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沢木牧夫はフリージャーナリストで35才。長身痩躯のイケメンで週刊誌やウェブなどにガセネタを売って生計を立てていた。
「荒滝陽子が覚醒剤をやっているらしい」
地下鉄の車内で沢木が隣に座ってファッション雑誌を眺めている倉田聖子に声を掛けた。
「どうせガセでしょ?」
聖子が軽蔑したような顔で沢木をチラッと見た。
沢木は参ったという風に頭を掻いた。
「まあ、こんなせちがらい世の中だ。デマ記事でも書かなきゃ生きていけないさ」
沢木は腕組みをして、自分自身を納得させるように何度か大きく頷いた。
「単なる自分を正当化するための言い訳じゃない」
聖子は沢木を見ずに冷たく言い放った。
沢木はまた自分の頭をポリポリと掻いた。
「F国の内戦が激化しているそうよ」
聖子が憂鬱そうな顔をしてつぶやいた。
「他の国が面白がって武器を注ぎ込むからな」
「戦争産業じゃない。別に面白がっているわけじゃないわよ」




