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裏切り

「逃げろ!」

「奈都さま!?」

「早く!アリアムンドの方へ走れ!」

奈都が気付いたと同時に、ターン!、という音が響いた。

『奈都!』

「走れーーー!」

コルネシア軍から、一斉に矢が放たれた。

「!?」

「奈都さま!」

「くっ……ーーーーー!」

奈都は歌った。

バリアを張り、矢を弾く。

しかし、足りない。

「うっ……!」

「ぎゃあぁっ!」

とり漏らした矢が、逃げおくれた者に容赦なく突き刺さる。

「そんな……!」

「奈都……さま……」

苦楽を共にした、仲間がひとり、またひとりと。血を流して倒れていく。

「な、奈都さま!」

「なぜ!なぜ、コルネシア軍が私たちを……!」

突然の事態に、隊は混乱していた。

「……、嵌められたんだ」

奈都にはわかっていた。

「あいつらは……初めから、そのつもりだったんだ」

「!まさか……!」

「もう……コルネシアには、戻れない……!」

聖女の完成。

つまり、コルネシアにとって奈都という歌姫の存在はもう、用済み……。

目障りでしか、ない。

だから聖女の力を大衆に見せつけ、そして。

「捨て去る、つもりなんだ……!」

ぎり、と唇を噛んだ。

「すまない……みんな……っ」

自分の力のなさが、情けなかった。

皆を守ると誓ったのに。結局、無関係の彼らを、奈落に引きずり込んでしまった。

自分を信じ、着いてきてくれた隊のみんなの気持ちを考えると、やるせなかった。

「奈都さま。いいのです」

奈都の後ろを走る男が言った。

「……私たちは皆、既に、ほとんど死んでいる者たちなのですから」

「!な……」

「あなた様に生きてもらうために。辛うじて生きているだけなのです。ここにいる者たちは皆、そう思っているのですよ」

「……っ」

男は、微笑んでいた。

なんと悲しい顔なんだろうと、奈都は込み上げてくる塩辛いものを、ごくりと飲み込んだ。

「……そうは、させないぞ!」

「!」

「生きてんだ!お前らは、みんな……!」

「……奈都さま…………」

奈都は方法を探っていた。

彼らの生を、守りたい。

そのために、彼らと戦うことを、決めたんじゃないか!

「……どうか、今いる皆、だけでも……」

そして。

『イサ』

『……うん』

たったひとつ、残った可能性は。

『アリアムンドに……』

奈都の言葉に、イサは頷いた。

それしか手だてはなかった。

殺し合いを仕掛けた相手に助けを求める。

かなり難しい。近づくだけで殺されかねない。

『アリアムンドの女王に、どうにか、声を届けられればいいんだ』

一言、たった一言話せば。

きっとわかってもらえるだろう。

『懸けよう!お前の、母親に……。お前の声を、届けよう』

二人は互いに目で頷き、アリアムンドへ向かって走った。


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