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俯き加減の君  作者: 僕
3/3

度胸試し2

「佐々木くん...?」


頭が真っ白になる。苦しくてもいいから言い訳をしなければ、何か言わなきゃ。そう思って声を出そうとするけれど、口がパクパクと虚しく動くだけだ。


「何してるの?」


一歩後ずさった瀬尾さんが言った。

ヤバいヤバいヤバいヤバい...入学早々、始まってもない青春が終わる...

とにかく瀬尾さんが先生に被害届けを出すのは避けなければならない。というか、完全に口を封じなければ。女の噂は怖すぎる。

極限に近い緊張の中、僕の頭が導きだした答えは、


「瀬尾さんってさ!...ポニーテール!似合ってるよね!!」


何言ってんだこいつ?

自分でもそう思った。空気が凍る。

距離をとって見ている男子達も息を飲む。


瀬尾さんは、不安そうに胸の前で握っていた手を離しながら自分の髪に指を差し込み、


「う、うん。ありがとう...今はポニテじゃないけど...」


と、俯きながら言った。


これは...全く解決できてないな。

いや、反応が返ってきただけ良かったと思うべきか...もっと、もっとフォローを入れなければ。


「う!俯いてたら壁にぶつかるぞ!ほら!顔上げてみ!」


瀬尾さんの肩を揺さぶって言った。

あとから思えばよくこんな大それたことをしたものだと思う。


「急になに...」


すごい剣幕でわけのわからないことを言われた瀬尾さんが不安そうに顔を上げる。


顔が近い。呼吸が止まる。また拍動が早くなる。

耐えられない。


「ぐぉっ!ごめん!」


慌てて距離をとった。拍動が聞こえるみたいだ。


「びっ、びっくりするなぁもう...」


と、瀬尾さんは言って、


「佐々木くんはもうちょっと足下見た方がいいんじゃない?」


と小さく笑った。


「え?足下?何もないけど...」


「ふふっ。違うよ。慎重に行動した方がいいってことだよ。」


「ぁ。そっか...」


瀬尾さんは笑顔だと本当に印象が変わるなぁ。

僕が見とれているうちに瀬尾さんはまた笑って階段を上っていった。


その後男子達と反省会を行い、翌日は僕、河本、信田の3人が上階の床にタッチして戻って来たのだった。



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