4:対面
主人公が話のメインに。
ヒロイン?何のことでしょう。
4
4人が長の家にはいっていった。
中はそう広くはない。日本人で言うならば、10畳間と8畳間で二部屋、といったところだろう。
入り口すぐそばの8畳間。其方のほうで用意されていたテーブル。
其方に椅子は一つづつ。まずエリスが座り、その反対側には英明王が座った。
「改めて用件をお聞きしよう」
英明王の後ろに立ったエルフ。フォードが口を開く。
ローブと杖を揺らし何事にも対応できるように体制を整えている。
「英明王をわが王都へお迎えに。その役目を果たしにまいりました」
「…適当にそこらの男を改造すればいいんじゃないのか?普段はそうしてるんだろう?」
エリスたちはその言葉に沈黙してしまう。
そして、英明王は畳み掛ける
「沈黙は真実ととる。本当に男に生存権はないんだな
普段なら魔力を一定以上もっている男の顔と性格をゆがめればいい。
そうすれば温和で才能ある美しい王様の完成だ」
「だが…それは英明王の模倣である。
英明王がそうであったからそれにあやかり、英明王に似た存在を作る。
かつて一部の女性神官がそれを提案したとき、時の女王は受け入れたときく。
果たしてそれが真実なのかはわからんがな
ただ、少なくともわしが城にいたころの王はその気配がある。
印象は違うとはいえ、誰も彼も性格が同じで美形であることは確かじゃったんだから」
英明王とフォード。二人の言葉にリーシャは反応する。
「それは…本当に真実なのですか?王までもそのような扱いを…」
「この国の王は名目上のみの存在じゃな。それは理解しておるだろう?
対外的に王と言う立場を、外交的に用意しているだけであって、実際には女王が取っておる。
殆ど外交交渉も今では少なくなり、ハブになっておるがのぉ。ただいるだけでいいんじゃから問題はない」
「…事実ですよ?リーシャ」
エリスが口を開く。それは事実なのですと。
「初代英明王が崩御された後、そこには混乱期があったといいます
それ以前の女王制に戻るか、もしくは男性王を立てるか。そしてそれまで虐げられていた女王制には強い反対があったといいます。男性による。
その反対を退けるために男性王が用意されました。
女王陛下が気に入るように、好みの男性を用意して。
つまりは女性だけではなく、男女揃った王家による統治という形にしたわけです。
そして…」
英明王は再び口を開く。
「美形で一定以上の魔力保有。それだけでだいぶ厳しいからな。
見つからない、見つかっても難しい時期があったんだろう。
ある代でどうしても見つからなかったんだろうな。そして…生贄が用意された
……替えようがない一定以上の魔力を持った男。その男の顔を魔力で変えて婿入りさせた。
女王も今では理解しているのか…純粋培養によってそういうことが想像の範囲から抜けているのかわからんが。帝王学でも学ばせてそういったことから思考をそらせれば上出来だろう。
王族は呪いでもかかっているのか女が優勢、顔つきも女側に似るらしいからな。
美形には一応なるらしいが。遺伝的に男性本来の顔が出ることはまずないらしいな。」
ライルはその話を聞いて順に自分の中でまとめようとする。
当初、英明王の崩御のあと混乱期があった。
それ以前は女王制。それ以後、女王制下で存在しただろう男性家臣の反発。男性王制にしようという
一派だな。
それを抑えるために…男性王が用意された。女王の結婚相手として。
そして王家による統治という形にしたわけだ。王家の代表による女王の統治だな。
問題はその後。
代々の女王相手には優秀な男性が用意された。
女性絶対主義は他の国からの反発をかっている。それこそ昔から。
だからこそよそからの政略結婚によってというカードが使えず、ある代でとうとう見つからなかった。
政略結婚という手は使えない。国家的にも。
婿入りさせる側に実入りがあまりにもない話だ。だからないだろう。
そこで家臣たちがとった手段が外法ともいえる方法。
魔力の強い男を一人生贄にして女王に嫁がせた。まあ王女か姫時代だろうけど。そうであってくれ。
「まあ英明王の存在が大きいんだろうな」
家の外で盗み聞いていたライルは一つ零してしまう。
「動乱、混乱が起きれば英明王の召喚が行われる。
男性王の存在は体外的なお飾りではあるけれど、英明王が現れたときに男性統治者という前例を作っておくことで抵抗をなくす意味もあるんだろうな。女王だけのところにぽんと現れても。
そして英明王がいなくなった後は女王が再び誕生する。
前例があるからだ」
家の中では再びフォードが語り始める。
「初代英明王の時点で英明王のあとは女王が再び即位するという前例が出来た。
男性王もその結婚相手という形で存在している」
「じゃあ何で動乱期では英明王じゃないとダメなんだ?女王にやらせればいいだろう?」
黙っていたエリスが英明王に対するその答えを口に出した。
「大きいのは英明王の加護ですね。
普段の男性王や女王にはない、女神様のご加護があるのです。
魔族などが惑わせる<<魅了>>や<<混乱>>なども効きませんし。
その率いる部隊も同様に魔法が聞かなくなるのです。
一度女王陛下が軍を率いて魔族と戦ったことがあるといいます。英明王を良しとせずに」
「…その結果…
大敗を喫した。損耗率4割精鋭とよばれる兵士たちを失った。
当時のわが祖先も命を落としている」
リーシャはそう口に出していく。人間相手も同様だ。
「人間相手になるとさらに問題が。敵の男性兵を侮ったりするんですよ…
そして実際の戦闘経験もないので机上の空論を重視したがる傾向にあります」
「ダメじゃね?それ」
「ええダメですね、ダメダメです
ダメダメです…大半の騎士は名誉階級に近いですから。
この国は平和というより、諸外国からハブになってるというほうが近いんです
戦闘経験が高いのはそれこそ山岳地域等のゴブリンの沸くようなポイントに住まうものたちか、
山賊たちの退治に回っていた警邏部隊といえます。
そのような我が国の軍を助けてくれていたのが男性下士官の方々だったのですが…」
エリスはさらに困ったような表情を見せる。そしてリーシャが後に続くように
「彼らは戦術研究にも余念がなかった。
自らの役割、民の保護に誇りを持っていたんだ。
事実大将である貴族が混乱をきたしても下士官が支え持ちこたえるという話は良くある。
しかし現在の陛下は…それを良しとしなかった。男性下士官全員を罷免した。
戦術研究、日常の訓練、それらを「謀反の用意」と…
女王陛下から見れば殺さなかっただけありがたく思うべき、なのだそうだがな…」
「この国の兵士は訓練をしないのか?」
英明王の言葉にフォードが答える。
「むしろアレは舞といったほうが近いな。
固定の型を繰り返す。相手がいてもその動きに決まった返しがありそれを速度を持って行うのだ。
幾ら早くとも、幾ら力強くとも…適応力がまるでない。
戦っているわけではないのだからなあ…
魔術も秀でているというレベルではないしのお」
そして、英明王がそれに反応して
「その腐りきった状態を打開するために俺を迎えにきた…ってーことか」
もう少し軽いパートを入れたほうがいいのかなあとか。
貴族>>平民 女性>>男性が両立している国ですな。