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「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。  作者: 音無砂月
第三章

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純粋無垢で可愛らしい娘?

お父様はライラのことがとても気に入っているようだけど、私には彼女が本当に何も知らない純粋無垢な娘には見えなかった。

初めは確かにそう見えたけど、今は違う。

だって彼女、笑っているんですもの。

傷ついた顔をしながら家族と孤立していく私を見て。

「お姉様のそのアクセサリー、可愛いですね」、「お姉様のそのドレス素敵ですね」、「お姉様の・・・・・」

そう言う度にお父様は言う。

「たくさん持っているのだから譲ってあげなさい」と。

そしてついには「お姉様にはたくさんの侍女がついているのですね。それに仲が良さそうで羨ましい」と言ってきた。

侍女を雇っているのはお父様なので彼女たちはお父様に命令されれば従わざるをえない。私もそれで良いと答えた。

逆らって職を失えば困るのは彼女たちだから。

自分を犠牲にしてまで私の傍に居て欲しいとは思わない。

そうやって少しずつ、あの母娘はアドラー伯爵家に浸透していった。

「お姉様の部屋、日当たりが良くて良いですね」

そう言われたから私は部屋を変えた。変えざるをえなかった。

日当たりの少ない最奥の部屋に。

「お嬢様」と元私の侍女のキャサリンとアリアナは悲痛な顔で私を見た。私は彼女たちに「大丈夫」だと答えた。

ドレスも宝石も好きなだけ盗ればいい。

親の愛情?今更そんなの貰えるなんて思っていない。だからその程度で傷ついたりはしない。

「お姉様は何でも持っていて羨ましい」

パシンっ

廊下で出くわした私にライラは笑いながらそう言った。だから私はかっとなって、まずいとは頭で思っていた。でも気が付いたら私は彼女の頬を叩いていた。

その瞬間、ライラはにやりと笑った気がした。見間違いではないかと思うぐらい一瞬だった。でも彼女は確かに笑ったのだ。すぐに暴力を振るわれた可哀そうな娘の演技をはじめたけど。

ライラにはキャサリンやアリアナ以外にもたくさんの侍女がついている。彼女の為に雇った侍女もいる。その侍女たちは私を非難した。

叩かれた主人を庇い、私を睨みつけ私に悪態をつく。まさかの出来事にキャサリンとアリアナは侍女たちを信じられない顔で見つめた。

それもそうだろう。雇われている家の娘に悪態をつくなど侍女としてあり得ない行動だ。随分と質の悪い侍女を雇ったものだ。

貴族はプライドが高い。幾ら伯爵家に取り入りたいからって自分より格下、平民の血が混じり、平民として暮らしていたライラに仕えたいと名乗り出る侍女がいなかったのだろう。

「黙りなさい」

私の一声、人睨みでぎゃんぎゃん吠えていた侍女たちは怯えたように口を閉じる。

庇うのなら最後まで庇いなさいよ。

「誰に向かって言っているの。たかが侍女の分際で私に口答えする気?身の程を弁えなさい」

「お姉様、私のお友達を馬鹿にしないでください」

怯えながらも健気に自分の意見を言う物語の主人公でも演じているかのようにライラが一歩前に出た。私はライラの言葉を鼻で笑った。

友達と本気で思っているわけでもないだろうが。もし本気で思っていたとしてもお父様の権威を使って私から奪った彼女たちを含めた侍女を友達扱いなんて厚顔無恥もいいところね。

「彼女たちは友達ではないわ。侍女よ。そしてあなたは彼女たちの主人。たとえ私から奪った侍女がいたとしてもその事実に変わりはないわ」

「身分で人を判断するなど」

平等を愛する主人公気分のつもり?自分の発した言葉に責任も持てないくせに。

「あなたの考えなどどうでもいい。エトライナーには王族を頂点とした身分制度が存在するのよ。それを否定することは王を否定すること。この国を否定すること。もし平民の子供でも知っているそのことをあなたが知らないと言うのならお勉強が足らないんじゃなくって?」

「・・・・・どい。酷いわ。お姉様。私が元平民だからって、私はお姉様と仲良くなりたいだけなのに」

そう言って子供のように泣きじゃくるライラを私、キャサリン、アリアナは呆れた目で見る。

「私から奪うことしかできないあなたと、どうやって仲良くしろと?正直に言えばいいじゃない。『邪魔だから全てを自分に譲って家から出て行ってください』って」

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