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ギルドの闇

 

 スコット君を先導にして歩くこと十分ほどでシマダ商会サンドリア支店が見えてきた。


 王都には立派な建物が多く並んでいるが、サンドリア支店はその中でも群を抜いている。


 最初はここまで大きくなかったのだが、商会の発展と共に増改築を繰り返した結果こうなってしまった。


 この王国でサンドリア支店より立派な建造物となると王宮ぐらいなのではなかろうか?


 貴族からのやっかみも多いわけである。


 まあ、そんな体面を気にするような貴族は総じてつまらない人間であることが多いので遠慮なく撃退させてもらっているが。


 スコット君が担当してくれていなければこんな強気な対応はできないけどね。


 中に入ると、商会の制服をビシッと着こなした従業員が一斉にこちらに深々とお辞儀をする。


 なかなか壮観な光景だ。


 それにしても教育が行き届いているようでなにより。


 ひとたび求人を出せば貴族の子息までもが応募してくるような大商会だ。


 この中にもおそらく高貴な身分出身の従業員がいるのだろうが、初心者冒険者の装備で身を固めた如何にも身分が低そうな俺たちにも丁寧な態度を取っている。


 もしかしたら近くにスコット君がいるからだけかもしれないが。


 ……いや、その可能性はないな。


 スコット君がそのあたりの教育を疎かにするはずがない。


 外面だけの接客しかできない従業員など、すぐにクビにされていることだろう。


 そんな従業員たちに手を上げて返すスコット君。


 その様はなんだか異国の王子様みたいである。


 イケメンだからなあスコット君は。


 すらりとした伸びた脚、さらりと風でなびく黒髪、妖しい光を放つ切れ長の目。


 現世の本屋で見た某執事のマンガを思い出すルックスの良さだ。


 それに加え冒険者としての実力もあるのだから、天は二物を与えずなんてのは嘘っぱちなのだと痛感させられる。


 商会の応接室に入り、ここからは恒例の流れ。


 イケメンが涙する姿って絵になるよなあと思う。


 こうして正面からじっくり見ると、やはりとんでもないイケメンである。


 従業員の中にはスコット君目当てで働いている者も多いのではないだろうか。


 スコット君の涙も落ち着いたところで色々と話を聞くことにする。


「そういえばアルマシア王が亡くなったみたいだね。

 それから王都になにか変化はあるかい?」


「さすがコウタロウ様。

 情報が早いですね。

 いえ、いまのところ大きな変化はありませんよ」


「そうか。

 しかし、これからなにかと面倒事に巻き込まれそうだよなあ。

 それにどう対応していくか事前に対策は立てておいたほうがいいようには思うんだけど……

 スコット君はどう考えてる?」


「そうですね……ひとまず従業員が狙われて人質になってしまうと面倒ですね。

 支店が狙われるぶんには対処できますが、従業員のプライベート時を狙われると私の手に余ります」


「それは俺も危惧してることだなあ。

 逆にこれまではどう対処してきたの?

 ちょくちょく妨害にあったりしてたことは報告で知っているんだけど、詳細までは聞かされていないからさ」


「この支店を任された手前、コウタロウ様の手を煩わせるようなことにならないよう報告は控えておりましたが……

 実はギルドの闇の部分に依頼をしているのです」


「ギルドの闇の部分?」


 俺が首を傾げていると、エマさんが答えてくれた。


「暗殺ギルドですね」


「ああ、ヌワさんが所属してたところか」


「はい。

 冒険者や警備団に依頼するよりも信頼性、実力ともに優れていますから。

 その分契約金は高くついてしまいますがね」


「そうだったのか。

 そこまでして対応してくれていたことに感謝するよ。

 契約金についてはどれだけかかっても問題ない。

 従業員の安全が最優先だ。

 守ってやってくれよ」


「ありがとうございます」


「それにしても暗殺ギルドか。

 ヌワさんから存在は聞いていたけど、どんな組織なんだろうな?

 ちょっと気になるね。

 覗いてみることってできるのかな?」


「それは願ってもない話です。

 よろしければご足労いただくことは可能でしょうか?」


「それはもちろんいいけど……なにか理由があるのかい?」


「実は暗殺ギルドの長がお会いしたがっているのです。

 シマダ商会の真のトップに」


「俺に?」


 おっとこれは予想外の事態。


 そうそう簡単にお邪魔できる相手ではないと思ってたから、冗談半分で聞いてみただけなんだけどな。


 どうやら暗殺ギルドの長なる人物はエドワード君の影に隠れる俺の存在に気付いていることになる。


 いったいどこで気付かれたんだ?


「向こうは俺のことを知っているのか?」


「いいえ。

 ただエドワード様が商会のトップではないとは確信しているようです。

 密偵を使って調べ上げようともしていましたね」


「こ、怖いなあ。

 そんなの調べてどうすんのよ」


「まあ、我々幹部がコウタロウ様の存在を漏らすことはないので無駄足に終わったようですがね。

 密偵をある程度泳がせたあとに私からも脅しをかけておきましたのでご安心を」


 脅すって……


 暗殺ギルド相手にしていいことなのか?


 それに屈してしまう暗殺ギルドも大丈夫かと思ってしまう。


 商会が上客だからなのか、それとも二つ名持ちの冒険者を敵に回したくないからなのか。


 どちらにせよ暗殺ギルドの長とやらには会っといたほうがいいかもしれないな。


「まあ、事情はわかったよ。

 それじゃあ明日にでも案内をお願いしてもいいかな?」


「かしこまりました」


 さて、なんとなく好奇心のままに会いに行くことが決まったわけだが、いったいどんな人物なのだろうか?


 暗殺を生業とする組織の長だ。


 やっぱり貫禄とか迫力とか凄そうだな。


 商会の面子のためにもビビらないようにしたいが、少し不安が残る俺であった。

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