副マスターと死に戻りギルド
まだ副マスターのシルフしか出てきません。
初投稿なので何卒宜しくお願い致します。
「う・・・うぅん・・・」
ベッドの上でボロボロの布切れを羽織った少年は悪夢に魘されてるのか、顰め面をして体を左右に振る。
「そろそろかな。」
ベッドの横で本を読んでいた少女は本に栞を挟んで少年に近づく。そして大きく息を吸って、両頬に手を当てる。
「勇者様!勇者様!」
「っわぁ!?な、何!?」
突然の大声に驚いた少年は飛び起きる。
「あ!やっと起きましたか!」
「あれ・・・ここは・・・」
「そのですね、残念ながら、あなたは冒険中に悪いオークに倒されてしまいました・・・」
「そうか・・・僕はあのオークに・・・」
「ですが安心してください!ここは貴方が最初に訪れたギルド!死に戻ってきたのです!流石ですね!勇者様!」
「あ、ありがとうございます。やっぱり、ほんとに戻ってこれるんだ・・・」
「・・・?勇者様、どうかしましたか?」
「いや、その・・・僕・・・いや、なんでもないんです。」
「?不思議な人ですねぇ・・・じゃあ、お仲間さん達もお待ちです!さぁさぁ支度をして下さい!」
「あ、はい・・・!」
バタバタと急いで支度をした少年は中途半端な格好で部屋を出ていく。
「ありがとうございました!」
「お気を付けてー!」
「・・・ふぅ。」
ここはギルド。勇者達が初めに来る場所、チュートリアル地点だ。私はここで副マスターをしてる。別に冒険してる訳じゃないんだけどね。
ここに来る勇者たちはみんな自分が主人公だと思ってる。勘違いしてるんだ。自分は別次元の世界、地球から転生してきた才能のある人だと。異世界転生したから才能がある?そんなわけないのに。
「んーっ・・・」
気分転換に伸びをする。元気なキャラを演じるのもしんどさがつくなぁ。ま、慣れたんだけど。
「あ、シルフ!そっちは勇者送り終わった?」
「あ、うん。終わったよー。」
隣の部屋から顔を出しているのはリーフ。彼女もここのギルドのメンバーだ。リーフも冒険はしてない。
〔始まりの光〕なんて名前付けてるけど別名〔死に戻りギルド〕だからね。
勇者が沢山死に戻る場所。
いつしか彼らは勇者じゃなくなる。だって自分がただの一般人って気付くから。
この世界にいる住人は全員異世界転生者。みんな地球で死んでこっちに来る。才能なんてある訳ない。
もちろん私だってそうだ。初めは特別に感じてたし、なんなら冒険だってした。でも知っちゃったんだ。この世界、みんな異世界転生者だって。私が一緒に旅してた勇者も、魔法使いも、格闘家も。
その日から何もかも諦めて普通の生活を始めた。モブとしての今の生活。勇者は武器屋に、魔法使いは道具屋に、格闘家は城の警備員に。全員別の道を選んだから、それ以来会ってない。
寂しいかって言われれば寂しいかもしれないけど、今の生活は楽しいし、冒険してた頃よりずっと良い。
「そういえばさ、シルフ・・・っておーい?シルフ?」
「えっ?私?」
「そうだよ!シルフしかいないでしょ!」
「ごめん・・・ぼーっとしてたや。」
「仕事中じゃなかったから良かったけど、気をつけなよー?」
「あはは・・・気をつけまーす。」
「でさ、シルフ。私、決めたんだ。」
「何を?」
「もう一回、冒険者になる!」
「え・・・?」
冒険者・・・?一般人って気付いたのに?
「私さ、退屈してたんだよね。最近。なんかつまんないなーって。勇者たち見てると、良いなーって思ったりする!これって闘いたくなってるんだと思う!」
意気揚々と話すリーフは満面の笑みで、私の方を見る。
「へ、へぇ・・・そうなんだ。どこのチームに入るの?」
「このギルドに入った人達に片っ端から話しかけて仲間に入るつもり!」
「根性すご・・・まぁ、リーフが良いなら止めないよ!」
「心の友ー!ありがとう!飽きたら、戻ってくるからさ!」
飽きたらって・・・そんな軽くていいのか?
「じゃあ行ってくるー!」
「はーい。」
驚いた。いるんだ・・・一般人だって気づいても冒険したい人。私は疲れるのやだし、このままで十分だなぁ。
まぁ。超天変地異が起きたって冒険者になんてならないけど!
ぼちぼち書いていくんで更新遅いかもです。
見てくれた方はありがとうございます。