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悲しみの歌声

その柱の高い場所に、奈都の体はくくりつけられた。

誰もが、見えるように、高く、高く。

幾重にも縛られた縄が食い込み傷を作った。

「罪人の裁きを行う!」

兵士が、叫んだ。

「刑は聖女さまによって執行される!さあ!おいでくださいませ!」

手で示された先に。

聖女たちは、いた。

「聖女さまの歌を!それが反逆者である貴様への刑だ!心して聞くがいい!」

一列に並んだ聖女たちが、一歩、前へと進み出た。

「っ!」



「ーーーーー……」



聖女たちの歌声が、響いた。



「ぐっ……!ふっ、ぐぐうううううう!!」

奈都の体が、跳ねた。

「ぐうううっううううううーーー!!」

陸に上げられた魚のように、体がビクビクと痙攣している。

「なんと……」

「惨い……」

あまりの光景に、見ていられない、とばかりに群衆の数人が顔を背けた。

「うぐっ……ううううううう!」

血管が浮き出る。脂汗が滲む。

身体中の血が、針にでもなったような、強烈な痛みが奈都を襲った。

「ふっ……ううっ……」

朦朧とした意識の中。奈都は、ミラを見た。

「…………」

ただ青白い、人形のような、無機質な顔。

そこに、かつての面影はない。


ミラ……!


奈都の頬に、涙が伝った。


ああ……ミラ……。

愛しい母を、目の前で失った、お前の気持ち。

どれほど、悲しかったことだろう。

優しいお前は、金と引き換えに王に差し出された時だって、これっぽっちも母親を恨んだりしなかったんだろうな。

母親のためにと、むしろ喜んで、お前は売られていったんだろう。

母親だけが、お前の生き甲斐だったのだろうに……!



ミラは歌う。

絶望に満ち満ちた歌を。


ああ。その歌声の、なんと悲しいことだろう!


本当に、これがあの、愛に満ちた、かわいらしい……あの子の声なのだろうか。


くるくると変わる表情も。

きらきら輝く瞳も。

可憐な笑い声も。

もう、そこにはない。


ああ。

ああ。

ミラ。

すまない。

やっぱり、あの時、死なせてやればよかったんだ。

ごめん。

ごめんなさい。



「罪人に、火をつけよ!」

命が下った。

「火炙りだ!」

兵士が奈都の足元に、火をつけた。

「反逆者にはふさわしい最期だ!」

「聖女さまの歌を聞きながら、業火に滅せられるがいい!」


裁きの炎が、燃え始めた。




「…………」

時を、同じくして。

「……どうして」

アリアムンドの砦に立つ、ハルは窓から遠くを見ていた。

「……寒い」

薄暗い、空の向こうで、今。

起ころうとしている悲劇。

ハルは、身を震わせた。

「……なっちゃん」

その名を呟き。

ハルは曇った目を閉じ、ゆっくりと、息を吸った。




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