8:亜人と剣・前
人間以外のニ種族。
8
協力をエリスとリーシャ。二人が申し出て受け入れられたその翌日。
二人は目を覚ますと表、集落の広場にてリュートが鍛錬をしていた。
「シッ!」
「甘いですなあ…その程度っ!」
リュートと集落の男性との手合わせ中らしい。
二人が握っているのは金属で作られた剣状の棒。金属製の木刀といったところ
リュートはまず踏み込み、上段から袈裟懸けに振り下ろす。
しかし相手には読みきられている。上段から振り下ろされる鉄に剣を合わせられ本来の軌道からそらされてしまう。
「大振りの一刀は…凌がれてしまうとこうなります」
男のほうはといえば受け流し、起動からそらされれば戻りに時間がかかる。
剣の軌道を変えずらいのは男も同じだが、だったら、とでもいいたげに蹴りが飛ぶ
踏み込み、足をたたんでのいわゆるヤクザキックといわれるタイプだが今度は一歩リュートが早い。
彼の攻撃が入る一拍手前、後方に飛び、蹴りの間合いから外れていく。
そして
「<<盾>>」
魔法によるシールド。物理的な障壁を展開する呪文でこれだけでは攻撃力を生み出さない。
「<<加速>>」
<<盾>>を展開したまま突撃。物理障壁を展開したまま男に対して突っ込んでいく。
<<加速>>により十二分に加速したその攻撃は十分な破壊力を持つ。
「<<盾>>」
男も障壁を展開する。
加速によって突っ込んでいくリュートだが、男はその突貫を上手く受けながしている。
単調といえば単調な攻撃だ。歴戦ともいえる男に通用しないのも確か。
リュートはといえば、なら「一発はったりをかますべきか…」などと思う。
「<<光>>」
リュートの発光魔法。<<灯火>>よりも明るい目潰しの魔法によって一瞬とはいえ視界をつぶす。
それを好機とみたリュートは<<盾>>を展開したまま<<加速>>のスピードを生かして回り込む。
そして
「<<加速>>!!」
「<<爆>>」
回りこんで多重加速による突撃を試みるがカウンター。
爆発系の魔法によって吹っ飛ばされてしまう。
ごろごろと転がっていくリュートを見ながら男は講釈を
「目潰しを行って回り込み突撃はまあいいといえばいいんですがわかり安すぎますな。
単調といえば単調。相手に読まれてしまえば、相手がなれてしまえば奇襲というのはわかりやすいだけなんですよ、りょーかいですか?」
「了解だ」
爆発をくらいながらもリュートは立ち上がってきた。
一本入れるルールは相手の急所に棒の切っ先をふれさせること。
まさにそれを行うために盾を解除し、そのカウンターをもろに食らった形になる。
「まあ、多重展開も出来るようになってきてますからこのまま精進してください」
「…へえへえ…まあ単純なのですがねー」
それでも上出来ですよ、と男は笑う。フォードが苦笑しながらリュートのほうを癒しているのが起きたばかりでその訓練を見ていた二人の女性には目に付いた。
そして、先ほどまで彼と訓練していた男。その耳はとがっており、フォードと同属。つまりはエルフであることがわかる。だがその姿はどこか違和感を感じて…その違和感に対して思った結論をエリスが口にする。
「ハーフエルフ?」
「まあそうなりますねえ…」
エリスの呟きに苦笑を浮かべながら男がわらって見せて。そのまま言葉を返していく。
集落の入り口、エルフの里のほうから影が現れた。体躯は小さく寸詰まりといった感じの体つきをした男が荷車を引いてやってくる。
「小僧。注文の品だ。」
ヒゲ面のその男は荷車に乗っけてきたそれを見せる。
剣と鎧一式だ
「これはリュートには上等すぎるのでは?」
「ハッタリじゃハッタリ。仮にも大将をやってもらうんじゃからのぉ?」
「旗印なんだから立派なのじゃねえとなぁ?」
治療が終ったフォードとエルフの男、そして荷車を引いてきたドワーフの男が笑いあっている。
そしてその横でリュートが剣を抜き…その刃を見つめていた。