表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

自殺の手引き

作者: 孤独

人とは不思議な者である。

どうせ、どいつもこいつも、ここにいる理由など存在していない。


「死ぬの?」


偶然にも。

今、自殺をしようとする男と居合わせた酉麗子とりれいこは声を掛けた。


「こ、子供には関係ない」


特急列車がもの凄い勢いで通過するこの駅は、巷では自殺スポットの一つだと言われていた。

明らかな異変が感じられる。


男は会社を首にされ、父親の残した借金の催促も迫られ、ボケ始めた母親の介護もしなければならないという。もうほとんどが詰みの状態に差し掛かった。

目が覚める事に嫌気が差した。どうして、こんな場所に生まれてきたのか。とても不幸な人生だった。


それでも。


「あなたが悪いの?」

「俺は悪くねぇ!みんな!みんな、悪いんだ!」

「そう」


酉はその言葉を強く信じた。生きたいのに、死ななければいけないような人。彼がどんな人なのか分からない。自殺をしたい人が、


「まどろこっしい。止めて」

「なんだと」


走る鋼鉄車両に撥ね飛ばされるなど。


「特急列車にただ飛び込むだけでは死ねないのよ?」

「なに?」

「線路に向かって頭から飛び込むのよ。確実に頭が列車に挟まれることによって、命の核でもある脳みそは四散できるわ。足から線路に飛び込もうとしたら、……ここは右から列車が来るから左腕、左足、左の骨盤。それらの骨と肉は惨く散ることでしょう。しかし、心臓と頭が生き残る可能性があるの。脳に届く痛みによるショック死というのは、列車に轢かれるぐらいでは到達できず、心臓は脆いもしっかりと護る胸骨によって損傷が少ない。内臓器官が裂傷する痛み、外傷の痛みだけがあなたを襲い、現代の医療科学はあなたという人生の負け組を悪意に満ちた善意が助けてしまうわ。遺書を置いたとしても、その場の義務で助けるのが人間という種族の愚かさ。さらには、列車を一時的に止めた事によって交通機関の麻痺が発生し、さらなる責任追及と借金が増える事でしょう。二度と死ねず、休めず、そんな生き方しかできなくなるわ」



プーーーーーーーンッ



特急列車は通り過ぎた。

酉は生きろという説得を使わず、あえて男が今しようとしている自殺について、淡々と怖く、長く語ることによって命を救ってしまった。


「……な、なんで。こんな事をした」

「1人で死んで欲しい」

「どうやって」

「道端で餓死か、東京からアメリカのロサンゼルスまで泳ぎなさい。そして、死になさい」


無茶苦茶言っている。


「できないのなら、あなたは生きたいと言っている。死にたいなら何でもできるはずよ」

「嘘を、……嘘を言うなよ」

「本当よ。もし、もっとマシな死に方をしたいのなら。真夏の日に水を飲まずに脱水症状で死になさい。あるいは真冬の日に裸で過ごして、凍死しなさい」


震え始める。苦しんで、苦しんで……


「苦しんで死にたくない!楽に殺してくれ!!」

「死にたい奴が贅沢を言うものじゃないわ。苦しみたくないなら、今からでも必死に生きなさい。誰もが世の中に苦しんでいるのよ」


世の中。確かに。残酷だらけ。その最後すら、残酷を求めていく。

酉はそれでも苦しみから逃れたい男の、要望を叶えられる唯一の方法を耳に届けた。



◇    ◇



それから1週間後、酉はニュースを見た。



『今朝、母親を殺害として、母親の長男を逮捕しました。長男は亡くなった父親の借金を返済するため、母親に保険金をかけて殺したと……』


借金は無くなった、追われる恐怖を牢獄という場所に辿り着くことで失った。

これからどんな生活があるか。知れるものではないが、



生きたいのなら、何かあるかもしれない。


朝から何を書いてんだろうね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ