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第三話 箱庭

「あっあのっ!?」

病院から出た途端。

頭のどこかに聞き覚えのある小さな声に呼び止められた。

振り返ったその先にいるのは確か…同じクラスの壱未奈緒。彼女の事は知っていた。だけど今まで一度も彼女と言葉を交した事などなかった。

「?」

俺はワザと知らぬフリをした。

「あっ、おっ同じクラスの、壱未ですっ。あのっ!くっ蔵沢くん‥は、どっどうして病院(ここ)に?」

どもってしまうほど焦っているのか‥‥。俺はなぜか彼女の質問に答えた。

「お見舞い…。」

たったの一言。

それで彼女は納得したのかじゃあねと手を振った。最後に、『大切な人なのね…。』

そう彼女が言ったのが微かに聴こえた。そんな気がした。

それから俺は壱未奈緒と良く話す様になった。壱未は有希の他に初めて出来た友達だった。

「蔵沢くん。今日…一緒に帰らない?」

奈緒はうつ向いたまま葉瑠に言った。

「ごめん。今日は病院に行くんだ。」

葉瑠の言葉にクラス中ザワザワとざわめき出し女子は心配そうにし葉瑠の周りに集まって来た。

「蔵沢くん、どこか悪いの?」

「大丈夫なの?」

葉瑠はかなしげに微笑んだ。

「心配してくれて有難う。でも大丈夫だよ。お見舞いだから。」

葉瑠が少し微笑むだけで大抵の女子はその見かけに騙される。

今だってまた中身を見ずに葉瑠に恋をした女子が何人も増えただろう。

「お見舞いって家族の方?」

「とても大切な人。」

また悲しげに呟いて葉瑠は教室を後にした。

「うそー私蔵沢くん狙ってたのにー。」

その後暫く教室内は女子の悲鳴に似た叫びがつづいた。

葉瑠は苛立っていた。

教室は窮屈だ。

病院までの見慣れたはずの景色さえ何も見えなかった。

有希が、有希が初めて俺の中身を見てくれた人。有希がいない世界は俺にとってはなんの意味も成さない。俺を縛るだけの箱庭に過ぎない。そう、相手がどんなに俺の事を慕っているとしても……。


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