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鴉は今もなく  作者: レニー
7/24

死後

あれから、10年経った

私が最期に見た幾兎の顔は笑顔だった


そして、わたしに向けた言葉を発し、わたしに向けて笑っていた


私は決心した。

どんな時であろうが笑っていると

そして、私は様々な分野に手を出した


呪術は勿論、陰陽や魔法まで出来る限りのことをやった

もう一度あの時のように目の前で人が死ぬのは嫌だから


姉さんは警察から引退して、高校の教師になっている


私はその高校への入学が決まった

この10年で陰陽呪術魔法連合の組織が世界的に認められ、陰陽と呪術、魔法の専門学校ができたのだ


私は当然、一番上のクラスに入学し、友達もたくさんできた


「ねぇ、蝶蛾さん。」

「なんですか?久坂部さん?」

「今日、また龍穴が出たらしいよぉー。なんかー魔王が誕生したみたいでー、結界の維持にほとんどの所持者が駆り出されてるらしいねー」


龍穴とは幾兎の言う所の地獄への無理やり空いた入り口のこと

所持者とは陰陽師と呪術師、魔法使いのまとめた名称である


「物騒ですねー。ところで久坂部さん。さっき、栗崎先生が呼んでいましたよ?」


「あっ、やっばー忘れてた。じゃあね、蝶蛾さん」


私は久坂部さんに手を振り校庭に向かう

「すみません、そこの方。私も入れてくれませんか?」

「えっ、でも女の子にはちょっと」

「馬鹿、この人は蝶蛾家の方だぞ。俺らの方が多分弱い」

「あっ、失礼しました。よろしくお願いします」


デレデレしていた男の子は頬の紅潮がきえ、札を取り出す

陰陽師ですね


「来て、幾兎」

私は式神で幾兎を作った。最初は懺悔のつもりだったが思いの外、強く今でも使っている


幾兎だけで勝負を決めてしまった


「この学校で強い人って、誰でしょうか?」

「痛てて、あーやっぱり土御門家とか菅原家とクロウリー家ですね、あーでもクロウリー家の方は海外からの留学だったため、今この高校にいません」


「まあ!名家が3つもこの高校に揃っていたのですね。すごいです。じゃあ、早速、稽古をつけてもらいに行ってきます。ありがとうございました」


男の子に手を振るとその子はまた頬を染めた

「かわいい」


私は土御門家の方を探しに行こうとすると姉さんに鉢合わせる


「げっ」

「げっ、じゃないわよ。行くよ、忘れたの?」

「あっそうだった」


私は帰り支度を済ませて、姉さんと一緒に電車で墓参りへ行く

幾兎に手を合わせる

一緒に過ごした時間は短かったが悲しい


10年経った今でも涙が出てくる

最後の笑顔が忘れられない


そして、家に帰って龍穴を作り、地獄に入る

いつも、毎日こう地獄へ行くと幾兎に会えるような気がする。

だけど、今日見つけてしまった


粉々の白骨遺体を


希望は打ちのめされた

天を呪った


泣き喚いた

私はもう負けない

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