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ラヴェンダ王国と魔法の恋瓶  作者: 佐倉 猫子
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第03話 鏡の中の少女


太陽の明るい光が顔を照らし、目が覚めた。


「……………」


ぼーとする頭で周りを見渡すが、すぐにスッと頭が冴え、ここが自分の部屋ではないことに気づく。それと同時に昨日の記憶が甦る。


「ウソ……まだ夢が覚めてない…」


頬をぎゅっとつねってみるが、やはり痛い。


「…おかしいな。目が覚めないぞ……うーん」


ベッドを綺麗に整えながは、一つの可能性が頭を過る。


「まさか…ね。 いや、あり得ないでしょ。…いや、でもこれが夢じゃないなら…ここは…本の中?」


昨日マリンナさんはこの場合をラウェンダ王国と言っていた。それに、明らかにここは私の知らない世界。昨日本を開いた後にここに来た。…これだけの情報だけでは判断できないけど、多分、そうだ。


「……もし、そうなら…私、この世界からどうやって出たらいいの?ここで死んだら…どうなる?」


頭の中でぐるぐると様々な事が浮かんでは消え、回っている。


「……とりあえず、この世界で生きていくためにはマリンナさん達にお世話になるしかない。」


最終的にそう結論付け、余計な悩みは考えないようにし、前向きになろうと決意した。






部屋を出て、昨日の案内で自由に使っていいと言われた洗面所に向かった。その時は中に入らなかったが、入ってみると結構狭い。


ふとそこにあった鏡に目をやると、私の思考回路は一時停止した。何故か目の前にあるのはいつもの見慣れた肩にかかる茶色のかかった黒色の髪と黒い瞳ではなく、太陽のように美しい黄金色の髪に雪のように白い肌、青空のように透き通る碧眼科だったのだ。それはもう、まるでこの世の物とは思えない美しさ。


「……いや、これ、鏡…だよね?どうしてこんな美少女がうつってるの?」


よく見ると…いや、良く見なくても本に書かれていた話を鵜呑みに私が創造した少女に似ていた。というか、そのものだ。


「…まさか」


私は鏡の中の少女を見ながら、とりあえず様々な動きをしてみた。


予想通り、鏡の中の少女は私とまるで同じに動く。


「…凄いな」


それしか言葉に出来なかった。


顔を洗い終え、この後どうしようかと考えていると台所から物音が聞こえ、そちらに向かうことにした。


「お、リナ、早いね」


「マリンナさん、おはようございます」


「うん、おはよう。よく寝むれた?」


「はい」


「それは、良かった。今、朝食作ってるから」


「あ、手伝います!」


「そう?ありがと!」


オレンジっぽい茶色の髪を後ろにたばね、エプロンをつけるマリンナさんは、ニコッと笑顔を見せ、私に野菜を切ってほしいと頼んだ。


朝食を作り終えた後、マリンナさんはライアンを少し控で起こし、三人でテーブルにつき、料理を食べ始めた。


「…そうだ、リナ」


じーと私を見つめていたマリンナさんは、唐突に口を開いた。


「はい」


「…荷物、何にもないんだよね?」


「まぁ…」


「今日から働いてもらおうと思うんだけど、その不思議な服じゃ目立ってしょうがないから、これ食べおわったら、朝市行こう」


「え?朝市?」


「そ。それに、何にもないと日常生活も困るでしょ?…あそこは大抵何でも揃ってるから、あんたが気に入るのもあるはずだよ」


「え…」


「うおっ!あのでっかい市場行くのかっ! 市場いいなっ!…何買おっかな」


向かいの席でライアンは瞳をキラキラさせている。


「…何言ってんだい。あんたは留守番だよ。…店の準備をしててもらわなくちゃだからね。後、皿洗い」


「えぇぇえ!? 嘘だろっ?」


「嘘じゃない。ちゃんとやることやってればお土産買ってきてやるからさ」


「…今回だけ、特別だからな…」


明らかに落ち込んでいた様子のライアンだったが、[お土産]と聞いて、幾分か機嫌は直ったようだ。




食べおわると、すぐに家を出て二人で市場に向かった。


着いた先は本当に大きなところだった。食料はもちろん、衣類や薬草、魔法の道具…らしきものまで売っている。


「…大きいですね」


「だろ?ラウェンダ王国で一番の市場だからね!」


圧倒されている私の隣で、マリンナさんもどことなく嬉しそうに見える。


「じゃ、早速買い物しようか!」


「あ!」


そこで私は大事な事に気づいた。…なんと、お金を持っていないのだ。


「どうした?」


「私…お金…ないんです」


マリンナさんはキョトンとした顔をした後、ゲラゲラと笑いだした


「うん、なんとなくそんな感じしてたよ。大丈夫、この買い物は、ウチで新しく働くあんたへ祝いってことで。足りないぶんは給料の前払いってことにしよ」


「…えっと、いいんですか?」


「もちろん。 女に二言はないよ!」


マリンナさんはそう言い、私を連れて市場の様々なところを見せてくれ、日常生活に必要な最低限のものと三着の普段着を買ってくれた。


「おっと、ライアンのお土産忘れてた」


家へ戻ろうと、一度市場の出口まで出かかったマリンナさんだったが、直前で引き返し近くの果物屋さんの前に行った。慌てて追いかけると、もう買い物を終え、ここでのお金、リンを払っているところだった。


「…あの、何を買ったんですか?」


帰り道、さりげなく荷物を持つ手を少し動かし、顔が見えるようにしながらそう聞くと、マリンナさんはニッと笑い、答えてくれた。


「リンゴだよ。あいつ、アップルパイが大好物なんだ」


「…そうなんですか」


リンゴパイ好きって…結構可愛いいところもあるんだな、ライアン。





店に着くと、ライアンが真っ先に駆け付けてきた。


「マリンナ!リンゴ買ってきてか!?」


「あぁ、ほら」


「よっしゃ!」


マリンナさんが茶袋からリンゴを取り出して見せると、ライアンは嬉しそうにガッツポーズをした。


「でも、食べるのは店の仕事が終わってからだよ!…ライアン、リナに仕事教えてやってね。あたしは忙しいから!」


「えー?しょうがないなぁ!」


言葉とは裏腹に表情はやはり明るい。仕事の後輩が出来るのが嬉しいのか、アップルパイが楽しみすぎるのか…多分後者だろう。


「よし、あ、リナは部屋でさっき買った服に着替えておいで。その上からこのエプロンつけるんだよ!」


いつの間に準備していたのか、エプロンを手渡され、私は自分にあてがわれた部屋へと向かった。




買ってもらった服は全てマリンナさんに選んでもらったものだが、全部センスが良く、可愛いらしい。

その中でも一番のお気に入りを来て、その上から店のエプロンをかぶる。

すぐに先ほどまでいた場所に戻ると、ライアンが待っていて私に「ついてこい」と命令した。

ついていくと、昨日は気づかなかったが、家の裏に確かに小さいが素敵なレストランがあった。

中ではもうマリンナさんが色々準備していて、これまたいい感じな店内の内装にまたもや感心してしまう。


「…素敵なレストランですね」


思わず呟くと、二人は同時にこちらを向き、「だろ!?」と嬉しそうに笑った。


レストランは二人でやっていて、料理作りがマリンナさん、他はライアンが全部担っていると教えてもらう。


そして、店が始まる前に接客の仕方やメニューなど頭に入るだけ詰め込まれ、店が始まると緊張したが、助けられながらもなんとか1日こなすことができた。


閉店後にマリンナさんが作ってくれたアップルパイは今まで食べた何よりも美味しくて…私は絶対に作り方を聞こうと決意した。




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