第四話 失わない為
「葉瑠…。さ、最近、女の子と一緒にいるね。」
「えっ…あぁ。壱未のことか…。壱未はこの病院に母親がいるらしい。それがどうかしたのか?」
「べつに…ただ…。」
たったそれだけなのに有希は真っ赤になり葉瑠から顔を隠すように窓の外に目を向けた。
私はいつの間に葉瑠の事を好きだと思うようになったんだろう。
お互いの温もりがしっかりと感じる事の出来る無言の世界が二人を包んだ。
手をほんの少し伸ばすだけで届く有希の頬…かすかだがふるえてる。
葉瑠はすぐに様子がオカシイ事に気付いた。
「…有希?」
葉瑠の呼び掛けに有稀は何も答えなかった。
「おい!有希…!有希‥‥?」
有希は意識を失い、ユックリと葉瑠にもたれるように身をあずけた。
「有希を失いたくない。だからこそ…俺はココにいてはいけない気がするんだ。」
有希が倒れてから6時間がたった。だけど未だに有希が目覚める気配は無い。ベッドの上の有希を見つめたまま黙り込んだままの葉瑠と葉瑠の声を聞き付けてきた奈緒がいた。
「壱未…俺はもう有希に会えない。」
そのトキの彼の声はひどく辛そうで見ているのも辛かった。
「蔵沢君…。」
奈緒はどうしていいのか解らなかった。
「俺は気付いてやれなかったんだ。有希は…こんな小さな体で自分の運命を受け入れるしかなくて、兄貴の事をずっと想って…。俺はそんな有希に何が出来る?」
奈緒は俯いて眠り続ける有希を見つめていた。
そのあとしばらくして2人は病室を後にした。




