1ー2
勢いよく扉を開いたものの、まだ時間が早いのか誰もいなかった。
とりあえず事前に渡されていたプリントを見て、自分の席に着き、これからのことを考える。
友達の不安とか都会に対する不安をできるだけ考えないようにしよう、そう思っていたのに静かな教室に自分ひとり。いやでも考えてしまい、そのたびに不安に襲われてしまう。
そんなことを考えていると、瞼がどんどん重くなっていく。
「昨夜は全然眠れなかったからな……」
今日の学校に対する不安と緊張でなかなか眠れず、朝も早かったため、とてつもない睡魔が襲ってきた。
「でも……眠ったら……初日から変な奴だと思われ……る」
睡魔に負け、夢の世界に誘われないように、あえて声に出し、必死に抵抗する。
しかし、今回の睡魔はラスボス一歩手前に出てくる、ラスボスよりももしかしたら強いんじゃ……?みたいなレベルの睡魔だ。
最初の街を出たばかりの俺には到底かないようがなく、気づいたころには視界はブラックアウトしていた。
(……これは夢か?)
目の前で、小さい頃の自分と顔が見えないが、小さな女の子が遊んでいる。
(いったい誰なんだ?)
声をかけようと思い、近づいてみるが、不思議なことに全く距離が近づかない。
(顔が見えない……というかこれは本当に俺の過去なのか?)
今までこの小さい男の子は自分だと思い込んでいたが、なぜはっきりと顔も見えないのに自分だと思ったのか、不思議だった。
俺はそのまま何ができるわけでもなく、ただ流れる映像?を眺めていた。
すると急に女の子が透け始めてしまっていた。
(何が起こった?!)
最初は少し透けているだけだったのが、今では半分くらい消えてしまっている。
そこにいる自分っぽい男の子も大泣きしていて、女の子の目にも涙が浮かんでいる。
「——」
最後女の子が消える瞬間、はっきりとこっちを見て何かを訴えていた。
(最後……なんて……)
女の子から俺が見えていたのかはわからない。ただ最後の言葉は確実に俺に何かを訴えていた。
(読唇術が俺にも使えれば!)
そう思ったが、仮に読唇術が使えても、あまりはっきりと顔が見えていないため、何を訴えていたか分かるかは微妙なところだった。
完全に女の子が消えると同時に視界が急に明るくなり、そこには真っ白な世界がただ広がっていた。
(さっきのは何だったんだ?)
夢か幻か、ただあそこにいた男の子は小さい頃の自分でさっきの出来事も自分が実際体験した出来事だという確信があった。
「あゆむ君、そろそろお目覚めの時間ですよ」
急にどこからか声が聞こえた。その声はどこか懐かしく、聞き心地の良い声だった。
(き、君は誰なんだ?)
「私は——だよ、でも歩夢君はまだ私を思い出せない。さ、そんなことよりそろそろ起きなくちゃ、最後に……歩夢君。教室間違ってるよ」
(待って!思い出せないってどういうこと?!)
「大丈夫、その時が来たら絶対思い出せるから、心配しないで」
(その時っていつなんだ……)
「またね!歩夢君!」
そのセリフを最後に視界がはっきりとしてきた。
「ここは……教室。まだ誰もいない?」
その瞬間、さっきの声を思い出した。
「確か教室を間違ってるって……まさか、ね」
急いで教室を出て持っているプリントと見比べる。
「こっちは旧校舎じゃねーか!!」
俺のセリフと同時にチャイムが鳴ってしまった。