死後
あれから、10年経った
私が最期に見た幾兎の顔は笑顔だった
そして、わたしに向けた言葉を発し、わたしに向けて笑っていた
私は決心した。
どんな時であろうが笑っていると
そして、私は様々な分野に手を出した
呪術は勿論、陰陽や魔法まで出来る限りのことをやった
もう一度あの時のように目の前で人が死ぬのは嫌だから
姉さんは警察から引退して、高校の教師になっている
私はその高校への入学が決まった
この10年で陰陽呪術魔法連合の組織が世界的に認められ、陰陽と呪術、魔法の専門学校ができたのだ
私は当然、一番上のクラスに入学し、友達もたくさんできた
「ねぇ、蝶蛾さん。」
「なんですか?久坂部さん?」
「今日、また龍穴が出たらしいよぉー。なんかー魔王が誕生したみたいでー、結界の維持にほとんどの所持者が駆り出されてるらしいねー」
龍穴とは幾兎の言う所の地獄への無理やり空いた入り口のこと
所持者とは陰陽師と呪術師、魔法使いのまとめた名称である
「物騒ですねー。ところで久坂部さん。さっき、栗崎先生が呼んでいましたよ?」
「あっ、やっばー忘れてた。じゃあね、蝶蛾さん」
私は久坂部さんに手を振り校庭に向かう
「すみません、そこの方。私も入れてくれませんか?」
「えっ、でも女の子にはちょっと」
「馬鹿、この人は蝶蛾家の方だぞ。俺らの方が多分弱い」
「あっ、失礼しました。よろしくお願いします」
デレデレしていた男の子は頬の紅潮がきえ、札を取り出す
陰陽師ですね
「来て、幾兎」
私は式神で幾兎を作った。最初は懺悔のつもりだったが思いの外、強く今でも使っている
幾兎だけで勝負を決めてしまった
「この学校で強い人って、誰でしょうか?」
「痛てて、あーやっぱり土御門家とか菅原家とクロウリー家ですね、あーでもクロウリー家の方は海外からの留学だったため、今この高校にいません」
「まあ!名家が3つもこの高校に揃っていたのですね。すごいです。じゃあ、早速、稽古をつけてもらいに行ってきます。ありがとうございました」
男の子に手を振るとその子はまた頬を染めた
「かわいい」
私は土御門家の方を探しに行こうとすると姉さんに鉢合わせる
「げっ」
「げっ、じゃないわよ。行くよ、忘れたの?」
「あっそうだった」
私は帰り支度を済ませて、姉さんと一緒に電車で墓参りへ行く
幾兎に手を合わせる
一緒に過ごした時間は短かったが悲しい
10年経った今でも涙が出てくる
最後の笑顔が忘れられない
そして、家に帰って龍穴を作り、地獄に入る
いつも、毎日こう地獄へ行くと幾兎に会えるような気がする。
だけど、今日見つけてしまった
粉々の白骨遺体を
希望は打ちのめされた
天を呪った
泣き喚いた
私はもう負けない




