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ふと見れば 素敵な笑顔 独り占め どう思うかは 人によりけり

此にてストック分が終了です。

次話からは週一更進を目標にしたいです。

そんな魂を冒涜するが如き(ファンタジーな)光景が目の前に有りました。


「…スッゴく厨二です」


「そういった評価は初めてですね。

ご用件を御伺いします」


「あ、すいません。

冒険者登録に来ました」


「いえいえ、初見の方が呆然とされるのは良く有ることなので。

では此方の書類に必要事項を記入して、彼方(あちら)の登録受付に提出して下さい」


そう言って天上の美声と共に同じ内容の書類を二組渡されました。


「あ、この娘は付き添いなので…」


「失礼しました。

代筆は御入り用でしょうか?」


謝罪と共に頭を下げ(ぬめ)る触手で余った書類を受け取って下さいました。

あ、意外と肌さらさらです。

触れても粘液も血も書類や私の手に付かないのはどうなってるんでしょうね。

|スッゴく(S)|ファンタジー(F)です。

ファンタジーといえば…。


「書くにあたって必要な言語の指定とか有りますか?」


ファンタジーの定番の一つにオリジナル言語とかが有ったと思います。

オリジナル言語である必要があれば代筆を頼まねばなりません。


「言語の指定は有りませんね。

貴女の得意とする言語であれば大丈夫です。

また手書き以外にも文字の概念が無い場所の出身者用に書類右上の?マークという記号部分に触れて頂ければ音声入力や念写入力に切り換える事や質疑応答も出来ますよ?」

なんという至れり尽くせりでしょうか!?

技術の進歩って凄いですね。

「他にご質問は有りますか?」


「書き物机はどこですか?」


「それでしたら彼方(あちら)にございます」


教えて頂いた場所には何名もの方が書類を書いてました。

書類に質疑応答機能が付いてるならここで訊く必要は無いですね。


「有難うございます。

では失礼します」


「そうですか。

では、良い冒険を」


受付さんに教えて頂いた場所に移動しようと振り向いたら月影ちゃんが気絶してました。

このまま置いていくのも周りの迷惑なので背負って近くの長椅子まで移動、椅子に寝かせ月影ちゃんの頭を膝枕しながら書類の確認です。

先程の受付から『陛下!』とか『サイン下さい!』とか『握手して下さい!』とか色々不穏な台詞が聞こえてきますが今は無視です。

書類は見本と書き込み用の二式有ります。

参考に見本を見てみます。


┌──────────

│姓:冒険(ぼうけん)

│名:太郎(たろう)

│性:男

│生年月日:王国暦×××年○月□日

│年齢:△才

│種族:人間

│職能:見習い戦士、ギャンブラー、飲んだくれ、借金奴隷

│技能:剣術、イカサマ、暴飲

│魔法:

│※注意事項:名前以外で書けない場所が有る場合は空欄でも可とします。

└──────────


なんで序盤は役所の提出書類っぽいのに終盤に行くにつれダメ人間っぽくなってるのでしょうか?


「アレ?ここは…」


どうやら月影ちゃんが起きたようですね。


「…天国?」


どうやらまだ寝ぼけているようです。


「ほら、とっとと起きなさい」


頬をペシペシ叩いたらようやく焦点が合ってきました。


「私、お姉様と一緒に並んでた筈じゃ…。

なんでこんな天国みたいな状況に…」


どうやら気絶したショックの緩和で記憶が飛んだみたいですね。


「並んでる間に気絶してたのよ?」


はい、嘘はついてません。

思い出したら悲惨な事になりそうですしね。


「寝不足なんじゃない?一度ログアウトして寝てきたら?」


この娘は催事の前日に興奮で夜更かしして寝不足するタイプなのでそういった事が良く有るのです。


「…最後まで付き合えなくてすいません」


「いえいえ。

また今度一緒に遊びましょうね」


約束ですよ、と月影ちゃんがログアウトして行きました。

上手く誤魔化せたでしょうか?

考えても仕方有りませんね。

机に書類を置いてペン手に…


「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウオラァ!!」


…いきなり隣の方が記入書類をボコボコに殴り出しました。

かなり昔の漫画で似たようなシーンがあったような…。


…え〜と確か『大八高校演芸部!?』という漫画です!

部長さんの十八番の技であまりのペンの速さに大気摩擦でインクが発火して空中に炎の漫画を描くという宴会芸です。

アレ?でも今の人、ペン持ってなかったよ?

なのに書類の空欄がほとんど埋まってました。えっと、こういう時は書類の?マークを押すんでしたよね。


『はい、此方、公都冒険者協会コールセンターの担当アイウエです』


繋がりました〜。

ってこの声はさっきの美声さんです!

受付カウンターの方をみると肉襞の隙間から浮き出た顔の一つからウィンクが飛んできました。


「って受付対応しながら此方にも対応出来るんですか!?」


美声さんの列の進みは相変わらずスムーズに澱み無く進んでます。


『同時に複数の業務をこなせないと話しになりませんからね。

では、どのようなご質問でしょうか?』


出来る人っているもんなんですね。


「えっと、隣の人が書類を拳で殴ったら空欄が埋まってましたけどあれはどういった現象なんでしょうか?」


『それでしたら肉体言語による入力かと思われます』


「に、肉体言語?」


『ハイ、主に個人間の武力的接触や肉体的接触を通して意思の疎通を図る為のコミュニケーションツールです』


「そういったのにも対応出来るんですか!?」


『ええ、言葉は種族や出身、風俗等によって千差万別です。

それらに対応出来るよう冒険者協会では日々努力を重ねているんです』

これが冒険者協会…!

正に驚天動地の世界です!

…ということは…、


「ひょっとしてステータスからの転写も出来たりするんですか?」


『出来ますよ』


至極あっさりと答えて下さいました。


「出来れば最初に教えてほしかったです」


そうすれば新人の皆さんも楽が出来るのでは?と思うのですが…。


『私達もそうしたいんですけどね…』


美声さん改めアイウエさんがため息をついた。


『以前は受付でも事細かく対応してたのですが冒険者志望の方々には不評でして…』


声だけなのにアイウエさんが遠い目をしてるかのような光景が浮かんで来ました。


『終いには『ステータス画面から書類にドラッグする』という説明が何処かの星の宗教の戒律に引っ掛かったという理由で宣戦布告されて、…ね。

それ以来、今の形になったんですよ』


アイウエさんの渇いた笑いに思わず涙がホロリです。

では早速ステータス画面からドラッグしてみましょう。


┌──────────

│姓:

│名:かな

│性:女

│生年月日:王国暦980年2月29日

│年齢:12才※ただし本人の黒歴史を元に計算するなら2才47ヶ月w)

│種族:触手人

│職能:見習い戦士、性戦士※ただし処女の為、無効(泣)

│技能:無し

│魔法:無し

│※注意事項:名前以外で書けない場所が有る場合は空欄でも可とします。

└──────────


ステータス画面からドラッグしたのですが注意書が一言余計です(笑)

さすがに注意書部分を人に見られるのは嫌なのでなんとかしたいですね。


「すいません。

一部書き直したい所や見られたくない所が有るのですがどうすれば良いですか?」


『その場合でしたら書き直したい場所は備え付けの砂消ゴムで削って頂ければ消せますので消した後書き直して下さい。

見られたくない場所は二重線で上書きして頂ければ冒険者カード製作時に非表示となります』


「教えて頂き有難うございます」


助言を元に早速書き直しです!


┌──────────

│姓:

│名:かな

│性:女

│生年月日:王国暦980年2月29日

│年齢:12才

│種族:触手人

│職能:見習い戦士、【性戦士※ただし処女の為、無効】

│技能:無し

│魔法:無し

│※【】内は二重線で上書きした非表示部分です。

└──────────


へ?

なんで性戦士の方を消さなかったかですか?

だって触手人という時点で性戦士持ちなのはバレバレじゃないですか。

注意書だけ消したり非表示にして文面だけ見ると露骨に非処女っぽくなってしまいますし。

なのでこれがベストの筈です!

…そう思いたいです。

後は書類を提出して冒険者カードを受け取ればはれて冒険者です。


「御助言有難うございました」


『どういたしまして。

では良い冒険者生活を』

ですが提出前にどうしても気になる事を訊いておきたいのです。

なのでLet's質問です。


「あの一つだけ宜しいでしょうか?」


『ハイ、なんでしょうか?』


私達が受付から離れた時のあの言葉…。


「先程、陛下って呼ばれてませんでした?」


『…内緒ですよ?』


台詞越しに人差し指を唇に当ててウィンクする姿が幻視()えました。

この陛下、結構お茶目です。

誤字脱字等有りましたらお教え下さい。


作中の『大八高校演芸部!?』は架空の作品です。


概要につきましてはお手数ですが以前当方が挙げました『自書資料』をご参照ください。

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