表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
263/317

72-5

 さて、今日作るのは、豆腐ハンバーグだ。

 ひき肉と豆腐を混ぜ合わせることで、普通のハンバーグと比べ、カロリーと脂質を抑えることができる。豆腐は体にもいいし、値段を抑えることもできるため、一石二鳥どころではない。

 問題があるとすれば、少々味気ないところだろうか。ただ、それは工夫次第でどうとでもなる。

 まずは、みじん切りにしたたまねぎを、飴色になるまで炒める。

 この間に、ソースを作る。しいたけやえのきををフライパンで炒め、そこに水、酒、みりん、醤油、砂糖、出汁の粉を入れて、軽く煮立たせる。最後に片栗粉でとろみをつけてやれば、和風あんかけソースの完成。

 たまねぎが飴色になったら、一旦皿に移しておく。

 ここからは、いよいよタネ作りだ。

 豆腐を泡だて器でよく潰し、滑らかになるまで混ぜる。

 そして、合い挽き肉、炒めたたまねぎ、たまご、パン粉、塩コショウとナツメグを加え、ペースト状にした豆腐とよく混ぜ合わせる。

 タネが完成したら、ほどよい量を手に取り、空気を抜きながら形を整える。

 このとき、手のひらにサラダ油を薄く塗っておくと、タネがくっつきづらくなり、焼き上がりも綺麗になる。ちなみにこれは、最近学んだことである。

 すべて形を整えたら、焼きの時間だ。

 フライパンにもサラダ油を引き、タネを強火で焼いていく。いきなり強火なのは、表面に焼き色をつけていくためだ。

 両面にしっかり焼き色がついたら、火を弱め、蓋をかぶせて蒸していく。これで中まで火が通るようになる。

 数分後。竹串を刺してみると、透明な肉汁が溢れてきた。火が通っている証拠である。

 皿に盛りつけ、上からあんかけをたっぷりとかけたら、和風あんかけ豆腐ハンバーグの完成だ。


◇◆◇


「すごいですね……りんたろう先輩。さっきから全然手が止まらないっていうか」


 サナは、料理を作る凛太郎をボーっと眺めていた。

 玲たちは、その様子を得意げな顔で見守っている。

 彼女たちにとって、凛太郎というサポーターがいることは、この上ない自慢であった。

 凛太郎が褒められると、自分のことのように嬉しくなってしまう。


「期待していいわよ。凛太郎のご飯は絶品なんだから!」

「楽しみです……! でも……」


 サナの不安げな顔に、三人は首を傾げた。


「私ってそのー、意外と大食いでして……引かれてしまわないか心配で」


 そんな悩みを聞いた三人は、噴き出すように笑う。


「ちょ、ちょっとぉ! 笑わないでくださいよ!」

「ごめんごめん。何を言いだすのかと思えば、可愛いことで悩んでるなって」

「もう、これでも本気で悩んでるんですよ?」


 そう言って、サナは頬を膨らませる。

 後輩らしい可愛い仕草に、玲たちは自然と笑顔になった。


「気にすることない。私たちも、いつもたくさん食べる」

「特に玲が食べる量見たら、度肝を抜かれるわよ?」

「えー⁉ こんなに細いのに⁉ 全然そんなふうには見えないんですけど……」


 訝しげな視線を向けられた玲は、嬉しそうに頬を押さえた。


「細いって言われた。なんだか嬉しい」

「ま、ボクらは食べても栄養がここに行くからね」


 ミアが胸を張る。

 ボーイッシュな印象に似合わない豊かな胸が、わずかに揺れた。

 負けじと、玲も胸を張る。それを見ていたカノンは、二人を睨みながら、舌打ちをこぼした。


「何よ、自慢しちゃって。サナもこんな先輩嫌いよ……ね……」

「どうしました? カノン先輩」


 サナの胸元を見たカノンは、言葉を失った。


――――こいつもでかいやんけ……。


 服の上からでも、しっかりとした膨らみが見て取れる。

 玲ほどではないにしろ、ミアとはほぼ互角と言っていい。


「敵よ……! あんたら全員敵!」

「えぇ⁉ 急にどうしたんですか⁉」


 駄々をこねるように暴れるカノンを、サナは必死に押さえ込む。


「――――何やってんだ? お前ら」


◇◆◇


 リビングに戻ると、何故かカノンと柴又が取っ組み合いをしていた。

 こいつらのことだ。またくだらない話で喧嘩ごっこでもしていたのだろう。


「ほら、できたぞ」

「わぁ……! ハンバーグだぁ!」

「好きなのか?」

「はいっ! 大好きです!」


 柴又の、あるはずのない尻尾がブンブンと揺れている。

 なんだ、意外と素直じゃないか。ちゃんと後輩らしいところもあるもんだな。


「にしても……すごい量ですね」


 柴又は、自分の前に置かれた皿を見て、ボソッと呟いた。

 それぞれの皿には、ハンバーグが四つずつ盛りつけられている。

 そこに、簡単なサラダと、山盛りの米。


「多かったら残していいぞ。そいつらが食ってくれるから」

「あ、いえ。これくらいなら余裕です!」

「余裕なのか……」


 ミルスタが特殊なだけかと思っていたが、やはりアイドルはみんな大食いなのだろうか。


「もし足りなければ、ハンバーグのおかわりもあるから言ってくれ。もちろん米もな」

「ありがとうございます! いただきますっ!」

「よく噛んで食えよ」

「あ、それマミーにもよく言われます」

「母上呼びはどうしたんだよ……」


 マジで気まぐれでボケるやつだな。

 手を合わせた柴又は、ハンバーグに箸を入れる。

 変人さが目立つ彼女だが、箸の使い方は意外にも綺麗だった。根は相当真面目なのだろう。

 しっかりしているから、ダル絡みされても嫌な気持ちにならないのかもしれない。


「うっ――――うまぁああああ!」


 ハンバーグを口に運んだ柴又は、大袈裟に叫んだ。


「きのこの旨味が詰まったトロトロのあんかけと、ふわふわでジューシーなハンバーグ! これにお米! 合わないはずがありません!」

「食レポ上手いな……じゃなくて、興奮しすぎだって」


 そう言いつつ、俺は自然と漏れる笑みを抑えることができなかった。

 こんなに素直に喜ばれると、作った側としては、やはり嬉しいものだ。


「それにしても、このハンバーグ……こんなに肉厚なのに、全然くどい感じがしませんね⁉」

「ああ、豆腐を入れて肉の量を抑えてるからな。油もカロリーも、意外と控えめなんだ」

「え⁉ お豆腐が入ってるんですか⁉ 全然気づかなかった……」


 ハンバーグを口に運び、柴又は首を傾げる。

 自分でも食べてみたが、豆腐が入っていると知らなければ、とても気づけないくらいには上手く馴染んでいると思う。


「凛太郎、おかわり」

「はいはい」


 玲から茶碗を受け取り、山盛りにして返す。

 玲がパクパクと米を口に運ぶ様は、はたから見るとまったく噛んでいないように見える。

 しかし、よく見ると、玲の口が高速で動いているのが分かる。これは、飯を早く食べることと、よく噛んで食べることという相反することを両立させるために、玲が独自に編み出した技である。

 気配を消すのもそうだが、こいつはどうしておかしな技ばかり習得するのだろうか。


「ほら、言った通り、よく食べるだろう?」

「はい!」


 ミアがウインクすると、柴又は安心したように笑った。

 俺がいない間に、何かあったのだろうか?

 まあ、男には言いづらいこともあるだろう。俺は気にせず、ハンバーグを口に運んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ