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ラヴェンダ王国と魔法の恋瓶  作者: 佐倉 猫子
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第08話 メイドのお仕事


「わぁ、もうこんな時間!待ち合わせに間に合うかな?」


廊下の時計を見て焦る。

後、五分しかないのだ。ここから待ち合わせ場所まで結構距離がある。


「よし、走ろう!わっ!」


「えっ…?」


勢いよく走りだしたはいいけれど、角を曲がったところで人と衝突してしまった。


「うわぁ、ごめんなさい!」


しりもちを着いた状態でぶつかった相手に謝る。


「ううん、僕も不注意でした。すみません…あの、大丈夫?」


相手は私よりも少し年下くらいにみえる。…男の子なのにとてつもなく美しい。ルーファスが小悪魔的な可愛さなら、この少年は天使のようだ。


「うん、大丈夫…」


男の子は私が落としたメイド服を拾い、反対側の手をさしのべてくれた。


「立てますか?」


「うん、ありがとう」


「いいよ、それよりこの服を持ってるってことは暗号が解けたんですね!」


目をキラキラと輝かせるその少年は嬉しそうに微笑んでいる。


「え?」


「お姉さん、新しいメイドさんだよね?…僕、アランって言うんです!よろしく!」


「…あ、私はリナ。よろしくね」


男の子…アランくんの勢いに圧倒され、呆然としながら答える


「リナさんか…覚えておくね!そういえばリナさん、忙しいでるんじゃないの?」


「え?」


「さっき走ってたみたいですし」


「あ、そうだ!待ち合わせに遅れちゃう!じゃあ、またね!」


私がそう言うとアランくんはニコニコしながら手を降り、見送ってくれた










「…あなた、ルーファス様の妹だったのね」


待ち合わせ場所に着くと彼女はそう呟いた。


「え?いや…」


…ルーファスの言ってたこと本当だったの?お城の人たちみんなに私がルーファスの妹だって思われてるのかな?


「まぁ、わたくしには関係ありませんけど。…それより、それ、なんですの?」


「それ…?あ、メイド服の事?…これは、課題の答えだよ」


「貴方、見つけられたんですの?」


エリゼは驚いた顔をしている


「うん、まぁ…。あ、ほらメアリーさん中で待ってるんじゃない?行こう!」


「…えぇ」


部屋に入るとメアリーさんはソファに座っていて、私の腕に抱えられているものを見て、微笑んだ


「よく見つけられましたね。…暗号、かなり難しかったと思うのですが」


「…暗号?」


「あ、はい!まぁ…あはは」


エリゼが不思議そうに首を傾げるのを横目に見て、慌ててこたえる


…私が解いたんじゃないんだけどなぁ。


「…この暗号が解けたのは歴代で五人だけです」


「え?」


そしたらメイド五人しかいないことに…


「それじゃあ…課題は出来なくてもよろしかったんですの?」


「えぇ。これは、城や城の人間を見てもらうためのものですので」


「そうだったんだ…」


なんだ、びっくりした。確かにさっきすれ違ったメイドさん明らかに五人以上いたわ!


「解いたのは貴方でしょう?…さすがはルーファス様の妹様です」


「!」


うわぁ。メアリーさんも知ってる。…やっぱりルーファス、みんなに言ったんだ。


「…ルーファス様が最近里帰りしましたが、その時に寂しがって…メイドの試験を受けてまでお兄様に会いにいらしたんでしょう?」


「え」


「先ほどルーファス様がそう教えてくださいました。仲がよろしくて微笑ましいですわ」


…何その設定…、ブラコンみたいじゃん!


「あはは…まぁ…」


「…ルーファス様の妹様なら、客室を用意いたしますが、まだメイド気分を味わいたいですか」


「え!?」


…何て答えればいいのコレ…!


さっきからずっと黙っているエリゼをチラリと見てみるが、彼女は何か考え事をしているようだった


「…はい、せっかくメイドさんになれるのなら、やってみたいです」


本当は客人とかじゃないし…どうせここに住むなら働かせてもらったほうがいいよね


「そうですか、分かりました。…では、お二人とも着いてきてください。…メイドが寝泊まりする部屋に案内いたします」


そう言われ、私とエリゼはメアリーさんについていった






城の奥の方にその部屋はあった。

共同風呂場やトイレなどを案内してもらった後、いくつかある扉の一つを開け、メアリーさんは私たちを中に入れる。


「…ここが貴方たちの部屋です。荷物をまとめ、服を着替えたら、試験の説明を受けた最初の部屋にきてください」


「はい!」


メアリーさんは私の返事を聞くと、扉を閉め、いってしまった。


「…何故わたくしが貴方とこんな小さい部屋で暮らさなくてはいけないんでしょう!」


エリゼは持ってきた荷物を部屋にあった二つのうちの一つの棚に入れながら呟く。エリゼの持ちものは全て高価そうで綺麗なものばかりだ。


「…まぁ、せっかく同じ部屋になったんだから、仲良くしよう?…全然知らない人となるよりマシだよ」


「…まったく、こういう考えだから庶民は…」


エリゼはまだブツブツ言っているが、答えていたらきりがなさそうだったので、聞き流すことにした。


荷物を整理し、メイド服を着てみる。

すっかり見慣れたこちらの世界の私には、メイド服も似合っていた。


「…エリゼ、メイド服ってかわいいよね!私、一度着てみたかったんだ」


「…こんな服、低俗な身分の人間が着るものじゃない。何がいいのか分からないわ」


エリゼのメイド服姿もとても可愛いらしいが、彼女の持つ高貴なオーラのせいで、メイド服のはずが、そういう形のドレスにみえてくる。


「…エリゼ、似合ってるじゃん!」


「嬉しくありませんわ」


「…そんなことばっか言ってると嫌われるよ!」


「……!」


何気なく発してしまった言葉だったが、想像以上にダメージを負わせてしまったらしい。エリゼが私をキッと睨んでいる


…美人の怒った姿は迫力あるな…じゃなくて!


「ごめん、言い過ぎた!」


すぐに謝るが、エリゼはうつむいてしまった。


…泣いちゃうかな?


「えっ…と、本当にごめんね?」


「別に…気にしませんわ。 庶民の言葉なんか!」


バンッと部屋の扉を開け、出ていってしまう姿から、おもいっきり気にしていることが伝わってくる。


「ちょっ…待ってよ!」


私も慌ててエリゼを追って走り、気まずい雰囲気の中、メアリーさんに言われた場所へ向かった






そこに着くと、さっそく仕事場を案内され、責任者などに挨拶して回った


そして、仕事のやり方を先輩のメイドさんがたが優しく教えてくれるのを頑張って覚えることに専念する


私たちの他にも、合格した新人メイドが何人かいて、彼女たちも一緒に先輩の説明を聞いていた



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