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14話 異世界転生してみれば

14話です。

やっと異世界に転生しました。

 ふと、気がつくと慶太は一人で草原にいた。

 さっきまでは56世期の空中都市にいたはずなのに。


 だが、確かに地球とは違う。

 まあ、コモンは300億光年四方の広さがあると主神ルルカは言っていたので、地球ではない別の星に来ているだけかどうかはわからない。

 地球の、それも21世紀と56世紀を限定的にしか知らない慶太なのだから、これが異世界だとはっきり断言などできようはずもないのだ。


 しかし、景色が違う。

 空気が違う。

 次元が違う。

 世界が違う。

 それは何かとは言えないが、確かに肌で今までと異なる世界だと認識できる何かを感じていた。


「また、どこかに送られたのか。今度はどこなのだろう?」


 慶太はあっけに取られ、周りに気を取られていたが自分自身も変わっていることに気がつく。


 自分の姿が変わっている。

 目線の具合から身長は少し低くなっているようだ。

 体型は細くなっているが、身体には力が(みなぎ)っている。まるで若い頃のように体が軽い。

 何より長年積もった心の疲れのようなものが解消されている。


 「僕は死んだのか? ここは天国なのか?」


 そんなことを自分に問いかけてみたが、空には太陽、まだ陽は高い。

 だが風が心地よく、死後の世界というには生々しい感じを受けた。

 しかし、その吹く風は21世紀で感じたものや56世紀の未来で感じたものとは何か違う。


 その途端


「アルファニアへよく来た」


 と声が聞こえた。


 そして、遠くに泡のようなものが見える。

 あっという間に広がり慶太は飲み込まれてしまう。

 周りには今目の前に広がっていた草原はなく、全て白いばかりで何もない。

 かろうじて太陽の位置がぼんやりとわかるくらいだ。


 水の中かと思い咄嗟に口を閉じたが息はできる。

 苦しくはないようだ。

 飲み込まれた瞬間に衝撃を受けることもなかった。


 しかし、それまでいた転送後の草原とは隔絶(かくぜつ)した空間にいることがわかった。

 すると等身大のもやっとした影が現れ、徐々に結像(けつぞう)していくうちに人型になり、完全にその姿を現すと話しかけてきた。


「私はアルーダと言う。この世界アルファニアの主神である」


“また、神様だ” と慶太は思う。


「来栖川慶太だな。君は元の世界で瀕死の状態にあり、コモンの神ルルカにより、この世界に異世界転生することで生きながらえることになったのだ」


 やはり異世界に来ていたとわかった。


「異世界転生ですか? 異世界転移ではなく」

「そうじゃ。見た目は前の世界の体に近いものになっているが、一応この世界で生きていた男の体に乗り移っているのじゃ。残念ながら、元の体の持ち主はこの近くの森で死んでしまったがな」


 そうなのか。

 でもそうだとすると疑問がある。


「僕が転生だとすると、その人の記憶を受け継いでないとまずいのではないですか?」

「ああ、後々其方にはその者の記憶が蘇ってくる。だが、当分は問題ない。一応、名前だけは受けついでもらうがな」


 後で、この森のそばで死んだ人の記憶を思い出すのか……


「この世界では『ケータ・リーフォン』と名乗りなさい。まだ、戸惑っているとは思うが、時間がない。今からそなたに魔法を授ける」


 えっ? 僕の名前変わるの? でもケータって?

 と、思う間も無くいきなりだった!

 慶太の頭の中に膨大な知識が流れ込んでくる!


「ちょ、ちょっと待ってーーーー。ああああ、理解しきれない。待って待って待って! 頭割れる! 割れる! 割れる!! あーーーーダメだって……」


 慶太はついに気絶したが、神の強制学習はお構いなしだった。

 56世期で脳内学習させられたけれど、それより何十倍もひどい。


 未来人の覚醒学習は、安全性をリレイアがモニターしながら、あくまで苦痛などのストレスを感じさせない範囲で進められたいた。

 ところがこっちの神様は、とにかく痛かろうが壊れそうになろうが関係なし。


 気絶する直前に慶太は「気でも違ったらどうすんの」と思ったが、そう思った途端「直すから大丈夫だ」と神の声が脳に聞こえてきた。


「冗談じゃないよ」

 

 慶太はそう頭の中でつぶやいたものの、その後痙攣(けいれん)したまま約10分間知識を詰め込まれた。

 終わった時には、また瀕死の状態かと思ったが、神アルーダは治療魔法なのかバフなのか暖かい波動を送ってきた。


 そして、


「ほら、大丈夫だったじゃろ」

「いや、全然大丈夫じゃないですよーー。うーー、ん? あれっ? すごく辛かったはずなのに、もう何ともない」


 それどころか、慶太の頭の中は澄み渡っていた。

 そして、一つ一つ自分で頭に詰め込まれ知識を反芻してみると、驚いたことにこの世界アルファニアの魔法知識を身につけていることがわかった。


 慶太が知ったのは、まずこの世界には魔法があること。

 そして相応の魔法力が与えられていて、中級レベルに達していること。


 魔法とは体内に魔素を取り込み、それを消費して魔力に変換することだ。

 魔素は空気中、水中、地中、つまりどこにでもあって魔法使いなら誰でも自然に取り込むことができる。

 従って、この魔素をどれだけ体内に取り込めるかが魔法力の一つである。

 たくさん取り込めば魔法を繰り返し使う力は確かに上がるが、一遍に使うことができなければ強力な魔法は使えない。

 簡単に言えば、前者は魔法の持続力で、後者は魔法の瞬発力である。

 瞬発力の強い魔法使いは得てして持続力がない。

 これは攻撃型の魔法使いの典型である。

 逆に瞬発力がない場合は小出しに魔法を使うので持続力はある。

 治癒系の魔法師にそういう人が多い。


 それなら瞬発力を上げて、なおかつたくさん魔素を取り込んでおけばいいと思えるが、そうはいかない。

 自分の限界を超えて取り込めば魔素病を引き起こす。

 限界容量は個人個人で決まっているが、ある程度修行していけば増やすことができる。

 ケータはアルーダに与えられた力のおかげで、すでに上級の魔法力があるが、これは魔素使用量も瞬発力も大きい。


 魔法は基本的な属性が8種類ある。

 火、水、土、風、光、闇、聖、無の8つ。

 無とは、いずれにも属さない魔法である。


 対象属性があること。

 火と水、土と風、光と闇、が対照属性である。

 また、無に対する対照属性はなく、聖は無以外の全ての対照属性と言える。


 具体的な魔法としては、すでに初級魔法は全て使える。

 中級魔法は知識としては完璧にあるが、練習が必要だ。

 これは即座に使うことになるものを優先的に、それ以外は、自分の魔力と相談しながら研究しなさいとのことだった。


 ざっと頭の中にある属性を確認した頃、不意に神が中空に呼びかけた。


「そろそろ出て来なさい」


――はい。


 56世期で僕をサポートしてくれたAIリレイアが現れた。

 一緒に異世界転移しているとは知らなかった。


 それより、声が頭の中で聞こえる。

 普通に喋っているわけではないな。


「いるんなら、もっと、早く出てこいよ」

「しょーがありませんわ。神様の話を邪魔することはできませんもの。呼ばれるまでは勝手に出られません」


 あっ、普通に会話できる。


「まあ、そうか。神様優先か。でも、さっきのは何だったんだ? 脳に直接声が聞こえたんだけど」


――はい。この方法ですね。これだと実音声は出していません。街に入ったらケータとはこの特殊な脳波で直接話します。この姿も他の人には見せません。今は通常音声に戻しますね。


「そうか、いきなりその姿で街に入るとまずいか」

「いえ、この世界には魔法だけではなく、亜人族や妖精族などもいますから私の姿もそう捉えられるのでまずくはありませんわ。ただ、目立ちますから、最初は姿を見せず陰からサポートいたしますわ。……それと……残ってしまいましたね」

「ん? 何が?」


 リレイアは空間から手鏡を出すとケータに渡す。


「うわあ、誰だこれ? 僕じゃなくて……いや、一応僕かあ……若いな。学生時代ぐらいに戻ったか? だけど、なんで髪の毛の先だけ白いんだ?」

「転生してますからね。元のケータ・リーフォンの面影も残ってます。健康状態については若返ることで、すでに傷ついていた魂の修復をほとんど終えていますわ。しかし、ただ若返るだけだとそれまで過ごしてきた記憶も消えてしまいますの。そこで、若返った体に今までの記憶をもう一度、埋め込みました。その記憶自身の中にケータの魂や命運を削った辛い経験がありますので、そこは神ルルカ様は大変気遣われましたの。精一杯、魂を保護いたしましたけど、どうしても残ってしまった影響。それが記憶の代償として僅かに残った髪の色の脱色状態ですの。わたくしの仕事の一つはケータのその髪の毛を元のように戻すことでもあるんです」


 そうか。16歳にまで戻り僕の命運は危機を脱したということか。

 ただ、体は戻っても21世紀の40歳までの記憶、56世期での6年間の記憶を保持するために代償が必要だったらしい。


「構わないよ」

「えっ?」

「大したことじゃないし、これはこれでいい感じだろ?」


 髪の毛ぐらい大したことじゃない。

 それに綺麗に先だけが2cmほど白いので、なんかこれはこれでおしゃれなデザインっぽい。

 もし、隠したいなら染めればいいし。


「そうですね。では、それに合わせてこの世界のお召し物も選んでいきますわ。それより、この世界でなすべきことなのですけれど……」


 と、そう話しているところで神が説明を始めた。


「ああ、それについてはワシから話そう。この世界にはケータと同じにように、コモン世界からの転移者がたくさん来ておる。彼らはコモンの主神ルルカにより、この世界アルファニアの安定化を図るため来たはずなのじゃが、残念ながら使命を果たせないものもいる。それどころか、魔法文明の衰退を招くような行動をしているものがいる始末での」

「はい。そこまではルルカ様から聞いています」


 リレイアはすでに知っていたみたいで、そう答えた。

 コモンの神ルルカ様が言っていた仕事って、これだったんだと気づいた。


「ケータとリレイアには彼らを止めて欲しい。特に凶悪な魔法で人々に魔法嫌悪を抱かせかねないものは排除せねばならん。何も殺せとは言わんが、場合によっては無力化が必要になるじゃろう」


 人殺しはしたくないな。

 平和な世界でしか暮らしていないもの。

 考えたこともないし。


「転生したばかりの今の力では、強大な魔力を持つものが相手では太刀打ちができないかもしれぬ。幸い、相手はコモンから21世紀の日本から来たものばかりである。56世期の技術と知識を持つリレイアとケータにはアドバンテージがあるはずじゃ。これを駆使して何としてもやり遂げて欲しいのじゃ」

「そんな大役務まりますかね」


 ルルカ様はそんなこと言ってなかったんだけどな。


「今すぐにとは言わん。まずは、この世界に馴染(なじ)んでもらいたいし、魔法にも習熟する必要があろう。それに、ルルカから聞いておるがケータよ。お主は、まず生命力の治療・命運の回復が必要じゃったはずじゃな。それを最初にするのが先決じゃ。そして」


 ここで神様はリレイアの方を向く。


「リレイアにはこれを授ける」


 リレイアに光の粒が注がれる。するとリレイアは戸惑い、目を閉じ、体全体で何かを受け止め、震えていた。

 それは、やはり10分ほど続いた。それが終わると、やがて目が輝き始めた。


「神アルーダ。感謝致します」


 リレイアは空中にあるまま、上気した顔で丁寧に礼をした。

 リレイアはこのアルファニア世界の知識を得たのだった。


 それは基本知識と言うにはあまりにも膨大で包括的であり、人の身では決して受け入れられないほどのものであった。

 56世期の管理サーバAIであるリレイアであるからこそ受け入れることができたのである。


 まずはこの星の知識。

 この星はランゾルテという名前で、2つの月フレーメとサルーテがあること。

 太陽はソヌーと呼ばれていること。

 ソヌーは地球における太陽とそう差がないこと。


 次は物理的な知識。

 そして、それに対する物理的な特性として周期や組成などに関すること。

 人々からこの星に対する言い伝えや信仰、またその理解力から魔法に与える影響について。


 この星の地理と歴史。

 ここはクルゼ王国と言われる国で、この場所は王都近くであること。

 歴史は、この星全体についてとクルゼ王国の成り立ちについてを詳しく。


 そして、経済、科学技術レベル、そして最後に魔法。


 しかし、リレイアには僕より随分たくさんの知識を教えていたようだ。


 いいなあ、僕にも魔法以外の知識を教えてくれないのかな。

 アルーダ様、と思っていたら……


「いささか量が多いでな。歴史と地理だけで地球の本にして3万冊ぐらいの知識だ。リレイアに与えた知識全体では、何百万冊分になるかのう」


 やばっ。

 考えていたことがアルーダ様には丸わかりだったようだ。


「あー、大丈夫です。アルーダ様! 全部リレイアに伝えといて下さい。僕はいいですから!」


 慌てて、ケータは断る。

 さっきの強制学習みたいな感じで、そんなもん詰め込まれたら本当に頭がパンクして死んでしまう。


 リレイアに一通りの知識を与えると、神アルーダは小さな塊を投げてよこした。

 それはわずか10cm足らずの黒く薄汚れた金属で、見た目は鉄屑、とても大事なものとは思えない。


「リレイアにそれを授ける。羅鉄鋼(らてつこう)と言われるもののかけらじゃよ。魔素が強い田舎の地域では農民もそれを農具につけておる。そんな物でも、弱い魔物程度には対抗できるでの。これがリレイアが魔法を理解し利用するためのヒントになるじゃろう」


 そこまで言うと神アルーダは周りを見渡した。

 太陽が転移した時よりもだいぶ傾いてきた。

 転移してから3時間が経過していた。

 改めてアルーダはリレイアをじっと見ている。


「な、なんでしょうか?」


 リレイアはちょっと身構える。


「リレイアよ。お主について、ちょっと考えなければいけないことがある。続きは明日としよう。今日はこの草原で過ごしてもらわなければならないが、問題ないな?」

「はい。それは大丈夫です」


 それから、アルーダは翌日に話の続きをすることを約束して消えて行った。

 同時に周りを支配していた白いもやのような泡の中から解き放たれ、あたりは元の草原の風景に戻った。


 この時間の異世界の景色は美しい。

 これから考えなければならないことはたくさんある。

 神との邂逅(かいこう)、異世界転生を告げられたこと。

 魔法の習熟。

 この世界に来ている日本の転移者や転生者の現状。

 その前に街の様子を探ることも必要だろう。


 だが、それもこれも今は忘れよう。

 この異世界で初めて見るこの素晴らしい夕焼けには眺めるだけの価値があるのだから。


異世界アルファニアに来て、主神アルーダに会いました。

来栖川慶太はケータ・リーフォンとなり、姿は元居た世界の16歳の姿に近くなっています。

いよいよ異世界で生きていく訳ですが、そうすんなりとは活動できません。

次回は口の悪い仲間をアルーダに紹介されます。


次回は、『15話 新たな仲間が増えたなら』 5/27 投稿予定です。


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