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ラヴェンダ王国と魔法の恋瓶  作者: 佐倉 猫子
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第06話 メイド


「作戦?」


「そうだ。オレは今から塀に飛び移る。で、兵士たちの注意をひく。…それを確認したらお前もここから降りて一直線にあの扉に入れ。」


そう言いながらライアンは兵士たちの後ろにある扉を指さす。


「中はどうなってるか知らねぇけど、ま、後はお前に任せる」


「でも、囮って危ないんじゃない?」


「今頃かよ!…そりゃあ危ないに決まってる。 でも、オレなら出来る!他のやつらと一緒にすんな」


「そう?」


「そうだ!お前が中に入ったら、オレもすぐに逃げるから、気付かれずに、早く行けよ?」


「分かった。 頑張ってみる」


「よし…じゃあ行くぜ。 あ、リナ、絶対またオレたちのとこに会いにこいよ。 約束な」


「…うん」


私の返事を聞くと、ライアンはニッと笑い作戦通りに木から塀へと飛び移り、すぐに下に降りる。そしてそっと兵士に近づいた。


「兵士さーん!遊ぼうぜ!」


「…なんだ?子供か?…お前、どこから入ってきた?」


「…知りたいなら、オレを捕まえて見ろよ」


ライアンが逃げると、周りに誰かいないかを確認してから、二人の兵士は追いかけていった。

私はそれを見て、すぐに塀に飛び移り、地面に降りた。…塀が高かったため、半分落ちたといった方が正しいかもしれない。

少し脚を痛めたが、今はライアンの作ってくれたチャンスを無駄にしないために必死に扉まで走った。





中に入ると、今まで見たことがないほど美しく、きらびやかな内装に思わず見とれてしまった。

そうしているうちに、四十代くらいのメイドらしい格好をした女の人がこちらに迎ってくるのに気づいた。


「やば…見つかった!」


慌てて逃げようとするも、時すでに遅く、話しかけられてしまった。


「…あら、あなた。 みない顔ね。」


「あ…えっと……」


「もしかして、メイドの募集を見てやってきた娘かしら?」


「え?」


「その顔は図星ね。一人来ないと思ったらこんなところで迷子になっていたなんて…」


「え…いや、私…」


「探していたのですよ。全く…城に入る前に地図を渡されたでしょう?」


「…えっと」


「とりあえず、みなさん待っていらっしゃるので、貴方も来なさい」


「え…」


よく分からないが、私はメイド志望の娘と勘違いされてメイド服の女性に連行されてしまった。




ある部屋に入ると、女性は扉を閉め、部屋の真ん中に行き、話し始めた。


「さて、これで全て揃いましたね。…今ここにいる貴方がたはまず一時審査を通過した者たちです。」


さりげなく周りを見渡して見ると、十数人の私と同じ年頃の女の子たちがいた。チラりとしか見ていないが、かなりの美形揃いだったような気がする。


「一時審査に受かっただけで貴方がたは幸運です。こうしてこの城に入ることが許されたのですから」


…一時審査ってまさか、見た目で決めたのかな。 じゃないとこんなに美形は揃わないでしょ…。


「…自己紹介が遅れました。 わたくし、メイド長をさせていただいております、ドロテーアと申します。…どうぞ、よろしく」


女の子たちがドロテーアさんにお辞儀をする。


「そしてここからが本題です。…貴方がたにはこれから第二審査を受けてもらいます。…これに合格すれば晴れてこのホワイトローズ城のメイドになれるのです。…受からなかった者は即座に家に帰します」


女の子たちは緊張の面持ちでドロテーアさんを見ている。…そりゃあそうだ。即座に家に帰されるんだから…ん?それって城から出ろってこと!?


それは困る。別にメイドになりたいわけじゃないけど…絶対にその審査というのに受からなきゃ!


「今から審査の方法を説明します。」


いつの間に若いメイド二人がドロテーアさんの両脇についていて、そのうちの一人が口を開いた。


「これから、貴方がたには、掃除、料理、教養のテストを受けていただきます」


「今回は数が多いので、二人一組でやってもらいますが、わたくしたちは協調性も見ますが、あくまでも一人一人を審査していることをお忘れなく」


若いメイドさんたちは交互にそういうと、持っていた箱を持ち上げて、私たちをメイドさんに近い順に並ばせた。


「この箱から紙をひいてもらいます。…ひいたら番号が書いてありますので、同じ番号の方を見つけて、二人組になってください」


順番が来て、私は[三]と書かれた紙をひいた。

そして、周りの子と同じように「三番の子ー!」と言い、相手を探す。


「…あら、わたくしのペアは貴女なんですの?」


私の声を聞きつけ、やってきたのは、高貴な感じのお嬢様。…他の娘とは明らかに違うオーラを持つ女の子だ。少しきつい印象を受けるものの、それは彼女の美しさ故にだろう。


「うん、そうみたい。…私はリナっていいます。よろしくね」


握手をしようと手をさしのばす私を、彼女はジロジロと上から下まで眺めた。


「…わたくしはエリゼよ。…貴女とは馴れ合うつもりはないけれど、よろしく」


エリゼは差し出す手を無視し、挨拶だけを済ませた。


「…何でこんなところにエリゼ様がいるのかしら?」


「あんなに身分の高いお方なのにね…」


「…やっぱり私たちを見下しているようね…相手の方、可哀想…」


周りの女の子たちがエリゼの事をコソコソと話している。


…エリゼ、やっぱり身分高いんだ。


「皆さん、ペアと挨拶を済ませたようですね。では、一番のから四番の方までは私のところにいらしてください。わたくし、メアリーが審査いたします」


「五番から八番までの方はわたくし、レイアが審査いたします。 」




それから私たちはキッチンに案内された。


「では、みなさん料理を作ってきてください。材料と作る料理の指示はキッチンに置いてあります。…制限時間は一時間半です」


メアリーさんの言葉を聞き、みんな急いでキッチンに入っていく。


私たちは最後に入り、他のペアの子が引き残した紙をみる。


「…アップルパイ?」


残ってた紙には[アップルパイ]と書かれていた。


…やった。マリンナさんに美味しいアップルパイの作り方を教えてもらったばかりだ!


「…アップルパイですの?…わたくし食べたことはあっても作ったことはありませんわ」


エリゼがそう呟いた時、メアリーさんがキッチンに入ってきた。


「エリゼ、作り方分からないなら、私が指示出すから、一緒にがんばろう?」


材料を選びながら、エリゼに話しかける


「何故わたくしが貴女の指示に従わなくてはいけませんの?」


「…え?」


「…貴女、庶民でしょう?わたくしは貴女と違って…」


「…エリゼ、あなたもなにか目的があってこの審査を受けているんでしょ?…合格したいならそんな事言っている暇はないよ。 …ほら、時間ないから早くやろう?」


「…」


私がそう言うと、エリゼは黙ってしまった


…やる気になってくれたのかな?


「…じゃあ、私がリンゴ切るからエリゼはそこに用意したものを入れて混ぜてて」


指示を出し、すぐにリンゴを切り始める




しばらくしてチラリとエリゼを見ると、彼女の前の材料は指示を出した時と何も変わっていない


「…どうしたの?エリゼ…、何も進んでないみたいだけど…」


「……よ」


「え?」


「…料理なんてしたことないから何をすればいいか分からないのよ!」


「…え」


料理をしたことがない?…お嬢様か!あ、お嬢様だ


私一人で作ってもいいけど…メアリーさんが見てるんだよなぁ。このテスト、一応協調性も見てるみたいだし…


「…そうだ!じゃあ、エリゼ。私が言うこと繰り返して、指示を出している感じを出して」


「は?何を言っているんですの!?」


「いいから、いくよ。まず、『二人で料理するにはこのキッチン、狭すぎるわ!わたくしが指示を出すので貴方が手を動かして』」


「え?」


「…お願い。これはエリゼのためでもあるんだよ」


というかほとんどエリゼのためだけど。


「…しょうがないわね。貴方の考えに乗るわ。」


そう言うとエリゼは私の先ほど言った台詞を一文字も違わずに話した


「え…」


すごい暗記力


「これでいいのね?…次は?」





この調子でなんとか完成し、マリンナさんのアップルパイはもちろん合格となった。





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