過去
「ねえねえ、一緒に遊ぼーよ」
「こら、そんなに走るとケガするぞ」
「まあ、由美ったらお父さんに似てワンパクなのね」
思い出すあの頃を............
妻と子供の三人の時を
「お父さん あれーなに?」
「ん?あれって? 一体何...を.....」
ミサイルのような物体が飛んでいるのが見えた、暫く見ている内に街の向こう側に落ちて。
ドッガァァァァァァン
耳をつん裂くような大きな爆発音が聞こえた。
「きゃああああああ」
あちこちで悲鳴が聞こえる
くそ、軍は一体何をしてるんだ....
ここは安全じゃなかったのか
「幸子!由美!急いで此処から離れるぞ」
「でも、ミッチィが.....」
ミッティとは由美が気に入ってるヌイグルミだ
「ヌイグルミなら幾らでも買ってやるから、今は我慢しろ!」
「う、うん分かった」
そう言って、言い聞かせると走り出そうとする
しかし、ここは建物が多くこの状況下車では使えない......
使えたとしても、この混乱の中脱出出来るとは思えない。
そう考えていた時、妻が言った。
「ねえ、あの美術館の中なら大丈夫なんじゃない?」
美術館?あんな所いっても襲撃されればお終いなのではないか
いや、待てよ.....そう言えばあれがあったな
「そうか、冴えてるな!流石俺の妻だ!」
美術館には対盗難用に、地下室がある。
あそこに入れば、砲撃から逃れられるだろう。
そう考えながら、必死に走りつつ辺りを見渡すと、建物は燃え、至る所で砲撃の音と銃の発砲音が響く。
道には砲撃の跡があちこちにあり、おびただしい数の薬莢、それにが沢山の死体が転がっていて、それはここが戦場だという事実をさも逃げていた自分への罰のように突き付けてくる。
十字路の道の右側に、日本語で美術館と書かれた看板が見えた。
周りが燃えゆく中でそこだけは、まるで意図的に守られてるかのように頑丈で空高く綺麗なままあった。