第五話 運命
葉瑠は有希がいつ目覚めたのかも知らないまま学校生活を送っていた。
奈緒はどうすることも出来ずに虚ろな葉瑠を見守っていた。そんな生活が一ヶ月続いたある日、奈緒は葉瑠に黙って有希に会いにいった。
「葉瑠は今どうしてる?」
有希は奈緒に尋ねた。
「頑張ってるよ。でも、虚ろにしてる。なんにも見えてない見たい。有希さんは蔵沢くんをどう思ってるの?」
奈緒は正直と惑っていた。
有希が一月前見た時よりも細くやつれていたから。
「好きだよ。この世界の中で1番。でも言わない。」
有希ははっきりと言った。
「なんで?」
「私がもうすぐ死んでしまうから。」
奈緒は言葉を失った。
「ねぇ、奈緒さん。お願いがあるの。私が死んだら、葉瑠にこれを渡して?」
・・・手紙?
奈緒は有希が指し出した封筒を受け取った。
「渡さない。だって有希さんは死なないもん。」
「ありがとう。」
私はもう何も言えなかった。
泣くことしか出来なかった。
あんな私よりも小さな体で精一杯生きている。
それなのに、自分の死期を宣告されて、好きな人に想いも告げられないまま、ただ、死へのカウントダウンをし続けるしかないなんて。
神様。彼女は、有希さんはなんのために生まれたんですか?
これじゃ、あんまりです。
命の大切さを解っていない人ほど長生きで、生きたいと願っているいる人が死ななければならないなんて。
有希さんはいままでどれだけの不安や恐怖と戦って来たんだろう。
「奈緒さん。泣かないでください。私にもちゃんと生きてる意味があったんだなって解ったんです。葉瑠がいて、奈緒さんがいてくれて。私は本当に幸せなんです。私は自分の人生を不幸だなんて思いません。きっと誰よりも幸せです。」
有希は最後まで泣かなかった。




