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新たな力

「うアアアアアアーーー!!」

「ーー!?」

突如現れた敵の姿に、驚愕の表情を浮かべるアリアムンドの兵たち。

奈都たちはその隊列の横っ腹に、突っ込んでいった。

「コ、コルネシアの……!?」


「ーーーーーー!!」


すかさず、奈都が歌う。

「がっ……」

「は……うぅっ……」

アリアムンドの兵が耳を塞いでバタバタと倒れていく。

『…………、す、凄い……』

イサが呟く。

初めて間近で見る、奈都の力。

「行くぞ!兵士に構うな!」

道を作りながら奈都が叫ぶ。

兵士は気を失っているだけだ。

殺すのは最低限。

それが、奈都たち全員の信条だ。

「遅れるな!目的はもっと先だ!」

奈都は前を見る。

無数の兵士たち。

その、向こう。

「…………居た!」

遠く。

遠くに。

『見つけたぞ!イサ!』

『!』

仮面を被ったハルと、女王の姿が見えた。

『彼処に! ……二人とも、彼処に居る!』

『!ハル……』

二人がスピードをあげる。

『あと、少し……!』

奈都は歌いながら戦場を駆け抜けた。


しかし。


「!?」

異変。

隊の様子が、おかしい。

「何……?」

皆、ふらふらと脱力しているようだ。

それまで爛々と光っていた目には生気がない。

『奈都!!』

「!まさか……!」

奈都は気付いた。

そして、歌声が、響く。


「ーーーーーー……」


緩やかに波状に広がって行く旋律。

悲哀に満ちた、その声。

「ハル……!」

ハルの、歌声だ。


「ーーーーー……」


「…………」

「あ……あ……」

奈都の隊の者たちは足を止めた。

その場に立ち竦み、目からはぼろぼろと涙を溢していた。

「そんな……」

戦闘どころではない。

皆、手にもった武器さえ地面に落としている。

「くっ……、ーーーーー!」

負けじと、奈都が歌う。

向かい来るアリアムンドの兵たちを、なんとか蹴散らしていく。

その時。

『奈都!』

「っ!」

ギイン……、と、刃がぶつかる音が響いた。

アリアムンドの兵士が、奈都に剣を向けたのだ。

「イサ!」

『くっ……』

イサが素早く剣で攻撃を防いだため、刃はすんでのところで奈都には届かなかった。

「貴様……」

『…………』

アリアの歌声が響くなか、平静でいるイサを、兵士は不思議そうに見ていた。

「貴様、アリア様の歌を聞いても何ともないのか……?」

『…………』

耳の聞こえないイサには、歌の力は効かないのだ。

「ふん……。だが」

『!うわっ!』

交えた剣を、兵士がぐっと押し返した。

「身の程知らずめ。その程度で我らアリアムンドの戦士に立ち向かうか」

『…………うぅっ』

イサがよろける。

やはり、戦闘に慣れていないイサでは力不足だった。

力に押され、イサの手が震える。

「これがアリア様の率いる、アリアムンドの力だ。コルネシアよ」

『…………っ』

「アリア様の歌声の前には、何者も逆らえないのだ。さあ、降伏せよ!」

兵士が声を荒げる。

それをきっかけに、士気を高めたアリアムンドの兵士が、一斉に向かってくる。

「アリア様の歌がコルネシアの蛮族をはね除けた!」

「今だ!偽物の歌姫を殺せ!」

「くそっ……!」

奈都も剣を抜き、応戦する。

絶対に、負けられないのだ。

隊の皆のため。

ハルのため。

自分や、イサのため。

未来のために。


しかし。


「……、え?」

ぽた。

ぽたり。

「……?」

雫が落ちた。

「何……」

手で触れると、頬が濡れていた。

「!?な、何だよ……これ……!」

泣いている。

奈都の目から、涙が落ちていた。

『奈都!』

「な……、なんで……っ」

止まらない。

「なんで、涙が……」

拭っても拭っても、止まらない。

涙が、流れ落ちていく。

皆と同様、奈都の目からも涙が溢れ続けていた。

「……くっ、なん、なんだよ、これ……」

奈都は胸をおさえた。

悲しい。突き刺さるような孤独、不安。

苦しい。

怖い。

言い様のない感情。

それが、渦を巻いて奈都の胸を締め上げる。

『奈都!』

膝をついた奈都に、イサが駆け寄る。

『奈都!奈都!』

「……っ、ーーーー……」

奈都はなんとか、弱々しいながらも、荒い呼吸で、どうにか歌い続ける。

しかし、威力は弱い。

これではとても次々襲いかかってくる敵を退けることはできそうにない。

最早、時間の問題だ。

『……、奈都』

イサは決断した。

『戻ろう、奈都』

『!イサ……!』

『このままでは皆死ぬだけだ』

『そんな……』

もう少し。

彼処まで……彼処まで、行けばハルに届くのに。

「くっ……」

苦渋の決断。

奈都は、隊に撤退を宣言しようとした。

その時。


「ーーーーー……」


歌声が、響いた。


『何……!?』

奈都のでも、ハルのものでもない、その声は。

背後のコルネシアの方から聞こえていた。

「そんな……一体、誰が……!」


「ふふふ………」

気味の悪い笑い声。



奈都たちの背後で、コルネシア王が、ニタアと笑っていた。



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