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非常識で常識的な彼女  作者: R
騎士団編
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65/69

事態の広がりはいかほど

お待たせしましたが、今回も短めです…

バナンス城にて(アルブレヒト視点)


 騎士団、スベイン、そしてリンとケインがサファリスへと向かってから数日。

 スベインから1通、騎士団についたリン班から1通、報告書が届いていた。

 決めていた定期便は2日後だから、これは緊急ということ。

 そして、その内容はかなり面倒なものだった。


「サファリスがバナンスへ戦争を、ねぇ。それにスベインの支部が関わっている可能性もあると」


 何とも、面倒なことだ。

 僕の執務室には、今は僕とフェリスだけ。フェリスはいつもの2人掛けソファに1人座り、手にした報告書へ眉間にシワを寄せながら目を通している。

 スベインから届いたものによると、村落を襲っている集団を発見。アッシュ率いる数名でそれを捕縛、尋問してみると「サファリスのスベイン」だと名乗ったらしい。どうやら、サファリス支部内は随分と腐っているようだ。

 リンから届いたものによると、サファリス王指示の下、魔体質の人間を集めているらしい。街にも徴兵の貼り紙が出ていたりと、戦争を始める気配は確かにあるようで。


「全く……サファリス王は一体何を考えているのやら」

「私の記憶では、サファリス王家は善良な者が多く平和主義だったはずだが」

「うん、僕もだよ。それに、彼が王位を継いだばかりの頃に一度会った事があるんだけど、前王に似た穏やかな方だったね」


 そう、戦争なんて多くの民が死ぬような事を考えるような人には見えなかった。

 何より、彼はサファリスという国を大変誇りに思っていた。貿易が盛んで、平和に、そして繁栄した国を。

 だから彼が土地を殺すような魔導具の実験に手をつけたと聞いた時、本当に彼の意思なのか疑った。もしかしたら、誰か他の者に成り変われでもされたのではと。

 それを確認しようと、国境を守る騎士団の仕事に僕も総騎士団長の立場を利用してついて行った。レイには凄く嫌がられたけどね。

 しかし、僕の眼に映ったのは、確かにサファリス王本人だった。


「しかし、彼の国がいかに戦力を揃えようと我が国に勝てるなんて、ありえない事だよ」


 それは奢りでもなく、客観的な事実だ。

 これまで全く戦争に関わらず軍事に力を入れてこなかった国と、昔から変わらず軍事を維持・育成してきた国。

 どれほど今から戦力を集めようと、数年で埋められるような戦力差ではない。

 それこそ、リンのような規格外が数十人はいなければ。


「魔体質……我が国でも、魔体質についてはあまり研究は進んでいなかったな。未だに魔体質になる原因も、それを治す事が出来るのかも判明していない」

「うん。そもそも存在が貴重すぎて調査する材料が少なすぎる。僕が知っている魔体質も、カレンくらいだしね」


 リン達にはあくまで「才能」と紹介した、カレンの力。それは魔体質によるものだ。

 彼女の魔体質は軍事利用するとかなり強力なものなので、事実を知る者は少ない。リン達にも、まだ教える予定はなかったんだけど。

 魔体質の者は容姿に特に変化がなく、自己申告しなければ基本的にバレることはない。接触型は注意しなければならないが。

 カレンの魔体質は『本質を覗く眼』。その者に本来宿っている力を視る事が出来る。

 後天性のもので、いつ発症したのかはカレン本人にも分かっていない。「気付いたら視えるようになっていた」と言っていた。

 それを元々の趣味でやっていた武器商人という仕事に利用し、あくまで「能力を視る天才」と売り込んでいる。


「カレンが魔体質だって事は僕と信用たる人にしか知られていないはずなんだけどなぁ……一体、サファリス王はどこから嗅ぎつけてきたのやら」


 世界的に知られている魔体質は4人。全員が何処かの国に所属していて、表向きは保護されている。

 だから無所属のカレンが狙われるのは、必然ではある。公表しているのなら、だけど。

 外見は幼いが、カレンはとても賢い。彼女が自分から魔体質である事を言いふらすとは考え難い。

 となると、事実を知っている者が情報を漏らしたという事になるが……。


「とにかく、今はサファリスとの戦争を避けるよう動いた方が良いだろうね」

「……そうだな。無駄な血を流すことはない」

「まずは父上に報告へ行こうか。君も一緒に来てよ、フェリス」

「はぁ……」


 面倒、と顔に隠す気もなく浮かばせているフェリスだけど、拒絶の言葉は返ってこなかった。

 普段どれだけ嫌がろうと、昔からフェリスが僕に力を貸さなかった事はない。もちろん、悪戯は止められるけどね。


「父上も君に会いたがっているんだよ。未来の宰相なんだから」

「…私は」

「はいはい、分かってるよ。そうでなくとも、君はもう一人の息子のようだと言っていたんだ。たまには親孝行してみようよ」

「お前に言われたくはない。いい加減、王太子らしく落ち着きを持て。王に迷惑をかけるんじゃない」

「あはは、今日も良い天気だねぇ」

昔のサファリス王を知るアルブレヒトには、かなり奇妙に見える行動にどう対処するのか。

アルブレヒトとカレンの出逢いの話も、いつかどこかで。

次回は『合図を待つ間』

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