赤軍編・第五話⇒涙の先に、新たなる選路を。(比率 男声4:女声1:ナレ1)
|・`ω・)前書きです。
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(自己解釈 学生戦争 三津ヶ谷学園物語。)
【題名】
赤軍編・第五話⇒涙の先に、新たなる選路を。
(もしくは 三津学 赤の五話 とお書き下さい。)
【作者】瀧月 狩織
【台本】小説家になろう。のリンクを貼ってくださいませ。
【配役】※作者オススメの六人用
冴木♣︎♂>>
波月♣︎♂/兼 雑務部員>>
浅緋♣︎♂
槇世♣︎♂/兼 枦田♂>>
手鞠♀/兼 下級生&玉樹♀>>
▼(ナレーション) 不問>>
赤軍編・第五話⇒涙の先に、新たなる選路を。
上演時間(目安)⇒85~90分間の台本。
比率・男声4:女声1:不問1の6人台本
※尚、比率は目安です。前書きに書いてあるような比率でもお楽しみ頂けます。
※※当台本は転載、自作発言、登場キャラの性転換など禁止。
読み込み(世界観の確認、文字の読み方など含む)をちゃんとしましょう。台本にキラーされますよ?
※※※当台本には ♣️♂ という特殊表記があります。
これが登場キャラの名前にある場合は、女性演者さんの低音や中性声で演じて大丈夫な ♂キャラ です。
それ以外の細かいことは【台本利用上のお願い】を必読でお願いします。
☆登場キャラ
冴木 暁冬 ♣︎♂ 高三生
・『特隊生 蒼雷』もしくは『不殺の』でお馴染み今作の主人公。
彼の裏設定である三兄弟の長男という素質が見え隠れします。
物腰柔らかな敬語男子。お人好し。けど、言うときははっきり言うタイプ(波月遊羽に対して。)。
特徴→左の前髪だけが長い青色の髪、紅色の瞳。
波月 遊羽 ♣︎♂ 高三生
・第三救護班の班長 兼 総長。 二つ名は未定。
冴木の幼なじみであり、よく私闘はするが良き理解者。
ツンケンしており、言葉遣いは荒い。態度も素直じゃないので、かなり横柄。耐えることに慣れているだけで、傷つかないわけではない。(総長とは、高等部の救護班をまとめあげる役職の学徒であり、高等部から軍医補佐生の試験を合格した稀なるものに与えられる呼称および階級です。)
特徴→襟足を短くした黒髪、橙色の瞳、赤フレームのメガネ。
浅緋 頼威 ♣︎♂ 高二生
・第三救護班の副班長(進級後)『薬師のライ』
波月の後輩。大型(180cm)わんこ系男子。
茶飲み仲間とお茶をする時間が学園生活での楽しみ。抜けた発言をして、怒鳴られるが空気を読むこともできる。
天然だが、ちゃんと気遣いをしてくれるイイ子。優しさの化身。
特徴→すらっとした長躯、西洋人のようなハッキリした目鼻立ち。アクアマリン色の瞳、襟足が短く結べる程度の長さがある天然もの(?)の金髪。
槇世 宇樹 ♣︎♂ 高一生
・第三救護班の班員(つまりの新人) 二つ名は未定。
波月と浅緋の後輩。どこにでも居そうな活発な子。
腹立つことには、すぐ刃向かってしまう。生意気に感じるだろうが、それも愛嬌といえば愛嬌だ。素直になると泣く。
特徴→明るめの茶髪をハーフアップにしている。ちょっとツリ目で梔子色(強めの黄色)の瞳。
手鞠 ♀ 高三生
・元 夢衣進撃大隊の隊長補佐。今作の唯一のヒロイン。
現在は特隊生『調香姫』へと昇級した。
とある学徒の死を境に大きく変化を遂げた女子学徒。
かなり、精神的に不安定で不眠症に。
元々は可愛らしく純粋で活発な性格をしていたが……すっかり年相応に落ち着いた性格になった。そんな、憂いを纏った雰囲気も悪くないと同期生(冴木ら)は評価している。
特徴→黒染めした腰まである長い髪、アクアマリン色の瞳。
(今作の終盤で思い切った変化を遂げます。)
▼ (ナレーション) 不問
・毎度おなじみの語り役。皆勤賞ですな。
三津学シリーズには、無くてはならない役どころ。
長文、語りが得意な人にオススメします。
〜〜サブキャラの皆様〜〜
※メインに演じるキャラと合わせて演じてください。
玉樹 甘藻 ♀ 高三生
・端役なのに、地味に存在感がある人。
美の追求に余念がない。面倒事は他人に任せるタイプ。
諜報部隊の大隊長で、冴木らと同じ上層生の一人。
枦田 桜儀 ♣︎♂ 高二生
・同じく端役なのに、地味に存在感がある人。
常に敬語で、ちょっと堅苦しい振る舞いをする。
玉樹の後輩にあたる上層生。諜報部隊の副隊長。
下級生 不問 たぶん高二生
・雑務部(前線への復帰が不可能と判断を下されても、学園に存続するために入れる)という縁の下の力持ちな部隊に所属する学徒。たぶん、浅緋と同期生。
性別の設定はないので、敬語である部分を守ってくれれば好きに演じてほしい。
雑務部員 不問 たぶん高三生
・下級生と同じく雑務部の部員。
たぶん、冴木や波月と同期生。荒い言葉遣い。口ぶりからして、敬語は苦手なのだろう。だいぶ面倒くさそうに対応してくる。
〜実はキーパーソンなキャラ〜
六津井 祈里 ♀ 高三生。
・故人。特隊生『氷雨ノ王子』であり夢衣進撃大隊の元隊長。
ニ〇八〇年一月某日に起こった黒軍の蒼檄部隊による夜襲のさなか、とある学徒の手によって命を絶たれている。その亡骸の表情は、悲痛なものではなく。どこか儚げな優しい笑みを浮かべていた…と雑務部は語る。
(詳しくは 黒軍編・第二話 を要チェックですぞ。)
☆キャラ毎のセリフ数
冴木 暁冬 147個
波月 遊羽 113個
浅緋 頼威 95個
槇世 宇樹 78個
手 鞠 32個(※手紙を読み上げるので、全体数は少なめ)
☆サブキャラ毎のセリフ数
玉樹 甘藻 13個
枦田 桜義 17個
下 級 生 15個
雑務 部員 6個
☆あらすじ
新しい政策によって、二〇六〇年に離島である妖島に創設された軍事教養施設・三津ヶ谷学園。
それから、二十年後の二〇八〇年四月。
ついに第一八期生たちの『最後の』学園生活がスタートした。
さて。赤軍では、どんな日々を過ごしているのか…覗いてみよう。
【作者タイム】
台本本編の表記で、キャラ名の手前にMやNがでてきます。
N はナレーション。キャラになりきって、語りをお願いします。
M はマインド。心の声。《 》←このカッコで囲ったセリフも心の声です。ご注意ください。
ルビの振ってある単語はルビのとおりに読んでください。
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☆本編
○▽~前編 約25分~
▼二〇八〇年の四月。
無事に進級や新入学を迎えた学園は、新顔たちの浮き足立った雰囲気が至る所で見られた。
槇世「第二〇期生!槇世宇樹です!!」
波月「おう、よろしく。俺は第三の班長と総長を兼任してる波月遊羽だ。新入生説明会で見かけただろうけどな。」
浅緋「宇樹くん、第三にようこそー!説明会のときは、遊羽さんの後ろに控えてた浅緋頼威っす!今期から副班長っすよ!」
槇世「はい!よろしくお願いしますっ!」
▼この見るからにやる気満々の新入生が、利用者が少ないことで陰口を叩かれている第三救護班に所属したのが、初春のことだった。
(間)
〜タイトルコール〜
冴木「自己解釈 学生戦争 三津ヶ谷学園物語。」
手鞠「赤軍編、第五話。……『涙の先に、新たなる選路を。』」
(間)
▼進級や新入学から二ヶ月程、経った。
二〇八〇年の六月中頃。学園のある妖島は梅雨の時季というのもあって、連日の雨である。
病棟には、雨季に当てられて体調を崩す学徒で溢れていた。
そして、通常なら救護班の班員しか出入りがない第三救護室も、例に漏れることなく忙しそうだ。
波月「浅緋!その白湯と葛根湯はベッドに居る学徒たちに!」
浅緋「はいっす〜!」
波月「これは、ファイルに入れて…あーっと、この薬も調合…って!だぁぁぁ!!何で、こんなに手が回んねーんだ!?というか、あの新人はどうした!?」
浅緋「遊羽さん、落ち着いてくださいっす!たしかにあの子は新人っすけど、槇世くんっす!」
波月「はぁーー…(舌打ち)そう、そうだよ。その槇世はどこ行った。」
浅緋「え、いや。どこに行ったんすかね?」
波月「……ははぁん、浅緋。なにか隠してやがんな?」
浅緋「んぇっ、隠してないっす!本当っす!」
波月「おら、ささっとゲロっちまえよ。今なら、稽古日のメニュー軽くしてやる。」
浅緋「本当っすぅ!オレは何も知らないっす~!」
▼壁に浅緋を追い詰めて、彼の脇腹の近くに足をガンッ!と着いた。波月による詰問にアタフタとしつつ、目を逸らす浅緋。確実に、何かを黙っており、隠している様子だ。
浅緋M《この詰問スタイル、昨年度にも見た気がするっす〜!》
波月「黙りか?浅緋にして頑なだな。」
浅緋「本当に知らないんす!だから、稽古のメニューをキツくするのは勘弁してほしいっす~!」
波月「ふーん。……残念だったな、浅緋。オマエの負けだ。」
▼壁に追い詰めていた浅緋から離れて、六つある寝台の右から三つ目のカーテンを開け放つ波月。
波月「ここに居んだろ!槇世っ!オマエ、サボんなっ!!」
槇世「うわっ、総長さん!?なんで分かったの!?」
波月「この目の回る忙しさであっても、ベッドの利用数くらい把握してんだよ!嘗めんな!」
槇世「なめてなんかないけど…なんかムカつくー。」
波月「病人じゃねーんだから、降りろ!ほら、早く!」
槇世「ちぇっ…、はいはぁーい。」
波月「返事は一回だ!オマエ、基本演習で習っただろうが!」
槇世「……そうやって、怒鳴ってりゃ言うこと聞くと思ってんの納得いかないわー。」
波月「おい、その態度なんなんだ?嘗めてんだろ、オマエ。マジで稽古日には覚えとけよ?」
槇世「えっ、はっ?稽古日って道場で組手する…」
波月「そうだ。きっちりシゴいてやるからな。……浅緋!俺は、倉庫に予備の湯呑とり行ってくる!」
浅緋「は、はい!りょーかいっす!」
槇世「はぁ~、シンドい。」
浅緋「バカっすねぇ、遊羽さんを煽ったことを後悔する日が来るっすよー?」
槇世「は〜?なに、それ。総長さんってさ。ぼくより身長低いし、弱そうに見えるけど?」
浅緋「なっ!宇樹くん!」
槇世「なにぃ?」
浅緋「オレからも言わせてもらうっすけど!先輩に対する態度じゃないっす!それと!どうして、わざと遊羽さんを怒らせるんすか!?オレを巻き込むのはやめてほしいっす!」
槇世「別に巻き込んでないですぅー。つーか、頼威さんがごまかすの下手すぎなんだよー。」
浅緋「なっ!そんな言い草は酷いっす!というか、四月のときは真面目に活動してじゃないっすか!どうしちゃったんすか?」
槇世「いやぁ、単に頑張んのやめただけ。」
浅緋「えっ…それはどういう…」
波月「(黒い笑みで)浅緋ぃ、槇世ぇ」
浅緋「お、おかえりなさいっ!」
槇世「うわっ、総長。お戻りで。」
波月「無駄に話してないで、働けこんにゃろー!」
浅緋「うひゃあ!!ご、ごめんなさいっす〜!」
槇世「あ、ズリぃ!頼威さん、待ってよ!!」
▼後輩二人がそそくさと逃げて行く。
そして、慌ただしく[調合室]の扉が閉まった。
波月「まったくよぉ…。」
▼タメ息を吐き出す波月。すると、カーテンで仕切られている窓際のベッドから笑い声が二つ、聞こえてきた。
完全に先程までの三人のやりとりを聞いていた様子だ。
波月が、その仕切りのカーテンを開ける。
波月「なに笑ってんだよ、そこの二人。」
▼カーテンの先に居たのは、パイプ椅子に座っている青髪の男子学徒こと冴木暁冬と。ベッドに寝そべっている長い黒髪の女子学徒こと手鞠であった。
冴木「……いえ、すみません。第三は三人体制になってから、ますます騒がしいな…と思いまして。」
手鞠「私も、冴木さんに同意見ですの。笑って、ごめんなさいですの。」
波月「(タメ息)……まったくよ。生意気な後輩が増えちまって困ってんだよ。俺は。」
冴木「波月くんを相手に堂々とサボったりするなんて、新入生であそこまでの恐れ知らず。今後が期待できますね。」
波月「俺は、オマエを相手してたから鍛えられたんだよ。会議が嫌だとか、稽古を邪魔されたくないだとか行って逃げたよな?」
冴木「そ、その節は失礼しました…。」
波月「別に。気にしてねぇよ?今はな。」
冴木M《言外に圧を感じます……。》
▼波月は、予備のパイプ椅子を持って来て冴木の横に座る。
波月「それで?体調はどうだ、手鞠。」
手鞠「ええ。だいぶ、楽になりましたの。」
波月「そう。それはよかった。」
冴木「それにしても、散々ですね。手鞠さん、特隊生になられたばかりなのに…。」
波月「つーか、病人が増えてんだから余計なことすんなよなー。」
手鞠「あら、やっぱり利用者が増えましたの?」
波月「増えたなんてもんじゃねーよ。ここ、二週間で治ったかと思ったら体調崩して、新しいヤツら来るし。……パンデミックだな。」
冴木「たしか、病棟のほうに篤海さんと上枝さんが運ばれましたね。」
波月「あー、病棟利用のリスト見たわ。……あの人たち、短大生になってまで何やってんだ?」
冴木「雨の日だからこそ、怠けることなかれ…と。」
手鞠「一昨日と昨日に八時間の耐久で森林公園で隠密訓練ですの…。」
冴木「僕も、参加してたんですけど。あのお二人に付き合ってはカラダを壊しかねなかったので。手早く抜けて、新入生の指導に当たったんです。」
波月「それは、正しい判断だな。それで、手鞠は?」
手鞠「えっと…私は、午前中に勅使河原さんと打ち込みの稽古をしてましたの。ですが……」
冴木「行路くんは、何を考えてるのか分かりません…。」
手鞠「はい。休憩中に行路さんからドリンクを頂きまして…。」
波月「飲んだのか…?」
手鞠「はい…。飲んだ時は何ともなかったんですけど…。時間が経つにつれて…。」
波月「(タメ息)……薬ってのはだいたい遅効性だ。即効すぎるのは臓器とかにダメージがたまるんだ。」
手鞠「そうだったんですのね…。それと冴木さんから、行路さんに飲まされたドリンクは洗礼なんかじゃない…って教えられましたの。」
波月「あれを、洗礼だと思っちゃうオマエの素直さが怖い。」
冴木「正直に言って、あれは飲み物じゃないです。」
波月「行路の、飲ますまで逃がさないっていう強気は鬼かと思ったわ。普段は寝てんのにどっから、あんなやる気が出んだ?」
冴木「……僕も。当時、特隊生になったばかりの行路くんに無理やり、飲まされましたけど。」
波月「なに、オマエって捕まったっけ?」
冴木「素直に断ったら、後ろから羽交い締めにされて、そのまま飲み込んじゃったことあったでしょ。」
波月「あー、一年の頃の話か。そんなことあったな。」
冴木「ええ。本当に、どこからアレほど強力な下剤を貰ってくるのか…。」
波月「やっぱ、ヤッケンのやつらからだろ。」
冴木「ああ…、薬学調合研究課…でしたっけ?」
波月「そうそう。長ったらしいからヤッケンな。」
冴木「ヤッケン…。」
波月「とくに、行路は研究に対しての知識や挑戦心。そして、それに対比しての記録。」
冴木「眠ってる姿が多いので、知らなかったです。だから〈研鑽の特隊生〉なんですね。」
波月「そういうことだ。」
手鞠「……ふふっ、おふたりの会話は阿吽の呼吸ですね。いつからのお付き合いですの?」
波月「うん?あぁ。郷からの付き合いだ。」
冴木「ええ。かれこれ八年ですか?」
波月「そうだな。たぶん、そんくらい。」
手鞠「いいですわね、私も……。」
冴木「手鞠さん?」
手鞠「いいえ。なんでもありませんの。」
波月「……よし。もう少し休め、手鞠。暁冬、病棟に行くから付き合え。」
冴木「え、僕ですか?」
波月「いいから。行くぞ。」
冴木「えっと、手鞠さん!お大事に!また来ます!」
手鞠「ええ。冴木さん、またですの。」
▼冴木の腕をひいて、波月が歩き出した。慌てつつも、冴木も手鞠の前をあとにした。
手鞠「……私は、こんなで、やって行けるのでしょうか…。《…王子…アツメ…。》」
(間)
◇第三救護室・調合室◇
▼波月から逃げ出した後輩の二人は、乾燥させてある漢方薬をしまっている薬棚を整頓しているようだ。
浅緋「宇樹くん、この薬草は…」
槇世「…… ……。」
浅緋「宇樹くん!」
槇世「えっ、はい。」
浅緋「どうしちゃったんすか?ボーッとしちゃって。さっきまで、遊羽さんに噛みついてたのに。」
槇世「いや、なんでもないよ。で、何がなんだっけ?」
浅緋「聞いてなかったんすね。……いいっすか。第三は、西洋薬より東洋薬と言われてる漢方を処方してるんす。」
槇世「へー、そうなんだ。何となく着いてきたけど、調合室ってことはここで作ってんの?」
浅緋「作ってるっすよ。あそこに鉢と薬研があるっすよね?」
▼浅緋が指さす方向には、作業台がある。
そこには手元だけを照らせるライトも設置されていた。
槇世「へー、この腕立てする道具みたいなのは薬研って言うんだね。」
浅緋「腕立てって…(苦笑)……それと。保存が可能な調合薬は、作り置きっす。だいたい二つ、三つが作り置きの目安っす。」
槇世「あ、これウンコみたい。」
浅緋「ウンコじゃないっす。てかダメっすよ。それ、高いんすから。」
槇世「高いの?どんくらいするの。」
浅緋「そうっすね。小嵐が言うにはーー」
槇世「しゃおらん…?」
▼上層生や教官の名前と顔を把握しておくのは、新入生の第一の課題だったりするが…。
槇世の顔は、誰?知らんがな…と言った様子だ。
浅緋「あ、知らないっすか。李・嵐洙っす。だいたいの人は小嵐と呼ぶっすね。で、小嵐は第二班の班長をしてる三年生っす。」
槇世「へー、そうなんだ。《三年生か。総長さんと同じ学年か…。》……そんなガッツリ異国名の人いたんだね。」
浅緋「居るっすよ。とくにオレたち、赤軍は黒や白に比べると多国籍っす。」
槇世「でも、頼威さん。ニホン名だよね。」
浅緋「オレは、隔世遺伝っすよ。クォーターっす。」
槇世「くぉーたー?」
浅緋「クォーターは聞いたことないっすか。」
槇世「うん、知らない。ハーフは知ってる。」
浅緋「そうっすね…。クォーターというのは、血縁の祖父母にあたる人たちが異国人だったりする場合っすね。だから、まんまな呼び方っすよ。二分の一でハーフ。四分の一でクォーターっす。」
槇世「あー、クォーターなんとかって料理名とかで聞いたことあったかも。」
浅緋「耳慣れないと覚えないっすよね。」
槇世「うん。」
▼浅緋は、手に持っていた薬草を保存する紙をテーブルに置いてから槇世へと直った。
浅緋「……率直に訊くっす。」
槇世「ん?なに。」
浅緋「宇樹くんは、救護班じゃないほうがよかったっすよね。」
槇世「……どうして、そう思ったの?」
浅緋「うーん、なんとなくっすよ。」
槇世「頼威さん。そんな曖昧な言葉では、ごまかされないよ。」
▼淡々と静かに言葉を発する槇世が、浅緋の肩を強く掴む。
痛みが走るほどに強く掴まれるが、浅緋も意地を見せて声はあげない。何もなかったかのように応じる。
浅緋「《痛い。…神経を圧迫してくる感じ…。手馴れてるっす…。》……怒ったんすか。図星だったんすね。」
槇世「怒ってない。けど、答えて。なんで、そう思ったの?」
浅緋「本当に勘っすよ。オレ、宇樹くんより学園生活が長いんすから。」
槇世「……そう。でも、別に救護班が嫌なわけじゃない。」
浅緋「じゃあ、何でなんすか。遊羽さんを煽ったり、サボったりするんか。《……やっと、手を離してくれた…。》」
槇世「……言ったでしょ。」
▼槇世の表情は俯かれたことによって、見えない。
槇世「ぼく、頑張んのやめたんだよ。」
▼広くも狭くもない七畳分の調合室。
槇世の諦めのにじむ声音が、ヤケに大きく響く。
浅緋は、何も言えなかった。先輩らしいことも、一人の学徒としての言葉も。
(間)
◇赤軍第二校舎の隣・病棟◇
▼冴木を連れて、病棟に向かっていた波月。
服の袖を掴んでいた手は、早々に冴木から振りほどかれていた。
冴木「波月くん。」
波月「なんだよ。」
冴木「どうして、僕を第三から連れ出したんです?」
波月「どうしてだと思う?」
冴木「いえ、解らないから訊いてるんです。」
波月「そうかよ。じゃあ、解んないままでイイだろ。」
冴木「(タメ息)……僕は、勅使河原さんに頼まれたから、手鞠さんの体調が良くなるまでーー」
波月「暁冬。手鞠が、髪を黒くした理由がわかるか?」
冴木「え、そういえば……どうしてなんでしょう…。」
波月「俺が見る限り、手鞠は毎朝、染めてるんだろうよ。触診するときに気づいたが地毛の金が残ってた。」
冴木「つまり…、どういうことでしょう?」
波月「バーカ。ちょっとは考えろ。」
冴木「なっ、きみに言われたくないです!きみだって、考えなしなところあるでしょ!」
波月「そういうことじゃねぇ!」
▼目的地である病棟への自動ドアは、目と鼻の先だ。
だが、少し火がつくと噛み付き合ってしまうのが冴木と波月の悪い点である。
波月「……いいか。手鞠の髪染めはマジナイだ。」
冴木「マジナイ?」
波月「おおかた。髪を染めることで自分のなりたい…なろうとしている自分に近づく為のマジナイだろうよ。」
冴木「そんなの…、手鞠さんが辛いだけでしょう…。」
波月「やっと、俺の言いたい意味がわかったか。」
冴木「ええ、まあ。心当たりと言いますか。かなり、身に覚えのある状況ですから。」
波月「だからさ。暁冬、オマエが助けてやれよ。」
冴木「僕がですか。でも、僕は攻撃部隊ですよ。」
波月「攻撃部隊だからってなんだ。弱って、実力が発揮できないほうが勿体ないだろ?」
冴木「……。ふっ、あはは…。」
波月「おい、笑うな。」
冴木「いえ、ふふっ、すみません…。(咳ばらい)…波月くんには、敵いませんね。」
波月「あ?なんでだよ。」
冴木「いいえ。ただ、そう思っただけですよ。」
波月「んだよ、それ。変な暁冬。」
冴木「すみませんね。変で。」
波月「おい、拗ねんな。」
冴木「拗ねてませんよー。」
波月「なんなんだよ。面倒くせぇ…。」
▼タメ息をついて、頭を搔く波月。
冴木は、イタズラっ子のように笑ってから窓から見えるグラウンドの景色を眺めた。
冴木M《孤独。それは、どんな事柄に比べても死へと近づいてしまう状況。とくに、大切な人と死に別れた時。
後悔、悲嘆、無力さ…。負の感情が胸を食いつぶしていく。……僕なら身に覚えがある。
手鞠さんとは、今期から近しくなった。けど、前は廊下でお見かけする姿は明るく笑う彼女だ。僕は、彼女に明るく笑っている姿を取り戻してほしい。……力になりたい。》
▼何気ない波月からのお願いが、冴木を変える。
この二人は、危うくも互いで小競り合いをしてバランスをとりあっているのだろう。
(間)
□△~中編 約35分~
▼それから、数日後。
休日が明け、週の始まりである月曜日。
本校舎の廊下をゴールドラインの入った服装の学徒たちが歩いている。そんな学徒たちは、第二会議室から出て、各々の目的地へと散って行く。
冴木「えぇっ!?僕が、行くんですか!?」
玉樹「そう。あんたが行くべきなのよ、冴木。」
冴木「で、でも!僕もこれから修練が……」
枦田「すみませんが、お願いしたいのです。我々も、これから情報整理に向かわねばなりませんから。」
玉樹「何だかんだ、あんたも特隊生になって長いでしょ。新人教育だと思いなさいよ。」
冴木「そ、そんなぁ~…!」
玉樹「ほら、早くなさいな。」
枦田「これ、今日の朝会記録です。持っていってください。」
玉樹「頼んだわよ。」
枦田「よろしくお願いします、冴木さん。」
冴木「え、ちょっと…!玉樹さんっ!枦田さんっ!」
▼凛々しさ、高潔さを纏った女子学徒こと玉樹と。独自の規範と規律で己を律する男子学徒こと枦田に雑務を押し付けられた冴木。
渡された朝会記録のファイルを数ページめくって、肩を落とした。
冴木「…『調香姫』、諸事情で午前休…。(タメ息)……僕じゃなくても他に特隊生は居るでしょう…。…あんまりです…。」
▼『調香姫』とは、手鞠が特隊生に昇級したさいに名付けられた異名である。彼女の前任であった『氷雨ノ王子』という特隊生。その学徒と対をなすような名付け。前任がいなくなったことによって昇級した学徒からしたら、皮肉である。
冴木は、落胆しつつ、それでも学園寮へ向かうことにした。
(間)
▼そもそも冴木が手鞠の見舞いへ、気乗りしていない理由は先週末のことだ。
冴木と手鞠を含めた特隊生七人で、夏季休暇に入るまでの期間について、特隊生はどのように活動するのかを決める会議をしていた。そして、配布した資料の中に前期に起こった[一月の騒動]に関しての記述があった。
配布が済んで、各々が書類へと目を通しているときだ。
手鞠の様子がおかしくなった。
震え出して、呼吸が浅く乱れ、ついには座っていた椅子から崩れ落ちてしまった。すぐに冴木たちが利用している会議室から程近い第三救護室へと手鞠は運ばれる。
冴木は、手鞠の蒼白しきった顔が脳裏に焼きついてしまったのだ。
冴木M《力になりたいと、気合を入れました…。けど、あんな姿の手鞠さんを見てしまったからには…僕がしようとしていること。それが、余計な事に感じてしまいます…。》
(間)
◇赤軍・第三救護室◇
▼さて、その頃の週始めの第三救護室では。
波月「おはよ、朝礼というか朝の報告な。」
槇世「おはようございまー」
浅緋「おはようっす!」
波月「まずもって、班長同士の報告会からな。……今月の初めから起こっていた体調不良者の急増…。まあ、パンデミックも落ち着いてきたから、第三では通常業務にもどる。」
浅緋「了解っす!」
波月「槇世は、困ったことあったら浅緋に聞け。」
槇世「う、うっす。」
浅緋「気軽に頼ってほしいっす!」
波月「通常業務ってのは、組手の稽古も含まれる。道着の用意を忘れんなよ。」
槇世「げぇっ、マジかよー。」
波月「で。オマエらには、お灸を据えてやろうと思ってるから覚悟しとけよ?」
槇世「しょ、職権乱用!!」
波月「なにがだ。単なる、実力の差だってことを認めろ。」
浅緋「腹を括るべきっす、宇樹くん。」
槇世「虚無顔で肩を叩くのはやめろっ、下さいっ!!」
波月「で。話続き、昨晩から十日間。揚羽乃先生が、本土出張で留守だそうだ。なので、通常業務に戻ったからには俺も第三を空ける。」
浅緋「アゲハ先生は、出張なんすね!めずらしいっす!」
波月「ついに、都築先生がぶちギレたんだよ。」
浅緋「あ~…ついにか~…」
槇世「え、どういうこと?つーか、誰の話?」
波月「おいおい、さすがにやばいぞ。」
浅緋「宇樹くん。さすがに、直属の教官の名前くらい覚えたほうがいいっすよ。基本学のキっすよ。」
槇世「……なんで、ぼくが責められんの?」
波月「(タメ息)何でもかんでも教えて貰えると思ったら、大間違いだからな。」
槇世「はぁ?なんだよ。その言い草。」
浅緋「ちょっ、ちょっ、ストップ!ストップっす!」
槇世「頼威さん、邪魔すんな。」
浅緋「ダメっす!宇樹くん!こればかりは、宇樹くんに非があるっすよ!」
波月「槇世、少し頭使え。なんの為に救護の教習課程を終えてきたんだよ。ケガ人の手当てもろくに出来ないだろ、オマエ。オマエの脳ミソはからっぽか?」
槇世「アンタ、今なんてっ!」
浅緋「宇樹くん、落ち着いて!遊羽さんも、煽らない!!なんで、煽るんすか!?」
▼正に一触即発。今にも、波月に掴みかかろうとする槇世の前へと立ちはだかって、抑える浅緋。
波月は二人から一歩下がって冷淡に、無表情に言ってのける。
波月「ハハッ…!……何度でも言ってやるよ。俺は、もう我慢なんざしない。」
浅緋M《うぇっ!遊羽さんの視線が完全に据わったっすー!!》
波月「槇世っ、オマエは頭を使え!何でもかんでも教えて貰えると思うな![実戦]になったら、俺や浅緋だって手伝えねぇ、助けてやれん!命だって、意図も容易く奪われる!オマエは、ヤケに俺に突っかかるけどな!文句たれるなら、さっさと所属を変えろ!」
槇世「んだよっ、それっ!!頼威さん、邪魔っ!!」
浅緋「どわっ!!(押し退けられる)」
槇世「あんたには、人の心がないのか!!なんで、そう簡単に言えんだよ!!」
波月「人の心だ?!あるから、散々忠告しただろう!」
槇世「どこがだよ!!あんたは!ぼくに、なにを教えてくれた!?だいたいのことを、頼威さんに投げ打って!あんたは、ぼくに何を指導したよ!?命令ばっかじゃねぇか!!」
波月「命令ばかりだと?!バカが!適材適所ってやつだ!俺は、言わずもがな!人に何かを教えられるたまじゃねーんだ!!」
槇世「だからだろ!そんな上からで、下の何がわかんだよ!!てか、あんたが、始業中なのに寝ての知ってるんだからな!!」
波月「オマエっ、上の仕事量を嘗めてんだろ!!オマエみたいにケガ人を相手してれば済む業務だけじゃねーんだよ!!手が回んねーし、浅緋だけじゃ大変だ!だから、増員した!
なのに、オマエはサボるし、目上に歯向かう!切り捨てられるに決まってるだろ!!」
槇世「決まってねぇ!そんなの、決まってたまるか!!(殴る)」
波月「ぐっ……!!(殴られる)」
浅緋「遊羽さん!!」
槇世「出て行ってやる!!ぼくなんざ、必要ないんだろ!?」
浅緋「あ、待って!宇樹くっ」
波月「追うな!!」
浅緋「ゆ、遊羽さんっ…。」
波月「…ハァーッ……。ほっとけ。あんな生意気なやつ。俺が指揮する第三に合うわけないんだよ。」
浅緋「で、でも……。《遊羽さんの言い分ももっとも。けど、宇樹くんには宇樹くんなりの悩みがある気がする…。》」
波月「殴られて分かったよ。槇世のヤローは、戦闘部隊に向いてる。……暁冬と取っ組み合いをしてきた俺が言うんだ。間違いない。」
浅緋「……とりあえず、冷やそうっす。オレ、保冷剤と布をとってくるっす。」
波月「おう。悪いな。」
▼浅緋は、調合室に置いてある冷凍庫へと取り向かう。
床に座り込んだまま、呟いた波月。
波月「クソが…、本気で殴りやがって…。…ハハッ…導火線を踏みつけないと本気になれないのは似たもの同士か…。」
▼その呟きを物陰で聞いていた浅緋。
保冷剤を握ると、そこから冷たさが回って、ジワッ…と痛くなる。
(間)
◇同時刻。学園寮・赤の棟 五階◇
▼エレベーターから降りれば、短毛の赤い絨毯が敷かれた長い廊下が続いている。等間隔に向かい合う扉たち。
部屋番号の書かれた札の下には、入室者の名前が書かれていたり、書かれていなかったりする。
冴木はエレベーターホールから右列、五番目の扉の前でノックしようか、しまいかを悩んで手を開いたり閉じたりを繰り返している。
冴木M《ここまで来といて、何を躊躇うのでしょう…。もしかしたら、すでに不在かもしれません。そうですよ。居なければ、居ないなりの…。》
冴木「よし、やるぞっ…」
▼拳を作り、軽くノックする。
叩いた音が響くだけで、中から物音はしない。
冴木は、不謹慎ながらも安堵の息を漏らした。
冴木「いらっしゃらない、みたいですね…?……それなら、このファイルを袋に入れて、読み終わったら枦田さんの部屋に持っていくようにメモを…。」
▼ズボンのポケットに入れてあるメモ帳を取り出した。
その刹那。目の前の扉の先、つまりの室内から大きな物音がした。音からして、棚か椅子が倒れた音。
もしくは、人が倒れた音に聞こえた。
冴木「物音……?(蒼白)……手鞠さんッ!大丈夫ですか!!ここ、開けますよ!!」
▼ゴンゴンッ…と強めにノックし、返答を待たずに行動する。
クヨクヨした考えなんぞ消え失せていた。
先程、冴木に朝会記録のファイルを押しつけた枦田は特隊生専用フロアの管理担当だ。その為、部屋のスペアキーも持っている。ファイルの一番後ろに貼り付けてあったスペアキーを剥がして、扉を解錠する。
冴木「手鞠さん!」
▼ガチャッ!焦りとともに部屋へと入る。
冴木「な、なんです…この部屋…。うっ、刺激臭のような、そうじゃないような甘い臭い…どこから香りが…?」
▼冴木は、数十秒だけ廊下に戻って深呼吸した。
脳が混乱した。嗅いだ香りのせいか、はたまた入ろうとした部屋がひどく生活感のない。または、清掃と点検を施された初期の家具配置。つまり、誰も住んでない部屋に見えたせいか。
冴木M《ここは手鞠さんの部屋、ですよね?あんなの、人が住んでないような部屋みたいで、尚更、気味が悪い…。》
冴木「(深呼吸)……よし。もう一回、確認しよう。手鞠さんが倒れたんじゃないなら帰ろう。そうだ。」
▼家主が居なければ、単なるスペアキーによる不法侵入だ。
だが、そんな事実には触れては行けない。
冴木「し、失礼しますー…。ッ、だから、何なんでしょう。この香り……。《嗅ぎ続けると、頭がしびれて力が抜けてくるような…》」
▼パーカーの袖で、鼻と口元を押さえて室内を見渡す。
冴木は、呼吸が止まりかけた。何せ、視界に飛び込んできた現状が冴木の予想を超えていたのだ。
冴木「て、手鞠さん…?手鞠さんっ、手鞠さん!」
▼倒れていた。というより、気を失っている。
家主である手鞠は、ベッドの上掛けを足に引っ掛けた状態で備え付けのクローゼットに寄りかかり、頭を床にギリギリ打ちそうな位置で止まっている。ベッドに乗っかり、抱き起こす冴木。
大きめな物音の原因は、手鞠が苦しくてもがいたのだろう。備え付けの椅子が床に倒れていた。
冴木M《呼吸、脈拍…不規則か…?…吐いた形跡がある…。混じってるのは何かの錠剤でしょうか…?》
▼攻撃部隊が所属でも、救護の基本知識は学ぶ。
だが、ここまで素早く理解できるのもは冴木の幼なじみが第三の班長 兼 総長の波月だからだろう。
手鞠「…うぅ………」
冴木「あ、手鞠さん!気づきましたか?」
手鞠「……ごめん、なさい…」
冴木「手鞠さん?」
手鞠「……たすけ、られなくて…。おうじ…ごめん、なさ…」
冴木「て、手鞠さんっ…!」
▼うっすらと目を開いて、手鞠の反応を伺うものの。
依然として意識がもうろうとしているのか、うわ言を音にしたかと思えば脱力してしまった。
冴木「手鞠さん…無理をしないで…。《……臭いの発生源はわかりませんし、こんな空気が澱んだ部屋では体に障るでしょう。…とにかく手鞠さんを他の場所に移さなければ…。》」
▼冴木は、手鞠を抱きあげる。
着ていたパーカーを脱いで、手鞠の脚を自分の腰へとパーカーの袖部分で固定させる。つまり、姫抱きのような不安定さよりオンブすることで両手が空く体勢を選んだ。
そして、ズボンの尻ポケットから学園支給の端末を取り出し、どこかへと通話をかけ出す冴木。
冴木「出て…、出てください…。(応答される)あ、もしもし!波月くん!僕です、冴木です!」
▼専門外なことは専門に聞く。懸命な判断である。
通話をかけた相手は、幼なじみの波月だ。
波月『おう、どうした。』
冴木「あの、経緯は省きますね。……手鞠さんが、嘔吐された状態で意識がもうろうとしています。今から第三に手鞠さんをお連れしたいのですが、ベッドは空いてますか?」
波月『空いてる。けど、ダメだ。』
冴木「な、なんでダメなんですか?《今日の波月くん、機嫌が悪くないか…?》」
波月『ダメなのはダメだ。理由はなんであれな。……じゃあな。』
冴木「ちょ、ちょっと!切らないでください!」
浅緋『あー、ちょっと待つっすよ!もしもし、冴木リーダー。替わりました、浅緋っす!』
冴木「(安心したように)…ああ、浅緋くん。」
浅緋『えっと、理由は割愛するんすけど、うちの新人である宇樹くんと遊羽さんが言い合いをしたんっす。』
▼マイクから離れたとこから『おい、余計なこと話すな!』と聞こえるが、浅緋はガン無視を決め込む。
冴木「そ、そうなんですね…。でも、波月くんが不機嫌だとしても。手鞠さんを引き受けてくれない理由になりますか?」
浅緋『えーっと。ぶっちゃけ今期から班長同士で決め事ができたそうで。一度、通った救護室には通い続けろっていう……え、あっ、遊羽さん!まだ話しのとちゅーー』
波月『そういうことだ、暁冬。第三では、第一から薬を処方してもらってる手鞠は引き受けられない。だが、総長の権限として軍医補佐生は向かわせられる。どうする?』
冴木「では、軍医補佐生の方をお願いします。」
波月『わかった。向かわせる。到着した軍医補佐生には、オマエのわかる範囲で、症状や状態の報告を相手にしろ。俺が言えるのはそれだけだ。』
冴木「いえ、充分です。ありがとうございます。」
波月『あと、俺の部屋の机。二番目の引き出しに、寮の医務室のスペアキーがある。手鞠はそこのベッドに運べ。医務室なら清潔だからな。』
冴木「はい、わかりました。」
波月『あと、軍医補佐生が到着する間に再度、嘔吐があるかもしれない。そんときは、水を注いだ桶で受けてやれ。タオルの用意も忘れんな。』
冴木「了解です。《……当たりが強くても、ちゃんと助言をくれる…。さすが、波月くんですね…。》」
波月『おう、そういうことだ。……手鞠をよろしく。』
冴木「波月くん。助けてくれて、ありがとうございます。」
波月『なんだよ、あらたまって。……いや、また茶でも飲みに来い。』
冴木「ええ、その時にまた。」
波月『おう、またな。』
▼通話が切れる寸前に『待ってるっすよ〜!』と元気よく浅緋の声が飛び込んできて、波月の『黙れっ』という怒鳴りで通話がツーツー…と切断された。
冴木「よし、実行です!」
▼冴木は、波月に助言されたとおりに活動を開始した。
ここで、解説しよう。
刺激臭にも感じられたニオイの発生源は手鞠の部屋のベッドの下。そこにオリジナルのお香を焚いていた。
手鞠は、体調が優れないのに、香りの強さや処方薬の過剰摂取…要因が重なったことによる嘔吐と意識の混濁だったのだ。
(間)
◇赤軍・第二校舎 三階◇
▼波月に感情をぶつけ合って返り討ちされ、駆け出してしまった槇世。溢れてしまった涙や鼻水をすすりながら、不服だと言わんばかりの感情で第二校舎の廊下を歩いていた。
槇世M《なんだよ、なんなんだよ…。ぼくがいけないってのかよ。二人して、ぼくを責めるみたいに言ってさ。ぼくだって、努力したさ。講習会だって、ちゃんと毎日参加した。教えて貰えることは、頭に入れようとした。……なのに、なのに……。》
槇世「…どうせ、凡人と天才は天と地の差があるんだよ…。」
▼悔しさから自分の手首に爪を立てて、痛みで気分を紛らわせようとした。爪が肌に刺さる感覚。そんな感覚によって、視界が一瞬だけ研ぎ澄まされた。
澄んだ視界で見やると足元に木札が落ちている。肌に爪を軽く立てていた右手で、その木札を拾い上げた。
槇世「一般、資料室…?……どの部屋の木札だろ。」
▼解説しよう。各軍に資料室は三種類ある。在校生や教官なら誰でも入室可能な一般資料室。司令部、参謀部 所属が入室可能な最新から過去の学園録および学徒録を扱っている資料 特殊室。教官のみが、入室可能な教官 資料室の三種類だ。
槇世が拾った木札の一般資料室は、槇世の立ち止まっている位置から突き当たって左に曲がり、奥まった場所にある。
槇世「……資料室か。入学して二ヶ月、経ってるけど行ったことない。……行ってみようかな。」
▼腕輪タイプの学園支給の電子機器を起動する。
学園の案内図のアプリを開いて、目的地を入力し、音声のナビゲーションが始まった。ナビにそって、歩き出す。
(間)
◇赤軍・学園寮 医務室◇
冴木「さて、波月くんに言われたものは用意できました。」
▼電話越しに指示を受けて、必要なものを用意した冴木。
手鞠を、医務室のベッドへと運んで胸の位置まで掛け布団をかけた。空調も効かせた。手鞠の顔色も、寮の部屋から連れ出した頃より幾分マシだ。それでも、体調不良だと言うのがひと目でわかるくらいに血の気がない。
冴木「今のところ、手鞠さんが吐きそうな様子もありませんし…。いったん、自室に戻って読みかけの本でも取ってきましょうかね。」
▼思いついたら、即行動。
迷いがないときの冴木は有言実行タイプだ。
ささっと、医務室から出て寮の自室へ向かった。
……それから数十分後。
冴木M《いやぁ、自分が把握してるより読みかけの本があって、どれにするか迷っちゃいました…。手鞠さん、起きてますかね…。》
▼降下するエレベーターの中で、そんなことを思っていた冴木。
両腕に押し花で作った栞が挟んである本を六冊抱えて、三部軍共同の大広間へ降りたときだ。何やら、アンドロイドの受付嬢に首を横に振られている学徒が目についた。
下級生「ノォンッ!なんで、ダメなんだ!?学徒名簿には三階って表示されてるのに!!」
冴木「……誰でしょう。でも、あの腕章のマークどこかで…。」
▼受付嬢の提示した内容は『あなたのご希望の階へ入室は許可できません。』とテロップにデカデカと映し出されている。
サイレントマナー型のアンドロイドに頭を下げている学徒が、物凄く可哀想に見えた冴木。つい、声をかけてしまう。
冴木「あのー、何かお困りですか?」
下級生「え?」
冴木「あ、いえ。すみません。何か、手間取っているようにお見受けしたので。」
下級生「ひぇっ!?あ、あなたは特隊生のっ!!」
冴木「え、あっ、すみません。驚かせたようで。」
▼最初こそポカン…とした様子だった学徒が、冴木をちゃんと認識した途端に慌てて敬礼した。
冴木も、相手の慌てっぷりに吊られて敬礼をする。
仮にも冴木は軍の代表する学徒の一人だ。この困っている学徒が易々と声をかけていい相手ではない。掛けられるのは別として。まあ、そんな風には見えないだろうが。
下級生「失礼しました!!冴木特隊生!」
冴木「何かお手伝いしましょうか?……それと、そんな畏まらないでください。」
下級生「いえ!そういうわけに行きませんし!わたくしごとで、特隊生さまの手をお借りするわけには!!」
冴木「でも。僕も困ってる人をほっとけません。良ければ、ただの先輩だと思って、頼ってください。」
下級生「は、はい。そう、仰るなら…。」
▼学徒は、身につけていた肩掛けカバンを漁り出す。
冴木も、相手が何かを出すのを黙って待つ。
受付嬢のアンドロイドは、他の職務へと戻った。
下級生「自分は、雑務部のものです。そして、始業中にも関わらず寮に居たのは……コレを宛先の相手に渡したかったのです。」
冴木「手紙ですか。まだ真新しいように見えますが?」
下級生「はい。自分、今期に入る前の春期休暇で雑務部の活動として、とある特隊生さまのお部屋を掃除させて頂きまして…。」
冴木「ああ、その節はご苦労様です。《……とある特隊生。言わずもがな、『氷雨ノ王子』のことでしょうね。》」
下級生「いえ、仕事ですから。……それで、この宛先の相手にコレを渡したくて。受付嬢に手続きをしていたのです。……まあ、どういうわけか断られましたが…。」
▼面目ない。
悔しげに下級生は、歯噛みした。冴木がその手紙の宛名を見ていいかと確認とれると快く見せてくれた。
冴木「あれ……この名前…。」
下級生「ご存知なのですか?」
冴木「ええ。今期から特隊生になられた方です。」
下級生「えっ、特隊生!?」
冴木「はい。良ければ、お預かりします。この学徒さんとは同じ立場ですし、この手紙を渡しておきますよ。」
下級生「是非!お願いしますっ!……そっか~、昇級されてたんですね。そりゃあ、受付嬢に断られるわけだ。」
冴木「不便すぎる規則だとは思いますけどね。」
下級生「いえ!自分は、そうは思いませんよ!特隊生は、軍の代表ですから!自分が、こうやってお話できたのことは、何かの導き!学園生活していて良かったと思えます!」
▼ハキハキと持論を告げてくる学徒に、苦笑まじりに冴木は反応した。ここで解説。寮の五階は、特隊生および上層生、教官という限られた者しか入室できない規則なのだ。
冴木「では、しかとお預かりしました。」
下級生「はい!ありがとうございます!自分は、失礼させていただきます!」
冴木「ええ。残りの業務を頑張ってくださいね。」
下級生「ありがとうございました!冴木特隊生!」
▼学徒は元気よく駆け出して、寮の共同出入り口から出て行った。預かった手紙を再び見る冴木。
やはり、宛先はここ数日で接点を持っている学徒の名前が細めのボールペンで書かれていた。亡き特隊生、六津井祈里の筆跡で間違いない。
冴木「まさか、こんな置き土産があるとは思ってませんでしたよ。……六津井さん。」
(間)
▼ナビゲーションに誘われて、目的の一般資料室に辿り着いた槇世。ドアノブへ手を添えて、スライドさせる。扉には施錠されておらず、簡単に戸が開いた。
槇世「カビ臭ッ…。……うーん、資料室というより、図書室っぽい…。」
▼開口一番に、室内の臭いを指摘した。
彼の言うとおり、広い室内をところ狭しに、ぐるりと囲うように本棚が並んでいて、真正面の窓の下にも背の低い本棚がある。
カビ臭さの原因は、梅雨の時期というのも関係しているし、軽い清掃がひと月一回の頻度だからだ。
槇世は、後ろ手に扉を閉めつつ、資料室へ足を踏み入れる。
槇世「ん、なになに?……『一般資料室へようこそ。ここは、デジタルと紙の二種類から資料の閲覧が可能です。特殊パスをお持ちの学徒なら、デジタル資料からパス入力で資料 特殊室で取り扱い、保管の資料を閲覧できます。』…へー、そうなんだ…。」
▼壁に貼ってある紹介文を読みあげて、理解したのかしてないのか。微妙な反応をした。
少なくとも六人は、向き合って作業できそうな大きい机が横三列。敢えて、二列目の二番席に座る。
槇世「ひとまず、パソコンに電源を入れて……おお、起動はやいな。」
▼学園内で使用されている支給品の端末やパソコンなどは、電子機器の扱いに長けた軍部のサポート班が管理を行っている。もし、サーバー内にエラーやハッキングが起こっても九割の確率で排除と不具合の修正が迅速に行われる。
だが、データ内が清潔でも室内の清潔さは保たれていない。
槇世「学徒番号…何期生なのかを入力して…。よし、あとは検索履歴が探られないようにフィルターを…。」
▼手慣れた操作で、備え付けのパソコンをいじっていく。
槇世がせっせっと電子の世界で防御癖を作っているが。
所詮は、日付変更とともに管理部の手によって余計なシステムが初期化されるとは知らない。
槇世M《さてと。ぼくは、どうせBランクの学徒だし。入りたてだから、多くのことはしれないかな…。でも、さすがに知らないで片付けられないこともあるよな…。》
槇世「…がんばるの、やめたのになぁ…。
……教官の名簿って見れんのかな。あ、大まかな事は載ってるみたいだな。えっと、誰だっけ。赤の常駐の軍医って…」
▼さすがに、あそこまで波月に怒鳴られたら反省したのか。
パソコンと睨めっこしつつ、槇世による基本知識を再履修する時間が始まった。
(間)
□〇~後編 約35分~
▼それからニ週間後。
カレンダーでは、既に六月も終わり頃。
梅雨明けを待つばかりの時季になっていた。
◇上層生専用 会議室◇
冴木「なんだか、腑抜けた毎日ですね…。」
玉樹「そんなこと言うなら、篤海と上枝に絞られればいいわ。」
枦田「冴木さんら、攻撃部隊には日々の鍛錬をこなして頂く他ないです。」
玉樹「そうよ。梅雨だと思えないくらいにイイ晴れ間よ?」
冴木「正直にいうなら、僕は稽古とは違った疲れが溜まってますけど……!?」
玉樹「それは、夜回り担当をした江倉ちゃんも同じだと思うわ。」
冴木「……断れないメンバー捕まえて、押し付けたのは誰です?」
玉樹「最初は、アタシ。途中は、参謀長からの指示ね。」
冴木「でしたら!少しは、反省の色をーー」
枦田「(手を二拍手)とにかく。諜報部の我々も、何かと種を拾っていますが……次の[実戦]に繋がりそうな種はなさそうです。なので、冴木さんも稽古に励んでください。」
冴木「はぁ……。ワカリマシタ。」
枦田M《なんで、カタ語?》
冴木「第三の方々に、お礼をして来ます…。」
玉樹「あら、そう。行ってらっしゃい。せいぜい、私闘にならないようにね?」
枦田「木刀で頑張ってください。」
冴木「キミたち、本当に他人事ですね!?」
玉樹「アイツの沸点を把握してるのは冴木くらいよ。」
枦田「諜報部からも感謝しているとお伝えください。」
冴木「(ため息)……おじゃましました。お先に失礼します。」
▼頭を掻きながら、冴木は会議室を出て行った。
枦田「あれ、そう言えば『調香姫』さんは?」
玉樹「見てのとおり、今日は一日休みよ。」
枦田「……あー、なるほど。大変ですね。」
玉樹「でも、冴木に看病係を任せて良かったと思うわよ。」
枦田「まあ、たしかに。」
玉樹「そのお陰か、あの子……。」
▼諜報部の二人は、会議室から見える空を見て微笑みあった。
(間)
▼冴木は、宣言どおりに第三救護室へ向かっている。
真剣の鞘に下げ緒の紐をキツく縛り上げて、抜けないようにした。代わりに、木刀を左手で握って校舎内を歩く。やはり、特隊生を見かけると大半の学徒が一礼や敬礼をしてきた。
そして、第三救護室の前へと辿り着く。
冴木「(深呼吸)……よし、行きますか。」
▼コンコンコン…と救護室の引き戸をノックする。
すぐに中から走り寄ってくる足音が聞こえた。
浅緋「はいはーい、どなたっすか〜?」
冴木「浅緋くん。冴木です。」
浅緋「(戸を開ける)冴木リーダー!いらっしゃいっす!お久しぶりっすね!」
冴木「ええ、お久しぶりです。なかなか、お礼を言いに来れずにすみませんでした。」
浅緋「お礼…?ああ、看病係だったんすもんね。大変だったすね!中に入って、お茶でもどうぞっす〜」
冴木「ええ、お言葉に甘えて……おや?」
▼浅緋が退いて、見えた先の事務机。
そこに、普段は居るはずの学徒の姿がなかった。
冴木は処置用の長いソファに腰かけて、首を傾げた。
浅緋「あ、えっと…遊羽さんはちょっと出てるっす…。」
冴木「おや、そうなんですね。……やっぱり、あの新人くんは戻ってこられなかったんですか?」
浅緋「そうっす。遊羽さんも、宇樹くんが来なくなってから三日間は不機嫌すぎて近づけないくらいで…。オレも、下手なことして怒鳴られるのは勘弁っす。」
▼浅緋は、綺麗な彫りと金細工が施されている茶器を冴木の前へと置く。この茶器も、茶飲み仲間である第二班長の小嵐が通いのお礼として置いていったものだ。
浅緋「どうぞっす。小嵐が置いていったお茶っ葉っす。」
冴木「いただきます。……ん、とても華やかな香りですね。」
浅緋「でしょ、でしょ。オレも、最近のハマりなんすよ。」
冴木「(ちびちびと飲む)……それで、その新人くんと波月くんはなぜ言い合ってしまったんです?」
浅緋「よくある食い違いってやつっす。オレはオレで、先輩らしさってなんだろって思うばかりで…遊羽さんは努力とか頑張ってる姿を人に見られたくないタイプっす。だから、宇樹くんからしたら、上からばっかでムカつくってキレて、言い合っちゃって……。」
▼おぼん抱えて、苦笑して俯く浅緋。
冴木は、なにかイイ案がないものかとお茶を飲む。
浅緋「……まあ、相変わらず第三は騒ぎがない限りはのんびりしてるっす。……遊羽さんはなにも言わないっすけど。宇樹くんが来なくなってから遊羽さん怒鳴らないし、ぶっちゃけ二人体制の頃に戻っただけっす。」
冴木「……浅緋くん。」
浅緋「ん、なんすか?」
冴木「進級してから、キミは副班長になったそうですね。」
浅緋「そうっすけど…それが?」
冴木「サポート派の副班長の権限がどこまで強いか分かりません。ですが、攻撃派では刃向かった下級生を実力で負かして、上級生としての立場を見せるのが通例なんです。」
浅緋「つまり、何かしら試験でもやってみろってことっすか?」
冴木「ええ、そういう事です。」
浅緋「(考え込む)…………いいっすね。それ。」
冴木「お、乗り気になってくれましたか。」
浅緋「はいっす。正直いって、オレもこのままじゃ嫌なんす!二人にはすれ違ったままでいて欲しくないし、言い合ってでも第三は三人体制じゃなきゃダメっす!」
冴木「ふふっ、じゃあ本人たちを探してきましょう。僕は、波月くんを。」
浅緋「オレは、宇樹くんっすね!集合場所はどこにするっすか?」
冴木「では、見つかりしだいに第三へ連れてきましょう。試験内容は、浅緋 副班長。キミが決めてくださいね。」
浅緋「《そっか、オレは副班長っ…!》……はいっす!」
冴木「それじゃあ、行動開始です!」
浅緋「了解っす〜!」
▼第二校舎へと駆け出す浅緋と本校舎の上階へと進む冴木。こうして、お人好しな二人による仲違い修復作戦が開始となった。
(間)
▼手鞠は、学園寮へと迎える最短のルートを猛ダッシュしていた。服装も、髪型も、足元の履き物も普段と異なる。彼女を特隊生『調香姫』だと気づく下級生はいないだろう。
だって、今の彼女は……
手鞠M《なんで、どうして…!こんなメッセージが暁冬くんから届きますの!?》
▼新学期を迎えてからというもの。
手鞠からは、花開くような笑顔は消え失せ。日々、喪にふくすが如く影のある笑みを浮かべていた。
そんな振る舞いこそ、違和感なのだ。何せ。
同期生からすれば【手鞠】という女子学徒は、輝かんばかりの金髪を、上や横に結って無邪気に笑う活発な乙女なのだから。
手鞠N「私は、走りましたの。
高さのあるヒールでは、かなり走るには不向き。分かっていても、止まりませんでしたの。学園寮の洋風の両扉を開け放ち、受付嬢のアンドロイドさんにも、手早く申請を送る。
申請が通れば、まっすぐと上階に昇れるエレベーターに乗り込みますの。……エレベーターに乗っている間に、呼吸を整える。」
手鞠M《置き土産…そんなのが、あるなんて知りませんでしたの…》
手鞠N「呼吸が整っても、鼓動は速まるばかり。でも、いつもの息苦しさとは違いますの。だって、この高揚感。なんだか、身を任せてしまっていい気がしますもの。」
▼エレベーターが、目的の階で止まる。
扉が開けば、深呼吸してから降りて赤い毛の絨毯の上を進む。そして、右側の五番目の部屋。手鞠が特隊生へとなってから与えられた寮の個室。扉の施錠を解いて、中へと入る。
手鞠M《暁冬くんから届いたメッセージによると、私の机の引き出しに入れてあるって……。》
▼床へ膝立ちをした。
一番大きい引き出し、横づけの引き出しを引き出していく。
そして、手鞠がアロマの瓶などを入れている三段目の引き出し。そこにポツン…と茶封筒が入っていた。
手鞠「……これが……メッセージに書いてあった置き土産、ですの…?」
▼震える手で、茶封筒を掴む。カサッ…と紙特有の肌触りを感じつつも持ち上げて、裏面へひっくり返す。
そこに、今は亡き特隊生・六津井祈里の名が書いてあり、反対側に手鞠の名前が書かれていた。
手鞠は、焦る気持ちを抑えつつハサミで封を切る。そして、緊張の面持ちで三つ折りの便箋をひらいた。
手鞠「……し、『信愛なる夢衣大隊の子へ。先に謝っておこうと思う。ごめんね。この手紙が読まれているということは、ボクはこの世に居ないのだろう。』…(喉が鳴る)…これは、本当に王子からの手紙ですの…?」
▼細くとも美しい文字。便箋、三枚による置き土産。
生前の『氷雨ノ王子』を表したかのような文字によって、綴られている謝罪から始まる置き土産という手紙。
手鞠は、声に出して読み上げていくが徐々に堪えきれず震え出す。ついには便箋に雨が降った。
手鞠「『(中略)ここまで書いてしまったから、書き直すのも紙が勿体ないね。だから、書き直さないけれど、この手紙を読んでいるのがボクの深愛なる子だと最高だね。
きみのことだよ、手鞠。
きみには、苦労かけると思う。通例によるなら、ボクの替わりに特隊生になるのはきみだ。
きみは、自分が思っているより優秀な調香師だと気づいているかな?気づいていないのなら、胸を張って過ごして欲しい。
だって、ボクはきみのお陰で死ぬ瞬間まで『特隊生・氷雨ノ王子』で居られるのだから。』
……ッ、王子っ…王子ぃ…!うぅ…!(声をあげて泣く)」
▼クシャッ…と便箋を力強く握った。
続きを読もうにも、視界がぼやけて濡れて見れない。
今の彼女は、六津井の後をついてまわっていた『姫』の頃に戻った。この一時だけは、誰にも邪魔されない。
手鞠「…(鼻をすする)……ちゃんと、読まなきゃ……
『(後略)いろいろと、書かせてもらたけれど。最後にひとつ。
ボクは、死んでしまったことを後悔していないよ。年若く死ぬなんて、と卑下されようともね。どんな死に様だったかは、わからない。分からないけれど、想い人の手に狩られたら自分としては最高な死に様だと思うんだ。
……手鞠。キミには、誰かを恨んでほしくない。
手鞠には、手鞠の学園生活を過してほしい。先立つものとしてのお願いだ。
どうか、手鞠の人生が一日でも笑える日が増えますように。
いつまでも、愛しく思っているよ。六津井 祈里』」
手鞠「……私も、愛しく思っておりますの。……ありがとうございます…王子…。」
▼雨が、静かに降る。しかし、拭うような仕草もしない。
シワのよった便箋を胸に抱えた。
窓から見える空は、酷く鮮やかな水色をしている。
それは、手鞠の瞳の色と酷似しており。これからの季節を、祝うかのような空にも見えた。
(間)
▼さて、仲違い修復作戦を決行した浅緋と冴木。
冴木は、屋上で心在らずな状態の波月を見つけ、言葉で説得を試みるが空返事ばかりでつまらない。なので、波月が嫌がるであろう方法で連れ戻すことした。
◇連行の道中◇
冴木「はい、波月くん。失礼しますよ。……よっ、せっ!」
波月「えっ……うぉっ…はぁっ…?」
冴木「落とさないように善処します。波月くんも、舌噛まないようにしてくださいね。」
波月「……おい、待て…。」
冴木「ん?なんですか。」
波月「ひとつ聞きたい。なんで、俺を迎えに来た。」
冴木「幼なじみ、だからというのは答えになりませんか?」
波月「なんだそれ…。ならねぇ…、なってたまるか…。」
冴木「でも、そんな弱々しい口調の波月くん。ほっとけないです。だから、迎えに来たんです。」
波月「俺が、弱々しくしてなきゃいいのか…?」
▼縋るように冴木の肩あたりの服を強く掴む波月。
冴木「できるなら、いつも通りに口汚く接してくれれば調子が狂わずに済みますね。」
波月「何だそれ。オマエ、俺の事なんだと思ってんだ…?」
冴木「そうですねー。波月くんは、横柄で口汚くて、素直じゃない俺様ですね。」
波月「暁冬、オマエ…刺されたいのか。」
冴木「今は勘弁してくださいね。怪我させたくないので。」
波月「よし、今すぐ下ろせ。刺してやる。」
冴木「ふふっ、その調子ですよ。」
波月「何なんだよ、オマエ…。」
冴木「キミの幼なじみですよ。」
▼波月は、冴木の優しさに素直に甘えられない。ゆえに、クソッタレ…と悪態をついた。また、冴木が小さく笑った。
苛立つ。それでも波月は、自分から無理にでも下りようとしないのはそういう事である。
(間)
▼一方その頃、槇世を探す担当になった浅緋。
人懐っこい性格をしている浅緋は、独自の交流関係を築いている。だが、そんな築いている交流関係から外れた、意外な学徒から槇世の居場所を教えられた。
そんな情報をくれたのは、過去に波月と仲違いし、別の所属へ移った第一救護班の戸木浜班長だった。
浅緋M《まさか、戸木浜さんが教えてくれるとは意外だったっす!まあ、相変わらずの悪態で、遊羽さんを目の敵にしてるのは変わらないみたいっすけど!》
▼教えられた情報を元にグラウンドを駆ける。
目的の場所は、第二校舎の裏側にある雑務部の部室だ。
浅緋「(立ち止まって、深呼吸)……ここに、宇樹くんが居るんすね。……よし、行くっすよ。」
▼雑務部の部室は、プレハブ校舎なので、ハリボテっぽい引き戸を叩く。窓ガラスに『関係者以外、立ち入りを禁ず』の紙が貼ってあるので中を確認できない。
雑務部員「へいへい、誰ですかー?」
浅緋「あの、すみません!第三救護班の副班長、浅緋っす!」
雑務部員「副班長さん?そんなかたが、なんの用ですー?」
浅緋「ここに、オレのとこの班員が居ると聞いて、来ましたっす!」
雑務部員「お言葉ですけどねぇ…ここは、表に出て活躍できないと判断された学徒の巣窟。そんな、副班長さんに迎えに来て貰えるような学徒は居ませんよー?」
浅緋「そんなことはないはずっす!第一の班長に教えてもらってきたんすから!」
雑務部員「あんた、騙されたんじゃないんですかー?」
浅緋「ここ、開けてほしいっす!中を見せてくれれば、居るか居ないかは一目っすから!」
雑務部員「いないったら、いないよ。さっさと帰ってくださいよ。……こちらから、開けることもしませんから。」
浅緋「なっ…!ッ……おじゃましたっす…。」
▼雑務部の部員から顔を合わせることなく追い返される浅緋。
人目もある分、怒鳴りつけるのは得策じゃないと判断したのだろう。悔しさを拳を握ることで、堪えて引き戸から離れた。
浅緋は、大きくタメ息をついた。気力が逃げていくようだ。
すると、プレハブ校舎から離れて浅緋が背中を向けた途端。中が騒がしくなり、ものの数分で引き戸が開いて、誰かがほっぽり出された。
雑務部員「おら、帰んな。あ?ここはな、表に出られない奴らの巣窟なんだよ。『雨』、あんたはお呼びじゃない。二度と、ここに来ないようにな。捨てられんなよ。」
▼雑務部の学徒は、淡々とした言葉を降らして、引き戸を閉めてしまう。引き戸の前には関節が柔らかいのか、女の子座りをした槇世が呆然とした顔で座り込んでいる。
浅緋「……宇樹くん。」
槇世「頼威さん…。」
浅緋「帰ろうっす、宇樹くん。オレ、宇樹くんが必要っす。」
▼手を差し出して、しゃがみこめば槇世と視線を合わせる浅緋。だが、差し出した手は叩き落とされる。
槇世「ウソだっ!!そんなこと言って!また見捨てんだろ!?」
浅緋「ッ……オレは、見捨てないっす!」
槇世「よく言うぜ!二週間も放ったらかしにしたくせに!!」
浅緋「ごめんっす!すぐに探してあげられなくて、悪かったと思ってるっす!でも、オレだって遊羽さんが恐いんすよ!」
槇世「…なんだよ、それっ…」
▼悔しさなのか、寂しさなのか。それとも。
槇世の目には今にも零れ落ちそうなほど、涙がたまる。
槇世は、顔を手で覆い隠す。顔を隠した両手の指先が、ひどく傷んでいるのが確認できた。痛々しい。
浅緋「指、荒れてるっすね。」
槇世「荒れてるからなんだよ…。別にぼくは…。」
浅緋「手当しないとキレイな指が台無しっす。手当させてほしいっす。」
槇世「…でもさ…でもさ……」
浅緋「遊羽さんから、守ってあげるっす。副班長として。いや、オレの意思で。オレが必要なんす。だから、宇樹くんを迎えに来たんすよ。一緒に、第三に帰ろうっす!」
槇世「……聞いて頼威さん…。」
浅緋「どうしたんすか?」
槇世「……あのね、ぼく、総長さんと言い合ったあとに資料室でいろいろ調べたし、学び直したんだ。頼威さんたちが、どれほどの努力を積んできたのか。ぼく、なんも頑張ってないじゃんって改めて思い知らされたの。調べた後に、第二と第一の班長さんに頼み込んで手解きをしてもらったんだ…。頼威さん、ごめんなさい…。ぼく、頼威さんに散々、酷いこと言った。謝ったって許してくれなくてもいい…。でもね、今のぼくは……えっ??」
浅緋「聞いたっす。全部、小嵐と戸木浜さんから。『かなり、シゴいてやったから後はよろしく』って。……よく頑張ったすね。」
▼浅緋は、槇世を抱きしめる。
槇世の背中を優しく掌で撫であげた。
槇世「ぼく…、頑張った…?」
浅緋「頑張ったっすよ。頼ってくれって言ったのに、全然力になってあげれてなくてゴメンっす。宇樹くんは、いい子っすね。」
槇世「これからも…がんばったら、ほめてくれる…?」
浅緋「オレが、褒めてあげるっす。遊羽さんは素直になれない人っすから、あんまし期待しちゃダメっすけど。ちゃんと行動する人のことは、見てくれるっすよ。」
▼子ども体温な浅緋に抱きしめられて、目頭が熱くなった槇世。そのまま肩越しに顔を隠すように埋める。
浅緋は、幼子をあやすような手つきで槇世を慰めた。
この時、雑務部のメンバーが空気を読んで外に出なかったり。広報部の撮影班が抱き合う二人を、こっそりと隠し撮りしていたり…といろいろあったのは別の話だ。
(間)
▼後日談。
それから、槇世と波月は火花が散るような睨み合いをしつつも和解をした。なぜ、和解できたのか。
それは、浅緋によるチャレンジタイムが開催され。内容が『患者の容態にあった漢方薬を煎じること!』とのことで。
バチバチに競い合ったものの、残念ながら『薬師のライ』から酷評により引き分け。和解せざるを得なかった。
(間)
◇第三救護室◇
▼それから、数日後。
カレンダーは七月になり、妖島は梅雨明けした。
冴木は、朝の日課である素振りの稽古を終えたあと。第三救護室に立ち寄った。すると……
冴木「おじゃましーー」
槇世「(遮るように)頼威さぁぁぁん!!(抱きつく)」
浅緋「(よろける)どわっ!う、宇樹くんっ!危ないっす!」
槇世「だって!総長さんが脅してくるんだよ!」
波月「(片手にクナイ)おいこら、槇世。オマエも、同罪だろうが。なに被害者面してんだ。」
槇世「はぁ!?よく言うよ!あんただってさぁ!」
冴木M《これは…完全に、タイミングが悪かったみたいですね…》
浅緋「あ!冴木リーダー!いらっしゃいっす!」
槇世「ちっす!暁冬さん!」
波月「おう。よく来たな、暁冬。」
冴木「ど、どうも。おじゃましてます。」
浅緋「宇樹くん、離れるっす!うん、いい子。……よし、冴木リーダーが来てくれたなら、オレはお茶いれるっす〜」
槇世「頼威さん!ぼくも!ぼくも、手伝うよ!」
冴木「……なんだか、雰囲気が変わりましたね。」
波月「変わりすぎなんだよ。つーか、いぬっころが増えた。」
冴木「あー、まあ。たしかに。先住ワンコにくっつきたがる後輩ワンコですね。絵面てきに。」
波月「うるさくて、たまんねーよ。」
冴木「ふふっ、いいんじゃないですか?お通夜みたいに静かよりも。」
波月「暁冬。オマエ、楽しんでるだろ?」
冴木「いえ、そんなことは。(笑いを堪えてる)」
波月「ケッ、白々しい。……つーか、どうした?なんか、あったのか?」
冴木「え、ああ。そうでした。実は、特隊生と参謀長、参謀助勤を含めたメンバーで話し合いがありまして……(耳打ち)」
波月「(耳打ちされる)……へー、また面倒そうな内容だな。」
冴木「はい。まだ、決定事項ではないので、公にされることはないそうです。でも総長である波月くんには報せておこうかと。」
波月「さんきゅ。頭の片隅に入れておくよ。」
冴木「ええ、そうしておいてください。」
波月「そう言えばさ。最近、手鞠の様子はどうだ。まだ一班のとこに通ってんの?」
冴木「いえ、今は眠剤に頼ってはいないみたいです。たぶん、波月くんは驚くと思いますよ。」
波月「何が?」
冴木「ほら、これです。(端末保存の画像を見せる)……僕、今の手鞠さんのほうがよっぽど手鞠さんらしくて、好きですね。」
波月「ははっ、髪を真っ黒にしたのも意外だったが……手鞠のやつ、思い切ったなぁ。」
冴木「ですよね。でも、陰が落ちたようで何よりです。」
波月「まあ。たしかにな。」
浅緋「お茶がはいったすよ〜!」
槇世「今日は、李班長から頂いた茶菓子もあるよ〜」
波月「お、美味そう。俺、これ貰うわ。」
槇世「あっ!それ、ぼくが狙ってたやつ!」
波月「早いもの勝ちだろ。」
槇世「だめっ!はいはーい!年下権限っ!」
波月「うるせぇ、食わなきゃそれも貰うぞ。」
槇世「えっ、やだよっ!」
浅緋「仲良く食べてくださいっす!」
冴木「ふふっ、いいですね。こういうの。《こんな日々が続けば何も悲しくならないのですが…。》」
▼ワイワイとお茶の時間を楽しむ四人。
何気ない学園生活の日々は、着実に消費されていく。
(間)
▼場所は変わって学園寮。
上層生専用フロアのエレベーターホール。
枦田「おや、おはようございます。手鞠さん。」
手鞠「ええ、おはようございますの。枦田さん。」
枦田「いやはや、見慣れませんね。……本当に、よかったのですか。」
手鞠「あら、何がですの?」
枦田「綺麗な長い髪だった。随分と思い切ったことをなさる。」
手鞠「ふふ、いいんですの。……過去に縋るのは、やめますの。泣いていたところで、辛いことで頭が支配される。そんなの、楽しくありませんもの。……これからの私は、過去(思い出)と一緒に未来を過ごしていきますの。」
▼手鞠は、笑う。綺麗で、手に届かないところで気高く咲く華の如く。どこか儚げで美しい笑みを浮かべた。
枦田「……そうですか。何かあったら、協力しますよ。」
手鞠「ええ、ありがとうございますの。」
枦田「それでは、本日もお務めを頑張って参りましょう。」
手鞠「はい。よろしくお願いしますの。」
▼エレベーターから降りていく枦田と手鞠。
置き土産を見つけてから手鞠は変わった。
腰まであった長い髪は、バッサリと肩の上まで短く切り揃えられている。そして、左側の髪の一束を目を惹く黒色に。右側の髪の一束を明るい茶色。全体を地毛の金色に戻した。
これが、新たに学園生活を送ることを決意した『特隊生 調香姫』の門出である。
彼女は、力強い一歩を踏み出した。
赤軍編・第五話⇒涙の先に、新たなる選路を。
おしまい
台本完成日⇒2020年2月11日(火)
(`-ω-´)✧アトガキッ!!
あとがきなので、ネタバレあります。
本編を読了後にご覧ください。
閲覧または演じてくださった方に感謝します!
おはこんばんにちは~。無計画実行委員会 委員長こと作者の瀧月です!
さて、前話の掲載から2ヶ月が経ってしまいましたが……この度、続話でございます。
少々、作品の構成上。
三部軍の全体の時系列を揃えるために、白軍のキャラクターにはお休みをしてもらっております。
白軍を推してくれている方、すみません。
今しばらくは、他軍のお話にお付き合い下さい。
さてさて!やっとですよ!!
やっと、赤の一員として登場させられましたね!手鞠ちゃんを!
散々、黒軍編で登場させて可哀想な目にあわせてきた自覚はあります。
少なくともいらっしゃるであろう手鞠ちゃん推しの方。お待たせしました。
やはり。彼女を救うのは、やっぱり憧れだった存在なわけですよ。
心だけは、孤独ではない。
そう伝えたかったであろう手紙は、かなり思い思いのことが綴られていることでしょう。
今後は、特隊生 調香姫として輝く彼女を見守ってくだされば幸いです。
……賑やかし担当のキャラクターを登場させていないとアトガキも大人しめですね(笑)
とまあ、手鞠ちゃん以外にも注目して頂きたいキャラクターがおります。それが、槇世です。
彼は、新キャラです。そして、どういうわけか先輩に刃向かいましたし、結局は泣きつくと言った結末。でも、無理もないです。
どんな生い立ちであろうと妖島に辿り着く学徒は独りなのです。
そして、そこから成長するか…否なのかは…
良ければ、槇世の行動や心情もピックアップしていく予定ですので。彼も、見守ってほしいキャラクターです。よろしくお願いします。
今後は、浅緋大好きマンになるでしょ。
転がり方を間違えたら浅緋大好き過激派という名のモンスターペアレントの完成ですね(笑)
……はい。唐突に終わります(汗)
なんか、今まで以上に静かなアトガキ…(苦笑)
こんな回があっても大丈夫ですよね!?
はい、大丈夫ってことで!
ありがとうございました!!
また、いずれ!お目にかかれますように!
お疲れ様でした~(´ω`)ノシ 瀧月狩織
【台本公開日】2020年2月17日(月)




