終わり
「打て!打てーーー!」
走り去る奈都たちに、コルネシア軍は執拗に矢を射った。
「きやつらはアリアムンドへ向かった!コルネシアを裏切った反逆者だ!」
「しっかり狙え!ひとりも打ち漏らすでないぞ!」
次々に弓を引く、兵士たち。
そのうちのひとり、一際目立つ、眼光鋭い若い兵士がいた。王は彼に目をつけ、そっと近付き、声をかけた。
「ねえ、君」
「は!」
「そこじゃなくてさ」
ぐぐ、と耳元に口を寄せ囁く。
「あれ。あれの少しばかり、右側を狙って欲しいんだ」
「は……?」
「ほんの少し。子供の一歩に満たないくらいなんだ。できるだろう?」
彼は若いながらも軍のなかでは弓矢の腕が抜きん出ていると評判の兵士だった。
「おや?なぜ、って顔だね?」
「!は、い、いえ……!」
焦る兵士に、王は責めるでもなく、その肩を軽くトンと叩いた。
「あれにはこちらに来るまで、生きていてもらいたいんだよ」
「は……」
「ただ殺すんじゃ、もったいないからね」
ふふ、と、王は思わせ振りに笑った。
『奈都!』
『ああ!彼処だ!』
目線の先に。
その姿を捉えた。
「待て!待ってくれ!」
奈都が叫ぶ。
「……!おい!コルネシアだ!」
「何!?」
「コルネシアの歌姫がいる!」
アリアムンドの兵が声をあげた。
「くそっ!追いかけてきたのか!」
「女王様に知らせろ!アリア様を守れ!」
彼らは直ちに戦闘体制をとった。
「違う!話を……話を聞いてくれ!」
奈都の声など聞く耳を持たない。
皆、刃をこちらに向けている。
「くそっ!」
奈都は隣を走るイサに言った。
『イサ!女王を呼べ!』
『!女王を……』
『ああ!お前の声を聞かせてやるんだ!』
我が子の声ならば、きっと気付いてもらえるはず。
奈都はそう思った。
そして、イサは女王に向かって呼び掛けた。
『……………!』
しかし、女王は振り向かなかった。
「そんな……」
『ああ……』
茫然と呟く。
『……僕に、気づかないのか……』
待ちに待った、再会。
けれど何度呼びかけても。
あの人は気付かない。
イサの唇は、震えていた。
その時。
タンッ……!
淀んだ空に、ひとつ。
乾いた音が響いた。




