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10:西の村

今回から残虐描写注意を入れます。注意というほどでもないんですが。


今回はデューク視点

10


「おおおっ!!!」


 ライルの懸念はある意味外れている。

 使いに来たデュークは断続的な襲撃に協力していたのだ。

 ニ、三日周期での断続的なゴブリンの群れの襲撃。それが発生していると聞き、襲ってきたゴブリン討伐に彼は参加していた。そしてそれをどこかおかしく思いながら、先陣で参加している。鎧を着込み、使い慣れた剣を振るって。


「甘いっ!」


 剛剣といえる。力強い一撃は木を削った棍棒を断ち切り、そのままゴブリンの脳天をカチ割った。

生暖かい血を浴び、断末魔をあげるゴブリンを振り切り、その仲間の骸を乗り越えるようにして襲ってくるものたちを剣ではじき、タイミングをずらして向かってくるものに突き刺す。

 深くは突き刺さない。引き抜くのに手間取ってはそれだけで命取りになる。


 風斬り音がする。


 三匹目の喉をかき切ってやり、弾いた二匹目にも引導を渡す。少しはなれたところにまだ何匹かいたのだがそこに矢が放たれた。ゴブリン一匹あたりに3から5本。頭部を中心にダメージを的確に狙える部位に当たっていく。


 デュークは流石だと思う。ゴブリン相手とはいえ常に臨戦態勢をとっているような村だ。

 的確といえる。デュークは今回のゴブリンの襲撃は終ったか、と引き上げにかかる。警戒は緩めない。周辺を警戒しながらも村のほうに下がっていく。終ったか、と。



 村に戻って来たデュークを待っていたのは弓を抱えた女性達。そして次の警戒当番になっている男性たちだ。自分と共に戻ってきた男性たちはつかれきった様子で。とりあえず汗を流したい、とかいいながら酒場のほうに歩いていく。いっしょに歩いていこうとするデュークではあるが、呼び止められた。


「よろしいか」

「村長殿…はい」


 呼び止められた彼は村長の誘導のまま、家の一つ、村長の家の中に入っていく。剣を外して傍らに置き、彼と向かい合うように座って向かい合う。そして切り出される言葉は…


「彼は…どうでしょうか」

「…彼ですか。いい男ですよ。明るく、公平だ」


 彼、つまりはリュートのことだ。村長はデュークは信頼している。たがしかし、彼ほどに彼が主君と仰ぐリュートのことは信頼していない。それゆえに、彼を通して、リュートを見ようとしている。

 息を村長は零す、どこか困ったように。じっと、デュークのほうを見て。


「やはりおるのですよ。領主のところへ襲撃しようと思う者が。あの屋敷に連れて行かれた、と見るのが一番自然ですからな。我らとしてはゴブリン対策として支援も受け取っております。多少の物資でありますがね。兵士は一兵たりとも。男性兵が来たのはまだ下士官殿がいたころですな。女性兵士などくるわけがない。そのため村の衆だけで堪えねばならない」


 愚痴るように、村長はその言葉を続けていく、


「そのため…ですかな。このような小さな村が魔物に対する要の一つをになってしまっているのですよ。ここがなくなれば散らばってしまい森の中に、丘に、川に混じってしまう。それはさけるべきことです。しかし魔物に対することを怖がっている。今まで携わってきたものがやればよいではないか、と」

「理解できないものほど恐ろしいものはない。そういうわけですな」

「我らとしては昔から隣にいるようなものですからな。彼らは彼らで住んでいるのですよ。山越えの道などはかつてはゴブリンが使った道だとまで言われますからな…話はそれましたが、彼は信用できますか?われわれに関して…何か言っておりましたか?」


 村長の言葉。その問いかけに応じるようにリュートの話、そしてここに来る前に彼と、フォードから聞いた話を語っていく


「彼は西の村のみでの行動に懸念を抱いています。おそらく、この村のみでの対処は難しいだろうと。理由はいくつか有りますが大きいのは子供たちの確保です。洗脳までされているだろうというのがフォード老の意見です。

 しかし此方が協力する形であれば、子供たちにかけられた術を解けるかもしれないというものと、せめて洗脳は解ける。顔は変えられてしまったかもしれないが、親の顔はわかるように、自分が誰だったのかはわかるようにできるそうです」

「そこまで変えられている可能性…ですか」

「事実、あちら好み、となりますと相応に変えられるでしょう。都合の悪い部分は、あちらから見ればいじればいいのですから」


 村長は、悔しそうにしわがれた拳を握る。そして、肘をたて、テーブルに肘を着いて祈るように


「お願いします。私は、もう一度孫に会いたい。どんな形でもいい。孫に会いたい。おじいちゃんと呼ばれたいんですよ…私は…私は…」

「お任せあれ。村長殿…必ずや、対面させて見せましょう」


 デュークは安受けあいしてしまったかな、と軽く悔やんで見せる。だが、と頭を内心振って…彼なら引き受けたのではないか、とそう思ってしまう。自分達をいいやつだ、といい、迫害されていることに憤った彼ならば。デュークはそろそろいったん戻るべきか、と思う。そろそろ準備も整っているころだ。そう思い家の外に出る。

 そこにやってきたのは同じタイミングで帰ってきた村の若者だ。どうしたのかと問いただすと…


「りょ、領主様の兵士が…あのクソ女どもの兵士が動いてる…北だ!デュークの大将!リュートのとこにやつらが向かってる!」

「おそらくは…彼女らが戻っていなかったからか…私も動く。何かあったときのために君達はここを動くな。ゴブリンの襲撃も続いている。君達が途切れたらいっせいになだれ込んでくるからな」


 若者は離れ、だったら…と包みを渡してくる。細長く棒状の包みを。


「これをもっていってくれ…上手くいけば大将の力になれる」

「わかった…助かる」


 ゴブリン退治に疲れていないわけではない、だがデュークは村の厩に走り、つないであった馬にまたがる。世話を担当していた老人に一礼し男は馬を走らせる。


「戦いだ…我々の初陣だぞ、リュート!」

次回初陣ですな。

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