姫は相変わらずご機嫌斜め
次の日。俺はまだ痛む頭を擦りながら、教室に入る。すると、俺の友達が次々と話しかけてくる。いつものことだった。俺は自分の席に座ると、隣に進藤さんがいた。
『所詮、みんなただつるんでるだけでしょう。』
昨日の彼女の台詞が俺の胸に突き刺さる。本当にそうなのかな。だとすれば、俺はみんなに嫌われているのかな。
俺がそうこう考えているうちに、授業が始まった・・・。
休み時間。俺は進藤さんが廊下に出るのを見て、進藤さんの後をついて行くことにした。彼女との間を少し空けて歩く。
「なんでついて来るの?」
俺はしばらくしないうちに彼女に尾行(?)しているのがばれた。
「べ、別に俺は暇潰しに廊下散歩してるだけだよ。」
俺は両手を頭の後ろで組んで、横目で空を見ると、彼女はふーんっと鼻で言った。
「で、進藤さんは?」
「喉渇いたから、ジュース買いに行くの。」
そういうと、進藤さんはすたすたと歩いて行った。俺も一緒に行こうかなと思ったが、ここでまた彼女の機嫌を損ねて殴られたら堪ったもんじゃないと思い、しぶしぶ教室へと戻った。
昼休み。俺は屋上へと向かった。俺は屋上が進藤さんの居場所じゃないかと思い、真っ先に向かった。案の定、彼女はそこにいた。
「進藤さん。」
俺が彼女の名前を呼ぶと、彼女はこちらに目をやる。
「またあなた?」
進藤さんは卵形の赤いプラスチックの箱に入ったりんごをかじりながら、耳にイヤホンをして女の子向けのファッション雑誌を読んでいた。
「あなたってまるで磁石みたいだね。」
彼女の相変わらずの毒舌も、俺には通じなかった。
「いいじゃない。俺、進藤さんみたいな可愛い人と話すの好きだし。」
「それってナンパじゃん。キモいし。」
進藤さんはりんごをかじりながらそっぽ向く。すると、風が吹いて進藤さんの長い髪がふわりと揺れる。
「進藤さんって髪長いよね。いつから伸ばしてるの?」
「小五の時から。」
久しぶりの進藤さんの一言会話だ。
「へぇー。たった二年でそれまで伸びるんだ。・・・えっ、なんでそんなに伸びるの早いの?何かしてるの?ほら、ワカメとか海藻食べたり、ヘアパックしたり。」
「別に。ただ普通にしてたらここまで伸びたの。」
俺がどんなにたくさんの台詞を並べて話しても、進藤さんは一言しか返してくれない。しかし、俺はめげずに会話を続けた。
学びの部屋のことや勉強のこととか、とにかくいろいろ話をした。しかし、俺がどんなに話しても彼女の台詞は一言止まり。なかなか変化を遂げない。
「いい加減にしてよね。いくらあなたが私に何話したって私はあんたのことなんかどうでもいいの。」
そういうと、進藤さんは荷物をまとめて屋上を出ようとした。
「で、でも俺は諦めないよ。俺、毎日屋上に来るからね。」
「・・・ばっかじゃないの。」
進藤さんは屋上の扉を勢いよく閉めた。
彼女はぶっきらぼうだ。でも、そこが可愛い。そんな彼女に惚れている鈴木葉介、十三歳だった・・・。