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非常識で常識的な彼女  作者: R
王都編
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21/69

予想外の人物

ついに、あの方が登場。

 出会い頭に盛大に転ぶという斬新なお迎えをしたリウェンさんに案内され、私達は今、城の裏側に回っていた。

 そう、あくまで「裏側」です。


「本来なら正面から入られるのですが、我が主が急ぎお連れするようにと……なので申し訳ないのですが、裏口からご案内させて頂きます」


 申し訳なさそうに困った顔で先頭を歩くリウェンさん。彼曰く、正面から入るとかなりの時間がかかるそうな。

 まぁ手続きとか大変そうだもんね。伝言ゲームが王子に届くのに一日待たされたとしても不思議じゃない。

 裏口ということは職員用みたいなものだろうけど……いいのかな? 私達って一応部外者だし、ご主人以外は正体不明じゃん?

 そんな人達に「裏口」を教えちゃ駄目だと思うんだけど。もし敵だったらどうすんのさ。

 疑問が顔に出ていたのかご主人が小声で教えてくれた。


「私達はアル……王子から招待された身だ。王子が『招待する』というのは君が思っている以上に責任が重いことだ」

「あ、なるほど」


 王族、しかも次期国王が敵を招き入れるなんて失態、犯さないし犯せない。「王子から招待された」という事実が、私達の身元証明みたいなもんなんだね。

 ちゃんと理解出来たことを褒めるようにご主人が頭を撫でてきた。やっぱり先生ですな。王子を名前呼びしようとした事は黙っておきます。


「ここです。どうぞ」


 立ち止まったリウェンさんの指す方向には、何故か何もない所に兵士が二人立っていた。え、サボり? 壁に寄りかかってるし。

 私達に気付いた兵士は、二人のうち一人が慌ててその場から離れこちらに駆け寄ってきた。そしてリウェンさんに敬礼する。


「お話は伺っております。只今開けますので、少々お待ち下さい」


 明らかに兵士の方が年上なのに敬語ってことは、やっぱり騎士団って凄いんだろうか。それとも貴族だからかな。

 言葉を交わす二人を眺めていると、もう一人の兵士が声をかけてきた。皆でその方向を見てーーー思わず私は動きを止めた。

 あれぇ? おかしいな、もしかして疲労が予想以上に溜まってんのかな。さっきまでただの壁だった場所に、見事な扉があるよ。

 私、あとケインが驚きに目を見張っていると、リウェンさんが苦笑した。相変わらず可愛らしい顔です。


「初めて見る方は大抵リン様達のような反応をしますよ。でも仕組みは後で説明させて頂くとして、今は急ぎましょう。主が首を長くして待っておりますので」

「…そうですね」


 ということは私とケインにはモヤモヤしておけと。あ、でもケインはすでに興味無さそう。

 ヘルプ! とご主人を見るも明後日の方向を向いていたため失敗。わざとですね…? 口の端がちょっと上がってるんですよ!

 ジトッと睨むも効果無し。くっ、私もご主人くらい眼力と威圧感があれば! あとその美貌……ごめんなさい、睨まないでっ。

 私とご主人の視線のみの攻防に気付いたロウルさんが呆れた顔をしているけど、その前にご主人の視線を逸らしてくれ。


 裏口だけあって通路は狭く、灯りも最小限。並んで二人歩けるくらい。

 兵士は前後に一人ずつ、その後ろに私はリウェンさんと歩いていた。


「へぇ……魔術ってやっぱ凄い」

「私も初めて見た時は驚いたよ。今でも驚くこともあるくらいだから、無理もないね」


 こんな感じで先程の謎の扉出現の説明を受けていた。ご主人は教えてくれないしね。

 ちなみに私→リウェンさんの順。貴族階級だからか彼も自分のことを「私」と言う。口調は同い年ということでタメ口にすることにした。

 改めてリウェンさんの顔をジーッと眺めてみる。うん、女装が似合いそうな顔してます。雰囲気はハルそっくりだし。

 異世界版のハルかぁ、とニヤつきそうになっていると首を傾げられた。いかんいかん。


「どうかした?」

「なんでもないよ。そういえばリウェンさんは…」

「リウェン、でいいよ」

「じゃあ私のこともリンでいいからね。ーーーリウェンは騎士団に入ってまだ日が浅いんだよね?」

「そうだね。まだ一ヶ月……いや、そろそろ二ヶ月になるかな」


 思い出すように指折り数えるリウェンにちょっと呆れる。覚えとこうよ、大事なことでしょ。

 私の表情から何を言いたいのか察したのか、彼は恥ずかしげに視線を逸らした。

 可愛いなぁ、おい! 思わず鼻息荒くなりかけるのを必死に抑える。警察ならぬ兵士に捕まっちゃうぜ。

 背中にご主人からの視線が突き刺さっている気がしながら、薄暗い通路を歩くこと数分。蝋燭の灯りにボウッと浮かび上がる扉を発見。

 それを先頭を行く兵士が開けると。


「……? ここは?」


 てっきり城内のどこかに出るのだろうと、キラキラ風景に身構えていたのだが。

 目の前に広がる光景は、なんとも殺風景な部屋だった。正直言って屋敷の私の部屋の方がもっと……なんというか、生活感があるよ。

 壁紙の貼られていない剥き出しの壁に、広い部屋の中央にポツンと置かれたテーブルとイスが一組。壁際には本棚が三つあるが、かなり隙間がある。

 そして誰もいない。気配は感じるけど、この部屋自体には私達以外誰もいない。

 ……城なんて初めてだけど、こんなものなのかな? さすがに人で溢れているとは思ってないけど、少なくともどこかに行けば誰かがいると思ってたんだけど。

 裏口から入ったからなのかなぁ、と首を捻りながら部屋を見渡していると、最後に出てきた兵士がパタンと扉を閉めた。

 ん? そういえば兵士二人は一緒に来て良かったのかな? 見張りをしていたんだと思ってたのに。

 今度は兵士二人に首を傾げていると一人と目が合った。その人も不思議そうに首を傾げる。ごめん、なんでもないよ。

 愛想笑いで誤魔化してリウェンに視線を向ける。すると彼も困ったように部屋を見ていた。


「おかしいな。ここで団長に引き継ぐ手筈だったんだけど…」

「そうなの? 近くに団長の気配は……あ、近付いて来た」


 あっち、と左にある扉を指差すと、そこから団長が飛び出して来た。急いでるのは気配で分かってたけど、何事⁉︎

 バタンッと荒々しく扉を閉めた団長を呆気に見守っていると、今頃私達に気が付いたのか、扉を睨みつけるように見ていた団長がこちらを向いた。

 そして何故か私に無言で手招き。え、なんですか?

 団長の側へ駆け寄ると、彼は私に扉の横に立っているよう頼んできた。


「どうしたんですか」

「頼む、何も訊くな。それで、今から駆け込んで来るヤツの足を思いっきり引っ掛けてくれ」

「? よく分んないけど、了解です」


 全く説明してくれなかったけど、何やら団長の目が必死なので了承することに。

 私が団長が立つのとは反対に控えた。それをご主人達が呆れた顔で見守る。でもご主人は呆れ以外に諦めのような表情も浮かべている。

 そして待機すること暫し。団長の言っていた通り、外から駆けてくる足音が聞こえてきた。

 この足音は男だね。じゃあ遠慮なく転ばしてやるか! 何気にワクワクしとります。

 だってこんな子供じみた悪戯、そうそう出来るもんじゃないからね。しかも共犯は団長様ですよ。

 そして運命の瞬間。足音が大きくなり、さっきの団長のように勢いよく扉が開いた。

 そこですかさず、侵入者の足を引っ掛けた。ガッという手応えがして、男は「わっ」と声を上げて倒れ込む。

 男が倒れて、体が部屋に入った途端に扉を締閉める団長。完全に扉を閉め切ると、溜め息を吐いて謎の男を見下ろした。

 そして一言。


「やっと捕まえましたよ、アル」


 ………アル?

 なんか聞いたことのある名前だなぁ、とか思っていると、男の姿を確認したリウェンからまた一言。


「え⁉︎ ちょ、何してるんですか王子!」


 ………王子?

 また聞いたことのある名称だなぁ、と思い。改めて思い直す。

 アルに王子? え、王子⁉︎

 ギョッと私が転ばした男を見ると、彼は「いたた…」と呟きながら不満げに団長を見上げた。


「レイ、いくらなんでもこの対応はヒドイよ。痛いだろう?」

「何を言ってるんですか。ちゃんと受身とってましたし、何より貴方がそれを言いますか。いつも無理難題を押し付けているのに」

「君は鍛えてるじゃないか。それに僕の無理難題は今に始まった事じゃないし」

「開き直るな!」


 最後の最後で、素で怒鳴り返す団長に何故か満足そうな顔をする王子らしい方。

 いや、だってまだ分んないじゃん? 王子が城内を走り回ってるとか思えないし。それにいくら団長でも、王子を転ばすよう頼んでくるなんて……ない…よね?

 私が二人にバレないようジリジリと後退っていると、団長の手を借りて立ち上がった王子(?)が笑顔で振り返った。


「さて、君がレイの言っていた娘かな? やってくれるね」

「……えへ。あの、つかぬ事をお聞きしますが……」

「何かな」

「……貴方は?」

「ふふっ。言ってもいいのかい?」


 わぁ、笑顔で返されたよ。この楽しそうに人をイジる性格、ガントさんとソックリですね。

 私が冷や汗をかきながらぎこちなく頷くと、目の前の王子(ほぼ確定)は素敵な微笑みを浮かべて一礼。


「バナンス王国第一王子、アルブレヒト。以後、お見知り置きを。可愛らしいお嬢さん」

「……」


 笑顔のまま片手をとられるも、硬直して動けない私は一応笑みを浮かべておいた。引きつってるだろうけどね。

 綺麗な蒼い瞳にウェーブのかかった長い金髪を首の横でまとめている、外見からしてまさに王子様な王子(確定)は私の手をとったままご主人にも声をかけた。視線は私に固定されてるが。


「久し振り、フェリス。元気そうで何よりだよ。この子、貰ってもいい?」

「その呼び方はやめろ。駄目に決まっているだろう」


 さすがご主人は幼馴染み兼教育係なだけあってタメ口ですよ。その神経の太さ、今は凄く羨ましいです。

 優しい笑みを浮かべる王子に引きつった笑みを浮かべる私。誰かこの空間を破壊して下さい!

 心の中で助けを求めていると、王子の後ろから盛大な溜め息が聞こえた。そしてベリッと王子を引き剥がす。

 当然犯人は団長。疲れた表情でご主人に謝った。


「悪いな、フェリス。会って早々、こんな茶番に付き合わせて」

「だからその呼び方はやめろと言っているだろう。それに、アルの悪戯は今に始まった事ではない、というのは本当だからな」

「二人とも、僕を前にして堂々と悪口はやめようか」


 幼馴染みトリオさん。感動(?)の再会中悪いんですが……。

 誰でもいいんで、状況説明プリーズ‼︎


**********


 場所を移動して。現在アルブレヒト王子の執務室にお邪魔しております。

 案内してくれた兵士とリウェンはあの部屋でお別れして(他にも仕事があるそうな)、執務室にいるのは私とご主人、ケイン、ロウルさん、王子に団長。

 そして後から執務室を訪ねてきた副団長ことガントさん。相変わらずの美人顔で安心しました。


「リン様?」

「ナンデモナイデス」

「そうですか。では、別のことを伺いましょう。ーーー何故、そのような状態に?」

「その答えを最も知りたがっているのは、私だと思います」


 さすがのガントさんも当惑気味に尋ねてきた。うん、私も答えが知りたい。

 ガントさんだけでなく、この部屋にいる一部の方を除き、答えを求めて私の隣に腰掛けている人を見た。

 私の隣に腰掛けているのは、いつもの通りご主人ーーーではなく、アルブレヒト王子でごさいます。

 執務室に案内された後、腰掛けるよう促されたのでご主人の隣に座ろうとしたら。


「君は僕の隣ね」


 というお言葉と笑みを向けられ、お断り出来るはずもなく。

 現在、私は王子の隣に座っている。決して私から進んで座ったのではないことをご理解して頂きたい。

 しかも王子は私の腰に腕を回して引き寄せてくるんです。上機嫌なのが更に不安を煽る。

 いやだって、王子の表情って新しい玩具を手に入れた子供みたいな笑顔なんだよ。これで不安になるなという方が無理っす。

 対面に座るご主人と団長にヘルプを求めるも、ご主人は大きな溜め息を吐き、団長は肩を竦めて『諦めろ』というメッセージを送ってくる。

 無言のやり取りにもちゃんと気付いている王子は、楽しそうに私を引き寄せた。


「レイから報告は受けていたけど、予想以上に面白い子で良かった。フェリスも『詳しく』教えてほしかったな」

「あれ以上にどう説明しろと?」

「こんな可愛らしいお嬢さんだなんて、書いてなかったじゃないか。ズルイよ、今まで独り占めしてたなんて」

「……ソレは私の所有物ではないのだが」

「なら貰ってもいいよね?」

「それとこれとは話が別だ」


 ……王子、私は私のものなので。どうしてご主人に確認するんですか。保護者ですけど。

 先程より緊張はしてないが、それでも相手が王子なうえ見事に転ばした経緯がある。物凄い居心地が悪い。

 逃げようにもきっちり捕獲されているから無理な話だし、私もさっさと諦めてしまった方がいいのだろうか……。

 若干遠くを眺め出した私に壁際に立つケインが首を傾げた。私もそっちに行きたい。

 なんとなく王子とご主人の会話から状況を察したガントさんは、納得顔で頷いて笑うと。


「残念でしたね。人間、諦めも肝心ですよ」

「……そうですね」

「ちょっと、ガント。それどういう意味かな」


 ガントさんのトドメにがっくり肩を落とす私に、不満そうに反論する王子。もう、王子は黙っといて下さい。言わないけど。

 溜め息さえも飲み込んで、面倒なのでソファに体を預けた。それに王子が意外そうな顔をするも無視。

 だってこんな調子じゃ持たないぜ、主に精神力が。気楽にいこう、うん。

 というか、そろそろ教えてほしいんですけど。

 ジッと団長を見つめれば、言いたいことを察したのか苦笑してソファに腰掛け直した。


「分かった、ちゃんと説明する。なんでアルが俺を追いかけていたか、だよな?」

「そうです。あと、何故に王子を転ばせたのかもお願いします」

「そうそう、僕も聞きたいな」


 私の言葉に王子も頷く。そこで更に私を引き寄せないで下さいよ。というか貴方は原因、分かってるでしょうに。

 呆れた視線を王子に送りつつ、私の質問に答えてくれた。


「まぁ、正直に言うと……いつものことなんだよ」

「……はい?」

「毎日、という意味じゃないぞ? 俺が任務に出て、帰って来た時とかだな」

「それが、どうして追いかけっこに?」


 いい歳した大の男が追いかけっこですよ? しかも第一王子と騎士団長が。百歩譲って団長は良いとしても、王子は駄目でしょう。

 訝しげに団長と王子を見ると、団長も王子を睨むように見る。王子は笑ったままだが。

 団長が睨みながら唸るように続けた。


「コイツの気紛れと暇潰しだ。俺が騎士団へ入る前、子供の頃から続くな。昔はフェリスもいたから良かったものの……」

「私のせいにするな。ーーー詳しく言えば、毎回交代で逃げる・追うを行う遊びだ。部屋に逃げ込むのはいいが、潜むのは反則。使っていいのは騎士寮のみ」

「それで今回は俺が逃げる側だったんだ。今日はお前達が来るから無しにしろと言ったんだ。なのにコイツは……」


 途中でご主人も説明に参加しつつ、二人して幼馴染みの王子を睨みつける。おぉ、さすがに迫力が凄いよ。

 それでも困ったちゃんの王子はしれっとした顔で明後日の方向を向く。

 ……あー、分かりました。つまりご主人の言っていた「団長イジリ」が行われていたんですね。それで強制終了させるために私を使ったと。というかそれって鬼ごっこだよね。

 でもね、だからって私を使うことないでしょう! 幼馴染みの団長かご主人なら良いですよ? でも私は駄目でしょ、一応一般人ですからね⁉︎


「大丈夫だ。何故かアルはお前が大層気に入ったらしい」

「いやいや、それでも駄目でしょう。いくら困ったちゃんで悪戯好きでも、王子ですよ?」

「君もなかなか言うね」


 そんなとこも良いけど、と腰に回しているのとは反対の手で頭を撫でられた。ふふ、そのわりに笑顔に凄みがありますよっ。

 私のどこがそんなに気に入ったのか本当に謎だけど、じゃあアレは処罰なしなんですよね。それなら良いんです、はい。

 ……なし、ですよね? え、なんで腕の力を強めるんですか!


 それから主に幼馴染みトリオが会話をして、暇になったケインが寝かけるという事件があったが、それは隣に立っていたロウルさんがフォローして問題無し。無しったら無し。

 私はたまに会話に参加するけど、壁際に立つケインとロウルさん、ガントさんは黙ったまま。

 確かご主人講座で、席についている人達は客人として扱われるけど、それ以外の人は部屋の主から許可を貰わない限りしゃべっちゃいけないんだったか。

 いくら適当な方でも、王子だもんね。ガントさんは貴族だし、ロウルさんは王都に詳しいだけあって貴族社会にも触れたことがあるんだろう。ケインは……興味がないんだろうね、まず。

 暫くお互いの近状報告のような話をして、今日のところはお開きになった。私達も王都に着いたばかりで疲れているだろうと。ふっ……急かした張本人の王子が何を言ってらっしゃる。

 最後まで離してくれなかった王子は、帰り際に耳元で囁いた。


「明日の昼頃。裏口の所においで」


 裏口? ってここに来る時に通った、あの裏口だよね?

 首を傾げて用事を尋ねようとすると、シーッと身振りで静かにするよう言われる。今は聞くなと。というかなんで私だけに。

 余計に疑問が深まるも、王子の笑みが凄みを増したので黙ることにします。

 王子は仕事があるそうなので執務室でお別れ。鬼ごっこする暇があるなら仕事しておけば良かったのに。

 そして団長とガントさんも途中で解散。あの殺風景な部屋まで送ってもらった。

 ちなみに、ここは場内というより騎士寮だそうな。だから王子も走ってたんだよ。

 騎士団「死神」の総指揮長なので、居ても違和感はないらしい。さっきの執務室も王子としての物ではなく、総指揮長としての部屋。


「それでも走るのは勘弁してほしいが」


 と疲れた表情の団長が、わりと本気で言ってました。ガントさんは無言で苦笑。つまり同意なんですね。

 裏口までは真っ直ぐなので迷うことはないだろうと二人に見送られ、またあの薄暗い通路に入った。

 行きとは違い、隣を歩くご主人が大きな溜め息を吐いた。やっぱり疲れましたか。


「少しは変わっていると思ったが、全く変わっていなかったな。見た目も中身も」

「普通は変わっていないのは、喜ばしいことなんですけど」

「アルに関しては喜ばしくないな」


 キッパリ言い切ったご主人に苦笑しつつ、いろんな意味で凄い王子を思い出す。

 なんというか、見た目はさすが騎士団のトップという美貌だったね。団長やガントさんと並んでも違和感なし。

 見た目天使で中身悪魔という、ご主人の言った通りーーーいや、それ以上の方だった。

 その王子に明日もお呼びだしされたわけですが……これはご主人にも言ってはいけないのかな。私だけに言ったんだし。

 ご主人に隠し事をするのは罪悪感が湧くけど、バラしたら王子に何されるか分からないのも怖い。明日、用事が終わってから報告すればいいよね。

 そんな感じで自己完結させて、私は遅れないように歩いた。


 まぁこの時、ちゃんとご主人に言っとけば良かったと、後から後悔するんだけど。

フェリックスのあだ名発覚。

なんだかんだで、リンは王子にもラフに接していた。

次回は『公爵という身分』

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