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「あっはっはっはっは!

 ヤバ!

 大物過ぎ!

 どこまで出世してんのさ!

 スゴ過ぎて笑える!」


 腹を抱えてゲラゲラ爆笑するミレーヌ。


 そのかたわらのアンスリアさんは狐につままれたような顔でしばらくこちらをポカンと眺めていたが、やがて理解が追いついたのかぷるぷると身体を震わしはじめた。


「生ける伝説に神域の魔女……それにシマダ商会の会長だって?

 う、うう嘘だ!

 そんなバカげた話があるか!

 ほらを吹くのも大概にしろ!」


 アンスリアさんの反論はごもっともである。


 俺はともかく、エマさんやドラファルさんみたいな英雄的存在がこんな田舎道をうろついているわけないもんな。


「そう言われてもなあ……

 事実だし」


「まだ嘘を貫き通そうとするか!

 ならば証拠を見せてみろ!」


「証拠と言われても……

 どうすれば信じてもらえるのかな?」


 そう言うとアンスリアさんは自前のマジックバッグをごそごそと漁りだす。


 取り出したのは大きな水晶玉だった。


 あれは確か魔力測定の魔道具だったか。


 手をかざすとその人間の持つ魔力量に応じて色が変わるという。


 冒険者ギルドや魔道学院でよく見るやつだ。


「まずはあなただ!

 もしあなたが神域の魔女であるというのならばこの水晶に手をかざしてみろ!

 エマ・シーラッハはこの世界で唯一、黒色に変化させたという話だ。

 本人であるならできるはずだ!」


「いいですよ。

 ふふふ、なんだか懐かしいですね。

 魔力測定などいつぶりでしょうか。

 アンスリアさんのご期待に沿えればいいですけど」


 魔力を込めた手を水晶にかざすエマさん。


 水晶はみるみる黒く変色していき、どういうわけか破裂して粉々に砕けた。


「なっ!」


「わあっ!

 砕けちゃいました。

 どうやらあれからさらに魔力が増えているようです。

 どうしてでしょう?」


「ふぉっふぉっふぉ。

 コウタロウ様のお供をしていれば自然と強くなることでしょう。

 なにせコウタロウ様は時折とんでもないところへ足を運びますからなあ。

 龍王の霊峰然り不可侵の聖森然り」


「そういえばそうでした。

 あそこに出る魔物には苦労させられましたね、翁」


「いやはやまったく。

 実に刺激的な道のりでした」


「な、なんかすまんな。

 どうだろう、これで信じてもら……

 アンスリアさん?」


 口をぱくぱくさせながら砕け散った水晶を見つめるアンスリアさん。


 その間抜けな表情がツボに入ったのか、ミレーヌは足をばたばたさせながらさらにゲラゲラ笑う。


 まったく貴族らしくない。


「……ま、まだだ!

 神域の魔女はと、ともかく……ドラファル・グラニクス・ヴィルストームなどと騎士の私の前でよくぞ言えたものだ!

 三百年前に魔物のスタンピードから王国を救ったという伝説の男。

 存在したかすら定かではない神話上の存在。

 私の憧れの英雄の名をそう易々口にするな!」


「ふぉっふぉっふぉ。

 このような美しい騎士に憧れて抱かれていたとはなんとも嬉しいですな。

 後ほどサインをあげましょう」


「ふ、ふざけるな!

 ご老体とはいえ私の憧れを偽るのは許さんぞ!」


 おお、すげえ熱意。


 アンスリアさんは本当にドラファルさんに憧れているんだなあ。


 まあ、目を奪われるような洗練された体術で化け物みたいな魔物たちをなぎ倒していく姿はすごくカッコいいなと思う。


 武の道を生きていない俺からしてもそうなのだから、冒険者や騎士からしたらそれ以上に崇拝の対象なのだろうな。


「して、私はどうすればあなた様に信じていただけますかな?」


「と、闘気だ!

 伝説の男であるならば凄まじい闘気に満ち満ちているはず!

 あなたには強者の闘気を感じない!

 立ち姿こそ隙がないが、その程度の闘気でよくぞドラファル・グラニクス・ヴィルストームの名を語れたものだ!

 恥を知れ!」


「ふむ、闘気ですか……」


 ドラファルさんは顎鬚を撫でつけながら考える。


「そうですなあ……

 全開放は周囲に影響が出てしまうので三割ほどお見せしましょう。

 完全に抑え込むのは簡単ですが、ほんの少しだけ開放するとなると加減がなかなか難しいですな。

 三割、三割……

 むんっ!」


 ドンっという炸裂音と共にドラファルさんから闘気が天高くまで立ち昇る。


 放出の余波でせっかくの焚火が崩れて消えてしまったが、月が明るいおかげで視界に困りはしない。


 夜空を見上げると、闘気がぶち抜いたのかドラファルさんの頭上の雲にデカい大穴が開いていた。


 とんでもないじいさんを部下に持ってしまったものだなあと雲に開いたデカ穴を見ながらつくづく思う。


「ふぉっふぉっふぉ。

 いかがですかな?」


「すっごーい!

 やっぱ本物はとんでもないね!

 迫力が違うわ!」


「お褒めにあずかり光栄ですよ、ミレーヌお嬢さん」


「じゃあ、次は俺の番かな……

 ん?

 アンスリアさん?

 ……あらま」


 ドラファルさんの闘気に当てられたのか、アンスリアさんは立ったまま気絶してしまっていた。


 慣れている俺とエマさんはいいとして、ミレーヌが気絶してないのはやはり強さに起因しているのだろうか。


 あっ、ファラは大丈夫かなと思ってその姿を探すと、エマさんの谷間を枕にすやすや寝ていた。


 あの闘気に初見で動じないとは。


 将来大物になるかもしれんなあ。

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