雪
二人は抱き合ったまま、窓から夜が明けるのを眺めていた。
『寒くないかい?』
『…ん』
イサは毛布を手繰り寄せ、二人の体を包み込んだ。
汗が引いて、冷えた体をイサがきつく抱き締める。
『……少し、積もったね』
降っていた雨は、いつの間にか雪に代わっていた。
雪はうっすらと、町を白く覆っていく。
それはまるで、別の世界のように思える。
『……でも、すぐに溶けるさ』
そう。
雪が、溶けて。
世界は、また元に戻る。
夢が醒めるみたいに。
そして。
この二人だけの世界も、一緒に溶けて無くなってしまうのだろう。
でも、今はそれでいい。
ほんの束の間でも。
冷たい雨から守ってくれるのならば。
それが偽りや、誤魔化しだったとしても。
その熱に、すがっていたかった。
目が覚めて、奈都は彼の感触が無いことに気付いた。
先に帰ったのだろう。
半分、冷たくなったシーツを撫で、そこに何の痕跡も残っていないことに、淋しさを覚えた。
「……イサ」
眠りに落ちる際。イサは少しだけ話してくれた。
ハルとのこと、そして、イサの母親のことを。
『ハルがああなってしまったのは、僕のせいなんだ』
彼は確かに、そう言った。
「……、行こう」
奈都の目に、再び力が宿りだす。
奈都は床に畳まれた服に袖を通し、外に出た。
「次の戦だ!兵士をかき集めよ!」
アリアムンドの女王が叫ぶ。
「誰でも良い!戦える者は皆武器をもて!」
「しかし女王…兵力も限りがあります故……そう、急がずとも……」
「それをどうにかするのが、貴様の仕事ではないのか!」
女王はぎっと睨み付けた。
「貴様、我らの目的を忘れたとでも?」
「……!い、いえ……」
「コルネシア……あの、憎き王……」
女王は目を血走らせ、ぎりぎりと奥歯を鳴らした。
「奪われた、私の子……。もうあんな悲劇は起こさせない…!あの国を壊し、作り直す…!それが我らの悲願なのだ……!」
息荒い彼女の声を聞きながら、アリア……ハルは、ゆっくりとその目を閉じた。




