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孤独の色

「何故……何故だ……」

ギチ、ギチと爪を噛む音が響く。

コルネシア城内は、ピリピリと緊張した空気が漂っていた。

「王……」

「僕の聖女が、負けるなんて……」

顔に泥を塗られたと、王は怒りを露にした。

聖女の力を知らしめるため、そして己の権力を誇示するための処刑だったはず。

それが失敗に終わり、しかもそのまま、まんまと罪人を逃がしてしまったのだ。

「あの……クズ共がっ!!」

ダン、と肘掛けを拳で叩き、叫ぶ。

「クソ……クソ!クソ!クソーー!!」

「お、王さま……どうか」

「うるさいっ!!」

「っ!」

宥めようとした側近を、王は乱暴に殴り付けた。

城内の兵士が、ざわめく。

「……絶対に……!絶対に許さん……!」

王の目は、怒りに燃えていた。



「………ねえ」

アリアムンドの砦の頂。

「何を、しているの」

ハルの傍らに、ぺたんと座る、女。

一心不乱に紙を折る、その手元を指差して、ハルは尋ねた。

「…………」

彼女は答えない。

ハルはもう一度声をかけようとしたが、はた、とやめた。

「そういえば、わたし……」

今気づいた、と、自分でも驚いたように、目を見開いた。

「……あなたの名前も、知らないんだわ」

そう言って、クス、と自嘲ぎみに笑った。

「あなたはわたしに……歌うことだけを、望んだから」

「…………」

「いつも、そう。みんな、わたしの歌を聞く。そして、求めてくれる。けど……」

「…………」

彼女は、手を止めない。

「……わたしの声は、聞いてくれない」

ハルは、そっと目を伏せた。


いつからだっただろうか。

歌うことが、楽しくなくなってしまったのは。


「ハルさんには、確かな才能があります」

「彼女の歌の力は、本物です」


あの日。誰かがわたしを連れ出した、あの日。


抱えていた孤独は、ずっと色を濃くしていった。



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