午前零時にドレスは蒸発するの?全裸はイヤです~
お伽噺の夢をぶち壊すJKトリオ。でも、その夢ってけっこうヤバいかもしれないから頑張れJKトリオ!
翼「ひとりだけみすぼらしいのがシンデレラか。」
桜「あいつら何語を話すんだ?」
翼「これも赤ずきんと同じで、シャルル・ペローのフランス語版とグリム兄弟のドイツ語版がある。ペローのが古い。さっき小耳に挟んだのはフランス語っぽい。」
紬「日本語ではたまに灰かぶり姫って訳されるんだって。掃除で竈の灰だらけになってるから。」
桜「このあと妖精がやって来て、ドレスと靴と馬車をくれるんだな。」
翼「もらった魔法装備で舞踏会に行って、時間切れで魔法が消える。」
桜「消えたら全裸になってしまうじゃないか。大事件だ。」
翼「それについては何の記述もないから全裸にはならない仕様なんだよ。だってガラスの靴が脱げても消えなかったし。」
紬「小汚い村娘が妖精からドレスと馬車をもらっただけで、初めての舞踏会で王子に見初められるのがおかしい。そもそもダンスもできないだろうし、気の利いた会話もできない。正しいフランス語が話せるかどうかも疑問。絶対訛りがきついって。」
翼「魔法装備でバフがかかる仕組みだったんだよ、きっと。」
紬「だったら、あとでガラスの靴を手がかりに探しに来た王子と再会したとき、バフが消えてるので幻滅させることになるよ。」
桜「うちらの目から見ると、突っ込みどころが多すぎてハッピーエンドは無理そうだな。」
翼「小汚い村娘と王子、幸せになれるはずがない。王子の周囲が何を言うと思う?」
紬「嫁姑問題は、私たち現代の庶民からは想像ができないほど苛烈極まりないことになりそう。」
桜「このふたり、最初からダメっぽい。」
翼「貧しい娘たちに儚い夢を見せるだけのドラッグファンタジー。」
紬「余計な介入はやめたほうが良いんじゃない?それか、魔法装備をゲットする前のシンデレラに現実を教えてやる。」
桜「王子と結婚したら人生ゲームのハッピーエンドだと思ったら大間違いだと。」
翼「そう。うちらが間違って東大に合格したら、そこから地獄が始まるようなものだよ。」
紬「翼...ちょっとたとえが的外れだけど残酷。」
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青水「あいつら、女子高生にしては甘さの欠片もないな。」
女神「かわいげがないというか、リアルすぎるというか。」
翡翠「富裕層だから見える現実というのもあるのではないでしょうか。」
青水「だな。平民には勝ち組ゴールインに見えるものが過酷な試練の開始だということを知っている。」
女神「ほう、試練を知る娘たちか。いじりがいがあるな。」
青水「翡翠もシンデレラに介入したんだろ?」
翡翠「はい、結構大がかりな介入でした。シンデレラは舞踏会へ行かせずにガラス細工で自立するスキルを教え、お城には私の分身を派遣して状況を報告させました。王子とその母はとんでもない悪党で、舞踏会に集まった女性をワンナイトでつまみ食いするのです。母は息子のオイタを全力で支援していました。なので、分身を上手に使って、シンデレラの義母と姉ふたりをワンナイトの相手にしてやりました。媚薬の術を用いて。」
女神「おまえも結構エグいことをするじゃないか。節度がないと私を批判するが、おまえも大概だぞ。」
翡翠「女の敵と女のクズをマッチングしただけです。調律の巫女ですから。」
女神「青水、翡翠が上手いこと言ったので、ドンペリのロゼ持ってこい。」
翡翠「俗称ピンドンですね。飲んだことがありません。ぜひお願いします。」
青水「主人公が富裕層JKになったせいか、ワイプの世界がまるでバブル期のクラブだ。」
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桜「なあ、翼。何て話しかければ良いんだ?」
翼「シンデレラの名前は各国語で違うので、フランス語だとサンドリヨン。でも、それって物語のタイトルだから、彼女の名前ではないわね。」
紬「声をかけて名前を訊くのがコミュニケーションのスタートだよ。ボンジュールはわかるけど、ちょっと待ってね...Tu t’appelles comment?」
桜「お、紬、かっけー!」
シンデレラ「Je m'appelle Lucile... mais mes sœurs m'appellent Cendrillon.(私の名前はリュシル……でも、姉さんたちは私のことをサンドリヨンって呼ぶの。)」
翼「リュシル、あなた、舞踏会に行きたかったの?」
リュシル「はい。うらやましい。」
桜「行かないほうがいいぞ、あんな虚飾の世界。」
リュシル「そうなんですか?王子様に会えるかと思って。」
桜「なあリュシル、気を悪くするなよ。もしその場のノリで王子と良い感じになったとして、そのあとは地獄だぞ。」
翼「住む世界が違うふたりは,最初は情熱だけで多幸感に包まれるかも知れませんが、すぐに自分を包む環境がその幸せを壊しに来ます。」
紬「これでゴールインだと思ったところから地獄のゲームが始まるんだよ。えーと、翻訳アプリで直訳しても文化コンテクストが伴わないと伝わらなさそう。」
リュシル「田舎娘は大それた不相応な夢を見てはいけないと?」
桜「現実はな、夢がかなったと思った瞬間から牙を剥くんだ。宮廷人がおまえを受け入れると思うか?王子の母親はおまえにどう接するだろう?うちらの世界、この物語世界とは別の身分がない世界でも、嫁と姑はなさぬ仲だ。おまえはその逆境にどう耐えるつもりだ?」
リュシル「まだ出会ってもいない王子様と、そんな仮定の話をされても何も考えられません。」
桜「う...まあそうだろうな。」
翼「これから妖精さんが現れて君にドレスと靴と馬車をプレゼントするんだよ。」
紬「リュシルは,やった、ラッキー、ってそのままお城に行きそうだけど、どう?」
リュシル「たぶんそうなりそう。」
桜「それが悲劇の始まりでも?」
リュシル「うーん、わかんないです~。」
桜「ちょっと待ってて。作戦会議するから。」
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女神「はっはっは、こりゃ最高だわ!偏差値65の港区女子高生、ついに話が通じない偏差値50未満の女に出会ったぞ!」
翡翠「ちょっと、女神様、物語の世界に偏差値を持ち込まないでください。」
青水「これだ、現実の世界でもしばしばぶち当たるやつ。こっちが常識だと思っていることを共有しない人々。港区富裕層で偏差値65のあいつらにとって当然のことを理解できないやつら。風俗で稼いでホストに貢ぐような、俺たちからしたら理解しようがないやつら。さあ、桜たちは作戦会議でどう突破策を見つける?」
翡翠「ハビトゥスはそう簡単に操作できませんね。」
女神「説得が通じなければ実力行使、これが世の常だろう。」
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桜「ダメだ、あいつ、うちらが今まで接点を持たなかったタイプだ。」
翼「うん、マンガでしか見たことがない人。理屈の網にからこぼれる人。」
紬「何を言っても、だって好きなんです~で返すタイプ。」
桜「ならば、その憧れの対象を....えーと、なんかかっこいい言葉が見つからない、翼、頼むわ!」
翼「その対象を脱理想化。」
紬「脱偶像化。」
桜「おまえらふたりとも脱で始まるの?」
紬「現国の先生が言ってた。これは良く出ると。」
桜「要するに王子がだっせーということを見せつければOKだな。ならばリュシルといっしょにうちらも舞踏会に乗り込もう!」
翼「でもドレスも靴もないよ。」
桜「うぐっ!」
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青水「さあ、女神、どうする?お城の舞踏会に殴り込みしようとしたところで、肝心の装備がない事実に直面したぞ。」
女神「ここまで来たらドレスと靴を渡すしかないな。」
翡翠「私も行きましょうか?」
青水「おまえ、ピンドンで酔ってるな?ダメに決まってるだろ。」
翡翠「はい、すみません。ピンドンで調子に乗りました。」
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女神「はいはーい。お困りでしょ?舞踏会に着ていくドレス、持ってきましたよ。」
桜「あ、酒臭い女神。」
翼「私、着るものにはわりとこだわりがあるんだけど。」
紬「私も。気に入らない服を来るくらいならジャージでいい。」
女神「大丈夫よ。ほら、選びきれないほどたくさん持ってきたから好きなだけコーデして良いわよ。」
桜「よっし、おまえら、最高の港区JKを見せてやろうじゃないか!」
翼「田舎の宮廷人、見てなさいよ。」
紬「コーデは化学式、ふふ、まかせて。」
桜「あ、そうだ!ドレスだけじゃダメだよ、女神。乗り付ける馬車も最高級なのを用意して。乗り物はドレスと同じくらい格を示すからね。」
女神「さすが広尾の令嬢だわね。乗り物で威圧する術を理解してる。いいわよ、ほら!白馬の白い馬車。」
紬「ちょっと待って、女神さん。このドレス、午前零時に蒸発しないでしょうね?うちら、未成年なので裸はNGなんですけど。」
女神「あなたたちの制服をトランスフォームしただけだから、元に戻るだけよ。セーラーナンタラも変身が解けたら元の着衣状態になってたでしょ。」
桜「よーし、じゃあ乗り込むか。」
翼「戦じゃ,皆の衆!」
紬「カチコミだー!」
シンデレラ、馬車もドレスも消えてガラスの靴だけのこったけれど、ドレスが消えたらどうなったか、余計な心配をしたことがありませんか?とくに男子。




