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 ゾラが旅の仲間に加わった。


 といってもエマさんの弟子になったわけではない。


 カタリナさんやエマさんと話し合った結果、ゾラはニューズ魔法学校に入学させるということになった。


 ただ魔法を学ばせるというだけであれば、おそらくエマさんやシマダ商会お抱えの魔導士に指導してもらうのが一番効率が良いのであろうが、ゾラが遠慮がちに「学校に行ってみたい」と希望を漏らしたのでそういうことになった。


 話し合いを終えた俺たちはひとまず孤児院を後にする。


 ゾラとはまた明日合流することになった。


 ゾラも孤児院の仲間に別れを告げる時間が欲しいだろうからな。


 カタリナさんが今夜はお別れのパーティーをすると言っていたので、マジックバッグからほんの少しのお金を寄付しておく。


 少しパーティーの料理が華やかになる程度のお金だ。


 本当であればドカンと札束キューブを寄付したいのだが、ここでは少し場所が悪い。


 なんせスラム街の隣だ。


 良からぬ奴らに大金があると嗅ぎ付けられたら、孤児院のみんなに危険が及ぶだろう。


 なのでひとまずはこれだけだ。


 ゾラについての話し合いが終わったあと、俺はカタリナさんから孤児院の状況について聞いていた。


 見るからにボロい建物からもわかるように、孤児院の経済状況はカツカツだった。


 国からも援助金は貰っているようではあるが、孤児たちの食費をギリギリ賄えるかどうかのものであるらしい。


 年長の孤児たち(といっても最年長組で14歳ぐらいらしいが)が街に働きに出て、少しは家計を支えてくれているらしいが、そのぐらいの子どもが働いて得られる賃金など雀の涙程度。


 薄味の豆のスープにぼそぼそパンでどうにか食いつないでいるようであった。


 時折、孤児院から独り立ちした大人が肉やら魚やら届けてくれるらしいが、学もコネもない孤児院出身者だ。


 自分の食い扶持を稼ぐだけでも大変であることは容易に察しがつく。


 なけなしの身銭を切って食料を届けてくれる彼らにもカタリナさんは心を痛めているようだ。


 話を聞けば聞くほど俺は自分に腹が立っていた。


 どこにも還元することなく馬鹿みたいに私腹を肥やしてしまっていた自分に。


 この世界に企業が社会貢献活動をするという文化はないので、俺のことを非難するものはいないであろう。


 言い訳にしかならないが、俺にこれほどの財力があることを把握していなかったし、シマダ商会についてきてくれた従業員を路頭に迷わせないためにも目の前の仕事に全力で向き合っていたものだから、こういったところまで目が届いていなかった。


 エマさんやドラファルさんを始めとした商会の幹部たちはやたらと褒めちぎってくれるが、俺なんてちょっと商売が上手くいっただけの大したことのない人間だ。


 気付けば世界皇帝なんてご大層な呼び名がついてしまった俺だが、目の前のカタリナさんの方がよっぽど人として尊敬できる。


 ……まあ、過ぎたことを悔いても仕方がない。


 これからの行動で挽回だな。


 とりあえず商会に寄って、孤児院への今後の支援の形を考えることにしよう。


 〇


 商会に戻った俺たちはスコット君とマルギットさんを交えてちょっとした会議を行うことにした。


 議題はもちろんシマダ商会における社会貢献活動についてだ。


 だが、本題に入る前に俺はふと気になったことがあった。


 俺の財力でできることと、世界皇帝などと呼ばれる俺の社会的立ち位置についてである。


 そのことを訊いてみると、三人から思いもよらぬ答えが返ってきた。


「コウタロウ様はあまりにもご自身について興味がなさすぎです。

 あなた様は今、三柱様を除いたこの世界のトップなのですよ」


 そう言ったのはスコット君である。


「は?

 それってどういうことなんだ?」


「どういうこともなにも言葉通りです」


「そりゃありえないだろ。

 言葉通りに捉えると、俺はアルマシア王やアダム、獣王とかよりも偉いってことになるぞ?

 さすがに持ち上げ過ぎだ」


「いいえ、コウタロウ様。

 これはシマダ商会の人間としての意見ではありません。

 世界への影響力を踏まえた客観的事実です」


 え、マジで?


 本気で言ってるのか?


 そう思いエマさんとドラファルさんに視線を向けると、二人も頷いて肯定する。


「ふぉっふぉっふぉ。

 スコット殿は紛れもない事実を述べておりますぞ。

 そこに一切の私見は入っておりませぬ」


「ふふふ。

 ちなみに財力に関してはだいたいアルマシア王国の国家予算500年分ほどです。

 国を買ってもおつりが出るかと。

 あのデラリオでの光景には私もちょっと言葉を失いましたね。

 正直、どうやったら使い切れるのか見当もつきません」


「うへえ、そんなにかい?

 となると減給してくれっていう要望は叶えてもらえそうにないね。

 金は多くあるに越したことはないといっても……多すぎるのもちょっと困るってもんだよ。

 あ、そんな不安そうな顔しないでおくれよ。

 もう一生分の蓄えはあるけど、商会を辞めるつもりはないさ。

 コウタロウ様には恩があるし、この仕事も楽しいしね」


 最後にそう言ったのは姉御肌のマルギットさんである。


「ま、まあ給料が多すぎる問題についてはナターシャさんに相談してみるけど、あまり期待しないでくれるとありがたい。

 すまんけど、俺も自分が気付かぬうちに溜め込んでいた資産で押しつぶされそうなんだ」


「ハハハ!

 心中お察しするよ」


「しっかしまあ、俺の立場がそんなことになっていたとはなあ。

 屋敷に籠って一生知らないままでいたかったもんだ」


 俺がため息交じりにそう呟くと、肩の上のファラがぷうっとむくれた。


「コウタロウ、ファラに会わなくてもよかったんだ。

 ファラ、悲しい。

 もう知らない」


「ああっ!

 違うんだファラ。

 そういう意味じゃない!

 俺は心からファラに出会えてよかったと思ってる!」


「世界皇帝もファラちゃんの前じゃ形無しだねえ。

 世のお偉いさんたちはこれを見てどう思うことやら」


 プイとそっぽを向いてしまったファラにあたふたしている俺を見てマルギットさんがそう呟いた。

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