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8/10

冒涜的な美声

2016/9/5一部修正


修正箇所

・ランクにルビを降りました。

・携帯での見易さの為に改行箇所を増やしました。

道中、様々な看板を教えて貰います。


RPGで定番の武器・防具屋(鎧と盾と交差した武器)、道具屋(丸フラスコとビーカー)、宿(INN)等々といった物から珍しいのだと課金アイテムショップ様々なマシンが立ち並び、中からエンジン音らしき音が響いてきてます。


『ヌフィフィフィフィ〜ン!』『ポルッチャ!ポルッチャ!』『タマゴハアタタメマスカ?』『ヌジュブルルル!』『ズガッシャ!ズガッシャ!』『アイスクリームハアタタメマスカ?』『ニョポ!』『ピョポロピェ〜ン!』『ユウカンパラノイアゼッサンゼッパンチュウ!』『ヴブォヴェエ〜!』


マシンが奏でる奇怪音。

ファンタジーの風情と言えるでしょう。


「…お姉様、私、この街に居るだけで頭がおかしくなりそうなのですが」


「無理しないで良いのよ?」


人間、どうしても合う合わないが有りますからね。


「…お姉様は何で平気なのですか?」


「何で?と言われましても…」


考えてみましたが分かりません。


「何か変な所でも有るのでしょうか?」


「周りを見て何も思わないんですか?」


ふむ。

服屋の前でウィンドウショッピングをしてる|ムアック族(顔面部に?マークの刺繍が入ったフルフェイスの頭巾を被った姿)の仲睦まじい男女。


カフェで珈琲を飲みながら読書する糞人|(頭部が茶色いトグロ状の人類)。


開けた場所ではPVPが行われています。


片手半剣を振るう樽(戦士)にそれを細剣でいなす冷凍ミカン(魔法剣士)。


別のPVPでは多脚歩行戦車(魔法少女)の振るう巨大石棍棒(ステッキ)に対しカウンターで正拳突きを極める甕(拳士)。

見れば見るほど…


「|ありふれた光景ですね(It's a fantasy)」


「普通、マシンが奏でるのは機械音であって奇怪音ではありません!」


「昔の漫画のマシンでは良く有った事よ」


「手足の無い樽やミカンは剣を振るいません!」


「握ってるのなら手で踏み込んでるなら脚じゃない」


「瀬戸物はあんなにぐにゃぐにゃ曲がりませんし戦車は魔法少女じゃありません!」


「ぐにゃぐにゃ曲がってるんじゃなくて正拳突き。

多脚歩行戦車の魔法少女だってアニメにいるじゃない」


「周りはどう見ても人外魔境です!

目を覚まして下さい、お姉様!」


テンション高いですね。


「まあ良いじゃないですか、せっかくの|ファンタジー(なんでも有り)なんですから」


「…なんか納得いきません」


すっかりぶすくれちゃいましたね。


「ごめんなさいね。

まあ、周りの事には目を瞑るとして冒険者や協会の事を教えて下さいよ」


「そこらへんは割とテンプレ通りですね。

冒険者は未開拓地域の開拓や旧国家の遺物の回収、及びそれらの手伝いをする人。

冒険者協会は冒険者への仕事の紹介を生業とする国営事業者です」


「良く有るテンプレ通りですね。

テンプレ通りなら街中の依頼とかも有りそうです」


「勿論有りますよ?

逆にテンプレから外れてるのはランク名ですね」


「どんな風に外れてるのですか?」


月影ちゃんが人差し指を顎に当てながら思案します。


「冒険者ランクは十段階に分かれてます。

上から順に甲(きのえorコウ)、

乙(きのとorオツ)、

丙(ひのえorヘイ)、

丁(ひのとorテイ)、

戊(つちのえorボ)、

己(つちのとorキ)、

庚(かのえorコウ)、

辛(かのとorシン)、

壬(みずのえorジン)、

癸(みずのとorキ)ですね。

音訓どちらで読むかは個人の好み次第です」


十干(じっかん)とはまた…


「それはまた渋いですねぇ」


「開発スタッフの外人さんが『アルファベットよりも漢字の方が格好いいじゃないか』と言ったらしいですよ。

掲示板では賛否両論でしたけどね」


そうこうしてる間に協会に着きました。


「ここが冒険者協会ですか…」


目の前には継ぎ目の無い石造りの四階建て。


窓はアルミサッシのガラス張り。


敷地の角に建てられた幟には『皆で目指そう。離職率0の街』の標語。


更には三本建ってるポールには高い順に国旗、都旗、冒険者協会旗がはためいています。


そして敷地の入り口正面には花壇の中に『冒険者協会』と横文字で掘られた石碑が有ります。

これが…


「ファンタジーの定「ファンタジーは何処逝きましたの!?」番…、月影ちゃん、ステイ」


月影ちゃんを宥めながら協会の建物を見るとあることに気付きました。


「コンクリートじゃない…」


何らかの石材だとは思うのですが。


「お姉様、これで鉄筋コンクリートだったらおもいっきり市庁舎ですよ」


今の月影ちゃんはいつもより沸点が低めです。

早めに用事を済ませたいです。


入り口の扉はガラス製、中に入ると入り口脇には監視室らしき部屋で警備員が複数のモニターとにらめっこしてます。


正面のカウンターの上には『総合案内受付』の文字が…


「だからファンタジーは何処へ逝ったと…!」


「月影ちゃん、公共施設で騒いじゃ駄目です」


騒がしい月影ちゃんを宥めながらカウンターを見ます。


カウンターの受付の方の見た目はバラエティー豊富です。


イケメンメガネな方、ダンディズム溢れるオジサマ、私より少し年上の綺麗な御姉様、凄く色気ムンムンな御姉様…。


そんな美形揃いで華やかなカウンターには先輩冒険者らしき方達がずらりと列を成し、まるでアイドルの握手会イベントのような雰囲気を醸し出しています。


その中で一際短い列が有ったのでそちらに並びます。


「…お姉様、私、嫌な予感がするのですが?」



「ここだけ短いなら何かそれなりの理由が有るんでしょうね」


あ、お隣さんの列の受付さんはなかなかの美筋肉さんです。


昔あったアイロンのCMみたいにアイロン二刀流ダンスをしたらかなり絵になりそうな方です。


それにしてもこの列の進みは早いですね。


余程対応が上手なんでしょうか?


「次の方、どうぞ」


腰の抜けそうな天上の美声が前方から届きます。


前の人が退いた事で受付さんの姿がようやく見えました。


無数に重なったうねり(ぬめ)肉襞(にくひだ)


一枚一枚が異なる色をしていて同じ色は一つも無く、全体として見ようにも曖昧模糊(あいまいもこ)として掴めず。


時おり肉襞(にくひだ)の隙間から現れる幾つもの顔面は虚ろに眼窩(がんか)(さら)しながらこの世の苦悶の全てを体現するかのように歪み、極彩色の血涙を流し。


肉の山頂から次々と生み出され流される眼球は地につく前に弾け、或いは(しお)れ、枯れ、溶け、絶望の河となって肉の裾野へと吸われ消えていきます。


「冒険者協会へようこそ。

どのようなご用件でしょうか?」


苦悶をあげる無数の呻きは重なりあい、ただ一つの天上を為していました。

作中では『何処へ逝った』と意図的に表記してます。

その他に誤字脱字等有りましたらお教え下さい。

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