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二度目の

用意した食事を摘まみながら、奈都とイサは、これまでの思い出をお互い、ぽつりぽつりと話し出した。

話し出すと次々に出てきて、あれがあった、これがあったと話題がつきない。

今まで封じ込めていたものが溢れだすかのように、時間も忘れて話し合った。


夜が更けて、外の灯りもなく闇が一層深くなった頃。

何故かふっと、合わせたわけでもないのに、二人共、言葉が切れた。

『…………』

『…………』

静寂が、二人を包みこむ。

『……奈都』

『ん?』

『僕、もうひとつ君に用があったんだった』

『何?』

イサは立ち上がると、窓の方へ歩き出した。

つられて奈都も移動する。

『ほら、月が』

イサの指した、窓の外を見上げる。細い三日月がぽつんと浮かんでいた。

『……綺麗、だな』

『あの夜も、月が綺麗だったね』

『!あ、あの夜、って……』

その意味。

奈都の顔が、かあっと赤くなる。

イサは奈都の耳元に唇を寄せ囁いた。

『ね。奈都』

『!』

イサの言葉は、音として発せられる訳ではない。

それなのに、まるで内緒話でもするような、仕草だ。

『あの夜の、やり直しをしないか』

『!い、今から、か?』

イサの顔を伺う。

イサは楽しそうに笑っていた。

『そう。今から。……ダメ?』

『…………』

奈都は後ろ手で、些か乱暴な手つきでカーテンを閉めた。

『!奈都……』

それが合図だった。

二人は見つめ合い、それから、どちらからともなく、抱き合った。

『……イサ』

『なんだい?』

『食器……後でお前が片付けろよな』

『!……ふふっ。わかったよ、奈都』

隠れるように、イサの胸に顔を埋める奈都。

そのまま二人はベッドに倒れ込んだ。



二度目の夜。

イサは、何度も何度も、奈都に愛を囁いた。

けれど、奈都は決して、決定的な一言を、口にしなかった。

『イサ……』

ただ、名前を呼んで。

返事の代わりに、切なげに笑うだけだった。




「ごめんな、イサ……」

すうすうと寝息をたてるイサの隣で呟いた。

「まだ、ダメなんだ」

それは最後の、砦。

明け渡すのは、怖かった。

「……決着が、ついてからだ」

自分と、イサと、ハル。

各々の決着がついてから。

ようやく、奈都の未来は始まるのだ。

「その時は、きっと……」

彼に、打ち明けられるだろうか。

伝えられるだろうか。

自分の、本心を。

胸のなかで暴れているものの、正体を。



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