地球の56世紀トンデモ武器を持たせようとしていた……が。


「いらねーよ。過保護すぎんだよ。魔法一本で魔獣を倒せるようになんなきゃ修行になんないだろうがよ!」


 クリスクロスに却下されていた……。


 僕はリレイアの顔を立てようかちょっと迷ったが、中級魔法の習熟と共に自信がついてきたので、武器は持たず魔法のみで森の魔物討伐の修行を続けていた。


 その甲斐もあって、3日目には更に大きな進歩があった。

 魔法力も上がり一撃で倒せる確率が上がり連続使用可能回数も伸びてきたのだ。


 それまで苦戦していた魔獣相手も力押しで倒せるようになったのは嬉しい。


 だが。


「そんな手数掛けてんじゃねーよ。一撃で倒せねーと」


 とクリスクロスは手厳しい。

 僕自身も不安なので、なるべく一発の威力増強のために何ができるか悩んでいた。

 

 だが、それにも光明が見えた。

 複合魔法という手法を会得したのだ。

 複数の属性を組み合わせて威力を上げる手法、それが複合魔法。


 例えば、火属性と水属性を同時に放つ。

 その時、魔法としては打ち出すのみで、魔素の解放による属性の展開は行わない。

 着弾点で魔素の展開をするという魔法の二段構成で大きなダメージを叩き出すことができるのだ。

 花火でいえば、最初の魔法は空中に打ち上げるまで。

 二段階の魔法は空中で爆発して花火が広がるイメージ。


 この効果は効果的……というか、この森ではすでにオーバーキルと言えるレベルだった。

 そんなわけで攻撃力の強化も一段落。

 それで魔法の細かい制御を進めていくうちに探査魔法が上達し、この森の魔獣分布も覚えた。


 4日目から6日目までは、魔獣の発生地点に先回りして討伐数のスコアが随分と上がった。

 7日目には、それぞれの属性ごとの習熟度合いがかなり上がっていたので単純な中級魔法でも魔獣を倒せるようになった。

 初日のファイヤー・ボールでは、大型魔獣に対し400度程度で軽度の火傷を負わせるのがやっとだったのに対し、7日目には3,000度の青い炎で体ごと焼き尽くすことができるほどだった。



 これは順調、と思った途端油断があった。

 そこでミスをした。


 ファイヤー・ボールだけでどこまでやれるかを試していて、スライムの群生地に打ち込んでしまったのだ。

 そのスライムは周辺の木の養分を吸い取り、森全体が枯れ木化していたので一気に炎上してしまった。


 ヤバイ!


 これじゃ自然破壊だよ。でもとにかくこれだけの火力だ。魔物はすでに殲滅してるはず……ん? 生きている? あれだけの火力で死なない……だと?


 なんと、スライムは火属性に耐性があるらしく僕の方へ迫ってきた。

 一匹一匹は弱いが意外に速い、数が多いだけでなく広範囲から押し寄せている!


 パニックになってしまい、魔法詠唱に失敗し二の矢が継げない。

 やられる! っと、僕は思った。


「何やってんだ! 仕方ねぇなあ……フリーズ・ライアット」


 クリスクロスが魔法を放った。

 白い9mmの弾丸のような粒が辺り一面広範囲に撒き散らされる。


 フリーズ・ライアット


 冷気弾を使った散弾銃をイメージした魔法だ。

 クリスクロスほどの魔力があると散弾銃というよりガトリング砲みたいな圧倒的な威力と弾数がばら撒かれる。

 氷の粒は空中で破裂し派手に広がるとスライムを瞬時に凍り付かせた。

 炎上している木々も端から消火されていく。


「助かったよ」


 そう言ったとき、遠くから声が聞こえた。


「おーい、誰かいるのかあー」


 3人の男が走ってきた。いや、走っているのは1人だけであとの2人は馬車の御者台にいたのだが。


 この世界の人間と出会う予定はなかった。

 まずいと思った、が仕方がない。

 とりあえず、姿を見られるわけにはいかないリレイアとクリスクロスは近づいてくる前に姿を消した。

 話は念話に切り替える。


――想定外ですが仕方ありませんわ。まずは話を合わせてくださいませ。獲物はケータが倒したことにしましょう。

――こいつの実力だと疑われねーか?

――大丈夫。この相手なら誤魔化せますし、実際油断しなければケータにも倒せていたはずですわ。


 クリスクロスは実力不足は心配したが、リレイアは僕の力を喧伝(けんでん)するつもりのようだ。

 方針が決まったので、僕は近づいてきた男達を待った。


 その中の一人が倒されたスライムと災上に巻き込まれた獣が氷漬けになっているのを見て言った。


「火事ですか? それとも魔物に襲われました? 森の様子はひどい状態ですが、……ああ、怪我などはされていないようですね。しかし、これは……アシッド・スライムが氷漬けされています。あなたが退治したんですね! 見事な魔法です」


 この旅人に応える前にリレイアに尋ねてみる。


――ああ、これがアシッド・スライムなのか。アシッドというのは酸だと思うのだけど、体組成の大部分には酸は含まれていないようだが。

――まだこの星の文明レベルでは化学的な分析は進んでいませんの。実際、攻撃の際に吐き出す溶解液も強酸のものもありますがるが、強アルカリのものもあります。人に害あるものは皆、毒=アシッドと考えられていますわ。


 どうも認識はざっくりしているらしい。


――こまけーヤツだな。んなことはどーでもいいんだよ! アシッド・スライムを相手にする時に大事なこたー火属性は厳禁だ、つーことだ。凍られるか土魔法で埋めるかするのが一番だぜ。覚えとけ!

――へえ、土魔法が効くのかぁ。意外だな。


 クリスクロスはこの魔物については詳しいらしい。

 しかし、会話に気を取られていると……


――感心してないで、会話を続けて下さいまし。怪しまれてしまいますわ。


 おっと、そうだった。

 魔法の話をしてたんだっけな。


「いえ、失敗してしまいまして……火属性で森を炎上させてしまった挙句倒せなかったので、なんとか氷の魔法でやっと倒せたんです。……で、あなた方は?」

「なるほど……。申し遅れました、私はジャン・ポルテーロ。しがない旅の商人をしておりまして、こちらは息子と供の者です」


 顔が似ているので親族とすぐわかる若者と御者がこちらに向かって礼をした。

 馬車は3人で旅するには大型で、なるほど商人が荷を運ぶためなのだとわかる。


「あなた様は? 冒険者……には見えませんな? ひょっとして、ご貴族様ですか! でしたら大変なご無礼を」

「いえいえ、とんでもない。僕はケータ・リーフォン。平民です。ちょっと森へ食糧を取りに行ったところで魔物と出会しまして」

「ああ、貴族の方ではないんですね。かなり仕立てのいい服をお召しになっていたので……ただ」

「ただ?」

「このあたりでは見かけない意匠の服でしたので、その辺を測り兼ねまして……」


 やはり、この服はここでは目立つのか。


――わかっていたことですが、ケータの服はこのクルゼ王国では違和感があるようです。これから、この者たちの意識をある程度、制御することを考えないと……場合によってはケータの記憶を消さないといけませんわ。


 ああ、この服はクルゼ王国では珍しいのか。まあ、このランゾルテという星のどこにもないような衣装だったら困るけど、単に異国の衣装であるなら誤魔化せる範囲だ。


「つかぬことをお聞きしますが、このクルゼ王国にお住まいなのですか」

「いえ、少し遠い国から来たのですが食糧が尽きまして、何かないか、と」


 せっかく異国の衣装であることをネタに話をでっちあげる。


「そうですか。であれば、やはりお一人では……この森は我々のような商人はもちろん、冒険者や魔法使いでも単独行動は危険です。特にこの国の魔獣は単に強いだけでなく数の多さ、それに多様性が高く、思わぬことで足元を掬われます」

「はい。それは今の戦闘で十分わかりました」

「で、どうでしょうか? よろしければ首都クルゼナントまでご一緒しませんか? 食材や宿なども心配なくなりますし、物価も高くありません。それに、私どももケータさんのような魔法師の方がいて下さると心強いですし」


 良さげな申し出だが、判断がつかないので念話でリレイアに相談する。

 その間、この商人には、どうしようかちょっと考えているような顔を見せておく。


――どうしようか? 僕としては早く街も見たいし、ありがたい申し出だと思うんだけど。

――そうですわね。そろそろ街に入るのにもいい頃合いかも知れませんわ。……わかりました。彼らと同行しましょう。作戦がありますの、おそらく途中で一泊することになりますわ。

――後始末は?

――大丈夫です。ケータが話している間にあの丸太小屋はを撤去しました。ここに二週間も留まっていたことを説明するのは面倒ですからね。

――この国にきたばかりと言うことにするの?

――そうです。ですから持ち物もこの星の一般的なものに合わせましょう。この商人を脳内スキャンしたところ、この星のよくあるテントのイメージがありましたのでそれを具現化しましょう。私が用意します。焼けた木のそばにリュックを置きましたので、それを取ってきてくださいませ。テントはその中に入っていますわ。


 それは助かる。


――おいおい、大丈夫か? 魔物の心配はしてねぇが、こいつ、そそっかしいからバレるんじゃないか?

――大丈夫ですわ。何かあったら、この旅人の意識を丸ごと書き換えてしまいますので、別にケータの演技には期待してません。

――お、おおっ……それならまあ、いい、のか?……それにしてもおっかないこと考えるな、お前。


 まあ、リレイアならそれぐらいやるだろう。

 目的のためには手段は選ばないところがあるからなあ。


 でも別に危害を加えるわけではないし、何よりやっと街に行けるんだ! 細かいことは気にしない。



 そんなわけで、僕はポルテーロさんと同行することにした。


「ありがとうございます。クルゼナントまでよろしくお願いします。ところで、流石に日が暮れてきました。この辺で休んで行きませんか?」

「う〜ん、今日中に街まで入りたかったですが、流石に無理ですね。この辺だと森にまだ近いので、少しいったところに川があります。その近辺なら魔物に襲われる心配も減ると思います。ですが、大変申し上げにくいのですが、我々は馬車があるのですが、ケータ殿に入っていただくほどの余裕が……」

「ああ、心配いりません」


 そこで、僕は焼け焦げた森からちょっと離れた木陰に走っていき、リュックを取ってきた。


「僕にはこれがありますので」


 リュックからテントを取り出してみせた。

 リレイアが用意してくれたものだ。

 随分妙な形をしているので、僕は見た途端ギョッとしたんだがポルテーロさんには気づかれずに済んだ。

 テント自体は、この星のアウトドアで使うものとしては一般的だったらしく、ポルテーロさんは納得したらしい。

 もちろん見た目が似ているだけで、中に入ってみるとリレイア謹製の未来技術満載のハイテク仕様なのは今まで通り。


「ああ、テントをお持ちでしたか。良かった。では、川辺で一晩休むこととしましょう。供の御者に夜の見張りをやらせますのでご安心を」


――見張りはまずいですわ。断って下さいませ。

――ん? なぜだ?

――夜は全員寝て貰わないと。今日ポルテーロに会って、結構見られては困るものを見せてしまっていますの。眠っているうちに彼らの意識操作をしますので、夜通し起きていられると支障をきたします。


 断れと言われてもどうしたらいいのかわからない。

 まごまごしていると。


――結界が張れるから大丈夫と言って下さいませ。その後にケータは適当に口から出まかせの呪文を唱えて下さい。こちらで隠蔽と魔物撃退の力場を展開しますわ。ちゃんと呪文を唱えた時には、それらしい視覚効果を見せますから信用されるでしょう。ええ、それは豪華なエフェクト付きで。

――お前……何するつもりだよ。ほんっと、楽しそうだけど……


 張り切るリレイア、呆れるクリスクロス。



 まあ、いいや。わかった。


「いえ、御者の方も長旅でお疲れでしょう。僕の方で魔物避けの結界をはりますから皆で休みましょう」

「本当ですか?……いや、しかし……」


 僕は見張りは不要だと言ったが、ポルテーロさんは納得いっていないようだ。

 これ、遠慮半分、疑心暗鬼半分だな。

 

 こうなったら信用してもらうしかない。

 リレイア。今から唱えるから説得力のある魔法っぽいエフェクトをよろしく。


 で、どんな名前にするんだ?

 どうせ嘘だからなんでも良いんだけど。

 なんか精霊っぽいから、エレメンタル?

 守りはガードかあ。

 範囲はえーと…もう、いいや、適当で。


「世の理を乱すすべての魔物から我らを守るアルファニアの神の守りを今ここに、エレメンタル・ガーディナル・フィールド!」


 僕は口から出まかせの嘘呪文を唱え終わると「ピポッ」と音がした。

 ……なんで20世紀の日本の某メーカーの国民的パソコンの起動音なんだよ!


 で、目の前に虹色のシャボン玉のようなものが地面に現れる。

 それは、僕達だけでなく、馬車も含んだエリアまで一気に広がり、そこで真っ白に変わる。


 ピーーー・ガーーガガーーーー


 完全に場違いな音が広がる……今度は、アナログモデム? それともFAX音? ふざけてるなぁ。

 一応、僕がいた時代には光回線とwifiが普通だったんだけど……


 最終的にその真っ白な結界もどきは、消える間際に盛大なブロックノイズを見せた後、ガラス状になり透明化した。

 そのノイズは通信環境が悪い時のなんちゃら動画みたいだった。

 もうバカバカし過ぎてツッコむ気も起きない。


「な、なんですか? 今のは。見た事もありませんよ。あんな魔法。これで結界ができたのですか?」


 そりゃそうだ。魔法なんかじゃない。未来技術となんちゃって21世紀エフェクトですもん、本当は。

 でも、そんなこと言う訳にもいかず。


「……は、はい。大丈夫ですよ。これで絶対……安全です」


 あまりのことに、噛み噛みで答える僕をポルテーロさんは物凄ーく(いぶか)しげにこちらを見てる。

 そりゃそーだろうな。実際、これだけ魔法らしくないものもないと思う。

 リレイアのヤツ、こんなふざけたもの見せて信用してもらえると思ってんのかな?


 実のところ、僕もこの結界もどき未来力場の対魔獣強度については半信半疑だ。


 仕方ない。

 実践してみるしかないな。


「一応強度の確認を取りますね」


 僕はポルテーロさんにそう言い放って、後ろで何か言っているのも聞かずに森へ駆け出していった。

 リレイアの作った結界モドキの未来力場に魔獣を誘導し、ぶつけて見る。

 立派に耐え切ればポルテーロさんも信用してくれるだろう。

 リレイアの張った魔法もどきの防御用力場のお手並み拝見だ。

 まあ、あのAIのやることだ。絶対大丈夫だろうけどね。

 

 数分後、僕は森の中から狼5匹、豚猪1匹を魔法で追い立てつつ力場の方に誘導する。

 ポルテーロさん達は、急に出てきた猛獣の群れに縮み上がった。


「うわぁ、狼があ! 猪もいる!」


 ガン、ガガン


 狼も豚猪も襲おうと思った獲物の前の透明な力場には気が付かないので、先頭の2頭がもろにぶつかり頸椎を折って即死する。

 後続は一度踏みとどまったが、結界に触れると即座に痙攣し死んでしまった。


「あっ、ああ……凄いものですね。ですが、もうちょっと穏やかにお願いしますよ」

「すいません」


 信用を得るために試したわけだが、ポルテーロさんも供の者たちもかなりビビっていた。

 流石にちょっとやりすぎだったらしい。


「しかし、結界が見えないせいで頸椎(けいつい)を折ったのは分かったのですが、触れただけで死んでいたのはどういう魔法なのですか?」

「ええと、それはー……雷撃っ、そう雷系の魔法なんです」


 説明に困る。

 本当は魔法結界じゃないし、科学的な力場だし。

 どういう仕組みなのか属性なのか、リレイアに聞かないと全然わかんない。


「ああ、なるほど……立ち入ったことを聞いてしまってすいません」

「いえ、大丈夫です」


 まあ、魔法の技術は秘匿されることが多い。

 ポルテーロさんは、他人には語れない秘伝の魔法か何かだと思ったらしく、それ以上聞いてこなかった。

 こちらも、それの方が助かるので会話の流れに乗っかっておく。


 そのあと困ったのは、獲物の始末だ。

 リレイアの姿を見せる訳には行かないので、狼の解体ができない。

 いきなり魔物の死体にボットが群がって解体を始めたらエライことだ。


 結局、僕が慣れない解体をすることになった。

 僕の使う刃物はリレイアが強力なサポートをしてくれたおかげで切れ味は凄かったのだが、勝手がわからない。

 下手に傷つけると買取値が下がるので、獲物の皮を()ぐことはできなかった。

 仕方なく狼はまるのままポルテーロさんに引き取ってもらった。


 ポルテーロさんは恐縮していたが、嬉しそうに馬車に獲物を積み込む。

 これはいい稼ぎになるのだ。

 僕は、驚かせてしまったお詫びということで済ませた。


 猪豚は、夕食に使いたいので手持ちのナイフでバラして焼いて食べた。

 切れ味がいいので、狼のように皮に気を使わないのであれば、肉を切り分けることはできる。

 問題は料理の味付けだ。

 商人でもない僕がさまざまな香辛料を持っていると不自然であるのでどうしようかと思ったのたが、ポルテーロさんの馬車には塩、胡椒だけでなく、変わったソースやペースト状の食材があり、味付けはかなり凝ったものになりその日の夕食は豪華になった。


 ◇


 その夜、馬車の灯りが消えた頃、リレイアは行動を始めた。

 まず、馬車の中の3人には睡眠が朝まで続くように薬を撒いた。

 未来の薬は体に悪いものではない。

 3人だけでなく馬も朝までぐっすりだそうで疲れも取れるらしい。


 そして、僕のいる見た目狭いテントはリレイアにより亜空間拡張されて広い部屋になっていて、遮音・防音も万全だ。

 とりあえず、4人座れるほどの机と椅子。僕にはコーヒーを出してくれた。

 今はリレイアもクリスクロスも姿を現して実音声で会話をしている。

 机も椅子も僕の他は10cmの妖精サイズなのでこんな大きな机はいらないのだが、狭っ苦しいよりいい。


「しっかし、『エレメンタル・ガーディナル・フィールド』って何ですの? 私、大笑いしてしまってコントロールをミスるところでしたわ」

「うん。ありゃ、ねーわ。全く傑作だったぜ」


 まーた、リイレアとクリスクロスにディスられる流れだ。

 わかってるよー、自分でも厨二病っぽいと思ったから。


 でも、僕にも言いたいことがある!


「リレイア! お前こそ、あの音はなんなんだよ! あの趣味悪い昔のパソコンの音とか、FAXの送信音とか! 映像もそうだ! 魔法の残像がブロックノイズってなんなんだよ。どんな悪ふざけだ!」

「あらっ、ケータのいた21世紀でちゃんと実在した現象ですのよ。転生者には相応しいんじゃありません?」


 リレイアはいけしゃあしゃあとそう答える。


「そうじゃないよ! あんなもの出されたら、21世紀から来たって丸わかりになるだろう?」

「お、おう、そういえば、そうだ。アルファニアにはあんなものないな! お前らの身元がバレるのはダメじゃねーのか?」


 おっ、今度はクリスクロスが乗っかってきた。

 そうだよな、クリスクロスだってそう思うよな。


 だが。


「大丈夫ですわ。今回はテストですの。これからは使いませんわ。それにどうせ今晩、あの3人が寝てる間に意識・記憶の改竄を行なわなくては成りませんの。不都合なことは忘れて頂きますので問題ないですわ」


「テスト? 何の?」

「これからケータが21世紀からの転生者と匂わすことが必要になるかもしれません。その時のためのテストですわ」

「へ?」


 何を言ってんだ?

 僕はこのアルファニアでなるべく目立たぬようにやらないと行けないはずなのに。

 そりゃあ、転生者であることを明かさないと行けない場面はあるかも知れない。

 けど、さっきみたいな方法はないんじゃないか?


「まあ、確かにケータが転生者であることを広めるつもりはありませんわ。ですが、それは場合によっては明かす場合があるのは仕方のないことですの。ケータと私が真に隠さなくてはならないことは56世期の技術を持っていることですわ」

「ほう、それで」

「となれば、殊更に21世紀を連想させる技術だけを殊更に見せることで、未来技術を使っていることを糊塗することができますわ」


 なるほど。そうか。確かにそうだ。

 僕ら転生者は、このアルファニアにおいて地球の科学技術という利点を持っている。

 だが、いずれ僕個人が対処する相手となるのは同じ転生者なのだから、その利点はなくなる。

 となれば、56世期の知識と技術こそが、本当のアドバンテージなのだ。

 そして、それは隠さなければならない。

 だから、殊更(ことさら)に21世紀の技術だけをひけらかして、他の時代を生きていたことをカモフラージュするつもりなんだろう。

 

「それより、明日からの予定をお話しします。すでにあの商人たちの意識と記憶は改変済みです」


 いよいよ、街に入る準備はできているらしい。

 それからリレイアが話したことは、王都クルゼナントに潜入するため、活動するための作戦だった。


想定外でしたが、これを機に王都に向かいます。


次回は、『19話 王都に入るならば』 6/10投稿予定です。

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