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【自己解釈 学生戦争】三津ヶ谷学園物語。【声劇台本】  作者: 瀧月 狩織
三津学シリーズ メイン軸の台本
15/37

【四人用】白軍編・第一話⇒戦場と道化者。【台本 本編】

※この部分をコピペして、ライブ配信される枠のコメントや概要欄などに一般の人が、わかるようにお載せください。

録画を残す際も同様にお願いします。


三津学シリーズ 白の台本 一本目です。


【劇タイトル】白軍編・第一話⇒戦場と道化者。

(もしくは、白の1話。または、三津学 劇る。というテロップ設定をして表示してくださいませ。)

【作者】瀧月 狩織

【台本】※このページのなろうリンクを貼ってください

白軍編(しろぐんへん)・第一話⇨戦場と道化者。


比率:男声3:女声0:不問1の四人用 台本です。

※登場キャラの紹介、あらすじ などは前ページの『登場キャラなど』をご覧ください。


────────────

【演者サマ 各位】

・台本内に出てくる表記について

キャラ名の手前に M や N がでてきます。

Mはマインド。心の声セリフです。 《 》←このカッコで囲われたセリフも心の声ですので、見逃さないで演じてください。

Nはナレーション。キャラになりきったままで、語りをどうぞ。


・ルビについて

キャラ名、読みづらい漢字、台本での特殊な読み方などは初出した場面から間隔をもって振り直しをしています。

場合によっては、振り直していないこともあります。

(キャラ名の読み方は、覚えしまうのが早いかと。)


それでは、本編 はじまります。

ようこそ、三津学の世界へ


─────────

──────


☆本編


▼厚い雲が覆う冬の空が春の(きざ)しを見せだす三月の中頃。

構内に植えられている桜の木も(つぼみ)が膨らみだしており、空は穏やかだ。



(間)


~タイトルコール~


青年「ほっほっほっ!タイトルコールをワシが務めるぞ!」


青年「この物語は『自己解釈 学生戦争 三津ヶ谷学園物語。』じゃ!


して、『白軍(しろぐん)編/第一話』の『戦場せんじょう道化者どうけもの。』という。


……なんじゃ、意味深な題名じゃな?まあ良い。さっそく始まり、始まりじゃ。」



(間)



▼だが、穏やかな空に反してグランドには。

銃声や悲鳴で溢れていて穏やかさなどない戦場と化していた。



訓練生A「くそっ…!俺たちにも手加減なしかよ!」


訓練生B「白ってだけで、敵確定なんだろう!」


訓練生A「とりあえず!背中だけはとられるな!」


訓練生B「分かってらァ!!」



▼お互いを鼓舞(こぶ)させながら、初の実戦となった戦闘へと舞う訓練生の二人。だが、突如として背中を護り合っていた友人が右肩と左脚を被弾し、(あか)が舞う。倒れ行く友人に目を大きく見開いた。



訓練生B「ぐあっ…!」


訓練生A「なッ!おい、大丈夫か!撃たれたのか!」


訓練生B「ぐぅ…、気をつけろ…。狙撃手だ…。」


訓練生A「スナイパーだと!?黒の奴らぁ!」



▼不幸中の幸いとでも言うのか、友人の傷は貫通したようで出血も多くない。友人が撃たれたからには、自分自身も射程範囲のはず。しかし、隠れるにも一番近い万葉樹まで一五メートルは離れている。



訓練生A「しっかりしろ!!」


訓練生B「い、いてぇ…。撃たれるってこんないてぇのかぁ…。」


訓練生A「感想とか言ってる場合かよ!

と、とりあえず止血…!ネクタイ使うからな!

(ギュッと縛り付ける)…行くぞ!まだ、出血が少ないうちに逃げるんだ!」


訓練生B「いい…。俺は置いて行ってくれ、代わりに高等部の人を…。」


訓練生A「バカ言え!ダチを置いていけるかよ!」


訓練生B「…馬鹿はどっちだ…!習ったろ!戦況が不利ならば自衛を優先しろって!!」



▼授業で習った言葉を怒鳴って、告げる。

しかし、友人の左手がひどく震えていることに気づいてしまう。



訓練生A「やっぱ、無理だ!オマエを置いてけない!」


訓練生B「馬鹿野郎!こんなの動くマトだろ!?」


訓練生A「とりあえずは隠れられる場所まで走る!揺れっけど耐えろよ!」


訓練生B「うぅッ…。ほんと、馬鹿だろ…。」



▼やはり、友人の言う通りにどこからともなく銃声が響き、弾が降ってくる。 逃げようとする訓練生の足元に弾が散る。

不安を煽り、面白がっているだけのようで弾は当たらない。



訓練生B「うあっ、うぅ、もう、ダメ……だ……。」


訓練生A「なっ!おい、聞こえってか!おいって!!」



──────

────



訓練生A「うぅ…!!くそっ!くそぉぉぉぉ!」



▼声を張って、駆けていく。 一番近い木の傍まで来た。



訓練生A《やっと木の陰だ。これで、隠れられる!》



▼隠れようとした木から黒軍の象徴である学ランを着た学徒が飛び降りてきた。

ギラリと輝く刃が友人を抱えていた訓練生に襲いかかる。



訓練生A「え……ぅ、わぁぁぁぁぁぁ!!」



▼叫びが響いて、訓練生は目をきつく閉じ、地面に倒れる。

──(くう)を切る風を感じた。



訓練生A「あ、あれ…?斬られてない…?」


那都「訓練生、平気か。」


訓練生A「高等部の方…?た、助かっ…ヒイッ!」



▼訓練生の二人の前に(まさかり)を下した那都が佇む。

安堵も束の間、訓練生の視野に入った状況に小さな悲鳴が上がる。足元に血を流した学ランの学徒が倒れていたからだ。

那都は敵学徒が見えないように腕を広げ、告げる。



那都「いいか?合図したら校舎まで全力で走れ。近くまで行けば救護班が気づいてくれる。」


訓練生A「は…、はいっ!!」


那都「よし、行けっ!!」



▼気を失っている友人をオンブし、訓練生は駆け出す。

既に、行く先には倒れた敵学徒や高等生の姿があり。訓練生は泣き出しそうになった。



(間)



▼那都は訓練生を見送ってから耳元に手を当てた。



那都「…聞こえるか、悠崎。」


悠崎「はい。聞こえてますよ、那都先輩。」



▼ジジッ…とイヤーカフ型のイヤホン越しに返ってくるボソボソした喋り声。

那都は目をまたたいて、反応する。



那都「すまない。訓練生に協力を頼むことになるとは。」


悠崎「…気にしないで。実戦は早めの方がいいからね…。へへっ…、こんなクズに役割をどーも…。」


那都「(軽く咳払い)…それで、そっちからは何が見える?」


悠崎「…あー、そうっすね…。」



▼イヤホン越しに移動しているのか、地面を這うような音が入る。



悠崎「…歩兵役の奴が七人。たぶん、本隊かと。

位置間隔は一番近くの()の方角に銃器、刀、ナイフの三人…遊撃かと思います。那都先輩の存在には気付いてないっす…。」


那都「了解。ちなみに保護した訓練生を狙ったスナイパーの姿は?」


悠崎「…残念ながら、オレからは見えない…。」


那都「わかった。………(深呼吸)それじゃあ、反撃だ。」



▼ガサッ!と那都は見た目と反した身軽さで傍の万葉樹へと登って、枝伝いで移動する。



悠崎「…先輩、巳の方角にいる歩兵役の三人が動いたよ。」


那都「了解。距離は。」


悠崎「…七、いや、四メートル半…。」


那都「…視野に捉えるまでここで待機する…。」


悠崎「ラッジャ、こっちも援護できそうならするよ…。」


那都「ああ、頼んだ。」



▼ドッドッドッ…。

鼓動の音が強くなり、サイズを縮めた(まさかり)の柄を握る。

──耳元に微かに声が聞こえた。



悠崎「…いま…。」


那都「すぅ…(深呼吸し。)…上からご免!うらぁぁぁ!」



▼悠崎の合図をかわきりに那都は敵学徒と応戦を開始。

着地と同時に(まさかり)を右の方向へと振り回す。

手始めに近接を得意とするナイフ使いの手首を切りつけて動きを封じる。那都による容赦ない攻撃。

残りの敵学徒二人も負傷した仲間を庇ってか、陣形が逆三角形になった。



那都「どうした。訓練生を相手にしてる時の威勢は。」



▼相手の感情を煽るようにわざと身構えずに告げる。

敵学徒の銃器使いが那都を目掛けて、発砲した。



那都「感情のブレは武器、攻撃に顕著(けんちょ)に出る。」



▼教員と同じ言葉を口にし、弾丸の軌道を見抜けば素早くける。けると同時に万葉樹へと登って姿をくらます。

焦りからか、銃器 使いが木の上を目がけて乱発してきた。

弾丸の数を数え、冷静な頭のままで那都は敵学徒の背後へと回って降りる。



那都「…あんたの負けだ。

弾数が限られているタイプの銃器のムダ撃ちは褒められたことじゃない。」



▼冷淡にも聞こえる抑揚のない声で告げれば、勢いつけて銃器使いの後頭部を回し蹴りをお見舞する。

敵学徒を二人のして、辺りの様子を探った。



那都「《一人足りない。確か、刀使いだったか…?》 ……悠崎、そっちから敵の再確認して、情報を教えてくれ。」


悠崎「…刀使いの奴は二メートル先の木陰に居るみたい。

…しかも動きが怪しい。警戒すべきだと思う…。」


那都「了解。ソイツを討つ。道案内をしてくれ。」


悠崎「りょうか、い_?あれっ…、見当たらない、です…。」


那都「どういうことだ。木陰に居たはずだろ。」


悠崎「わ、わからない…。先輩、ゴメン。俺、見失なっちゃって…。」


那都「いや、気負うな。慎重に進んで……」


悠崎「先輩っ!後ろだ!!」


那都「なっ…?…ぐあっ…!……まずったか…」



▼悠崎の忠告の声より先に那都は右の上腕を切り裂かれる。

グランドの地面に血がしたたった。

那都は斬撃を受けた方向へと向いて、視野に捉えた敵学徒から距離を置く。



悠崎「あんにゃろ…!許さねぇ…!」


那都「……止せ。悠崎ゆうざき


悠崎「先輩、なんで…!」


那都「無駄な殺傷は控えろ。

進級前に敵学徒を殺ってしまうと成績にひびく。」



▼悠崎の卑屈さはどこへやら。感情を昂らせて、武器を構えた。

しかし、那都の言葉に構えたオートボウガンを(おろ)し、様子を伺うことにした。



悠崎「次、危なかったら射るから…。」


那都「…勇ましいな。けど、今はしまっておけ。」



那都M《…普通の状態じゃないな。

血走って、開ききった瞳孔と口角から垂れてる唾液の量。

…使用武器は短刀。刃の手入れも最近、施された様子が見受けられない。不審な動きをしていると悠崎が言っていたな。

…ということは、最近。出回っていると噂の新薬を使用したか…?》



(間)



那都「…通常の会話はできそうにない、か…?」



▼那都は止血としてネクタイをほどけば、傷に直接巻いて縛り上げる。錯乱状態と判断された敵学徒が雄叫びをあげた。



敵学徒「ガァァァァ!!倒ズ!黒ハ負ケナァイ!!殺ズ!赤モ白モ、黒ニ、ソメル!」



那都「やはり…、薬物中毒者か?《めくれた袖、(さら)された腕には無数の注射針の痕…。ビンゴか。》 ……悠崎ゆうざき、聞こえるか。俺が思うに、こいつはかしておいても可哀想だ」


悠崎「え、突然なに…?悪いけど、木の陰で見えないんだ。

先輩、なんか、あったの。」


那都「あぁ、こいつは薬中だ。既に健常者とは言えない。」


悠崎「じゃあ。射抜いてもイイの……?

あ、でも…やっぱり射程が上手く取れない…!

…くっ、オレが位置確保が下手くそだからだ…。グズでゴメン、先輩……」


那都「(ため息をつく)…何で突然、卑屈ひくつになるんだ。

…訓練生のあんたは手を汚す必要はない。__俺が殺る。」



▼悠崎をゾクリとした寒気が襲う。唸り声をあげる敵学徒。

那都は、眉間にシワを寄せて冷ややかに睨む。



那都「うるさい。叩き切って黙らせてやる」


悠崎「(生唾を飲み込む)…オレは別のとこ見てます……」



▼短刀の柄を握って、敵学徒が突進してくる。

那都は敵学徒の手首を蹴り上げて、武器を遠くまで飛ばす。

敵学徒は錯乱状態のままだが、武器がなくなったことに動かなくなる。

那都による追加攻撃は、敵学徒の側頭部へと回し蹴りをして相手をひるませる。すかさずまさかりを振り上げ、敵学徒に向けて振り下ろした。



(間)



刹那せつな

ガキンーッ!!と音をたてて、まさかりの刃がくだかれる。横から何かが飛んできたものがぶつかったのだ。



那都「な、何ッ……」


青年「そこの学徒ー。ちと、待つんじゃ~。」


那都「…!…誰だ、あんた。」


青年「残念じゃが、今は名乗れんくてな。ワシのことは追々わかるじゃろ。」


那都「可笑しな奴だ。…わざわざ、他人様(ヒトサマ)の武器を壊す理由があるって言うのか。」



▼那都の視野に見慣れぬ容姿の青年が現れた。どことなく、ゆるいオーラを纏っている。

服装の色合いは白軍(しろぐん)のようだが、シャツの種類もスラックスの種類も現在のものとは異なっている。



青年「むふふっ〜…。そうじゃな。物申したいことは山のようにあるが、三つだけ。」


那都「三つ…?何が、オカシイ。仮にも戦闘中なんだぞ。」


青年「まあ、そう急かすのは若さゆえじゃろうて。…落ち着いて話を聞くことも重要じゃよ。」


那都「だから、なんだ。あんた、オレと歳変わんないだろ。」


青年「ふむ~!そう感じれるなら、ワシもまだイケるということじゃな!」


那都「…話が逸れてるぞ。」



那都M《鉄の扇子…?あんなのを、投げたのか?

いや。あんなので、オレの武器を壊したって言うのか…。》



▼那都は警戒心をありありと見せて、青年を見やる。



青年「ああ、そうじゃったな。ワシが言いたいこと、一つ目~。」



▼緩い口調で話し出す。

だが。ゆっくり立ち上がった敵学徒が、青年の背後から襲いかかる。

那都は突然の事で、こぶしも出なかった。しかし、青年は瞬時に鉄の扇子で敵学徒の頚椎(けいつい)を殴る。



青年「まったくぅ。相手を後ろから狙うとは…、頂けんの〜。」



那都M《……こいつ、敵学徒を視野に入れずに殴っただと…?

何なんだ。どうも、つかめない男だ。》



▼地面に敵学徒が倒れる。気絶したようで、微動だにしない。

それを確認し、青年が再び口を開く。



青年「さて、おぬしはオーバーキルという言葉を知ってるかのー?」


那都「…オーバーキル?それが何だ。」


青年「(鼻で笑う)さきのおぬしはそれのように見えての。

ワシから見ても、この学徒は普通ではない。…殺す必要はあるようには思えんくてな。」


那都「…悪いが、説教なら教員に受ける。初対面のあんたに言われる筋合いはない。」


青年「んふふ、ふふふ……(笑いを含みながら)…いやー、すまんの。

どうも、ワシにはおぬしが黒軍と似たような性質(タチ)に見えての。」


那都「あんた。冗談にしても笑えないことを言うんだな。」


青年「冗談と思うてくれて、構わんよ。じゃが、ワシはそう感じたのじゃよ。」


那都「その指摘をされたオレが言うのもあれだが。白の中にも黒と似たやつはいくらでもいる。

学徒人数と比例してな。…だから、裏切りは起こる。」


青年「そうじゃな。おぬしの言い分ももっともじゃ。…ああ、そうじゃ。」


那都「なんだ。」


青年「おぬしの言うとおり。

白の学徒でも堕ちてしまえば、黒と変わらんのじゃよ。して、黒より厄介なものがつどうのが赤なわけじゃが……」



▼那都は眉間に深くシワを寄せた。

男子学徒はニッコリと笑う。どこか、薄気味の悪い感情(イロ)を纏った顔だ。



青年「おぬしは後輩に忠告はしてたようじゃが、自身の価値を見いだせて居らんようじゃな。

…だから、いともたやすく。生かす、殺すをわける。」


那都「だから、何が言いたい。さっさと結論を出せ。」


青年「ふむ。まあ、よかろう。ワシがおぬしの武器を壊した理由(わけ)は…とさない為じゃよ。」


那都「…とさない、だと?

………おい、顔が近い。何がしたいんだ。」



青年『…これはまっこと、水底のように深い藍色の瞳なり。はてさて…戦う際に宿る感情(イロ)は…。』



▼ころりと声色を変え、時代劇ような口振りで、那都の瞳を見つめる。那都は訝しげに思うが、何をするでもなく。

相手の夜明けのような紫色の瞳を見る。



(間)



▼沈黙が漂いだしたところで、駆けてくる音が聞こえた。



悠崎「(息を切らしながら)先輩っ…!那都(なつ)先輩!ご無事、ですか…!」


那都「ん…、悠崎ゆうざき。わざわざ下りて来たのか。」


悠崎「そりゃ、突然通信は途切れるし、なんか言い合ってるみたいだったから…。」


那都「ん?ああ、そうか。武器の破片でイヤーカフが壊れたか。」


悠崎「えっ…。気づかないもん?」


那都「ああ。気づかなかった。あんたから通信を切断したのかと。」


悠崎「そんなこと、わざわざしないよ…。ん、誰、この人…。」


青年「イイ後輩じゃな。おぬしをしたっておるようだ。」


那都「ああ、訓練生の中には高等部に上がれない奴もいるからな。…憧れみたいなもんだろ。」


悠崎「慕う…?…そ、そりゃあ、那都先輩は強いし、今日の見学会の案内だって完璧だったし…。

オレなんかが慕うとか、憧れることも、おこがましいよ…。」



那都M《…なんで、こんなに卑屈なんだ?》



青年「うむむ。なんじゃ、やけに自信なさげじゃのう。おぬし、ちと背筋を伸ばして顔をあげたらどうじゃ?」


悠崎「ちょっ、ちょっとなに…!近いよ…!」


青年「ははっ!そう、怯えるな。取って食ったりせんよ~」


悠崎「や、やめてよ…!オレ、見られたくない…!」


那都「やめてやれ。あんた、変人だな。」


青年「くくっ…、一応、初対面のワシを変人と称するか。」


那都「変人だろ。俺の武器を壊すわ。いちいち近いわ。嫌がる相手に強要するわ。

……今の条件を合わせなくても変人だ。いや、不審者だな。」


青年「ハハハッ!そーか、そーか。

(落ち着いた声で)…おぬし、那都なつと申したな?」


那都「ああ、それがどうした。」


男子「……これも、なにかのえにし。ワシが思うに、また会うことがあるかもしれんのぅ?」


那都「あんたは予言者ごっこでもしてるのか。あいにく、そういう類いは信じてない。」


青年「なんじゃー、つれないの~。軽く頭の片隅に入れておいても問題なかろ?」



▼どこか掴めない態度で話を続ける青年に対し、悠崎が那都に小声で訊ねる。



悠崎「ねえ、先輩…。この人、なに?高等部の人?」


那都「こんな変人は諜報部ちょうほうぶ伊澤(いざわ)の双子で事足りてる。」


悠崎「…そう。他にも居るんだね…。オレ、やっていけるかな…。」


那都「大丈夫だ。敵学徒を見てからの、あの威勢なら問題ない。」


悠崎「そっか…。進級試験、がんばるってみるよ…。」



▼悠崎は、那都の言葉に少し安堵というか決心したような面持ちで頷いた。



青年「ククッ、話は終わったかの?……鳴るぞ。」



▼青年の言葉と同時に。

リンゴーン…!リンゴーン…!と鐘が響きだす。

一斉に時計台の鐘が鳴り響く。…赤、白、黒。

それぞれの軍の校舎にある時計台が鳴る。幾度か、鳴れば音は止んだ。



那都M《この男。なんで、鐘が鳴るのが分かったんだ?

…倒れてた敵学徒が救護班に回収されている…。降参か?それとも首謀者が討たれたのか…。》



悠崎M《…これが、学生戦争が停戦ていせんした合図。鐘が鳴るなんて、知らなかった…。》



(間)



青年「うむ!グットタイミング!なかなかに完璧じゃのぅ!これにて、終いのようじゃな。……ではの、ワシはこのへんで。」


那都「おい。その敵学徒をどうするつもりだ。」


青年「はっはっはー!内緒じゃよ!」



▼そう声を張って告げれば、青年は敵学徒を引きずって立ち去った。

ポツン…と置いていかれた二人。悠崎がおもむろに声を漏らす。



悠崎「…変な人…。いや、オレも人のこと言えな……あでっ!」


那都「(悠崎を叩く)…アホ。いちいち自分を卑下するな。それだけで価値が落ちるぞ。」


悠崎「…はい、スミマセン…(フードを深く被る)」


那都「悠崎。ケガはしてないか。」


悠崎「え?あ、はい…。上に居たんで、大丈夫です…。」


那都「ホントだな_?嘘の証言は意味ないからな。全部、報告書に書かなきゃいけない。」


悠崎「上の方が見るんでしたっけ…。白だけで112部隊あるんですよね…。本当に見てんのかな…。」


那都「その真意は知らないがな。ただ、書くだけでも自分の中のまとめにもなる。」


悠崎「あー…。なるほど…。《ホント、那都先輩っていろいろ前向きなんだよな…。》」



(間)



悠崎「(小声)…凄いなぁ…。」


那都「なんか、言ったか?」


悠崎「いえ、なんもないです…。」



▼戦いさえ終われば、彼らは日々、悩める学徒でしかない。

他愛もない言葉を交わしながら、戦闘の跡が残る校舎までの整備された通路を歩いて行く。



(間)



▼ところで、敵学徒を連れ去った青年は。



青年「さて、ここまで来れば人目につかんじゃろ。

(ドサッと敵学徒を地面に落とす)

……まったく。いくら、この学園であっても”(やく)”の存在は見過ごせんのじゃよ。……まあ、おぬしには試したい事があるんじゃ。ワシの来校記念になってくれな。」



▼未だ。意識のない敵学徒に、先程の陽気さなど微塵もない淡々とした言葉を降らした。

青年は、衣服いふく(ふところ)から医療用の注射器を取り出す。

そうして、躊躇(ためら)いもせずに敵学徒の首筋へと針を突き刺した。



(間)



◇本校舎の昇降口にて。


訓練生A「あの!すみません!」


那都「ん?」


悠崎「先輩、知り合い…?」


那都「いや、知り合いではない。だが、先の〈実戦〉で会った訓練生だ。連れの学徒が負傷していたんだ。」


悠崎「そう…。きみも、災難だね…。」


那都「どうだ。問題ないか?」


訓練生A「はい!お陰で、ダチも命に別状はないらしくて!本当に、助かりました!ありがとうございます!!」


那都「いや、礼には及ばない。訓練生を守るのは、高等部の学徒にとってはならわしだからな。」


悠崎「はぇー…なんか、カッコイイですね……。」


那都「うん?何がだ?」


悠崎「いえ、何でもないです…。《そうやって、面と言えるように頑張んなきゃな…。》」



▼声にせずとも、悠崎は強く決心した初春の三月末だった。

──それから数日後。あの謎多き青年に連れ去られた敵学徒は、命に別状ないが物資争奪戦 前後など記憶に混濁こんだくがある状態で、黒軍くろぐんの本校舎前で発見された。

それから程なくして、那都なつ 无代なしろもとに【総司令長】をあらわす印の押された封書ふうしょが届いたのであった。

この封書をきっかけに歯車が回り出す、のは……また別の機会に。





白軍編・第一話⇒戦場と道化者。 おしまい



台本 最新修正日 2021年8月12日(木)


台本 初回掲載日 2018年8月2日

台本 再掲載日 2021年5月16日

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