不思議な少女
やがて、光はゆっくりと潜んでいった。
徐々に森に暗闇が戻ってくる。
『……!』
光の中にいたものが、姿を現した。
『ユリス…!』
ユリスが、立っていた。
それも4本全ての脚を、しっかりと地につけて。
『……折れていた、脚は……』
イサはユリスの向こう側に、ハルの姿を見つけた。
『ハル……』
ハルがイサに気付いて、ゆっくりと振り返った。
『……、イサ………?』
がくん、と彼女の体から、力が抜けた。
『……!ハル……!』
咄嗟に抱き留めた。
ハルは気を失っている。
『ハル……。君は、一体…………』
イサはハルを抱きかかえながら、呟いた。
イサが診たところ、ユリスの脚は治っていた。
いや。治っていた、のではなく。
元に戻っていた、のだ。
治療の痕跡など、何一つ残されていない。
まるで、最初から何事もなかったかのように、ユリスは野を駆け回っている。
生き生きと、目にも力が宿っている。
イサは目を覚ましたハルに問いただした。
『君は昨夜、彼処で、ユリスに何をしたんだ』
どうやってあの脚を治したのか。あの光は何だったのかと、イサは尋ねた。
しかし。
『何も』
ハルはきょとんとした顔で、そう答えた。
『何も、って……』
『何もしてない。ただ、歌を、歌っただけ』
『……うた?』
『そう。あのこに、歌を聞かせたの。わたしの、歌を。そうしたら、光が集まってきて……』
『ま、待ってくれ』
イサはハルの話を遮った。
『歌、って、一体何のことだい?』
『?……歌を、知らないの?』
今度はハルが驚いた。
『わたし、歌を作っていたの。前に居た、世界で』
『世界……?』
彼女が何を言っているのか、イサにはわからない。
光の渦。
死の淵に居たユリスの、壊れていたはずの、脚。
異世界から来たという、少女。
そして、歌。
本当に、訳のわからぬ様々な不思議が、彼の周りで起こり始めている。
『……残念だな』
ぽそ、とハルが呟いた。
『?何…?』
「……イサには、聞こえないもの」
そう言って、ハルは眉を下げて笑った。




