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「ディアモンが悪いんでしょう。ディアモンがセイレーンばっかり気にするから。ディアモンはミアの番なのに」

ミアはそう言って大声をあげて泣き出してしまった。

教室の真ん中で。

いい迷惑である。

「ミア、ミア。ごめんよ。君を悲しませて。そんなつもりはなかったんだ」

そう言ってディアモンはミアを優しく抱きしめる。

「・・・・・ディアモン」

ミアは嬉しそうにディアモンを見つめる。

「俺の番は君だけだ。俺は君だけを愛している」

私はいったい何を見せられているのだろう。

元婚約者の前で今の婚約者とのラブシーンを見せつけるなんて。ディアモンは気づいていないけどミアは完全にわざとだ。

だって彼女、私を見て鼻で笑ったもの。

ディアモンがこんなに常識のない人だなんて思わなかった。婚約が破棄されて有難かったかも。

ディアモンとミアを羨ましがっているのは獣人の生徒。でも、人族の冷たい視線にさらされて緩みかけた顔をすぐに引き締めていた。

「お二方ともよろしんですか?授業が始まってしまいますよ」

私の言葉にディアモンははっとしたようにミアを離す。ミアは不満顔でディアモンを見つめる。

ディアモンはすまなそうな顔で私を見る。今更、私の前でいちゃいちゃしたことを申し訳なく思っているみたいだ。

やる前に気づいて、自重すべきだったわね。

彼は気づいていないみたいだけど周囲の冷たい視線がディアモンとミアに突き刺さっている。

「すまない、セイレーン。不快な思いをさせて」

「不快な思いなどしていません」

きっぱり言う私にディアモンは動揺する。

「っ。そうか」

ディアモンの態度は不明だ。

彼はミアを選んだ。私は彼の運命の相手ではなかった。

ミアと、運命の相手と婚約できて嬉しいはずなのにどうして彼はこんなに傷ついた顔をしているのだろう。

まるで彼こそが私にふられたみたいに。

だから彼の隣のミアの視線が鋭くなるのだ。

ミアが私に絡むのはディアモンのこの態度のせいだろう。

だからって伯爵家の娘である私が侯爵家のディアモンに何か言えるはずもない。

「ねぇ、セイレーン。セイレーンはディアモンのこと本当に何とも思っていないのよね?」

私に見せつけるようにミアはディアモンの腕に絡みつく。

「ええ」

「ミアたちのこと、祝福してくれる?」

「ええ」

「じゃあ、はい、これ」

「ミア!」

ディアモンは慌ててミアを止めようとしたけど彼女はそれを振り切って私に一枚の招待状を押し付けてきた。

「・・・・・婚約披露宴ですか?あなたとジュノン様の」

「ええ、そうよ。もちろん、来てくれるわよね」

にっこりと笑うミア。その目が私を見下している。

きっとそのパーティーで何かしてくるだろう。

私をいたぶりたくてたまらないという顔をしている。

「ええ、是非」

だから私も笑って答えた。

「セイレーン、行くことないわよ」とマリンが言うけど私はもう行くことを決めた。

私は何も悪くはない。逃げる必要も隠れる必要もない。

分かっている。二人を祝うパーティーだ。敵陣に一人突っ込む真似だってことは。

でも、そこでありもしない噂を流されて社交界に広められるぐらいなら罠と分かっていても赴き被害を最小限に抑えなければ。

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