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9:亜人と剣・後

そろそろ派手にイベントを一つ入れたいところ…

9

 

「どうかしたのですか?リュート様」


 大人たち三人がげらげら笑っているところに、エリスが声をかけた。

 起きたばかりのその様子はどこかしゃきっとしていない様子ではあったが、どこか物憂げなリュートが気になったという様子で。その後ろに、リュートと同じような、騎士服をまとったリーシャが続く。


「いーや…これを早く使いこなせるようにならないとな。そう思っただけだよ」

「そうそう早くに使いこなせるとは思わんがなあ」


 そして再びドワーフのオヤジがガハハと馬鹿笑いする。

 豪快。

 その一言で性格が済まされそうなオヤジドワーフのほうをリュートは見て


「有難うございました。親方。急なお願いであったというのに」

「いーんだよばーか。お前ら人間の男やエルフはまだいいんだ。大事にされる可能性があるからな。

 俺たちドワーフはその可能性はない。自分の腕で馬車馬の如く細工物を作らされる運命にある。今のままならな。歴代の英明王が何で今のような状態を残したかしらねえ。そんな昔のことなんざどおでもいい。だがな?」


 にかっと親父は笑う。


「お前はどうにかしようって言うんだろう?この今を。

 だったら俺たちドワーフはお前につく。お前に味方する。それらの未来をお前にかけてやるよ」

「我らエルフも同様でしてね。全体的に年は食っているのですが人生経験が少ないというか。まあ、あちらからみれば何代にもわたって楽しめるというところなのでしょう。正直、知ったことじゃありませんがね。痛い目を見せてやってほしいんですが…まあ、こちらについてくれるのもいませんでしたし」

「そういう面では、我らの大将はある意味希望なんでな」


 エルフ男やフォードが微笑を浮かべている。その横で少々困った様子を浮かべながら。リュートはエリスたちのほうを向いて。


「まあそういうわけさ。俺はきっかけになる。俺は途中で終わってしまうかもしれない。途中で止まっちまうかもしれない。ただ、ここをもう一回動かすためのきっかけになるさ」


 そう言ってエリスたちに手を伸ばす。


「してくれるんだろう?協力」


 それは儀式といえるのだろう。

 昨晩の約束を知らなかった男たちの前でその約束を示す。それによってこちら側についたことを正式にリュートの仲間に表明する。そのための儀式なのだ。

 頷き、まずエリスがリュートの前に傅いて


「シェリル国宮廷神官エリス=ノ-ティス。

 わが一族代々に伝わる技術、技法全てを使い、主君リュート様に忠節を誓います」

「シェリル国近衛第一部隊隊長リーシャ=マクノートン。

 わが一族代々の戦術・剣術全てを用い、今この時より主君リュート様にわが剣を捧げます」


 エリスに続いて、騎士服であったリーシャが傅き、忠誠を誓う。

 そしてそれに続くものがいた。


「年を食った老骨ではあるが…親子共々わが主君に忠節を誓おう」


 フォードとハーフエルフの男が。


「わしらの技術。我らの秘術。それをもってお主らに力をかそう。お前がこの国を変えるというのなら、お前に…忠節を誓う。」


 エリスは不思議に思っていた。この国では、いや、この世界では差別主義は普通のことだ。

 この国のように男女、というのが珍しいだけで、貴族と平民。力あるものと無き者その差はある。

 貧富の差、というのもそれに含まれるだろう。だが、目の前の彼は違うのだ。


 エルフも、ハーフエルフも、人間もドワーフも。公平に見ている。


「俺は、みんなから学ぶべきことがたくさんある。

 剣も、魔法も、戦術も、策略も、何もかもがたりない。だから教えて欲しいと思う。

 ただ…あきらめはしない。こんないいやつらが虐げられているのは間違っている。そう思う。

 だから…俺はこの国で、少なからず、男女が笑って過ごせる場所を作ってみようと思う。同じ場所で、同じように。

 そんな場所すらここにはないんだから」


 そう言って、リュートは…少し笑う。


「少し陳腐かもしれないけど…遣り通すことを、この剣に誓おう。

 誰も彼もが笑えるように。ありがちかもしれないけど、替えがたいから」


 そう言って笑うリュートの表情は、エリスにとって楽しそうに見えた。

 その髪は森の中からのぞく太陽の光。それによって色がかわって見えた。

 本当の色は紺なのだろうか。本当にそんな色なのだろうか。

 

 エリスにとって彼の髪は、空の色のような、深い青に見えていた。 


 同時刻


「まっずいな…」


 監視を行っていたライルはさらに兵士が減っているのが見えた。

 外に五人。中に二人。半数以上が散っている。

 もう兵士を呼びにいったのだろうか。近くの兵士というと…そこまで考えて思い当たった。

 

「人攫いをやらかした領主…?」


 ライルはそう思い確認する。待て待て、と。

 最も近いところはそこだ。しかし数人はおそらく王都に直接か別の領主の元へ向かっているだろう。

 だがしかし。あの領主の人がいなくなれば…兵士が少なくなれば、動き出す場所がある。

 西の村だ。

 人攫いを行われた被害者の村。兵士が少なくなったとなれば勇士を抱えるあの村だ。

 さらわれた子供たちを奪い返そうとするだろう。だがゴブリンたちへの抑えも必要だ。人を残すかそれとも…少数で特攻するか…


「どっちだ、どう見る…」


 リュートのほうは、自分達のほうは用意をするのに一日二日はかかる。そうなると……


「デュークのオッサン……アンタが要だ。抑えてくれよ…」


 ライルは願う。人望厚き元下士官のことを。今西の村に使者として赴いている男のことを。


 

前後編なことに。

最初の第一戦のプロローグみたいなことに。

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