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『僕は彼女の執事として彼女の楯になろう』

『僕は彼女の執事として彼女の楯になろう』


僕の右手には昔から剣があった

僕の左手には昔から何もなかった

だけど僕は騎士などではなかった

一介の傭兵として世界を駆けていた

そしてあの市街まちで彼女に出会った


「まだ十五にも満たない子がなぜ戦場に出るの?」

「君だって僕と同い年ぐらいだろ?」

そう、僕らは幼かった

「それでも子供が戦うのはおかしいと思うわ」

「そうは言っても、孤児にはこうしないと生きられない子もいるんだよ」

僕の放った「孤児」という言葉に

彼女はバツが悪そうに俯いた

「そんなに落ち込まなくても…もう慣れてるから」

僕は彼女が落ち込むのを見ていられなくなり口を開いた

「お金があればあなたはあんなに危険な戦場には行かなくてもいいの?」

「お金って言うよりは、家とか食べ物とかかな

 僕だって闘いながら生きていくのは嫌さ」

「それじゃあ…」

彼女は僕の返答に期待を込めて口を開いた

「私の家で働かない?」

僕の全てを変える一言…彼女の口からさらっと零れ落ちた

「はは、それが出来たら苦労しないさ」

僕は彼女の一言が、どれほどの力を持っているかまだ知らなかった

「別に冗談で言ってるわけじゃないわよ」

「君が裕福なのは分かっていたけど、孤児には働く場所なんてないんだよ

 君がそう言ってくれても君のお父さんは許さないかもしれないだろう?」

しかし、僕の言葉を聞いても彼女は微笑んだままだった

「明日、日が暮れる頃にまたこの場所に来て」

彼女柔らかな笑みを残してその場を去った。


僕の右手にはまだ剣があった

僕の左手はもう空っぽではなく、柔らかな何かがあった

それが何なのかに気付くには幼く

ただひたすらにそれを守ろうと心に決めた

そして…夕暮れ時に僕はまたこの市街まちに来た


次の日あの場所に行くと

彼女の隣には優しそうなおじさんが立っていた

「彼かね?」

おじさんは柔らかな口調で彼女に訊いて僕に近寄った

少しの間お互いに見合った後、少しずつ、そしていろいろ話した

「この人が君のお父さんかい?」

「そうよ、言ったでしょ?

 あなたが私のところで働けるように頼んだの」

気付けば辺りも暗くなっていて、僕は彼女の家に連れて行かれた

「どんな仕事がいいかね?」

唐突に言われた一言

突き放されると思っていたのに孤児である自分を雇い入れようと言うのだ

「何も孤児だからと言って蔑む必要がどこにある?

 ほら、どんな仕事がいいんだい?」

彼女の父に訊かれて、僕は何も考えずにただ

「出来るだけ彼女に近くで」

と言っていた


この時から僕の右手から剣はなくなった

そして僕の左手には護るべきものが生まれた

幼心に彼女を護ろうと思った

自分にできる全てを賭して、小さな両手に背負う全てを護ろうと

神と、そして彼女に誓った

そして、僕は彼女の執事となり楯となった


彼女の家は名の知れた名家であり

それでいて敵も少なくない旧家だった

彼女が僕に戦うなと言ったから、僕は武器を棄てた

それでも彼女に見つからないように体は鍛え続けた

僕はいつでも彼女の側にいた

彼女はいつもトラブルに巻き込まれていて

僕はいつも彼女を見ていた

多少ムリをしてでも僕は彼女を助けた

僕が無理をする度彼女は怒った

それでも僕は構わなかった、彼女は僕が守ると決めたから

十年の年月が流れて、この生活が終わろうとしていた

戦場からの流れ矢が彼女の胸を貫いた

一生の不覚、僕は初めて神を呪った

何故自分ではなく彼女だったのか

僕の隣で崩れる彼女を抱きとめ、子供のように喚き散らした

「そんなに泣いて…いつまで経っても子供ね」

彼女は荒い息を吐きながら言った

「まったく、まさかこんなことになるとはね

 でも、もう少し長生きしたかったかな」

彼女の瞳から涙が落ちる

「大丈夫、そのぐらいじゃ死なないさ

 天下のお嬢様だろ?凄い奴なんだろ?」

思いつく限りの言葉を掛ける

「そうね、でも今回はちょっとヤバいかな…

 でもまぁ、あんたの失態じゃないから罰はなしよ」

彼女は苦しみを見せずに笑う

「待ってくれよ、光が無くなったら…

 闇の中で、弱々しい草はどうやって生きろって言うんだよ?」

僕は馬鹿だ…彼女が苦しんでいるのに

まだ彼女に縋ろうとしている

自分の幼さに涙が溢れる

すると、ふと彼女の手が僕の左肩に伸びる

「もう、少しは静かにしなさいよ

 貴方はもう弱くなんてないわ、自分で闇を切り開く力を持ってる

 まぁ、私から見ればまだまだ小さな騎士ナイトだけどね

 でも、ほら、こうすれば周りから見れば立派な騎士よ」

そう言って彼女は僕の左肩にスカーフを巻く

主君から騎士に与えられる勲章だ

彼女の血がスカーフ越しに僕の左手を伝う

「さて、そろそろかしら…

 貴方は生きてみやげ話をしてよ

 命令だからね、私よりも色々な物が見れるなんてずるいんだから

それじゃ…私は先に行くから…」

彼女は最後の命令を残して僕を置き去りにした


その時から僕の手には煌めく弓があった

そして僕の左肩には彼女の執事として、騎士としての証である

彼女のスカーフが巻かれていた

彼女の命令を守るため、亡き彼女に忠実であるために

僕は旅人となって世界を駆けていた

あの市街まちを離れ、僕は旅してまわった


 そして…

僕は旅しながら世界の秘境を探し求めた

最期まで我儘だった彼女へのみやげ話

彼女の知らない大地を見る度に

僕は天に向かって矢をつがえた

「貴女に矢を向けるとは失礼ですが…」

そう言って日の光を受けて輝く矢を放った

そしてまた秘境を探し、僕は世界を駆けていった…

自分で妄想していたら勝手に出来上がってしまった作品ですので、やや雑な面があるのはご了承ください

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