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ガラン

 

 そういえば説明していなかったが、俺が普段過ごしているのはアルマシア王国である。


 この異世界には大きく分けて三つの国がある。


 アルマシア王国、デンゼル獣王国、オルゼリア魔王国の三つだ。


 アルマシア王国は主に人族が暮らす国であり、三国の中でも一番広大な土地を持つ。


 デンゼル獣王国は名の通り獣王と呼ばれる獣人の王が統治する国であり、主に獣人が暮らしている。


 オルゼリア魔王国もそのまんまだな。


 魔族と呼ばれる種族が暮らす国であり、俺にしょっちゅう手紙を寄越す魔王が統治している。


 種族、文化、言語が違うとなるとやはりなにかしら国同士のいざこざがあるらしく、残念ながら争いのない平和な世の中とは言い難い。


 平和ってのはなかなか難しいもんだ。


 平和とは戦争と戦争との間の騙しあいの期間であるとどこかで読んだけど、知的生命体が存在する限りこのしがらみから逃れられないのだろうか?


 しかしながらこの異世界は三柱という巨大な個の力が監視してくれているから、現世よりかは幾分マシかもしれないな。


 よっぽど酷い戦争が起きたらきっと介入して止めてくれるはずだし。


 三柱さんの酒に酔いつぶれてだらけきった姿を見てるとちょっと心配になるけども。


 〇


 ガランに到着した。


 ひとまずシマダ商会ガラン支店に顔を出すことにする。


 ここガランの街はアルマシア王国の中でも比較的大きい部類の街だ。


 なんとなくの俺の感覚だが王都を東京と例えると、ガランの街は福岡ぐらいのイメージである。


 なのでここには幹部と幹部補佐の二人が配属されている。


 すなわち俺の顔を知っている二人だな。


 ベールズはアントン君一人で事足りるけど、これぐらいの規模の街はさすがに補佐なしでは厳しいだろう。


 商会の中に入ると、なにやら騒々しい。


 騒ぎの方に目を向けると、一人の大男がスタッフに突っかかっていた。


「なあ、お嬢さん。

 そんなケチケチしなくてもいいじゃねえか。

 俺は客だぜ?

 前みたいにポンと金貸してくれりゃいいんだよ」


 どうやら金の無心をしている客がいるようだ。


 実はシマダ商会では物品の取引だけでなく、銀行としての業務も営んでいたりする。


 なにかと手広くやっているのだ。


 最初は難しいかなと思ったけど、なんだかんだ上手くやれている。


「粘られても無理なものは無理です。

 デヌーロ様は前回の借金も返し終えてないですし、返済能力がないことも把握済みです」


 おっ、懐かしい声が聞こえてきた。


 対応してるスタッフは誰かと思ったが、あの子なら安心だな。


 大男のデカい背中に隠れてしまっているせいで姿は見えないが、きっと委縮することなくその小さな胸を堂々と張って対応しているのだろう。


「ちゃんと前回分も合わせて倍にして返してやるからよ。

 おたくらもその方が嬉しいだろ?

 ツキってやつがきてるんだよ」


「定職につかずギャンブルですか。

 倍にして返せる保証がどこにあるというんです?

 ここに金を借りにきている時点で既に運から見放されていると考えたほうがよろしいかと」


「うっ、うるせえ!

 ぺちゃぱい風情がデカい面しやがって!

 黙って金を出しやがれ、このクソガキが!」


 ごもっともな指摘に逆上した男が拳を振りかぶる。


 あー、可哀そうに。


 あの娘に禁句を言ってしまったな。


 この後のなにが起こるかは容易に想像がつく。


 幾度となく見たお馴染みの顛末だ。


「誰がぺちゃぱいだ!

 このどぐされクソジジイがあ!」


 そこからは一瞬だ。


 パンチをよける。


 相手の頭部を片脇に捕らえる。


 抱え上げる。


 思いっきり頭から床に突き刺す。


 以上である。


 床をぶち抜き杭のように突き刺さる大男。


 シマダ商会ガラン支店に新しいモニュメントが誕生した。


「ふぉっふぉっふぉ。

 相も変わらず見事な技のキレですな」


「ですね。

 ターニャさんのあの技は芸術の域まで昇華しているように思います。

 実に清々しいです」


「あれっ?

 その声はドラファル翁にエマさん?

 それに……コウタロウさんじゃないですか!」


 そう叫ぶや否や俺の胸元に飛び込んでくる少女。


「ごほっ!

 や、やあ、ターニャ。

 ひさしぶり。

 必殺のDDTは健在なようだね」


 俺たちはシマダ商会一の元気印であるターニャと再会したのであった。

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