仕掛けるならば
コンコン、とドアをノックして中へ声を掛ける。
「こんにちはー、リンでーす」
すると、中からパタパタという足音が聞こえ内側へ開かれた。顔を出したのは、嬉しそうに微笑むアリビラさん。
部屋の中にはアリヤさんとサウンズさんもいて、私と目が合うと会釈してくれた。
「用事は終わったの?」
「うん、暫くは一緒に行動出来るよ」
「良かった! 一緒に観光しようね!」
ギュッと私の両手を握り締めてくるアリビラさんの可愛いことよ。
彼女には追われている事は伏せてあるので、単純に王都観光に来たのだと思っている。無駄に不安にさせる必要はないしね。
もちろんアリヤさん達は知っているので、私が合流するまでは出来る限り外出は控えるか、どちらかはアリビラさんと行動するよう頼んでいた。
この様子だと、まだ観光には出ていなかったようだね。待たせちゃって申し訳ない。
「今日はどうしよっか。あんまり遅くまで出歩くと、慣れない土地じゃ迷子になっちゃうかもしれないし。近場にしとく?」
「あぁ、それならーー」
アリビラさんの為に、事前に行く場所を決めていたのかサウンズさんがいくつかの場所をあげる。
2人は仕事として王都に何度か訪れた事があるらしく、それなりに詳しいようだ。
この宿も、以前に使った事があるみたいだし。
「じゃあ、そんな感じで」
「うんっ。楽しみだね」
アリビラさんの行きたい場所を巡る順番も決め、私達は王都観光へと向かった。
「これ美味しいねぇ」
「美味しいねぇ」
前回のスザンカの街の時と変わらず、私とアリビラさんの両手にはいろんな食べ物が握られていた。2人とも、美味しい物を食べてご満悦の表情です。
サファリスは中間貿易で栄えているだけあって、本当にいろんな種類の料理がある。
ずっと食べ歩きをしている私とアリビラさんに、アリヤさんとサウンズさんは呆れ顔。
「ほんと、よく食べるわね」
「どこにそんなに入るんだ……?」
普通の食事だとそんなに沢山は食べない私達だが、何故か食べ歩きは永遠に食べ続けてしまう。
まぁ、歩いているから消費してるもんね。それに美味しい物がいっぱいあるんだから、食べなきゃ勿体ない。
「さっきの教会前の屋台、お母さんにも食べさせてあげれたらなぁ」
「それは、いつかアリビラさんが自分で連れてきてあげれたら、だね」
「うん! 私もお仕事頑張らないと!」
ふんす、と顔の前で拳を握るアリビラさん。ちなみに、彼女の職業は服飾関係らしい。
その為、食べ物以外にも服飾関係の店先で立ち止まっては「これ可愛い……」とか「王都ではこれが流行りなのね!」と目を輝かせている。
ネットのないこの世界じゃ、情報の伝達はかなり遅い。流行りも、地方に届く頃には王都の廃りになっているし。
だから王都まで来て、流行りを実際に見に来る商人もいるらしい。商魂逞しいね。
アクセサリ専門店の前で、アリヤさんに似合うネックレスを選んでいる姉妹を微笑ましく見ていると、横に立つサウンズさんが周囲を警戒している気配。
「大丈夫、近くにはいませんよ」
「そうか……すまない、助かる」
「いえいえ」
振り向く事なく、2人(主にアリビラさん)に聞こえないよう小声で言葉を交わす。
私の感覚だと、王都の半分くらいの範囲なら敵意を向けられたり、敵だと判明している気配は分かる。
ついでに、騎士団の皆以外にスベインのメンバーも王都入りしているのは知っていたり。
ほら、さっそく。
「……王都に、知り合いが?」
「彼も仲間の1人だよ。騎士団とは別」
「そうか……待て、彼だと?」
すれ違い様に私へとウィンクしてきたのは、第4隊アッシュの部下。つまり、女装中の方。
私も外見だけじゃ分からず、気配を読む事で確認した。相変わらず、美人さんが多い隊だ。
サウンズさんも背の高い女性としか思っていなかったのか、ギョッとした顔で振り返っている。残念ながら、人混みに紛れていった後です。
「ちなみに、彼はスベインだよ」
「っ⁉︎」
「あぁ、大丈夫。サファリスのじゃなく、本部のまともなメンバーだから。言ったじゃないですか、近くにはいないって」
殺気立つサウンズさんに苦笑しながら、落ち着くよう手で促す。
この前の事情説明では組織名を伏せていたサウンズさん達だけど、私の方から確認してみると驚きながらも肯定した。
その時に、スベインはいろんな国にあり、バナンスに本部がある事。本当のスベインの活動方針についても、しっかり説明してある。
むしろ、サファリス支部の所業にボスがお怒りとも伝えた。
サーシャの気配も王都内、しかも何かの建物を監視しているようで。恐らく、そこがサファリス支部の拠点なんだろう。
他のスベインメンバーも、その建物を中心に巡回している模様。
今夜あたりに仕掛けそうだな……。
「サウンズさん、もしかしたら夜は警護外れる」
「何かあったか」
「うん、多分だけど今夜あたりに支部が潰れる。その手伝いに」
「……なら」
「いや、2人はアリビラさんの側に。敵はスベインだけじゃないよ」
むしろ面倒なのは王家だからねぇ。
その言葉に若干表情が硬くなる。そんな彼に、買い物を終えたらしいアリビラさんが笑顔で駆け寄ってきた。
「兄さん、これどうかな?」
「……それは、俺にどうか、という事か?」
「うんっ。これなら邪魔になりづらいかなって」
そういう彼女の手には、男性向けのシンプルなブレスレット。
サイズ的にも武器を扱うサウンズさんの邪魔にはならないと思う。
しかし、サウンズさんはあまりアクセサリをつけるタイプじゃなさそうなんだけど……。
予想通り、嬉しそうだけど少し困った顔をしている。
「ちなみに、私とお揃いなんだけど」
「ありがとう」
照れたようにはにかみながら、同じデザインのブレスレットをつけた華奢な腕をあげるアリビラさん。
それを見た途端、満面の笑みで受け取ったサウンズさんに呆れた顔になるアリヤさん。彼女の腕にも同じブレスレットがあるのを見逃さなかったよ。
何とも微笑ましい光景に、つい頰が緩む。
私には兄弟姉妹はいなかったし、両親が幼い頃に他界しているので、これといった親戚も知らない。
祖父母に育てられ、唯一と呼べるような存在はハルくらいだったし。
祖父母の事は好きだったけど、3人のような関係ではなかった。
それを寂しいとは感じた事なかったけど……羨ましいなぁとは思う。
まぁ、今はご主人やレベッカがいる。村の皆がいる。騎士団やスベインの皆がいる。
寂しいなんて感じる暇がない程、人に囲まれて暮らしているんだ。私はかなりの幸せ者だと、胸を張って言える。
「その……リンちゃんにも、コレ」
「え、私?」
「うん……駄目、かな?」
少し離れた場所で眺めていた私に、寄ってきたアリビラさんが上目遣いで尋ねてくる。
その手には、可愛らしいよりも綺麗というような装飾がされたバレッタ。
「リンちゃん、綺麗な黒髪だし……こういうの似合うと思うな。あっ、でも動くと邪魔になっちゃうかな……」
「ううん、嬉しい。アリビラさんが私の為に選んでくれたんでしょ?」
「うん!」
「ありがとう。私、そういうの付け慣れてないからさ……付けて貰っても良い?」
ポニーテールにしていた紐を解いて、後ろを向く。基本的に一本に括るか下ろすかしか選択肢のない私です。不器用なもので。
パッと嬉しそうな顔をしたアリビラさんが、鼻歌を歌いながら私の髪に触れる。
さすが慣れているのか、手際よくバレッタをつけてくれた。
「どうかな?」
「すっごい似合ってる!」
両手を取って笑みを浮かべる彼女に私も笑顔を返す。女の子成分、癒されます。
そのまま、アリビラさんに手を握られながら街中を探索した。
**********
暗くなり始めた頃には宿に戻り、夕飯も宿の食堂で済ませた。食を好むアリビラさんに合わせて、食事の美味しい宿を選ぶ2人はさすがだ。
「それじゃあ、少し出てきますね。何かあれば急いで戻ってきますので」
散策で疲れたのか、食事を終え部屋へと上がるとウトウトし始めたアリビラさんを促し、今はベッドで就寝中。
それを見届け、私はアリヤさんとサウンズさんに声を掛けた。
「えぇ、気をつけてね」
アリビラさんの髪をそっと撫でるアリヤさんと、無言で頷くサウンズさんに見送られ、私は宿を後にする。
当然のように窓から外へ出た私に何も言わなかったけど、裏稼業をしているからだろうか。ありがとうございます。
宿の屋根へと登り、サーシャの気配を探る。ここから南西、かな。
昼間に探知した建物がやはり本丸のようで、その周囲にスベインのメンバーが分散している。
どうやらサーシャの周りに、副官さんとアッシュ、ジャック、そしてケインが集まっているようだ。作戦会議中だろうな。
屋根伝いに暗闇を移動しつつ、他の気配を探ることも忘れない。敵はスベインだけじゃない。
しかし、上手く追跡を交わしながら宿へと戻ったおかげか、特にアリビラさん達のいる宿を探し当てた奴はいない。
いやぁ、相手を撒きつつ自然にアリビラさんを誘導するのは大変だった。
その手段として目に付いた屋台(食べ物の)を回った為に、凄い量の食べ物を買う羽目になったが。どれも美味しかったので良しとしよう。
そのうえで夕飯もしっかり宿で食べたのは、我ながら食べ過ぎなのではと思うけど。
その分を消費する為にも適度に運動は必要だよね!
サファリス支部のメンバーには悪いが、私の食後の運動の犠牲……ごほん。相手になってもらいます。
心の中でちょっとだけ謝りつつ、私は腰の刀と剣を抑えながら屋根から飛び降りた。
「やっほ」
「っ⁉︎ て、なんだリンかよ……」
スチャッ、とサーシャ達の側へと着地すると、一瞬焦って剣へと手を伸ばしていたアッシュとジャックがホッと構えを解いた。
全く動じていなかったサーシャとケインはさすがだ。副官さんは無表情でよく分かりません。
私の顔を見ていつものように不敵に笑ったサーシャに、クシャクシャと頭を撫でられた。
「久し振りだな。来ると思ってたぜ」
「適度な運動をしに来たよ」
「ククッ、構わん。思い切り暴れろ」
「よっし、任せろっ」
親指を立てて満面の笑みでお応え。
とりあえず、今のところ決まっているらしい作戦を聞く。といっても、囲い込み漁で全員捕まえるだけの、簡単なお仕事でした。
メイン火力で攻め込んで、逃げようとした奴らは周囲に潜んでいるメンバーが捕らえる感じ。
ちなみに、ケインは念の為に外で待機。彼がいれば1人も逃がさないだろう。
「じゃあ、私は好きに暴れていいと」
「あぁ、何なら先陣を切ってもいいぞ」
ふむふむ、じゃあ先陣に立たせていただこう!
ワクワクと入口で待機している私に、苦笑される空気が其処彼処から漂ってきたが気にしてはいけない。
「リン、お前昼間に男と一緒だったらしいな?」
「んー? あぁ、サウンズさんかな。そういえばアッシュの隊の人と会ったねぇ」
「……仕事、だよな?」
「そうだよー。護衛対象の一人」
「だよな! うんうん、リンだもんな。そういったものに興味ないのがリンだよな!」
「……え、何? シレッと馬鹿にされた今?」
「気にするな、アレは独り言だ」
ジャックよ、あんな大きな独り言は独り言とは認めません。しかも「そういったもの」ってなんだ。
何やら部下らしき男性に得意げに話しているアッシュを訝しげに見ていると、ジャックにポンポンと頭を撫でられた。
まぁ、そんなアホなやりとりは置いといて。
「よし、行け」
全員が持ち場についたのが確認とれたようなので、サーシャからGOサインが出た。
突入するのは私、サーシャ、副官さん、アッシュ、ジャックの5人。幹部勢揃いです。
まずは、女の私が入ることで油断させ、次に頭領のサーシャが入って現実を見てもらう作戦。
バナンスに比べ小さめの屋敷ーーいや、倉庫かな。住宅街の中に、ポツンと一つだけ平屋が建っている。
中から感じ取れる気配も、建物のサイズに合ってそう多くはない。そうだなぁ……今いるのは、全部で25人くらいか。
まずは、入口に近い部屋に4人。
後ろに控えるサーシャ達に頷いてみせ、木製のドアをコンコン。
「誰だよこんな夜中に……」
そう悪態をつきながら、無警戒にドアを開けてくれた男。うっ、お酒の匂いが強い。
アルコールで赤くなった顔を顰めていたが、ドアの前に立っていたのが女だと分かると途端にニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「おぉー? かわいーねーちゃんが、こんな時間に何の用だ?」
「なんだなんだ、夜のお相手でも探してんのかー?」
その後ろから様子を窺いに来たのであろう男も、下卑た笑みでこちらを見ている。
お酒が入ってるからなのか、もともと使えないのか……特に気配を消しているわけでもないサーシャ達に気付かないとは。
ま、その方が仕事が楽でいいか。
「そうだね、ちょっと適度な運動をしに」
「ヒャハハ! こいつぁーいい、俺らが相手してやるよ」
「そーそー、適度と言わず激しくな!」
「そう?じゃあ、遠慮なく」
「あぁ? ーーべフッ⁉︎」
手前にいた最初の男に、遠慮なく回し蹴りをかましました。ついでに巻き込まれ後ろの男も床に倒れ込んだ。
おぉ、いくら呑んでるからってこんな大振りを避けられないとは。
それに、女とはいえ腰に帯剣した相手にこうも隙だらけなのは、一応裏稼業の者としてどうなの?
「さすがに弛みすぎだよねぇ、頭領」
「全くだ」
呆れた溜息をつきつつ、影から姿を見せたサーシャ。
「テ、テメェら誰だっ⁉︎」
「あれ、今の聞いてなかったの? 頭領だよ、頭領。ここスベインの」
「は…………?」
肩を竦めてサーシャを指差すも、ポカンとした顔で私と彼の間へ視線を行き来させていた男達。
しかし、お互いに顔を見合わせると唐突にケラケラと笑い出した。
「はははっ、おい聞いたか⁉︎ 頭領だとよぉ?」
「何を言い出すかと思いきや、馬鹿なんじゃねぇのか? スベインとか名乗っちゃあいるが、ここはただの表のはみ出し者が集まってるにすぎねぇよ」
「なんだぁ、お前ら他の国の『お仲間さん』か? それなら、さっきのことは多めに見てやる。そのかわり、おじょーちゃんには俺らとたっぷり遊んでもらおうかな」
……うわぁ。
本人を目の前にして、その言い草は勇気があるというか……馬鹿だ。
蹴りを入れた私に対して、まだそんな事を言えるのも凄いと思う。これは酒が入ってるってだけじゃないね、生粋のおバカさんだわ。
というか、大人になって何を遊ぼうと言うんだ。仕事をしろ、仕事を。子供じゃないんだから。
呆れた表情を隠すことなく、未だに床に転がっている男達を眺めていると、何を思ったのかこちらに手を伸ばして腕を掴まれた。
「ほら、こっちにーー」
「コイツは、お前なんかが触っていいような女じゃねぇよ」
男の方へと腕を引かれるも、その手をサーシャが引っぺがし後ろへと下がらせれた。
引かれた勢いで相手の顔に一発見舞う気満々だった私は、不満げにサーシャの顔を見上げる。が、すぐに目を逸らした。
おおぅ……ものすんごい不機嫌なオーラが。いつも何考えてるのか分からない余裕ある笑みじゃなく、めちゃくちゃ冷え切った目をしていらっしゃった。
そんなサーシャの雰囲気に、男達もようやく少しは危機感を覚えたのか、酒のせいで覚束ない足腰で立ち上がる。
「あぁ? さっきからなんなんだよテメェは?」
「頭領とか言ってたが、まだそんな寝言言おうってか? 野郎はお呼びじゃねーんだよ、さっさとその女置いて失せな」
男達が喋るたびにサーシャの不機嫌オーラが増しているのだが、あの馬鹿共は気付いてないの?
「……おい、アッシュ」
「あいよ」
振り返ることなくアッシュへと声が掛けられると、分かっていたのか何やら一人の男を連れてきた。
見ない顔だし、後ろ手に縛られているところを見るに、オイタしたここのメンバーかな?
私とサーシャ以外にもまだ人がいたことに驚いた様子の二人だったが、アッシュの連れた人を確認すると更に目を見開いた。
「あ? ルーヴォじゃねーか」
「なかなか帰ってこねーと思ったら、そりゃどういうことだ?」
「お前ら……悪いことは言わん。すぐに謝っとけ」
「はぁ? 何言ってんだ? 謝るならこの野郎の方だろうがよぉ」
「いやマジで謝っとけって」
ルーヴォとやら……そんな顔真っ青にして、何があったんだ?
チラチラとサーシャを見上げ、引き攣った顔をするルーヴォに対し、男2人は怪訝そうにするばかり。
「これは私必要なさそうだね」
「俺の出番もなさそうだ」
隣にいるジャックとコソコソと会話しつつ、近くにいたメンバーに指示を出す。
「サーシャが暴れるっぽいから、みんな本気出せー。1人でも逃したら怒られるぞー」
それを慌てて伝達に向かう人を見送り、まずは、と足元に落ちていた石を1つ拾う。
そして、建物の外壁ーーの下、隠し通路の入口だろうか。そこから脱出しようとしている人影に向かって放り投げた。
お、良い感じに頭に当たったよ。
「ガッ⁉︎」
「はーい、逃げちゃダメだよー」
頭を抑えて蹲る人影を、その周りに潜んでいたメンバーが回収。
その後にも出て来ようとしていた奴らは引き摺りだされ、そのままお縄。もはや流れ作業。
入口を見るとサーシャも動き出したようで、少し目を離した隙にさっきの酔っ払い2人は床に伸びていた。
手前の部屋にいた残り2人は、どうやら元々酒に呑まれて寝ていたようだ。サーシャも無視の方向だな。副官さんがきちんと回収しているけど。
アッシュもボスに任せるらしく、呆れ顔で倉庫の奥を眺めている。
「あーあ……久し振りにあんな怒ってるサーシャ見るわ」
「俺ら、なんであの人の存在疑えたんだろ……」
その横で遠い目をしているルーヴォ、彼は本当に何があったんだろう。
倉庫の中からはサーシャが暴れているのであろう喧騒が聞こえ、窓から逃げようとする人も多数。
勇気ある馬鹿ーーサーシャに挑んだ人も何人かいたようだけど、見事に相手になっていない。
私が唯一勝てない可能性があるのって、実はサーシャだからなぁ。特に隠密性、あの気配消しはヤバイ。
日頃の無駄な存在感が綺麗サッパリ消え失せ、本気を出しても見つけ出せるかは謎。お前は忍者か。
「お?」
呑気にみんなの仕事ぶりを眺めていると、建物の入口から1人男が飛び出してきた。
ちょうどアッシュが退いていたらしく、ドタバタと騒ぐ建物内を焦ったように振り返り、正面を向き直ったところを私と目が合った。
「クソが!」
そう叫ぶと、手に持っていた小型ナイフを構えて駆け寄ってくる。
おぉ、今夜は私の出番なさそーって思ってたけど、ラッキー☆
「私と遊んでくれるの?」
必死にこちらへと向かってくる男に笑顔で対峙します。騎士団と真剣で特訓している私に、今更素人のナイフなんて怖くないもんね。
軽く腰を落とし、突き出されたナイフを半歩下がり躱すと、相手の腕に手刀を叩き込む。
ナイフを取り落としたところを、男の腕を捻り勢いを殺さず投げ飛ばした。
見事に宙返りを決め、背中から地面へと転がった男は受け身も取れなかったらしく、苦しげに咳き込んでいる。
「まぁ、女を狙おうって気持ちは分からんでもないがなぁ」
「どう考えても、ここで一番手を出しちゃマズイのは、リンとサーシャなのに……コイツら、見事に仕掛ける相手を間違ったな」
「……」
アッシュとジャックの会話に、珍しく副官さんが無言ながら頷いていた。
酒に呑まれると途端に態度がデカくなる人って嫌ですよねぇ。
お酒は人に迷惑をかけない程度に楽しみたいね(*´-`)
次回は『友のために』




